マグラの油圧クラッチ取り付け騒動記(その1)

事 の起こり
 このSR500を購入したのが1996年の7月であった。それから数年後、ダイシンの乾式クラッチを装着して以来、いろいろクラッチの遊びを調整しつ つ、えらくクラッチのキレが悪い面にブチ当たり、別項Sick'n SRを何とかするでも記しているとおり、カムレバーの角度を変更して溶接したのが、クラッチ関係については最初の改善方策だった。
 そのとき、オートショップワタナベでWRに装着されていたクラッチを紹介された。それがマグラの油圧クラッチだったのである。アッ!と叫んだのは、どこ まで引いても力が一定で軽いのだ。「SRも改造すれば装着できるぜ」とマスターはいったものの、スレーブシリンダーの取り付けと作動ロッドの長さなど、完 全リプレースは出来ないような気がして見送ったところだ。
 その後、2005年頃だったが、同じようなシステムで、クリップオンハンドル用に油圧のクラッチキットがリリースされたようだけど、すぐに姿を消してし まった。たしか、ホースが短かったため、ノーマルのハンドルバーでは使用できなかったはずだ。もちろんDOT 3とか4のアルコール系のフルードを使用していた製品だった。

 2006年11月、花園村での英車の集いに、このSRで出かけ、2日間のツーリングを無事に終えたのだが、それから1週間後辺りに、左手首の自由が利か なくなった。どうやら比較的重いクラッチを引いたまま、ウインカーの操作を行わなければならないために起こったものであろう、と想像できた。
 上手い具合に、それからトライアンフT-140Vが一定調子が出始めてきた。このオートバイには、アサバスペシャルのクラッチスプリングを入れているた め、こちらの 方が使用頻度が高くなる。左手へ影響は少しばかり楽になって助かっていたところだ。

 そうしているうちに、ハイパーバイク誌のムック本SR400/500を読むと、マグラの油圧クラッチが出ているではないか。終わりのパーツ紹介のところ で、囲み記事ではあったものの、なかなか具合がいいことが報告されている。

 

 折りしも冬のボーナス時期でもあったので、一気に購入に踏み切った。これでSRも左手の苦労から開放される、と確信してでのことであった。
 手元に届いたのが12月の16日。受け取ったときが土曜日の夕方で、明日(17日)やってみることにした。これで本当に左手の辛さから解放されるはず だったのだが... 。

簡単に装着出来るはずが...
 10年間ほど使用した純正ステンレスのクラッチワイヤーをはずし、おおまかにリプレースをする。つまり仮組だ。
 リャリャ~、取り付かないではないか。ホースの長さは十分だが、スレーブシリンダーのロッドの先端がレリーズ部分まで1cm程度届かないのだ。クラッチ の遊び調整をどのよう にしてもダメであった。
 次なる手段は、このレリーズ本体を購入することだ。が、しかし、前回のこの部分の改造の時に調べて知っていたが、この一つのパーツに相当な金額が必要に なる。以前の金額、一葉1枚(5,000円)ぐらいであったのを憶えていたので、僕の顔はちび丸子ちゃん現象の一歩手前になる。
 ともかく、背に腹は換えられないから発注することとして、ホースだけを先に通そうとしたが、またしても伏兵が…。

 どうやっても、メーターブラケットをはずさないと装着できない。これは確実だ。
 何とも言いようが無い。ボルトオンキットというのは解るが、リリース元の「rbr (アール・ビー・アール)」の装着写真は自社の改造SRだから上手く いくものの、ノーマルの車体に装着するのは少しばかり技術を要する。
 この際だ、それじゃ僕が小誌に、その装着方法を公表すればいいのだ、と決めた。と同時に、オートショップ ワタナベからレリーズが6,000円以上であることを告げられた。ガックリである。
 後のこともあり、これまで着けていた古いパーツの写真を示すが、実質手にすると、このパーツは単純な鉄棒を加工したものにユニクロメッキとはいえ、その 形状を作り出す技術からすると、パーツの価格が高いことは容易に想像できる。おまけにすぐに壊れる部分ではないため、一層割高にならざるを得ない。



 また、プッシュロッドの当たる部分がポイント状に凹んで減っている。それゆえ、カム部分がノーマルな位置なら減った部分を肉盛し、ヤスリで仕上げて再生 する、という MWIの今村さんの意見も少しばかり解るような気がする。今村さんに人柱になってもらえると... (汗) 。
 どうして減るかは、堅さの違うプッシュロッドをこのカムレバーが押し込むのだから、この押し込む部分が減った後では、いくらクラッチ調整をしても、プッ シュロッドの位置がどうしてもそのクボミに追い込まれる。加えて、カムレバーが相当に上の位置になってしまうことも無きにしも非ず。となると不細工なこと 極まりない。
 話がカムレバーになってしまったが、次に装着方法を記したい。が、これがノーマルSRに対して完全であることは無いので、参考までに止めておかれるよ う。

装着に際して(取り外しから)
クラッチワイヤーとハンドルバーの左グリップ部分は先にはずしておく。
  1. ヘッドランプをボディーからはずす。
  2. ヘッドランプボディーをはずす
  3. スピードとタコメーターケーブルのメーター側をはずす。
  4. メーターブラケットをはずして、少し上に浮かす。
 これでメインキーの右部分に隙間が出来るはずだ。進行方向に対して、現行のSRクラッチワイヤーはキーの左側から入れられていたが、油圧クラッチを同じ ように装着すると、マスターシリンダー側から出るホースが急角度となるためにできない。キーの上を通してキーの右側、タコメーターとの隙間から入れるよう にする。(メー ターブラケットを浮かせるか、はずさないと、この作業が出来ないのである。)

(装着)
  1. マスターシリンダー部分をハンドルバーに仮組装着する。このときにデコンプワイヤーをメーターブラケット(タコメーター側)の下へ移動してお く。
  2. クラッチのホースをキーの上からブラケットの右を通した後、シリンダー左の取り付け位置に差し込んでおく。
説明書どおり、スレーブシリンダーをクラッチレリーズへ装着する。
  1. メーターブラケットを元に戻す。
  2. メーターケーブルを取り付ける。
  3. ヘッドランプボディーを装着する。
  4. ヘッドランプを取り付ける。
 ノーマルのデコンプワイヤーを装着するには少々コツが必要だ。それは、油圧ブレーキキットのデコンプレ バーをはずして、先にワイヤーのタイコをレバーに入れてからビス止めする。アレコレ悩むより、この方が簡単に行く。

 これでOKのはずだ。クラッチケーブルを握ると、どういった変化が出るか?。作動 しない!
 一瞬驚かれるだろうが、フロントディスクブレーキのフルードを入れ替えしたりした後で、レバーを握っても作動しないのと同じだ。もう一度レバーを握る と、見事にロッドが引かれる。
 よく考えていただきたい。油圧の 力でロッドを引いているんだ。カムレバーを押しているのではない!。ここんところが絶妙なんだな。

 

 これより先は装着した方でなければご理解いただけないだろうけど、あえて記載することとする。
 現在、このマグラの油圧クラッチを使われている方や、私のような地道をオートバイの練習場所としてマッハIIIを走らせていたような中年ライダーは別と して、今の若い方でオフロードや林道を走られた方がいらっしゃれば、オフロードレースの世界でKTMの純正パーツとして選ばれるのが理解できるはずだ。
 本当に限られた方であろうことは理解できるが、誰かXT500にこのキットを装着している方のご意見を伺いたいものだ。

 この取り付け方法で、12月23日の午後から装着した。僕の場合はカムレバーの装着し替えと別項で記すが、乾式クラッチ故の調整のため、3時間程度要し た。が、ノーマルのSRなら上記の方法でゆっくりやっても、SRの通常のオイル交換ができる人なら1時間もあばOKだろう。

走 行
 午後4時、走行テストを開始する。テスト走行ではないのか?。ウ〜ム、難しい。馬鹿なことを考えながらエンジン始動。
 キック2発で難なく始動。(この時はツチノコを入れていることを忘れていた。)若干クラッチのチャラチャラ音が小さい。クラッチの切れを確認。シフトは アップが若干キツイかな、と思うが、これは許容範囲だろう。
 走行開始。大きい変更ではないので、オートショップワタナベまでの走行とする。クラッチスプリングが弱くなったのではないか、というのが最初の印象であ る。それだけ、ノーマルのワイヤー方式は取り回しとワイヤーの抵抗が結構多いのではないか、と感じてしまう。
 数キロ走って車体の挙動が少ない上に、えらく軽く感じる。コーナーなどもクイックに回る。僕はメーターブラケット、ヘッドランプボディーははずして油圧 クラッチを装着したが、その他はどこも触って いない。何か不思議な感覚になってしまった。
 いやはや驚いたね。これだけのパフォーマンスを持っているとなると、少しばかり驚いてしまう。再び下りたくない症候群が取り巻きそうになったので、帰宅 した。
 新しいカムレバーの調達など、要らぬ出費はあったものの、T-140Vのシートともども最高のクリスマスプレゼントになった。
 




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