逆転の構図2(2)【SR500のエンジンは】

 2011年10月24日(月)。今日は少々興奮していましてね、ビンビ ンではないものの妙にSRを触りたかったのです。
 前回はSST-1のディスク枚数に関して10枚でのテストと9枚との違いはどうなんだろう、で終了しました。

 10枚で走る前に音量確認として、拙宅の前3m半径で聞いていたのですが、うるさいものではありません。が、ショートストロークエンジンのため、回転数 が2000以上になると連続音となって、音が一まとめになる。これがブリティッシュシングル500との違いであろうかナ、というものに感じたのです。
 車両に戻って、排気口へ掌を近づけますとこれまで感じなかったことを感じました(?!)おかしな言い回しですが、排気の力強さとかはかねがね、シムズク ラフトのM型エキパイにして以来、ノーマルマフラーで強いものを感じていましたが、熱量のことをすっかり忘れていました。

 ふと、私の頭の中からすっかり抜け落ちてしまっているものがよみがえったのですね。まさかとは思いましたが、これがヤマハのSR500をディスコンにし た要因の一つではないか、とも思ったのですが... 。

焼き玉エンジン・500と400は?
 昭和30年代半ばの盛運汽船。午前10時頃。あさしお丸のエンジンのトップをトーチランプで熱する。ウエスの古い切れ端にオイルを浸し火を付ける。オイ ルが 燃え尽きた頃、クランキング。パパッパパ〜ンという音とともに「天」のマークの入った煙突からワッカの煙が2〜3つ上がる。ターッタッタッタッタとエンジ ンが回り出した。「大げさだな」と思ったものだ。
 機関室には錆とも焼けともつかないような大きな鉄の塊が鎮座している。振動もあまりないし何とも奇妙。
 圧が十分になった頃、船長と交信しスクリューが回る。途端に振動が... 。ニュートラル後しばし暖気運転... 。



あさしお丸 (盛運汽船)

 このように、今は無き焼き玉エンジンの始動風景を文章にしました。以後、中学生の頃模型のグローエンジンを手にするまで、焼き玉エンジンというものを知 らなかった次第です。

 このことを頭に置いて、これまた推論ですけど、国内向けSR500のエンジンはこのパターンに似ているのではないか、と思ったのです。
 確かにSR500発売当初はXT500のピストンが入ってました。が、途中からヨーロッパ向けは圧縮比が若干高めのピストンが入っています。私が着目し たのはここなんですね。
 前回、吸気バルブの一件は記載しました。しかし、オイルキャッチがXT500と同じになったのです、カムのプロフィールも少し変わっていますが、いずれ にしても長いストロークと低圧縮のピストン。軽いクランクウェブ、そして変動の少ない負圧キャブ、とここまで来るとSR500のエンジンは発熱量がかなり 大きいのではないか、と最近になって思うようになったのです。

 それじゃ、SR400は、というと、SR500よりストロークが短い上にXT500より吸気バルブの径を大きくしてより多くの混合気を取り入れ高い圧縮 状態で爆発させる。加えて重いクランクウェブでエンジンの暴れを相殺する、という原理でSR400のエンジンは成立しているのであろうと思うのです。

 こういった状況から、通常エンジンの回転数を可変させる速度域が多いSR500には、単に全長が短い排気口が大きいマフラーはフィットしていないのでは ないか、とも考えられます。いくら精度が高いSR500のエキパイでも錆の発生は400よりも多いと思います。マフラーもサブチャンバー部分の錆は顕著で す。
 この高温の排気ガスをマフラー内で移送反転させて小さい排気口から出すのですから、低圧縮エンジンの興味ある力はある程度抑え込まれているように感じる のです。

 したがって、高出力のSR400のエンジンパワーを抑えるのには3GWのマフラーはOKであろうと思いますが、SR500では悶絶気味になってしまう。 それゆえ抜けが悪いなどと称されるのではないか、と思います。

スパトラのディスク枚数
 そういった理由で、SR500のマフラーに求められるのは、結構なマフラー容量と比較的排気口が広く、なおかつウルサクないもの、となるのですが、これ をやると排気音が引っかかる物ばかりになるのではないでしょうか。
 規定のデシベル値が心をくすぐる排気音の許容レベルとはいえません。シムズクラフトさんが苦労するのはこの辺の妥協点であろうこと、と思うのですが。

 以上のようなところから、SR500ノーマルにはスリップオンのスーパートラップマフラーでショートのものは10〜14枚程度装着する方が好ましいのか もしれません。
 ただし、排気のバックプレッシャーは極端に少なくなりますから、この点はキャブレターのパイロットジェットの戻し回転を2回と5/8戻し程度に増やすこ とと、アイドリング数をエンジンの暖気後若干高めにセットしておくことが必要でしょうか。
 また、ロング管では、これ以上にシビアになると思います。つまりマフラー容量がアップしますから排気の流れがどうなるか、特にテーパーパイプでは要注意 です。
 このことから、ハーレー用などにはスーパートラップの独自形のモデルが多く使用されるのではないか、と思います。加えて、スポーツスターなどには、通常 よりも長いテーパータイプのパイプにされるのは、マフラー容量が必要故のことではないでしょうか。
 この辺のノウハウは私自身には不明です。唯一いえるのは、V-MAXには短めのテーパーパイプのものが多い=エンジン自体の圧縮比もハーレーごときでは なく高い設定になっている、そして... 。

 というところから、SR500のエンジンはSR400に比べて低圧縮比であり、ピストンのトップもなだらか。排気は一件穏やかそうですが、排気の抜けが 悪いとエンジンが高熱を発することになるのではないか。そのため、その排気は速やかに放出しなければならない。そのためにスパトラのディスクは少々多めに した方が好ましい、と考えたのです。

 しかし、スーパートラップの特性上ストリートユースで使用する場合、オートバイで使用するスーパートラップのマフラー部分の排気内径は50mm前後であ ろうと思います。したがって、取り付けボルトの穴を考慮しなければ、42mm径のSRのエキパイでは4枚が標準になるはずです。
 ところが、現在のディスクは当初のディスクと違い切欠がないため、ディスク取り付けボルトのバリ部分が6つディスクにある小さな溝へ入り込むようになっ ています。したがって、ボルトの在る無しにかかわらず、この部分の面積を引くと42mmのエキパイ径には5枚が妥当かと思うのです。
 じゃ、どうしてSR500は8枚が標準なのか、となるのですが、これは私にとっても不明です。どうしても確認が採りたい場合は、ディスクを4枚、6枚、 8枚、12枚として乗ってみられるとお分かりになるのではないでしょうか。


 と、2009年の夏にもやっているわけですから、再び堂々巡りが始まるようになる、と思えたりもするのですが... 。






 
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