SR 500の知られざる欠点(その1)

長 いプロローグ
 2010年5月のゴールデンウィーク。ブラック地に赤のトリミングの燃料タンク。フレームはレッドというきれいなSRがハーレーの一行と目の前を走り 去った。
 AFAMのドリブンスプロケットとゴールドカラーのチェーンも良かった。が、あのようにして乗りたいとは一切思わない状況だった。
 通り過ぎた後、排気音などは気にはならなかったものの、頭の中に、何か引っかかるものが消えないことに気づいた。とっさのことゆえ、その場では答えを出 すことができなかった。

 それから一月後、当方のSR500のオイル交換を行う。途端にクラッチが切れない、というか、僕流の言い回しだとシフトしづらい現象にクラッチのプッ シュロッド調整を5回ほどやる羽目になった。
 うまく行くようになって、ノンスナッチのテストなどをやってみるかな、という時になって、このゴールデンウィークのことが思い出された。

 そう、ハーレーのドコドコ走りといっしょになってSRの5速で40km/h程度で走るとなると... 。
 ハタと気付いたのは、チェーンが大きく揺れていたことであった。ナルホド、と自己満足。
 この意味解るかな?

 一般の人なら、チェーンを張ればいいじゃないか、とおっしゃるだろう。確かにノーマルのリアショックならそれもありだ。
 ところが、リアショックを変更することがSRとして乗りやすくするというか、一番の最良の方法であることは解り切っているのだが、本当にそうであろうか ナ?、と思ってしまったのだ。

 そこから、僕の大推論が始まる。

前身XT500から
 ご存知のように、SR400/500はXT500を前身とする。XT500は結構ステキなオフロードモデル。当時で言うトレールモデルだ。
 僕もこのオートバイに乗っていた。再び乗ろうとは思わないが、最初のSR500があれだけボロでなければ売らなかったのに、と今でも残念に思うオートバ イだ。
 このXTを走らせるのはなかなか楽しいものであった。サイドスタンドであってもキックの度に、そのうちグニャリとなることは考えられなかったし、舗装路 でタイヤ(トレールウィング)のサイド一杯まで使うと、リアがスライドし始める。ハンドルをちょいとカウンター当てるようにすると、スーっと起き上がるな ど、なかなかすぐれた操縦性を示していた。このオートバイで、各ギアによる定走行のあり方が身に付いた。
 ところが、20cm程度のクボミを通過するのは、フロントが少しはね上がりはするものの、リアは何事もなかったかのように過ぎていく。窒素ガス封入 ショックは相当いいものであった。一度だけ妻を後ろへ乗せたが、ソロの時と遜色ない走りを示した。
 当時、市内にもう一台XT500があって、それはフォークの突き出しを15cm程取って、短いハンドルバーを装備して走っていたが、21インチホイール はそのままだったから、とてもコーナーでは乗りづらそうであった。
 このXT500もこれまでであった。

 このようなXT500を今のレベルでオンロードモデルにしたらどうであろうか。いわゆるダメとされるリアショックは本当にダメか?。
 反論はあろうが、メーカーとして出すのはSRというオートバイをヤマハというメーカーが創ってリリースしたことからすると、好ましいと思う。
 その理由は次の通りだ。
  1. フロントフォークはスプリングが比較的やわらかい。操縦と安定性を確保するため、当 初の19インチから18インチへ変更したのは、そのためだろう。
  2. スイングアームのトラベル量は変わらないが、フロントホイールがXT500の21イ ンチから18インチとなり10cmも小径になっている。走行安定性を増すためには、スイングアームはあまり上下する必要はない。
  3. 加えて、リアの上下動を抑えるのなら、チェーンも重たいものは必要な い。オフロードモデル特有のチェーンの遊びを若干多くしたような調整をSRに求める必要はない。
 大変申し訳ないが、一種独特の乗り味になっているトライアンフT-140Vがそれにあたる。僕のは小改造して、純製のSRのリアショックを装着してい る。結構いい状態で作動している。

 アマちゃんの大推論であるが、どうだろうか。リアショックを変えても、フロントフォークのスプリング、オイルグレードと量を考慮しないと元の黙阿見に なってしまう。

 それ以上に、ハーレーのドコドコ走りと一緒にハイギアで走ろうとするライダーの考え自体が間違っている。これが正解か... 。
 僕は、こういった走らせ方はSR、特に500においては大間違いだろうと思う。BSA DBD34 でさえこういった走り方はできない。
 日本人というのは「木を見て森を知らず」のが多くて、ボアとストロークなど無視して、シングルシリンダーのエンジンは、死語となったかもしれないが、日 本語英語のザッパー、という呼び方で片付けられる走り方を与えられる。
 ところが、これの正式名称はサンパー(thamper)という杭打ちマシンを意味する。が、否定の連続としてXT500でもこのような走り方はしない。 この辺から間違いが発生したのであろうな、とも思えるのだ。
 もし、XT500の寿命が国内で長く、高く評価されていれば... 。
 思うに、おそらくは免許の関係とSR400によってXT500は駆逐されてしまったのに違いない。それほどXT500はすばらしいトレールモデルであっ た。

 さて、SR500だが、比較的軽いフィーリングで扱えるようヤマハがBST34のキャブに変更し、クランクウェブも軽くして、低い圧縮比のエンジンにし たにもかかわらず、天邪鬼な輩はSR500を使いづらい仕上げに改悪しているのが今の状況のように思われるのだ。
 SR400は相当スバララシイのに、SR500こそ本物だ、とのたまうパーツ屋。一般のSRユーザーもそう勝手に思い込んでしまう。バカ言うな。かと いって、免許制度は大幅に緩和されたが、SR500が市場にない状況だし、今さら必死になって入手しようとする人も少ないであろう。
 もう一点、AIS無しのキャブモデルのSR400のエンジンを改造してSR500にする方法もあろうけど、不思議な世界だがSR500と同様にならな い。

 SR500ユーザーでありながら、こういった反対意見をいう僕自身はなんてひどい奴だ、と思われることだろう。

 かように、SR500はダメなんだ。したがって、どことどこへ手を入れるとよくなる、といった扱いをする必要がある。

タイヤから始まるサスペンションとハンドルバー、それにシート
 SR500の前身はXT500である。フロントのホイールを小さくされてしまったのだから、せめてタイヤ径は大きいもの、メトリックサイズなら少しばか り扁平率の小さいものにすべきで、フォークオイルもカヤバの#15を規定量入れる。これで、ノーマルのリアサスペンションユニットとの整合性が取れる。
 もし、リアショックユニットを交換するのなら、ストロークが若干長く、ライダーが着座した状態でノーマルのシートがやや尻上がり状態になるようなものを 選ぶべきだ。
 この状態で乗られると若干オフロードモデルの走り方になるように感じる。つまり、それだけ、リアスイングアームのトラベル量が大きいのだ。
 僕のリアショックは純製にハイパープロを組み合わせている。体重があるので、最初は尻下がりになった。しかし、ポジションを2段上位にして走り、1段に して走り、無しで走った結果、1段上にしてOKとなった。
 フロントはスプリングレートが若干高い。が、摺動性を良くするため、ハイパープロのオイルは粘度が小さい。これは、ストロークを多くしてしまう。した がって、現在はATFに変更している。
 これによって、摺動性はある程度犠牲にはなるが、こつこつと路面への追従性は良くなっている。
 悪路を走らせることが主のオフロードモデルでカチッとしたところと柔軟性を持ち合わせるサスペンションセットとなると、結構難しいものになるのである。

 サスペンションが決まると、ライディングポジションが定まらない。この時にはじめて、シートをどうするか、となるのだが、その前にハンドルバーを検討す べきだ。クリップオンハンドルなどは言語道断。サスペンションとシートで、ハンドルバーを少しワイドに、絞りを少しだけ深くしたものにすると、意外に落ち 着くのである。が、今はそのハンドルの好適なものがない。
 もちろん、ここでは最終仕様のSR500を扱っている。バックステップモデルなら、このところの心配はいらないのではないだろうか。ただし、僕の SR500もそうだけど、バックステップモデルでハンドルバーをローハイトにすると、思いのほか乗りづらい。ノーマルシートとの組み合わせだとミディアム ハイトのものがいいかもしれない。
 ここまで記載すると、およその状況が分かるだろう。初期のSR500を除いて、SR500をストック(ノーマル)で乗ることは難しい、ということだ。

この大変なSR500だが
 もう嫌!、と思われるのならSR400にお乗りなさい。これほど熟成されたマシンはないと思う。僕はバックステップモデルの最終に乗ったが、走っている 限り、排気量の差は感じない。ここぞ!、というときもSR400の方が速くてフレキシブルだ。SR500なら3速でも躊躇するときも4速でイケル。そのた め、5速の使い勝手がいい。ライディングポジションとサスペンションだけをセレクトすれば、相当にいいオートバイになる。

 どこからか聞こえてくる。「それなら、お前さんはどうしてSR500なんだ?」という声が。
 で、こういったところから本来は始まるはずだ。

またしても堂々巡りか?
 なぜ、最初にナガ〜イ序文にしたか、というのはここにあるのだ。が、それでも、ここんとこ、特にXT500の下りすら読んでいただけないのが正直なとこ ろではないだろうか。
 僕の拙文でさえ、まずは、タイヤはこういったところか、サスペンションは... 、から読み始める。で、シートにきておよその全体像がつかめるような気がするのであろう。このいいとこどりが大半だ、と僕は考える。
 したがって、車両の本質を見極めないまま、「カスタマイズ=大半は改悪」に 走ってしまうのが常だ。
 で、再び迷路に入り込んでしまう。コンプリートマシンなどを購入すると、一般が考える以上にオーバーデコレートしていて取り返しがつかない。そうやって リリースしたところを恨むのだろうね。当然、次へ売るときも安値で叩かれる?! ... 。

心臓部へ手を入れることは...
 もう一点、いわゆるカスタムパーツ。とりわけ心臓部へのカスタムパーツは、その大半がSR400用になっている点を忘れてはならない。
 僕の経験からすると、これらのパーツをある程度のポン付け可能としている場合は、パーツメーカーもSR500に対して、よほど巧みな接点を見つけている のであろうと思う。たとえば、ワイセコとの開発となったヨシムラのボアアップキット。この但し書きには「メインジェットを#2.5アップしてほしい旨が記 されている。
 それとは逆に、PLOTのスーパーサウンド。このスリップオンとフルエキではディスクのセット枚数が異なる。が、排気量差は関係ないとしている。僕の実 験から、これは嘘だ、ということを掴んでいるが、製品が既にディスコンになっているからどうしようもない。
 妙なこだわりを捨てて、排気量差を体感したければ48Uのヨーロッパ向けの純製ピストンを装着されるといいだろう。
 排気量を拡大しても、所詮ショートストロークだ。低い回転域で心地よいフィーリングを味わうことはできないし、ボアアップする趣旨はある程度の回転域で のパワーの発揮であろう。コンロッド他の耐久性はどうなるのか?。それは手を下す者が責任を取る、ということだ。
 どうして、マフラー交換のことを先に言わないのか?。理由は簡単、SR500ではとんでもない結果になるからだ。

マフラー交換
 スーパートラップ。この排気システムで一番良かったのはスポーツショップイシイの3インチロングタイプである。
 このスパトラは最初のSR500に装着して売却した。長年探し求めていたが、ようやくゲットできた。これ以外はこれまでいい結果を得たことはない。
 今のマシンに最後期のホワイトブロスのスパトラを装着したがダメであった。Sick`n SRを何とかするで記載している。いくら良い分を取り上げてもダメはダメであった。
 以後、英国製のマフラーに特注ステーを取り付けたもの、スーパーサウンド、いずれもダメであった。
 唯一、音以外でのパフォーマンスが良かったものは僕の考え方をシムズクラフトさんで実現していただいたスリップオンのスパトラ改、それにBORE- ACEのSST-IIを装着したもののみであった。
 SR400ではどうにでもなるものが、SR500ではすべてにわたって性能低下になってしまう。加えて消音が難しい。
 したがって、エキパイこそシムズクラフト製のM型エキパイを装備しているが、ノーマルマフラーで十分なパフォーマンスが得られることを認識しつつあると ころである。
 ごく普通に走らせるには、今のところ、キャブレター仕様のSR500のマフラーはノーマルの3GWを用いるべきであろうと思う。

オイルライン考
 ここ最近まで気づかなかったが、SRは400も500もオイルラインが稚拙だ。ここにはボアエースのツインオイルラインキットを組み込むべきである。
 第一にダメなのは純製のオイルラインはフィード側のオイルというか、一般潤滑オイルをエキゾースト側へ持って行っている。これは明らかに間違いであると 僕は考えている。
 XT500と初期のSRはロッカー周りへはシリンダーヘッドの後ろ側からオイルを供給していた。前傾エンジンのこのエンジンには、いい方法であった。と ころが、カンカンカラカラ音が出るってんで、このオイル供給をエキゾースト側へ持ってきた。これで大丈夫とはならないのは、熱いオイルを排気バルブ側とい う熱い部分へ流すからだ。しかもオリフィスも小さいままだから、用をなしていない、と思う。
 僕の経験では、XT500の発電コイルとフライホイールに比べて重く振られるSR500のACGとでは、エンジンそのものの構成が違うのだから、ロッ カー周りへのオイルは戻り側のオイルをくれてやる方法が好ましい、と確信するのである。
 ドライサンプ(オイルタンクが別)のオイル潤滑方式でのロッカーへのオイル供給は戻り側のオイルが使用される。また、大半のオイルクーラー装着車はオイ ルの戻り側へ入れていることでも、この理由の裏付けであろう、と考える。
 今のところ、夏の暑い時期のみ、ロッカーが叩く音が若干起きるものの、カンカンカラカラ音は出ない。

 今回はここまでとしたい。いよいよストーブリーグにかかるけど、今年の冬はどうだろうかな。('10年9月)


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