SR400/500のクラッチオペレーティング

 SR500のクラッチ調整にはホトホト手を焼きました。ことの起こりは 2000年当時ぐらいではなかったか、と思います。ダイシンの乾式クラッチを装着したのはいいのですが、とにかくクラッチが切れない。シフトしづらい。こ の2点で大いに悩まされました。
 最初に行った改造は大胆なもので、プルレバーのカム部分の溶接を外して2〜3度手前へ持ってきて再溶接するというものでした。
 この改造の大失敗は、プッシュロッド等、クラッチそのものの調整不足から発生した問題で、以後、このプルレバーを交換するとき、プッシュロッドの接地面 に「 たこ焼ホール」ができていました。
 どうしてそうなったかは、ワイズギアのステンレスワイヤーが結構伸びるため、ワイヤーのアウターが調整できなくなった頃から、自転車用の厚めのワッ シャーをクランクケースの取り付け部分に入れて調整をしておりました。
 ばかげているかもしれませんが、アウターの遊びを少なくすると同時に取り付け位置が3mm程度引かれるのですから、プルレバーの接地面は常にプッシュ ロッドに当たってしまっていた、ということに気付かないでいたわけですね。
 私の左手首がおかしくなったのは、それから5〜6年後でした。この時点でMAGRAの油圧クラッチを装着しています。左手のクラッチ操作に対する負荷は 激減したのは言うまでもありません。
 油圧クラッチキットの装着と、最初のオイル漏れについては異常がなかったところです。それ以後、調整をやったのは2回でした。

そして 2010年の初夏に大きな問題が発生、となってしまったのですが、それから2か月後、このことに至った考えに、実は大間違いであったことに気付くわけで す。

経 緯
 2010年5月末。BORE-ACEさんのHPに出ていたエキゾースト側のロッカーボックスの容量増大キットは居ても立ってもいられず、すぐさま発注し て 装着しました。
 とたんにシフトがしづらくなってしまったのです。私だけかと思ってBORE-ACEさんに聞くと、シムズクラフトさんも同様の現象が起きていたようで す。当たらずも遠からずではありますが、この現象に関しての推論は前号で出していました。一応、温感時にクラッチの調整をする方法は成果がありました。
 ところが、オイル交換後にクラッチが切れない、あるいはシフトしづらくなる現象が再び出てきたのです。てっきり、これは不思議なパーツTC33-Sを装 着したため、と思っていたのです。
 2010年6月、M.W.Iさんの日記にMAGURAの油圧クラッチの作動上のおかしな点が記載されていました。いわゆる「遊び」調整ができない点で す。 その一文を読んでハタと膝を叩いたのです。TC33-Cをす着していなくても、私のと同じ現象が起きるのだな〜と。
 それで、誤解がないように、前号では最終調整としてMAGURAの一応の調整方法を記載しました。当然、その時の私のSR500のクラッチは良好でし た。

 以後、雨天が続き、SRには乗れなくなっていたところです。7月中旬、車検に出すために走ったところ、嫌な現象が起こりました。どんなに調整をしてもク ラッチが切れない、あるいはシフトしづらい現象が出てきたのです。何がどうなってきるのか、私には判断できませんでした。

対処へ向けて
 7月6日に最終確認の意味でテスト走行したとき、クラッチの切れが悪く閉口しました。帰りにオートショップワタナベで意外なことを聞きました。プルレ バーのプレート角度の立ち上がりをきつめに変えると、ストロークが若干伸びる。嘘のような本当の話です。
 一応、家へ帰って検討。まずやったのはクラッチの分解清掃。これば30分程度で終了しました。エンジン始動後も、やはりシフトしづらいことは変わりませ ん。このままの状態で車検に出すか... 、と考えたのですが、やはり、何とかシフトできる状態にしておくべきであろう、と永井モーターすのT君にレバー修正をお願いしました。

 ことが発覚したのは、プルレバーの角度変更を永井モータースでやってもらっていた時のことです。げ、油圧クラッチのスレーブシリンダーから出ているシャ フトが伸びない。焦りました。軽くクラッチレバーを引いたところ動くようになりました。
 ま、少しばかり良くなってので、この状態で車検を受けることとしました。

 搬入先のSモータースへは一応の状況は話しておきましたが、車検場までの道のりなどは異常はなかった、とのことを聞きました。私の場合は左脚がつりそう になったり、踵でシフトしなければならなかったのにどうしてだろうか?
 数日後、車検が終わったSR500に乗ったとき、若干シフトし易くなっているのは事実ですが、どうも納得できるものではなりません。もはやこれまで、と 判断しました。

降りかかってきたことから
 SR500のプルレバーの曲がり変更の作業中、MAGURAの油圧クラッチキットのスレーブシリンダーから延びるシャフトがブレーキレバーに反 応しなくなったことから、何かががおかしい、と気付きました。
 窮場はしのいだものの、これ以上は無理と判断しました。ワイヤー操作にしよう、と決めた日からは雨天続き。どの天気予報も「くもり時々はれマーク」を出 していた2010年7月10日に作業開始することを決定 しました。

 そう決めた前日の夜は異常に興奮して寝つきが少々悪かったのですが、ま、子供みたいなもので、はやる心は当日になるとキーンと上昇。押さえる努力の方が 大変という有様でした。不思議なものですが、一人での作業にもかかわらず、この日ばかりは予定が全くないため、朝飯の後で作業開始としました。
 マジ、7月10日は5時に目が覚めたのですが、一応、作業開始は午前8時半からの開始としました。

 まずは、スレーブシリンダーを外すために、メーターをパネルからはずさなければなりません。いつもながら、メーカーはこの部分だけを外すことは考えてい ないようですし、手持ちの工具は厚みのある10mmレンチのため、いつもながら、取り外しには少々ゲンナリです。
 いつもなら、アッタマにくる、という気分ですが、今回は涼しいもの。マジ、その後の取り付けにもトップブリッジのラバーダンパーにモリブデングリスを塗 布することを忘れなかったのですから、相当落ち着いて作業をやってた次第です。フト、退職後の整備をすることが頭を過ぎりました。同時に、商売となると時 間も加味されるので大変だな、と感じた次第です。
 油圧クラッチキットを外した後、物は試しとして、クラッチレバーを握ったのです。
 いつもなら、スムースにシャフトがシリンダーに入り込む。レバーを離す と伸びる、という作動をするはずなんですが、今回ばかりはビックリの動作をしました。

 まずはレバーの引きが硬いことに気づきました。それを無視して引いたとき、オイルがシャフト側からプチュプチュっと出てきたのです。いやはや驚きまし た。実を言うと、この経 験は2度目です。
 最初はロッドをどこかに当てて、押し込んだような恰好になって、オイルがにじんだのでRBRへ送ったときでした。
 今回はレバーを握ってオイルが出たのですから、どこかがおかしくなってるのは間違いがありません。
 出てきたオイルの臭いから判断として、MAGURA純製のミネラルオイルはATFオイルでも行けるのではないかな、と感じたところです。
 この時点では返送して修理でもありますまい。一応、このままで保管することとしました。



ワイヤー作動にするために
 さて、交換するクラッチワイヤーはノーマルの鉄製インナーを使用します。以前の長期間装着していたワイズギアのステンレスワイヤーには大変な思いをしま した。丈夫で作動がスムースなのはいいのですが、インナーの伸びは相当なもので、自転車のリアホイール装着時の3mm厚ワッシャーをクランクケースの取り 付け 部に入れてもハンドルのレバー部のアジャスターがホルダーのセンターより飛び出る有様でした。
 なおかつ、プルレバーのプッシュロッドが当たる面には「たこ焼きホール」ですから、調整以前の問題が発生していたわけです。
 このようなことがあったので、純製の鉄製インナーワイヤーのものを装着することとしたわけです。
 当然ですが、事前におよそ3時間程度をかけて、プルレバー装着部分からオイルを数滴づつたらしてインナーワイヤーを動かしつつ、オイルを入れておきまし た。
 もちろん、給油マシンがあればそれで良いのですが、オイルの種類からすると、この方法を採らざるを得ません。

プルレバー作動部分の処理
 プルレバーのピボット部分にはニードルベアリングが装着されています。ガタはなかったのですが、この部分にモリブデングリスを塗った指を入れてクニュク ニュと回してローラー部分にグリスを摺り込むように処理しておきます。
 私のSR500は乾式クラッチのため、右のクランクケースカバーはクラッチスプリングを緩めてプレートを外して、クラッチ側のプッシュロッド2をはずせ ば、プルレバーは左のアジャスターを抜き取るとフリーになるのでグリスアップは簡単ですが、ノーマルの湿式クラッチでは大きな作業になるため、この部分へ のグリスアップには注意が必要ですね。
 幸い、プルレバーのプッシュロッドが当たる部分は大丈夫でした。
 永井モータースで曲げ変えしていただいたレバーは若干曲げ角を緩くしておきました。何とも言えないのですが、プルレバー調整は上下にアジャストして行う ため、レバーのシャフト部分がその上下の異動幅の真ん中位置で、クラッチワイヤーがセンターに来るような曲げ角が必要ではないか、と考えます。1〜2度角 度 をつけると3mm程度引き代が増えますが、クラッチレバーは若干重くなります。

プッシュロッド調整
 クラッチ(プッシュロッド)調整は、昔の方法を踏襲しました。

 つまり、ワイヤーがフリーの時、ピボットのアジャストボルトが左右回る位置で、プルレバー を前に押して、ワイヤー取り付け部分のセンターがクランクケースのボッチと並ぶ位置で軽くロックします。ただし、カバーはまだ取り付けません。

 この時点で、クラッチレバー側のアジャスターを調整します。レバーの遊びがワイヤーでおよそ4mm程度ならOKです。決してレバーのエンドで 20〜30mmなどと判断しないでください。
 普通なら、これでOKのはずです。



テスト
 次に、このままの状態で走ってみます。
 ナナ、ナント、数キロ走った後はシフトがいつもどおりではないですか。私のSR500では油温の上がりが少しばかり遅いので、夏場ですと、およそ 15km程度の走行が必要になります。
 SR500の場合は油温がかなり上がります。夏場はM.W.Iさんも記載しているとおり、SR500にとっての夏場の走行は苦しいものがあるのも事実で す。私の場合、現在のSR500を所有してすぐ徳島まで走って、クラッチの切れ具合などが悪くなりました。
 残念ながら、現在の乾式クラッチにしてからは、テメーが夏に走りたくないことから油温に上昇判断が明確ではありません。ソーラーシステムのお湯の温度か らすると、60℃ぐらいまでであれば変化はないと思います。
 もちろん、オイルの良否もあるかと思いますが、一定グレードの10W40なら、 大きな変化は出ないのではないか、と考えます。

 私のSR500はBORE-ACEのパーツを使用しているため、自然 空冷のSR500としては、結構低い数値を示しています。もちろん、厳密に油温を計ったことはありませんが、外気温が30℃前後で通常走行をした後、自作 のクーリングフィンが触れますから、その辺のところでの油温、と考えてください。
 おそらく湿式のクラッチでは、この油温は結構上昇するのではないかな、と考えます。

 一度エンジンを止めて、クラッチの切れ、シフトの状況などを勘案して、クランクケースのアジャスターを固定し、カバーを装着して終了です。

 以上の作業に2時間半を費やしました。結構のんびりですが、仕事ではないし、自分のSR500ですから、これはOKとしましょう。あわてたり、カーッと なっては元も子もありませんから。

 作業完了後に、フト、次の2点のことが頭をよぎりました。それは... 。

  1. オイルの温度管理からすると、潤滑以上に放熱を考える。
  2. BORE-ACEのツインオイルラインは必須。
  3. フィード(供給)側からロッカーへオイルが行くラインは気休め。
 このことから、できるならコア数の小さいオイルクーラーをスカベンジ(戻り)側に増設することが必要でしょう。ちょうど初期型SRX 6のオイルタンクのように。


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