SR400/500用ダイシンの乾式クラッチ修正 (1)

 6月も終わりにかかった頃、ちょうど改造スーパートラップのテストが佳 境に入ったときでした。その前、春のブリティッシュランの頃からどことなくおかしくなっていた乾式クラッチの原因が「スベリ」にあることが判明しました。
 国内仕様のオートバイで乾式クラッチを使用しているのはヤマハのTZR250ぐらいしか見当たらず、車体自体が高価であったし、一般に流通しているもの ではないため、サービスマニュアルもないし、クラッチのクリーニング方法などもわからない状況でした。
 外国車でも、BMWのボクサーツインは乾式の単板ですし、ハーレーダビッドソンぐらいしか多板のクラッチ使用車が思い付かなかったのですが、サイトなど で見ているうちに、ドゥカティに使用していることが判りました。
 ところが、このクラッチのクリーニング方法を掲示しているサイトがなかなか見つからないのです。もちろん、当のダイシンさんへ問い合わせればいいので しょうが、当初聞いた話しではクリーニングそのものは必要ない、ということでした。
 先に記載していますが、私のレポートでは当初3000kmで以降は10000kmぐらいに1回でいいのではないか、としているし、はなっからスベルなど は意識の外にあっ たところです。
 が、現実にはいくらクラッチの調整をしても3速まではいいのですが、4速からちょいとアクセルをひねるとエンジンだけの回転が上がりだすだけの状態にな るわけですから、クラッチが滑っている結論になるんです。

 ともかく「ドゥカティ 乾式クラッチ メンテナンス」とタイプして検索したところ、うまくぶつかりました。びっくりしましたね。使用するものはエアゾ ル式のディスクブレーキクリーナーと、OA用のエアーのみというものでしたから。
 考えてみますと、アホくさくなります。つまり、フリクションディスクの減りは乾式の場合と湿式の場合とでは少々異なる。いや、減りの速さじゃないんで す。フリクションディスクそのものの変化が異なる、というものでしょうか。
 そういったことからすると、ダイシンさんが言うとおり、乾式クラッチの方がメンテナンスが簡単である、ということが理解できるところです。

 CRCの容量の大きいブレーキクリーナーを購入し、早速クリーニング。フリクションディスク、クラッチプレートへブレーキクリーナーを吹き付けて、カス などを流し取った後、数分間自然乾燥。これでディスク関係はOK。ボス側は空気スプレーでカスを吹き飛ばすだけです。
 「上手く行った!」と叫びましたが、結果は何ともはや...。

 取り付けて、数キロ走りますと効果が確認...。ン?!、4速へ入れてアクセルをひねると「加速しない」のです。確かにクリーニングの効果は感じられま したが、スベリを止めることにはならなかった、というのが真相です。
 まじめに考えて、滑ること自体からすると、この場合はクラッチディスクが一定であり、フリクションディスクの表面がツルツルなところと、そうでないとこ ろがあり、それがディスク交互で同じ位置にならないから、あるところから滑るのではないか?と考えたのです。
 とすると、フリクションディスクの表面にペーパーを当てて荒らしてやればいいのではないか。ま、ダメならダイシンへ送って修整していただく。まずはペー パーがけだ。

 困りましたね。というところで、ダイシンさんへ電話をして症状と対処したことを報告しました。何とボスと直接電話で話していたのですが、そのときは気付 きませんでした。
 回答は思ったとおりのことが返ってきました。
 まずは、返送していただいて、こちらで修整して送ります、とのこと。そして、フリクションディスク1枚が4,000円。合計24,000円で結構です よ、とのこと。
 そして、プレッシャープレート側のディスクは現在の製品は変更していて、全て同一のフリクションディスクにしているとのことでした。
 次に決定的な回答が来ました。「テストでは25000km走行時から滑り始める」とのことでしたので、私のクラッチは装備して20000km以上になり ますから、ほぼ機構自体は完全に機能している状況が確認できたところです。
 工期が2週間程度と言われるため、即座にSRが使えなくなるのは困るとして、まずはペーパーがけをやってみて、トライアンフがいつでも稼動できるように した後で、クラッチの修整をお願いすることで、電話を切りました。

 まずは、ペーパーをかけてみました。場所は秘密ですが、休日に職場へ出向き、Pタイルの上にペーパーを敷きます。皮手袋をはめてフリクションディスクを 前後左右に動かし、表面をザラツカセル程度で止めました。一番外側のディスクのみそのままにしておきます。
 6枚両面ですから、1時間以上、暖房完備の部屋ですから汗だくで作業を終えました。定板か、少し厚いガラス板がほしいところです。

 上手く行きました。そう、ペーパーがけは確かに上手くいきました。ウキウキ気分で装着。早速走行。いいじゃないか。が、クリーニングしたときと明らかに 違いますが、しばらくするとスベリが感じられるようになりました。

 どうやら、完全にフリクションディスクの汚れを剥ぎ取らないとならない、と確信し、トライアンフを稼動状態に出来たので、ペーパーがけでもダメであった ので、クラッチとフリクションディスク、それにプレッシャープレートをダイシンさんへ送付することとしました。
 ディスクの状態は写真の通りです。
 一番外側(写真の右側)のフリクションディスクとクラッチディスクのみ他のディスクと別物です。



 いつものとおり、ダイシンさんよりの電話は一切ありません。途中お盆をはさみましたので、若干工期がずれたかな?、と思いつつ電話をしますと、8月の末 までには送付するとの返答を受けました。

 代金は当初の金額どおり24,000円。安いか高いかは個人の判断ですが、ノーマルの湿式方式なら右のクランクケースカバーをはずして...、の大掛か りな作業が伴いますし、オイル交換のタームなどを考えると、私はパフォーマンス上、安いと感じています。
 送られたパーツを確認しますと、フリクションディスクは6枚は変質部分を剥ぎ取られているものと、摩擦する部分を張替えしているものが混在しているよう です。



 一番外側に来るディスクは元の1枚の中から以上の無いものが再利用されているようです。全てのフリクションディスクはクラッチボス側は面取り加工されて いますし、現在リリースされている製品(キット)と同じものになっているようです。

 

 クラッチディスクは、全てクリーニングと表面の修整が行われていました。
 プレッシャープレートはクラッチスプリングが入る取り付け部分は内部のスクイーズと穴の部分が面取り加工されていました。
 半分ネジがつぶれていたアジャスター部分はアルミの肉盛の後、旋盤加工の後、ネジ切が行われています。また、プレッシャープレート自体もフリクションプ レートの当たる部分の段付き磨耗が旋盤加工で平面にされており、表面は回転バランスをとるために、旋盤加工で削られています。
 とにかく、相当に手が入っていますが、使えるものは交換ではなく修整をして使い続けるというところが気に入っています。

 

 さて、装着してみます。残念ながらアジャスタープレートはネジ一杯で動かないようになっていますし、別段伸びきりというわけでもないから、そのままにし ました。

 いざ、発進!。
 あれ?、クラッチのキレが思わしくありません。シフトアップもダウンもどうもガシャガシャする感じで、最初にこのキットを装着したチャ〜、カチャッとい うフィーリングと、カチャカチャシャリーンという乾式クラッチ独自の音がしないのです。何かおかしい。
 再びクラッチのピボット部での調整を行います。レレ〜、油圧クラッチのスレーブシリンダーからオイルが泡立って出てきました。(この新たな問題は後ほ ど)

 ともかく、一番正常な状態に近づけないとならないから、油圧クラッチを断念して、ワイヤーに交換することとしました。
 先にインナーワイヤーへ注油をした純正を使用します。本来ですとワイズギア製のステンレスワイヤーに交換ですが、M・W・Iの今村さんもおっしゃってい ますが、オイルを通したワイヤーはかなり良い方へ変化します。
 再びプッシュレバーにリターンスプリングをかけて、クランクケースのボッチへプルレバーの先端が来るようにして調整を終えます。

 久しぶりのワイヤー操作のクラッチ、これは新鮮です。いつものテストコースへSRを走らせます。これまたM・W・Iさんもおっしゃっていますが、夏場に SRを思いっきり走らせるのは酷なように感じますから、午前中で終了とします。
 走行しながら、クラッチレバー側のアジャストをこまめに行います。引きの遊びが少ないかな?、と感じた位置になったとき、クラッチを切るとカチャカチャ シャリーンの音が出始めました。
 しかし、何となくシフトフィーリングが悪い。どうやらプッシュロッドの先端が減ってしまっているようで、交換しなければなりません。パーツ発注です。
 須賀川ダムサイドの下りから、ようやく改造スパトラの効果が発揮されてきました。これはいいです。が、自己満足の世界ですから、その静かな排気音から始 まって、ノーマル然とした状況は理解できないだろうと思います。

 走行を中止してほぼ1か月、再びSR500へ乗り出して気付いたのは、シートです。コージーシートでもやはり薄い。ノーマルよりわずかに薄くというシー トはワイズギア のローシートしかないのでしょうか。再びライディングポジションを考えなければならなくなってきたようです。
 そして、油圧クラッチ。一難去って、また一難でしょうか。
 ともあれ、乾式クラッチは元通りに組み込みが出来ました。今のところワイヤー操作も良好ですが、次回はその後の使用状況とプッシュロッド交換の一件から お話しすることとしましょう。


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