SR400/500のクラッチ関係における一考察

 「BORE-ACEのTC33-Sを通称タペットカバーに装着するとク ラッチが切れなくなる」といわれる。私のSR500も同様の様子であった。が、それは、切れないのではなく、切れてはいるがギアが入りづらい、が正しい表 現である、と別項で申し上げている。
 その調整の方法は、意外や意外、昔にXT500、初期のSR400/500のクラッチ調整方法を行えば、大半の調整はOKである。

 みなさん方が、ピボット部分での調整をどのように行っていらっしゃるのだろうか?。SR マスターブックによると、通常のクラッチ調整はピボット部分の調整は記載されていない。スロットルの調整ではキャブ側のワイヤーの遊びが記載されているに もかかわらず、である。
 クラッチのピボット部分は「クラッチのメンテナンス」の後、「プッシュロッドの調整」で出てくる。が、少なくとも「クラッチのメンテナンス」の前に記載 すべきだ、と僕は考えるのだが、いかがだろうか。
 また、この本通りにピボット部分を調整すると、この部分での遊びは無くなる可能性が出る。ということは... 。ま、先へ進めよう。

 ピボット部分の調整は次のようにする。
 まずは、ワイヤー類の張り調整をフリーにする。後ろ側の左クランクケースカバーを外して、クランクケース上に出ているカムレバーにかかっているスプリン グのため、写真の位置にレバーが戻されていればOKだろう。(僕のSR500ではマグラノ油圧クラッチ装着のため、スプリングを掛けていない。念のため)
 これらを含めて、調整は次のようになる。
 オイル供給ラインの横にある17mmナットを緩める。アジャスターのセンターに+ドライバーを入れて左右に回すとカムレバーが上下する。見落とさないで いただきたいのは、カムレバーが上下するが、+ドライバーが自由になるときがある。そうなったときの確認としてやっていただきたいのは、スプリングがある ので判りづらいが、プルレバーを指で押したり引いたりすると、ワイヤー取付部分が20〜30°の角度で扇型に前後に動くはずだ。
 そこで、カムレバーが一番後ろになったとき、カムレバーを指で前に押し出してやり、押したときにクランクケースのボッチとカムレバーの中心がフィットす る位置で 17mmのナットを固定すれば一応OKである。



 これでクラッチは切れるので、ワイヤーを取付て、ハンドル側で遊び調整する。
 エンジンを回して、ローギアとセカンドギアにスムースにアップダウンが出来るかどうかをチェックする。
 微妙なポイントだが、アップするときは楽でもダウンするときにヒッカカル。あるいはその逆が起きるかもしれない。このヒッカカリが最小になるまで、 17mmナットを解いてこの 操作を2〜3回繰り返して、ナットをロックすること。

 これで、切れがアマイと次を疑う。まず疑うのは、アジャストスクリューだ。この先端部分がおかしな減りをしていれば、ヤスリで修正する。
 この先端部分はカムレバーの溝に入り込んでしまうのだが、カムレバーの回転がアジャスターの、どの部分(面)に当たるかで減りが異なる。




カムレバーの方 が材質が柔らかいので、アジャスターが削れるのは少ないはずだが、意外にも、このアジャスターはカムレバーの当たる部分は均一に円弧状に減らないのであ る。点検をお願いしたい。
 以前も記載したが、このピボット部分での調整がアマイとカムレバーに穴ぼこが空くことになる。かといって、私のようにカムレバーの上部を外して溶接をし 変えることはお勧 めではない。
 放っておくと、プッシュロッドまで交換ということになるのである。バカげているけど、SRのクラッチ調整で一番難しいところでもあるし、SRの欠点か所 でもある。後にリリースされたSRXでは改善されているし、XJ400などのマシンは、このカムレバーにギザギザシャフトが加えられ、レバー部分はSRの リアブレーキアームと同じように調整することが出 来るようになっているのである。
 もう一つの欠点は、これはヤマハ独特のものだが、油温が高くなるとクラッチが切れづらい、というものが存在する。古くはXS650時代からだが、信号待 ちではセカンドから軽く踏んでニュートラルを出すという技を用いていたものだ。ドライサンプになったとはいえ、クラッチ部分の一部はオイルに浸っていると いう方式だから、この現象はSRでは発生するのだろうかね。

 もう一点は、クラッチスプリングだ。最低限、クラッチってーのはギアを滑らせて組合せを変えるため、ドライブ関係の動力伝達を一時的に切ってしまう。つ ながった後は動力をスムースにドライブ側へ伝えるため、クラッチを滑らせないようにする。
 このような断続装置と伝達装置を兼ねた部分である。現行のSR400はクラッチスプリングを4L0のRD(国内RZ)350のものに変更になった。多く の方がこのスプリングに変更されているかもしれない。

僕は変わりません、と申し上げたい。

 理由として考えられるのは、次のとおり。
 確かに、スプリング長は短くなっている。が、取付ボルトも従来の物だ。スプリング長が少し短くなったのは事実。が、取付ボルト長は同じだから、今回の 4L0のスプリングはこれまでのSRのスプリング圧とほぼ同じである、と思う。

 しかし、ヤマハは「これまでより 30%軽いレバーの引き」と宣っているようだが、僕からすれば、これは方便で、実際はクラッチ(プッシュロッド)調整がある程度楽になって、関連するプッ シュロッドとカムレバーの減りが少なくなる方策から生まれた物だろうと思うのである。要はこれまでのクラッチ調整が微妙なところで変化するから、ある程度 クラッチ調整を楽にした、というのが本当のところではないであろうか。
 真にスプリングだけに注目するのなら、バネ長は同じでもレートを変えなければ、クラッチレバーの引きは柔らかくならない、と考えるが如何だろうか。
 M.W.Iさんは、SRのクラッチワイヤーのエンジン側サポートの前にワッシャーなどを加えることはダメだ、とされている。
 ワイヤーの伸びから始まって、カムレバーとその上にあるプルレバー部分の溶接状況、カムレバーとプッシュロッドの当たり面などがエンジンユニットの個体 差もあるし、数千キロ乗った後でも、ピボット部分での遊び調 整がまるで出来ていない状況が大半だろうから、真にクラッチの適度な切れとレバーの引き状況などを完全にしなければならない。
 プルレバーの再溶接をやった僕からすれば、サポート部分に5mm程度のワッシャーを入れた時点で、カムレバーとプッシュロッドが当たる面に大きい凹みが 出来ていたことを見逃していたことになるわけだ。
 したがって、M.W.Iさんの考えは正しいし、レバー部分の遊びが一杯になりそうな時点でカムレバーを疑うべきだし、その前にピボット部分の調整をやっ ておくことが肝要である。常用使用のSRにおいて、クラッチスプリングはレバーの引きに対しては関係ない、とも言えるのではないだろうか。

 なぜ、こんなことが言えるのか?。僕の乾式クラッチのスプリングを考えると、まず、長さは同じだから、バネレートが少し柔らかいのではないか、と考えて いる。
 というところから、あらゆる調整をしてもクラッチレバーの引きが重いのであれば、スプリング長はそのままで、レートをある程度下げたスプリングにし、取 付ボルトを少し長いものに変更すべきではないか、と考える。
 通常、強化クラッチってーものは、フリクションディスクの強化ではなく、大半はクラッチスプリングの強化タイプだ。アマチュアがやるときはスプリング取 付の際、プレーンワッシャーを追加することが一般的だ。
 僕は一度だけこの逆を試したことがある。つまり、取付ボルトを5mm程度長くする、という簡単な作業であった。クラッチが滑ることは一切無い。レバーの 引きも若干ストロークが長くなる。が、クラッチが切れる位置は変わらない。
 ということは、カムレバーとプルレバーの溶接がマズイのかもしれないし、個体差があるのではないか、と考えてしまったわけだ。
 では、どうして止めたのか。これはボルトの強度の関係から貯めた次第だ。

 話が長くなってしまったが、このようにSRのクラッチ関係はプッシュロッドを押すカムレバーの調整が出来ない構造であることが最大の欠点である、と断言 できるのである。

 もう一点、SR400とSR500とでは、クラッチの切れ状態が若干異なるように思う。もちろん、僕の経 験からだが。強いて言うと、SR500の方がどうもクラッチの切れがスパッといかないように思うのである。

 何しろSRというオートバイはXT500から発展したオートバイで、基本は相当な時代物だ。したがって、マニュアルどおりにいかないところが多い。
 この項で申し上げるべきことではないが、カスタムSRと称して様々なパーツがリリースされている。ショップの方でもかなりのものをリリースしている。性 能向上パーツはかなり少ない。ドレスアップパーツの大半は取付などがなっていない物が多い。したがって、これらで装備したSRが本当に素晴らしいものか、 は疑わしいのである。
 旧モトサロンがノーマルでいいですよ、と言っていたように、このクラッチ調整だけでもこれだけかかる。たまたまBORE-ACEのTC33-Sを装着し て起こったクラッチに関する一件から、僕が装着しているマグラの油圧クラッチ調整を再びやったことから記載した。



 
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