MAGRA油圧クラッチその後(2)

 前号でお知らせしたとおり、8月の末に油圧クラッチがおかしな調子にな り、SR400/500用の開発元RBRさんへ送っていたところです。少々時間が掛ることのメールはいただいていたのですが、スレーブシリンダーの交換も 必要ないとのことで、返送されてきました。

 ことは、8月の末に発生しました。
 この時点でクラッチの動きが少しばかりおかしいという感じから、油圧クラッチからワイヤー操作へ戻したわけなんですが、そのときに、油圧クラッチのス レーブシリンダーから伸びているロッドが押し込まれる格好になったのだろうと思います。作動オイルが泡だってラバーブーツから出てきたのです。一瞬のこと でした。
 その後、車体からはずしてロッドを延ばしてクラッチレバーで操作して、ロッドが引っ込む動作を数回行ったのですがオイルは漏れてきませんでした。そのた め、RBRさんへ点検整備をお願いした、というわけです。
 ダイシンの乾式クラッチがパーツ交換と修整を終えて取り付けした後、試走すると、クラッチ周りがやはりおかしいことに気付き、プッシュロッド2を交換し て、クランクケース側でのクラッチ調整を完全にし、快調になりましたので、ワイヤー方式のままで行くか、と思っていましたが、やはり、MAGURA独特の 油圧作動の味が忘れられず、9月16日に再び戻したところです。
 事実、ワイヤー動作に戻しても本当にプッシュロッド2がダメなのか私には半信半疑だったわけでしたので、まずは、クランクケース側で完全に調整できると ころまでは追い込んでみました。
 アジャストボルトを左右に回してもプッシュレバーのホンの数ミリの上下が難しい、ということはアジャストボルトの先端部が磨耗していることになりますの で、次はこのパーツを交換することになろうかと思います。
 この2点のパーツについて、確認とか交換次期とかがサービスマニュアルには詳しく記載されていないので、私個人として何とかレポートを出したのですが、 SR自体の使用頻度も違い、なかなか一定のレポートは難しいところですが、アジャストボルトも先に交換していますので、プッシュロッド2を交換した今、別 項で記していますが、以降、詳しく様子を見て、報告をしたいと思います。

 RBRさんのメールと電話での連絡で、スレーブシリンダーの内部にあるオイルシールを元通りに戻したところOKになった。ロッドが若干曲がっているよう なので、引続きMAGRAの輸入元で確認をして異常がなければ返送します、という返答でした。
 後日確認の結果異常がないことが判明したため、スレーブシリンダーのバンジョー部分を少しひねって状態で返送されました。
 早速取り付けをしたのですが、今回は前回以上にロッドを戻すことが無いよう、あらかじめ、クラッチレバーを引いた状態にして、ロッドをスレーブシリン ダに引っ込んだ状態で作業をしました。
 想像したとおり、硬いオイルラインが気温が高いせいか若干柔らかくなっているため、一応の取り付け作業はいつもより速く終わりました。
 オイルクーラーコアへ当たる部分は、前回はテレビのアンテナケーブルストッパーを利用していましたが、今回はNTTさんにお裾分けしてもらった光ケーブ ルの家庭内への引き込み線用のラバーカバーを装着しました。このカバーは非常に優れものなのですが、一般には入手できないようなので、この点が少しばかり 残念なところです。
 シリンダー部分のスレーブシリンダーのホース取り付けバンジョーは少し角度を変え、ホースをそれに合わせて回転させ、写真の位置に固定します。このと き、若干ですがオイルがバンジョーボルトから滲みますが、エアーが入り込むよりは良いのではないでしょうか。
 エンジンを回してクラッチのキレを確認します。若干の引きずりはあるものの、良好に作動しています。一応の完成です。

 

 後日、この取り付け写真とカバーの件をRBRさんへメールを出したのですが、リ・メールとして返ってきたものにもホースカバーの件について現在研究中と の一文がありました。
 そういえば、オフロード用のモデルには(オイル)フルードパイプが変更されているものがあるのを知っていましたが、この部分の保護材がどういったものに なるのか期待は大きいものがあります。

 1日に1度降る雨などでテストが行えなかったのですが、9月29日、この日の所用のため、松山までの往復に久しぶりにSR500を出し、クラッチ作動の テストも兼ねて国道56号線を走らせます。
 早朝6時20分、少しだけ涼しくなった空気が包みます。以前紹介したように、ロックハートのオイルクーラーはコア部分をオープンにしたままで通していま すが、本 年は点火系統が元通りとしているため、コア部分にシャッターを取り付けることになるかもしれませんが、セーターの1枚でも、と思う頃までは大丈夫のようで す。
 おもむろにクラッチレバーを握り、カチャカチャ音がシャラララーという音に変わって1速へ入れ発進します。オー、半クラッチなどが若干楽になりますが、 これはレバー形状がいいためであろうと思います。ワイヤーの内部へ注油すれば、この油圧クラッチと同じようなフィーリングは掴めますし、それをしないか ら、クラッチが重いと言い張り、ワイヤー作動が重いことに気付かないオーナーが多いものだ、と気付くところです。
 ワイヤー作動と唯一異なるのは、クランクケース側での調整代がレバー手元の遊びとイコールではないことにあります。したがって、この遊びの感覚がオート になってしまいますから、プッシュレバーの状況がプッシュロッド2と常時接続かどうなのか、これが気がかりですが、この油圧キットでは、プッシュレバーの リターンスプリングをはずすことになっているため、プッシュレバーの状況がプッシュロッド2に対して、常に一定のギャップを保つ、と理解します。
 このことから、プッシュロッド2とアジャスターの点検交換のタームの決定は非常に重要になってくるのではないか、と考えるところです。

付  録
  1. SR400/500専用MAGURA油圧クラッチを装着して、シフトフィーリングがワイヤー作動の時と何か違う。
  2. 遊びというものがなくなる。
  3. クランクケースでの調整がよくわからない。
 上記のような方がいらっしゃるのではないか、と思います。私もその一人ではありますが、最近になってようやく調整方法が解るようになってきました。
 RBRさんで調査した結果からすると、プッシュレバーとの無調整の遊びが3〜4mm以上のものが多いとのことでした。つまり、その分、油圧クラッチのス レーブシリンダーから出ているロッドが長いことであると思われます。
 しかし、これは遊びではなく、「自由度」と置き換えた方が良い、と私は理解しています。

 そういった状況を、AISが装着されてキャブレターの変更されたモデルまでの車両に装着すると、スレーブシリンダーのロッドを一杯に伸ばして装着する と、ちょうど良い状況になるはずです。これはプッシュレバーにリターンスプリングが掛かっていてもいなくても同じであろうと思います。
 しかし、この状態でシフトを行いますと、何かギクシャクするように思います。(1の関連)

 当然、ワイヤー作動なら、クランクケースのボッチとプッシュレバーをフィットさせる位置になっているにもかかわらず、プッシュレバーのリターンスプリン グを外してしまうと、どうしてもプッシュレバーがボッチの位置より中に入り込んで来てしまいます。つまり、遊びは一切なくなるのです。(2の場合)

[ しかし、おかしいことに、スレーブシリンダーはグラグラの状態でクランクケースのクラッチワイヤー通し穴に装着されています。つまり、これが自由度=遊 び、であろうと解釈するところです。]

 で、ロッドを装着したままで、マニュアル通りにクランクケース部分で調整すると、1.の状態になって堂々巡りをすることになるのではないか、と感じると ころです。
 それでは、ハンドル左のクラッチレバー側の調整ツマミは、クラッチレバーとハンドルまでの開度調整だけですから、クランクケース側の調整はどうすればい いのか、ということになります。(3の場合)

 これを解決するのは、比較的簡単です。17mmのメガネレンチと+ドライバーを用意して、下記のようにやってみてください。
  1. クランクケースのロックナット(17mm)を緩めてアジャストボルトを左へ回します。ドライバーに掛かる重さが消えるところから プッシュレバーが下がり、再び重くなるところがあります。ここを覚えておきます。
  2. 次にドライバーを右に回して行くと、プッシュレバーが上がってきて回すのが重くなるところがあります。ここも覚えておきます。
  3. 以上の角度が120°程度ではないか、と思いますが、ドライバーでアジャストボルトを左右に数回まわして、両方向で重くなる位置 の中間でロックナットを締め付ければOKです。

 私は元来オートバイのブレーキ作動は前後輪同じシステムの方が好ましい、と考える者の一人です。そして、ハンドルバーのエンド関係はアンバランスはいけ ない。ことにフロントディスクブレーキ用のマスターシリンダーなど、必要最小限の大きさでなければ、この左右のアンバランスはライディングに対して影響が 少なくないと感じています。
 そういった者がどうしてこんな油圧クラッチを装着するのだろう、と疑問に感じられることでしょう。理由は2つ。作動方法がワイヤー方式と変わらない。マ スターシリンダー部分を無視することができる。この2つの理由だけです。加えて私の身体的な理由が... 。
 この項で申し上げるべきではありませんが、少しだけ、このキットをトライアンフT-140Vに応用できないか、と考えています。


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