BORE-ACEクーリングフィンTC33-S(その2)

 話は3月の中旬、この製品を装着して直ぐに起こりました。前回も記して いますが、「クラッチは切れるものの、シフトできない」という現象です。
 この調整方法も記しています。「クランクケースのピボット部分のアジャスターを少し占めて重くなる部分でロックする」というものです。
 これを2〜3回繰り返してシフトフィーリングが良くなれば、この調整で大丈夫です。

 なぜシフトしづらくなるのか?。いきなりですが、「なぜ、クラッチが切れなくなるのか?」にしないのか?。そりゃそうでしょうね。多分、多くの方はク ラッチ部分が見えないエンジンだから、シフトしづらいとは理解できないかもしれません。
 実は、私のSR500は乾式クラッチに改造してあるし、事実、(装着した当初)エンジンを始動してクラッチを握って1速へ入れると、リアホイールはフ リーなのです。つまり、ギアが入りづらい=シフトしづらい」ということになるのですね。
 このことの調整は、アジャスターをカムレバーに触れるところでロックするわけですから、クラッチのプッシュロッドとの間隙が小さくなることになるわけで す。じゃ、レバーを握ると直ぐに切れるのか?。実はそうでもないんです。相変わらず、「スーッ、パッ」と切れるのではなく、いつものSRのようにジワ〜ッ と切れるだけでした。
 これに対しての考察として、当初は「クランクケース内部の圧が少なくなって、噴射飛沫されるオイルが流れやすくなったためだろう」としていました。


 「クランクケース内部の圧が少なくなって、噴射飛沫されるオイルが流れやすくなったためだろう」は、かなり高い確率の回答である、と信じていました。自 分自身の感覚ではよく分かるのですが、やはり「だろう」ではあっても、どちらかというと「ではないか」に近いのはエンスー(汗)としてはシャクですから、 何とか 確認できる方法を考えてみました。


 どうしても気になるのは、オイルの流れです。フレームのダウンチューブがオイルタンクになっているSRはその最下部のメッシュフィルターを通して、ドラ イブスプロケット手前のオイルパイプ(金属製)から、トロコイド方式のオイルポンプへ入ります。
 クランクケース内はパイプらしきものは何もありませんが、太いパイプ状の盛り上がりが上から下へ通っていて、これは下部のクランクケースへ通じていま す。一方はオイルポンプと右のフィルターへ通じているもの。これらがオイルのメイン通路ですね。
 各ギア付近にはオイルの噴出口が備わっていることから、そこからオイルが吹くわけです。これはこれでOKでしょうね。しかも大半の穴(オイル噴出口)は XT500時代から変わらないものではないか、と思われるからです。
 そして、循環... 。その循環ですが少々解りずらいのはオイルポンプの仕組みではないか、と考えます。SRのオイルポンプはトロコイドポンプで、星形の偏芯ローターがハウジ ングの中で回ることによりオイルを圧送します。そのため、ドライブスプロケット横の金属パイプから入って、クランクケース上部のオイルのスカベンジ側から タンクへ戻る仕組みです。

 もう一つ、ヤマハ特有のものかも知れませんが、SRがドライサンプとはいえ、当のヤマハが言うドライサンプ=セミウエットサンプであったわけです。古い 話、このことはTX750まで遡ります。
 完全なドライサンプはギアボックスなどが別にケーシングされたエンジンユニットでなければダメでしょう。
 そのため、TX750では750でありながら、ゴロンとしてはいるのですが相当にコンパクトなエンジンで、しかもバランサーまで搭載したエンジン。その 冷却が空冷なため、オイル循環をドライサンプ化せざるを得なかった、と私は思っています。
 当時US仕様のオプションで純正オイルクーラーがありましたが、国内では当時の運輸省が外部に出した潤滑経路を認めなかったから、国内仕様のTX750 はダメオートバイの烙印を押されてしまったのですね。

 もう少し余談を申し上げることとして、ともかくオイルタンクを別に持つドライサンプ方式でありながら、クラッチ、ミッションギアなどがオイルに浸ってい る方式。これがヤマハで言うドライサンプです。
 これに比べて我がトライアンフT-140Vでは、ミッションは別のギアボックスにあります。このギアをドライブするクラッチは左のプライマリー(一次) ケースにあり、クラッチは150ccのオイルとエンジンオイルの噴射でプライマリーチェーンを潤滑しています。
 したがって、エンジン自体の潤滑は大半をプランジャーポンプで循環を行っています。
 オイル交換は、フレームのメインチューブがオイルタンクになっていますから、この部分が1か所。プライマリーチェーンが1か所、そしてギアボックスが1 か所の合計3か所となります。使用するオイルは2種類となりますが、650ccモデルではプライマリーチェーンケースは別になりますので3種類のオイルが 必要になります。

 同じドライサンプでありながら、SRのオイル交換は1か所ですね。オイル排出はフレームダウンチューブとエンジンのクランクケースの2か所が通常。オイ ルフィルター交換時には3か所となりますが、交換するオイルは1種類のみです。エンジンオイルとはいえ、この1種類のオイルでエンジンユニット全ての潤滑 を行うことになります。

 そういったことからSRのクランクケースを見てみますと、シフター部分とクラッチの1/5はオイルに浸っている、と私は想像します。ということは、この 部分は常にウェット状態ですから、TC33-Sを装着してギアが入りづらくなる要因は、この部分に注目すればいいのではないか、と考えたわけです。

 話を再び最初に戻します。TC33-Sを装着したときはどうであったのか?。エンジンは冷間時。クラッチ関係は切れていたので未調整。まさかギアが入り づらくなるなん て考えていなかった。
 ましてや、私のSR500は乾式クラッチだ。おかしい。
 が、しばらく走ると、シフトがやや楽になる。クラッチのピボット調整で、アジャスターを右回しにして重くなる位置(カムレバーは上に上がる)に固定する と、ギアが入りやすくなる。

 マフラーの件でシムズクラフトさんへ電話を入れて雑談していたところ、マスターもTC33-Sを装着されると私と同様のことが起こった、ということを知 りました。
 そこから私の考察を深めたことになります。こと、私のSR500は乾式クラッチです。

ク ラッチがオイルに浸っていないのに、シフトがしづらいのは別の要因があるのではないか

がそれです。

 が、考察し確認する作業はどうすればいいか?。2010年の3月と4月は気候が不順で気温も上がらず、走行させることが出来ず困難を極めました。
 何とか裏付けが出来たのは4月25日(日)のテストでした。前の週の18日(日)SST-1にマフラー変更したときに若干感じていたこともありました が、おそらくこれであろうことは十分考えられると思います。
 それは... 。




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