SR500  14年目の夏に

 2010年の夏は大変な梅雨時から始まりました。6月の第一週を過ぎ て、7月の第二週の終わりまで、雨に悩まされ続けました。私の日記から紐解いてみますと、この間42日中24日も雨を見たわけです。
 私の気分も冴えない日々。意識してもついつい継続できなくなってしまうことが多く、SR500にしても、車検に出すタイミングを逸しそうになったりもし ました。
 MAGURAの油圧クラッチを外した件は別項で記載しています。このことから、SR500が14年目へ入る夏へ向けての準備が始まりました。
 まず頭に浮かんだのは、このパーツからでした。
 わずか、燃料タンクの後部を2〜3cm程度アップさせて、エンジンに当たる走行風を後ろへ逃がしてやろうというものです。最初、眉唾だな〜、と思ってい たのですが、謎のパーツTC33-Sを装着して、紆余曲折はあったものの、SR500のエンジンの発熱量は相当なものがある。その熱のコモリを無くすれば いい。そのための処置とすれば... 、と発注したのです。同時進行として、オイルラインへもクーリングフィンをオイル供給側へも装着しました。

決してアイデアだけではないパーツ
 長年ヤマハの車両を愛用していると、ユーザーサイドで考えることとメーカーで考えることが同じ名称でも異なるときがあります。
 SR500/400に当てはめますと「ティアドロップのガソリンタンク」となっています。たしかにカタログの上と横から見た写真は、前側から後ろへ行く にしたがって細くなる涙滴型になってます。
 でも、“なっています”、だけのこと。実際はシート前部がタンクに覆いかぶさっているから、シート先端の細さでダマシをかけているようなものです。
 私が思うのは、XS650のみ本来のティアドロップ型のガソリンタンクであったように思います。XS650のタンクとSRのタンクを比較すると、初期の SRのタンクでもシートと合わさる部分は想像以上に広い、と言わざるを得ません。

 もう一つ悪いことに、SRの場合はシリンダーヘッド(ロッカー)カバーの一部に燃料タンクが覆いかぶさるのです。加えて、燃料コック部分が下がり気味に なって装着されていることに気付くはずです。
 このことは、センタースタンドを立てて真横から見るとよくわかります。
 XS650では、この点がクリアーですが、TX650になって、一部かかるようになりますから、ヤマハの技術陣がシートとタンクの関連からこのような造 形を行ったことであろうと考えます。
 ところがですよ、燃料タンクのフレームへの装着方法はXS650以来今日まで、多くの車種で同じような方法を採用しています。
 つまり、ステアリングヘッド部分の左右にダンパーラバーを置いて、そこへ燃料タンクを滑り込ませて、後ろはフレームに燃料タンク装着用に立ち上がった シャフトへラバーをはさんで落とし込む方法です。XS650は落とし込みだけでしたが、SRはプレート(トレー型)ワッシャーを介してボルト止めです。
 私の所有車でGX750がこの方式です。記憶にあるものからすると、XJ750もXV750もRZ250もそうだったように思います。実に面白いもので す。

 前書きはこのぐらいにして、今回の燃料タンクのオフセットパーツ。最大の効果は走行風の流れがスムースになることではないか、と考えたのです。
 開発者のBORE-ACEさんもこの考えでしょう。しかしですよ、写真だけでは取り付けに際して弱いのじゃないか、と気をもんだり、たかが2cmアップ なんて効果があるかどうか... 、という気分は抜けていなかったのですよ。

 ところが、例の謎のパーツTC33-Sを装着した時から考えは一変しました。前頃エンジンのSRでは、このパーツが装着される部分はエキパイの最初の曲 がりと同じ位置ですから、いわゆるツノに当たるのですね。
 クラッチ操作をワイヤーに戻して以来、このパーツの秀逸性が気温の上昇とともに発揮し始めたからです。
 となると、走行風を後ろへ逃がすことによって、インレット部分へ溜まっていた空気が、後ろへ流れるのではないか... 、などど、現実味を帯びた考え方に変わってきたわけです。
 もっとも、どういった方法で取り付けられるかは、マンロー号のブログを見るまでは解らなかったのですがね。

 例のゆうパックの遅配が解決しない中、発注をかけました。3日後、佐川急便で到着しました。



 いつもながらのジュラルミンです。ハハーン、こうなるのか。私のタンクダンパーラバーはまだしんなりしているので、交換の必要はない。一応、摺れる部分 はモリブデングリス塗付として組み付けようとしたのですが、またしても雨。
  走行テストとの兼ね合いもあり、うまい具合に夜の会議がある7月16日、時間休暇を取って装着して、走行することとしました。

 取付前の状況は下のとおりです。



 取付後の写真を次に示します。



 如何でしょうか?。右側の写真で比べていただければよく解ると思います。フレームの バックボーンから左右へ下りてくるチューブと燃料タンクとの隙間が広くなっていると思います。また、タンクの白い枠線が取付前はシートレールの下側へ位置 し、取付後は上側になっています。
 燃料タンクの後部取付部分でダンパーラバーを含めて2cm程度上へ上げられたことになるわけです。
 装着後にできた本当にわずかな隙間なのですが、この隙間がどういったことを及ぼすか、全く予想もしていなかったところです。

 作業はものの10分で装着完了。一応、オイルラインの状況を確認してエンジンを回します。
 何も変わりません。普通どおり。テストコースへ入れようとするも、向かいから黒雲が... 。ま、降ればそこで予定変更と考えて走行開始。案の定、光満街道の入り口で大粒の雨。急遽翻って、国道56号線から帰途へ。
 高光農協横の交差点で信号待ち。ゲー、気色ワル〜。何、これ。内股が膝にかけて生ぬるいのですよ。幸いオキンキン部分は大丈夫ですが、しばらくすると感 じ始めるので、妙な気分になるのですよね。ステテコ履けば少しは収まるかもしれませんけど... 。
 そうなんです。どうも走行風が途切れると後ろへ流れていた空気が一部上がってくるのではないか、と考えました。
 ま、雨はゴメンですし、これ以上走ると会議に間に合わなくなるので、テストを中断しました。
 その夜、オイルのクーリングフィンを追加した結果も含めて、明日の午前中にテストしようとしました。

 7月17日(土)再び4時過ぎに目が覚めました。妻はすでに起床していました。スロースターターの彼女は6時からの勤務のようです。
 ウトウトしながら、5時半起床。オイルラインの取付を確認しつつ、朝食の後ゲゲゲの女房を見た後、作業開始です。オイルラインへのクーリングフィン追加 は慣れたもので、13mmと14mmのスパナで装着します。13mmはメガネとのコンビネーションレンチが良いかと思います。
 エンジンをスタートさせて、何やらおかしいことに気付きました。妙にね、ダッダッダッダという感じで回っているんですよ。そして、スタート時に排気口か らスパトラと同じく水蒸気が少し出てきました。
 全体として、吸排気系のバランスが取れてきたのかもしれません。

 それでは、燃料を3リッター加算して、7月10日の走行を思い出しながら、同じコースを走ることとしました。

 燃料補給して申生田の登り下りのあと、光満街道へ入ります。ことのほか快調です。務田の坂を上がり三間街道へ入ったとき、とんでもないことが起こりまし た。この時の風は弱い向かい風。午前中のこともあって、走行時の向かい風以上の風を感じる、といった程度でした。
 5km程度走ったとき、太ももの内側が妙に生暖かいというか、汗を感じたのですよね。いわゆるモア〜っと来るんですよ。急所はシートの上に乗っかかって いる状態ですから大丈夫ですが、何ともいえない。
 少し厚手のスリーシーズンスラックスのせいかな?、とも感じましたが、腰の周りに汗は感じませんので、スラックスが原因ではないようです。
 今回は、奈良トンネルを通ることとします。このトンネルの位置しているところは、ほぼ無風でヒンヤリしているのですね。ン、ここでは生暖かさを感じな い。トンネルを抜けると大きなショートカットで、ただちに水分への登りにかかります。
 これからは向かい風、しかも登りになります。エンジンに負荷はあまり感じません。向かい風ではなく、場所によって変わる、という具合。したがって、感じ 方に差があります。
 頂点からの下り。今度は本当に来ましたよ。下りはご存知のとおり、常に向かい風... 。はっきりいって嫌になります。ついには尻を上げざるを得ません。

 お間違いなく。夏場だから、インナーが汗でくっ着きイライラしてくるんですよ。

 こればかりは閉口です。シートの上で腰を振り振り、ステップに立ち上がったりしましたが無理。夏場のことゆえの出来事です。通気性と吸汗性のいいスラッ クスを着用する必要がありますね。
 ま、こんなことで帰宅したのですが、このモア〜っという感じに振り回されたため、何かを見落としていることに気付きませんでした。何かが違うんです。

 もし、この時に車検を受けていれば良かったのですが、このこと以上にクラッチ関係の整備が出るわ、仕事もお祭りもあるわ、再びSRに乗ったのは、全く ひょんなことからでした。

 7月29日、多くの職場の仲間が外出し、瑠番役になってしまいました。雨も午前中に上がって午後からは青空が見え始めました。職場に人が居ないことは空 調がきつくなるんですよね。で、汗が出なくなるんです。しかも乾燥するから水は摂らなくてはならない。
 私自身も、夕方の酒を少々少なめにしないと夜の過ごし方が寝るだけ、になってしまう。何とかしなければ、と思いつつ帰宅途中考えたのです。ふと、2日間 続いた雨で、クラッチハウジングに水が入っているかもしれない、とも思い、SRを走らせることにしました。
 用意万端になった時、汗が出始めました。

 走行状態は全く17日と同じ。このパーツの掃気状態は素晴らしいものがあります。湿度は若干多いものの、気温は31℃以上ですからかなり苦しい。17日 と違うのは、夕暮れに向けて走っている、ということでしょうか。
 異変を感じたのは奈良トンネルを抜けた頃からでした。エンジンの静粛性が増しているようなのです。これにはオイルラインのフィン追加も確かにあります が、私はこの燃料タンクオフセットパーツが一番影響しているのではないか、と感じました。
 TC33-Sが角のように出てクーリング。オイルラインフィンでクーリング、シリンダーヘッドフィンで... 。これらクーリングパーツを通った熱の大半はエンジンユニット後部へ溜まる。そして、エアクリーナーボックスへぶつかる。一種の対流が起きる。熱い空気は 上昇する。しかも前からの風に圧縮される。ここへオフセットされた燃料タンクの隙間を通ってその空気が流れる。

 おそらくこれでしょう。単純なパーツですが、凄まじいものがあります。これで夏が乗り切れます。



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