SR500の隠れた欠点(その2)

前 回までのこと
 先に様々な角度から本機の欠点を申し上げた。自分の '96モデルを例にしてだから、当たっていない点もあるが、ほぼ合点がいってると思う。おかしいけれど、記載していく内に我ながら次々にダメなところが出 てくる。そこをSR500乗りとして記載するまでもない、と決めて除外している。したがって、実際の草稿は記載のものより数倍のものになっている。
 と、'10年9月に記した。あれから何をしていたか。全く何もしていない。別の項などで記載しているが、尾を引く夏と私の仕事内容が激変したため、 SR500に関しては何もしていないのが現状だ。とはいえ、仕事の内容が変わる前までの一時、およそ次のことが解ったので、ここをまずは記載したい。

SR500の肝心要
 SRという車種は400ccだけがクローズアップされるが、この車種以上になかなかおもしろい車をヤマハは開発した。でも、成功したがディスコンになっ たものとしては、SR250。これはなかなかのモデルで、はっきり言ってSR500など足下にも及ばないモデルであった。
 ディスコンになった最大の理由は、スタイルがアメリカンだったからだろう、と推測する。これがゴク一般のスタイルなら、このオートバイは売れていたので はないだろうか。
 もう一つはSR125。これまたアメリカンスタイルであった。ただし、ビジネスモデルがゴク一般のスタイルに近づけてあったため、今でも巷で見かける。
 そしてSR400。XT500ベースとはいえ、これは信じられないほどの技術を投じて作られたオートバイであろうと思う。幾度か記載したが、1987年 にSR500がXT500のエンジンの電装システムをCDIにしただけのスペックで今のアライメントのフレームに搭載していたら... 。
 もしも、は32年も過ぎているから考えられないけど、ほぼ同時に購入した知人のSR400が全く不調知らずに対して、当方のSR500は御難続きであっ たこと。
 現在のモデルにしてもSUキャブ(ミクニではそう呼んでる)のBST34でもまか不思議な現象が起こることは、SR500はダメなオートバイであったと いえるのであろうな、と思う。
 古い話、SHIMA499のエンジンをSR500のものに変更した途端に勝てなくなった事実は意外に知られていない。モトライダー誌のプロジェクトで SHIMA499の製作記事が出て鈴鹿の8耐のことが報じられた後の本誌に紹介された記事はSR500の腰下を移植して、クランクケースカバーを削るなど のことをやって以降、途絶えてしまった。
 そういったSR500のエンジンだから、いじるのであればSR400のエンジンを触った方が好ましい結果になるのはわかりきったことだ。

シリンダーの変遷
 シリンダー左下のレリーフ、SR400のレリーフは2H6である。SR500は2J2となっている。このレリーフはSR500最終モデルまで継続され た。SR400は現行車も2H6である。
 XT500は1E6だから若干の違いはあるだろうけど、SR500のシリンダーは実に23年も同じということになる。

 マジ、SRのシリンダーはどうなっているんだろう?。実は皮肉にも、このシリンダーのことを記載したのはバイカーズステーション誌の佐藤氏だけであろ う、と思う。
 SR500のシリンダーは2J2-11310-00なのである。したがって、レリーフは2J2のまま2000年モデルまで同じである。信じられないのな らパーツリストで確認いただければいい。もちろん、金型、材質変更などが一部あるかもしれないが、末尾の2桁の数字「00」のままなのを見ても明らかであ ろうと思う。
 ところが2H6のシリンダーを持つSR400はレリーフからするとシリンダーの変更などないと思われがちだが、実はこれまで3回変更がある。
 パーツナンバーの2H6-11310-00は発売当初から2003年の騒音、排ガス規制のモデルまで使用される。そのときのパーツナンバーは3HT- 11310-00となる。そして、今のEFIのモデルでも、この3HTのシリンダーが使用されている。

 なぜ、こんな変遷のことを記載したかというと、実のところSR500は見放されたオートバイではなかったのか?、と思うからである。が、シリンダーヘッ ドはかなりの変遷をたどっている。にもかかわらず、シリンダーは変更なしというのは、通常では考えられない。シリンダーヘッドを除いてピストン関係は絶対 のものであったのだろうか。
 それでは、SR500の機関にSR400並のモディファイを行うと... 。不思議なことに決して良くはならない。むしろ走らせるのが難しい車になるようだ。
 仮に、SR500とSR400の同じ仕様時期のモデルで乗り比べをすれば一発で解る。SR400の方がよく走るのである。それに比べてSR500はどこ か乗りづらい。強いていうと乗る楽しさがないのである。
 XT500とのエンジンの違いの基本としてはシリンダーヘッドのインテークバルブの大きさだけである。ヤマハはSR500をXT500のインテーク、ア ウトレット同経のバルブに変更しなかった。僕の乗っている'96年モデルのように軽量クランク(ウェブ)を使用しているタイプにシリンダーヘッドを XT500にしたら... 。

 さて、そういったことから、カンカンカラカラの要因であるエンジンの発熱に関して考察してみた。

SR500のエンジンの発熱
 今年2010年の夏は長かった。9月に入っても30℃を記録する日が幾度もあったため、SR500なんぞ走らせる気分にもならなかったところだ。オマエ サン、BORE-ACEのオイルラインで対策済って言ってたじゃないか。確かにそうだ。これはツインラインシステムにすれば大丈夫。ただし... 。
 この確認をまずはやってみた。

気温が30℃を超えるとき
 幾度となく経験しているが、今年の夏のような経験は今のところ記憶にない。したがって、気にもしていなかったアレが出始めた。いつものロッカー部分から のカンカンカラカラ音だ。BORE-ACEのツインラインにして以降カンカン音を聞かなくなった。ここで聞くのはカラカラというよりはキュルキュルといっ た音質の音がし始める。起こるのは15km程度走ってからだ。特に、エンジン負荷がかかった時に良く聞く。

まずは条件設定
 オイルはBPの10W40の鉱物油だ。古い話、SR500を購入して直ぐさまヤマハより半合成のエフェロなるオイルがリリースされた。当初は薄い黄色の もので、四輪用ぐらいのもので案の定ガサゴソ音が多くなったのを想い出す。次に入れ替えしたときは今のものになっていたが、以後、エフェロは入れていな い。
 一時期はザーレンの15W50を入れたが、少し硬すぎるようで、以来、このBPのオイルにしている。遠くは和歌山の花園(かつらぎ町)まで行って異常は ないし、時にはテストと考えて4000kmまで交換せずにやったが、大丈夫であった。もっとも、その頃には乾式クラッチだったし、一般のSR500とは状 況が異なるが。
 概ね3000km毎、フィルターは2回のオイル交換に1回の割合である。この状況で、テストを主なったところだ。
 コースはいつものテストコースである。

8月21日(土)はれ 午前 最高気温 33.3℃
先に松野町。コース順は逆。帰りにカラカラ音が出始める。午後1時近くが最高に暑いように感じた。

9月3日(金)はれ 夕方 最高気温 32.9℃
仕事が終わってから走る。若干風が強い。向かい風が多いのでエンジンの冷却が促進されるのではないだろうか。夕刻とはいえ、止まると暑い。

9月22日(水)はれ 午後 最高気温 34.3℃
テストコース途中、鬼北まで走る。用を済まして帰路、午後4時前ではあるが、カラカラ音が出る。

10月10日(月)はれ 午後 最高気温 26.9℃
走行は別段異常ない。若干タペットの音がするも、おそらくカムチェーンと思い、わずかに伸びたチェーンを張る。

10月16日(土)はれ時々くもり 午後 最高気温 23.1℃
テストコースの前に所用で保田へ。その後テストコース。異音は出ず。

 簡単に記すと以上のようなことになる。F-1レースで良く出ることだが、路面の温度は外気温よりは高い。したがって、走行風を受けるとしても路面で温め られた風であるから、エンジンにとっては冷却風にはならない可能性があるかも。
 また、エンジンを回して走るとスピードは上がり冷却風は強くなるが、その分エンジンの発熱量は多くなる。
 当たり前と想われるだろうが、これが空冷エンジンの弱みでもある。液冷エンジンなら一部の負担分は恒常的になるが、ラジエターの容量と前方投影面積の大 きさに若干の考察が必要だ。冷え過ぎもエンジンにとっては良くないのだから。

外気温に対しての結論
 今年の結果として、まず、SR500の場合外気温が28℃以上になると、エンジンが騒がしくなるし、ノーマルクラッチならキレが渋くなるはずである。粘 度を上げても、そう、大きな変化はないと想う。オイルクーラーを付けてもあまり変化がないであろう。
 たとえば、鉱物油の#40程度を入れたとすると、いくら基本が古いSR500のエンジンであっても各パーツのギャップなどは近代のマシンだから、冬場は ウォーミングアップが大変なことになる。
 加えて、オイルクーラーは冷えすぎが怖い。したがって、前述のように、シリンダーヘッドフィンを大きくしてまたバランスを壊したりすることなく、冷却効 率を上げるためには... 。
 今のところ改善策は思いつかない、というのが種直なところだ。2010年の夏に発見できたことは、外気温が28℃を境にして、高くなるとエンジンは若干 の変化を見せるようになる、ということが判ったところだ。

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