謎のパーツ(TC33-S)のその後(その3)
オ イルの関係 から

 今までは、この内圧減によって主たる部分に供給されるオイルの溜まりが 無くなるため、本来オイルがあらかじめ供給されている部分も流れるオイルの循環が速くなったため、各ギアの切り替えに不備をきたすのではないだろうか、と 思っていたのです。
 ところが、内圧が下がることと、オイルの循環が速くなる... 、はどうも無理な面があるようにも思われました。
 再びXS-1からXS650Eになったとき、オイル容量が3リッターから2.5リッターに変わりました。以後、TX650になるまで同じだった、と記憶 しています。
 深く考えるとオイル量自体は、最低限保っていれば潤滑面は大丈夫です。となるとSRのオイル容量は2リッター少しで大丈夫。拍出量は変わらないからこれ でいい、となります。

 が、TC33-Sを装着すると(排気側の)ロッカーボックスの容量が増えることになります。私の持論としての内圧が減る。排気ガスの一部が溜まる。オイ ル拍出量は一定。
 もしかして、ロッカーボックスの容量が増えて内圧が減った。ヤマハのエンジンでドライサンプであっても半ウェットサンプでクラッチの一部とギアはオイル に漬っている。
 そうか、漬っている部分のオイルが少なくなるのだ。それ故、ギアが入りづらくなるのではないだろうか、と考えたのですが... 。

 ドライサンプだから、それは関係ない。オイルタンク内のオイル残量がレベル内に収まっていればいい。

 確かに理屈はそうでしょう。当初、私もそう思っていました。ちょうど良いタイミングにオイル交換の時にかかったため、早速この確認をすることとしまし た。

 というところから、TC33-Sを装着してすぐのことを想い出しました。
 
 2010年5月30日(日)10時から廃油箱といつものBP ヴィストラの10W40を買ってきて、午前11時から作業を始めました。

 最近は3000kmのタームで交換しています。アイドリングを3分程続けます。思った通り1000回転付近でのマフラーエンドの振動が大きいのが判りま す。私のSR500だと5速1500回転ぐらいで60km/hですから、車輪は設置しているとはいえ、振動は伝わっています。ボルトが緩むのが判るような 気がしました。

 廃油はまずまず。クラッチ部分がオイルに漬っていないので、汚れは黒いのみ、金粉は見られません。粘度もまだまだ残ってはいますが、感じとしては栄養分 が無くなったオイルの様子です。まずは規定の2リッター程度を注油。
 エンジンを回します。オーッ、静かになりました。乾式クラッチの音がひときわ高くかんじます。1000回転付近でもマフラーエンドは先ほどより震えませ ん。が、イマイチ、エンジン全体の音が高い気がするのです。不思議なことですが真面目に。

 エンジンを止めて、ゲージ確認。案の定Eマークから3/5程度の位置を示します。ダウンチューブのオイルタンク内は十分のオイル容量です。
 数分放置しても変化がありません。オイル循環は良好と判断。では、オイルが止まっている部分はタンク内とシリンダーヘッドに供給する部分のみが外部で す。BORE-ACEの8倍供給ホースは戻り側のホースからの分岐ですから、この太い(8mm径か)戻りのホース内はオイルで満たされていません。
 当然のことです。でもおかしい?!。

 少し休憩。このとき、これがウエットサンプならどうだろうか、と考えました。ゲージ内にオイル量が収まっているのなら、オイルサンプ(オイルパン)には オイルがある、で済まされるところです。
 オイルの大半がエンジンとは別の部分にあるのがドライサンプです。でも、ヤマハのドライサンプは違います。何度も記しますが、ミッションとクラッチ部分 の1/3程度は漬っているのです。
 でも、オイルレベルゲージの範囲に入っているからOKではないか。そのとおりですが違う。

 TC33-Sを装着すると、内圧が減ると同時に吸入効率のバランスも良くなるように感じます。その第一に確認できるのはクランクケースからのブリーザー のオイルキャッチがポコポコ動かなくなることにあります。
 オイルレベルゲージを緩く占めて1/3回転ほど緩くしてエンジンを回すとシュシュシュシュという音が聞こえるはずです。
 そこからゲージを少し締め込むと、吸い込まれるように締まるはずです。内部に引き込もうとする力が働いているように。

 ということは、排気の効率も確かにアップしていることと、クランクケースを主とした内部圧は陰圧になってるのではないか。いつもより圧が少ない。そこを オイルが通常の供給で巡っている。
 オイルの絶対量が不足しているのではないか、と思い、レベルゲージの上限まで入れてみることとしました。通常より100ccアップでした。
 ともかく確認のため、午後から走行テストをやりました。エンジンを始動して10km程度走ったところ、変化が来ました。
 再びシフトがしづらくなったのです。

 テストコースを気分悪く帰ってきました。まずはクラッチのプルレバーが引き切れていないのではないか?。というところから、再びマグラの油圧クラッチに アダプターを加えました。
 若干良くはなったものの... 、あれ?、レバーの位置がクランクケースのボッチから少し外れているのを発見。ゲッ、ワイヤーなら気にもならない位置だが、油圧クラッチの遊びは少ない し、ブルレバーを引く位置そのものが0位置になるようです。
 取説の4mm程度の遊びができるのは余程のことであろ、と思います。

 とすると、オイル量、オイル潤滑もあまり関係なかったのかもしれない。あれほど意気込んでいたのに... 。

 では何か?。OHCエンジン垂直断面略図を描いて、排気バルブ側へ少しの空間、つまりTC33-Sを被せてみたわけですね。
 バルブステムの熱が、バルブスプリング、リテーナーを介してこの部分に集まります。スプリングの潤滑と微量だがバルブステムの潤滑にオイルが使われま す。
 BORE-ACEのオイルラインは、このエキゾースト側のロッカー部分を戻りのオイルで潤滑します。純正では供給側のオイルがこの部分を潤滑するのでは ないでしょうか。
 余談ですが、BORE-ACEのオイルラインに変更する前まで、エキゾースト側への戻りのオイルラインを追加しても恩恵は感じなかったのです。その後、 戻り側のオイルラインをエキゾースト側へ、BORE-ACEのツインラインキットで通常のオイルラインをインレット側へ変更したことにより、エンジンが快 調になりました。
 
 すると、TC33-Sの部分は通常のタペットカバーより70cc程度空間が増量しています。若干のオイル飛沫は内部にあるだろうし、内部のガスの対流も あります。
 ふと、ノートンマンクスのオープン(バルブ)スプリングを想い出しました。オイルの飛散は若干あろうけど冷却効率は良いはずです。
 たかが、アルミのパーツだから、そんなに... 。
 そう、それほど放熱には関係ないのだ、と考えていたのですが、今回のオイル交換前と後から得られた結果を対比すると、次のようになります。
  1. オイル交換前 クラッチ調整後シフトはし易くなる。
  2. オイル交換後 当初はいいものの、しばらくするとシフトしづらくなる。
 数回のテスト時の外気温はほとんど25℃まででした。この2つのことから解るのは、最初にTC-33Sを装着したときと全く同じ症状を出したことでし た。
 忘れもしません。装着後は別段変化が無かったのです。10km程度走るとシフトしづらくなる。クラッチは切れている。そのため、クラッチ調整は温間時に 行いました。
 今回のオイル交換でオイルが新しくなったため、オイルが持つ冷却機能が増した。そのため、シフトしづらくなった。同じく温感時に調整をしてOKになっ た。
 というところです。

 同時に、TC33-Sが原因ではなかった恐ろしいことがウラで進行しているとは、この時には全く気付かずの状態でした。このことは、いずれ... 。

 
 

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