逆転の構図2(その5)【5枚で落ち着く】

 スーパートラップの根本のようなことはこれまでに申しました。じゃ、私 のSR500に装着したSST-1のディスクはどうして6枚に落ち着いたのでしょ うか。

 確かに2009年と今回の実験で4枚から11枚までをやりました。2009年のテストでなかなかイケル6枚の経験からすると7枚は8枚寄りになります。 9枚は8枚と10枚以上の中庸ではないようですし、ストックのエンジンでは12枚にすると、これは最終の14枚寄りになってしまいます。
 もちろん、私の改造スパトラでのことで、参考になることはないでしょうけど。
 これらのことから、純製3インチディスクのロング管でもそうでしたし、ジムニーさんの計算値も8枚前後との結果が出ました。もちろん、オリジナルのスー パートラップでですが。
 当然、今回の最初テストでも、計算値でもSST-1でもSR500/400は8枚が標準装備となるはずです。ところが、現状からするとキャブレターは内 部が若干違うだけのSR500/400用の負圧タイプのBST34になっていますし、通常の調整箇所はパイロットスクリューの戻し回転のみで触りようがあ りません。
 そんなことはない、おっしゃるのなら、やってみられると解ると思いますがBST-34のニードルジェットのみをセローのものに交換すると、走らなくなり ます。ほんの少しですが、ニードルジェットを削ってテーパーのかかる位置を変更すると、ガスが濃くなります。ほんの少しのことですが、結果は敏感に反応し ます。
 キースターの補充キットはこういった点が触れるという、大変素晴らしいリプレースキットであると思います。
 しかし、ジェット類の交換も、ミキシングボウルにドレンがありませんから、キャブレター自体は基本を崩すことなく吸排気系のモディファイにフィットする のは、このような点からFCRよりも難しいのではないか、と思います。特にSR500においては。

 ここで、SR500ではスパトラはうまくフィットしない、と判断せざるを得ないのでしょう。
 と、またしても堂々巡りが頭をかすめるのですが、XT500のピストンと軽量クランク、それにBST34のキャブを装備した時から最終モデルまでの SR500は、スパトラの標準値がフィットしない、ということになるのではないでしょうか。

 冗談半分ですが、BST-34のキャブレターを装着したSR500よりSR400のボアアウトをやって、500ccを少々超えるエンジンにした方が好ま しい結果になるのではないか、とも感じるところです... 。

 じゃ、私のSR500でのSST-1はどうして6枚での結果が良いものに判断できることとなったのでしょうか。本当に6枚が良いのかどうか、こういった ときるつぼの中の溶けた金属状態になるのですね。
 もう一度、2009年の実験を思い起こし、6枚でのことと照らし合わせることとしました。

 読み返すと、改造スパトラにSST-1を装着しても、基本のディスク枚数は6枚のようです。が、どこかが違う。その違いは8枚のところにありました。今 回の最初は8枚から始めました。2009年時との違いはわずかに「エクステンションパイプが3.5cmマフラー内に入り込んでいること」と「ヘッドレスポ ンスの装着」であります。
 2009年では8枚の時、下りでもボボッボボという音は出なかったのですが、今回では出てきた。同時に、枚数を上げてもよくはならなかった。そのため、 再びノーマルマフラーへ戻した。
 もしかして、と焼き玉エンジンに例えを出したのです。低圧縮で出力の低いエンジンをどうするか、ということも一つのヒントになったところです。

 ディスクの開口面積についてもジムニーさんの計算式を流用させていただき、簡単な計算を起こしてみました。しかし、実際は違う。
 というところから、再び2009年の結果から6枚で実験をしたわけです。結果が良好なのは、おそらくヘッドレスポンスの作用ではないでしょうか。
 もう一つ忘れてはならないのは、オイルクーリングをはじめとしたSR500のエンジン全体の発熱防止策ではないか、と感じます。

 となると、ディスクを増やしての結果は芳しいものではなかったので、もう少し枚数を減らすとどうなるか。
 3枚以上を守ってほしい。スパトラも4枚ということがうたわれています。SST-1も少なくとも4枚は必要。ここまでくれば5枚という線が出てきます。



 5枚でやることとして、もう一度SST-1本体を見てみたい、と思います。何かしら浮かんでくるのは、スパトラのマフラーエンドへ被さる部分です。
 この部分が排気のエアダムになっているのではないか?、と考えたのです。当然、ディスクを止めているビス穴がせり出して、他の部分は周囲へ広がってい る。
 同様にマフラーエンドの排気口とディスク受け入れ部分がほぼ同じ口径であること。ここですよね。そして、ビス止めが三か所... 。妙に計算しつくされているように思うのです。
 ひとつ、SRダンディーさんのオレブルの改造マフラーを見てみますと、排気がスワール状になっているのではないか、という考え方の具現化です。
 私、SST-1のこの部分は排気のダムから排気の充填、掃気(陰圧)、をさせているのではないか、と考えたのです。
 当然のように、エンドキャップ後のディスクはそのまま重ねて装着するわけですから、スーパーサウンドの円形ディスクの配置と違い、SST-1の側壁に当 たった排気ガスはディスクへ戻されてて、整流しながら後方へ放出するのではないか。したがって、SST-1の角度とディスク径は単にデザインだけではな い、と思えたのですね。
 証拠と言ってはおかしいですが、予備のディスクも結構カーボンが付着しているのですよ。以前に私が記載したスーパートラップの排気の流れ云々の考察な ど、今になって正しかったのか、など考えたりもするのです。
 このようなところから、もしかしてを含めてSST-1のディスクを5枚でやってみることとしました。

5枚でのこと
 2011年12月4日、朝は少し寒く、夜露が下りていましたが、晴天が確保されるので少しだけあたたくなった10時前から作業に取り掛かりました。
 先ほど申し上げた、SST-1の本体部分の排気のダムの内側をガスがスムースに流れるように丸くやすりを当てて面取りをしました。影響があれば次回にバ ラシた時、最初のディスクの内側にカーボンが多く着いているか否かで判断できると思います。
 再度、ディスクを選んで装着します。やすりがけに結構時間を食いましたが、11時前に出発します。






 エンジンをスタートするのですが、若干ストール気味。エッ、ノーマル然としている。音は若干パチャパチャ音が入っていますが、6枚より少し静かになりま す。こればかりは走ってからでないとわかりません。
 驚いたのは30秒後にチョークを戻してもノーマルよりも回転が安定しているのです。期待は高まります。
 身支度を整えて発信。ン!?、6枚の時より走らせやすい。やはりノーマル然かナ〜、と再び良からぬことを考え始めました。
 信号がオール青なんですが、5速へ入れる気になりません。そう、4速の守備範囲が6枚の時、ノーマルマフラーよりも穏やかなんです。今回は吉田病院の前 の交差点でストップです。
 発進後は大きい右カーブ。3速で切り抜けます。コーナーを抜けてシフトアップ。アクセルの付きが6枚の時より敏感です。不思議です。
 申生田の上り下りは、前に遅い自動車が居て、うまくテストできませんでした。
 光満街道では、いつものつづら折れは思わず5速のままで入ってしまいそうになったのです。いつものギクシャク感が影を潜めているのです。わずか1枚の差 ですけれど本当です。実は水分の下りではもっと変化した結果になるのですが、この時は想像だにできなかったところです。

 通行止め覚悟で奈良トンネルを抜けます。犬が吠えます。ということは、6枚の時より音質がカン高いものになっているのかもしれません。特に柴犬など小型 犬は吠えながら突っかかってきます。最も、黒い車体に黒っぽいスタイルだからかもしれません。
 私が歩いているときでも、黒っぽいのだと、犬は必ず吠えます。躯徐する役人に思われるようです。

 余談が過ぎましたが、20km程度走ると、音質は結構丸くなるのですよ。そして、心なしかヒュンヒュンという吸気音のようなものも聞こえてきます。上り などでトルクが掛るところでも、排気の音質は丸いものが支配します。

 水分までの登りは遅い車とバスに阻まれます。バスは結構定速で走ってくれるので楽なのですが、道不案内の自動車は要注意です。
 自動車をパスして、バスの後ろへ入ります。水分れ口で停車したバスをパスした上に、うまい具合に通行止めが解除ですので、そのまま下りへ。

 下りに入ってすぐさま、ヤ、ヤバい。エンブレは効くのですが、6枚のとき以上にヘッドレスポンス効果が働きます。つまり、アクセルをオフにしても車重で 下っていく感覚なのです。
 したがって、いつもの喫茶店の手前に入る前にやむを得ず4速へ落しました。ところが、ここでもババッという音が出ません。ブーっという弱めのエンブレが かかった排気音になります。
 以後、50〜60km/hの定速で下ります。何とも気分の良い。ノーマルマフラーでも味わえない感覚です。
 アクセルをひねらなくてもOKという久しぶりにツインエンジンにでも乗っているような感覚になってきました。
 丸山トンネルの中でもウルサイ音ではなく、軽めのパルス音がこだまする、という状態です。
 最終、丸山の登り降りをいつも通りこなして、帰ってきました。6枚の時よりも楽チンで帰ることができたのは5枚の方が良いということでもあるようです。
 若干、アクセルワークがシビアになるのは事実ですが、現在のところは5枚が一番かな、というところでテスト走行を終えました。


 
構図のまとめ
 すでに2012年は私のSR500は購入依頼16年目を迎えます。4月からはこれまで以上に乗る機会が増えると思います。
 今のところ、キャブレターは順調に混合気を作りだしているようですし、スパトラ改はSST-1に5枚のディスクを装着して満足な結果が出せています。
 今、何をどうするか?と考えるとき、必ず出てくるのはシムズクラフトのマフラーです。現在試作中であろうと思いますが、サブチャンバー付のマフラーがリ リースされれば装着してみたい、とも考えます。
 あるいはCR、FCRのキャブを先に装着すべきか、とも思いますが、このキャブレターで年中使えるジェット類の確定値を得ることは難しいと思います。こ のキャブにフィットさせる排気系はどうするのか、わずか2点の変更点でも、走らないSR500にはしたくないため、かなりの労力を強いられるのは確実で す。
 もはや、私の財力ではこれらを確実にこなすことは難しい、と想像します。として、一応、この状態のSST-1を使用してみることとしました。




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