思いつきの勝利
(SR500のテストとして)

 2008年7月、Sモータースマスター。「どうもエンジンの音、特にシ リンダーヘッド周りの音が乾式クラッチの音に上乗せになっているように感じる」という。そんなことはない。ことに「BORE-ACE」のオイルラインを加 えて以来、ヘッド、特にエキゾースト周りは静かになっているはずだ。そういえば2年前も同じようなことを言っていた。僕はマスターの言う内容がよく判らな かった。

 BORE-ACEのオイルラインを加えたことは、確実にエキゾーストのロッカー部分をよく潤滑しているのは確実だ。以前も記載したけど、純正のオイルラ インからのオイル量は非常に乏しい。僕自身、現在のエキゾースト側ロッカー部へオイル供給の取り回し変更になった今のSR500でも、夏場に一度だけ嫌な 音の発生を経験しているから、音が出ないという保障でもないし、取り回しは良くても油量が少ないことが創造できる。おそらくSR400では発生しないこと であろう。
 XT500より、高速寄りのエンジンになったのだし、今のSR500からはロッカーアームとスピンドルが一体化されたり、カムに当たるアーム面も強化さ れているから、ほぼ満足いく結果になっているはずだが、騒音の関係からかしら、エキパイ取り付け部分のシリンダーフィンは一体化され、通風面では非常に悪 くなっているのが原因かどうか不明なまでも、現実には若干でもスピンドルへ行くオイル量を増してやる必要性は必ず存在する。
 XT500の時は、シリンダーヘッドの後ろ側から給油してやれば、エンジンが前傾して取り付けられているから、エンジン全体を潤滑するオイルも一緒に潤 滑出来ることから、エキゾーストのロッカーからの異音などが問題になったことはなかったのである。

 今回装着したBORE-ACEの製品で愕然としたものがもう一つある。それがシリンダーへ装着する放熱フィンである。これはシリンダーの右側のベース部 分にあるキャップボルトをはずし、付属のステンレスボルトで止めるだけ、という単純なパーツだ。
 もちろん、加工精度は素晴らしいものがあるのは事実だが、こんなもので何がどう変わるのか眉唾物である、と僕自身も考えていた。加えて、ベース部分の キャップボルトは3本あるのに、どうして前後2本しか用いないのか。これも大いなる疑問であった。
 最後にオイルフィルターの容量増のキャップ。これはオイルラインと同じく、油量を多くしてやれば、潤滑かスムースになり、オイルが受ける負荷が少なくな る。これは納得が出来る。

 が、どうしてもシリンダーフィンは...。ところが、最初のインプレで紹介しているとおり、効果は凄まじいものがある。この件に加えてBORE- ACEさんがおっしゃってた「長い距離走るとエンジンの熱歪などから、エンジン自体の動きが少しずつギクシャクしてき始める。これを防ぐのが一番の目標で す」とのことであったから、その確認をしたかったが、これも8月の中ごろ、お盆のお参りにT君の実家まで出かけた際に確認できた。
 しかし、そのときは歪防止などは理解できなかったのである。

 9月に入っても相変わらずの猛暑日が続く。加えて突然来る雨。このためオートバイ自体に乗りたくない日が続いていた。
 9月6日の土曜日、所要で宇和島自動車のバスで松山へ。実は前の日の金曜日、業務でにわか雨の中を走った。僕にあてがわれているのは、古いホンダのタク トだ。サスペンションなどもしっかりしているというか、体重の軽いのが乗るとポンポンはねる。この面、今の原付ライダーには乗りづらいのだろう。同僚はス ズキのジョルノがお気に入りで、タクトなど貸してくれとも言わない。
 雨の走行から5分後、別の地へ行く道の中途で雨は止んでる、というか、それまでも降っていなかった。
 帰ると冷房完備の事務所。ポリエステル混紡の半袖シャツは乾きが早い代わりに体温を奪ってしまうのだろうかしら、久々に風邪を引いてしまったようだ。
 放熱と何が関係あるんだ?とおっしゃるのは判るのだが、ま、付き合いを。

 で、松山からの帰り、バスの車中からドカのモンスターにガソリン給油している姿見て、真っ黒の車体に真っ黒のライディングウエア。黒のヘルメットに黒の グローブとブーツ。双方とも日本の夏はダウンするんじゃないか?、と思った。ドカは秋口にはオイル交換してやらないと...、などと気になって仕方がな い。
 SR400にも会う。クランクケース下を通したステンレスのエキパイが紫色に変色し、マフラー接合部分は茶色になっている。よく乗ってますね、などを 思っていた。

 帰って、丸穂温泉。薬湯に浸かる。お尻付近が冷たい。どうして感じるんだろう。正確な体温は直腸温か...。そのときであった。

 BORE-ACEのシリンダーフィンは確かに放熱している。お盆に感じたのは止まったときモア〜っと今まで感じなかったエンジンの右側から熱気を感じた のだから、アルミ材にフィン切りして穴を開けただけなのに、これほど効率があるんだ。
 すると、SRのエンジンでどこにフィンが付いていない?。SRXはフィンだらけだ。それでも6はオイルクーラーが標準装備。しかもオイルタンクにまで フィンが切ってある。となるとSR400は大丈夫だけれども、SR500は前身のXT500とは別物のエンジンと考えた方がいい。加えて、シリンダーと ヘッドには右側はカムチェーンの通路があって、その分シリンダーの右側はフィンが小さい。
 この2点と、ヘッドカバーを除いてエンジンでフィン切りしていないところは、おー、そうだそうだ、SRのエンジンは造形上のこともあろうけど、シリン ダーの左右でフィンの大きさが違うのはいただけないのではないか、と感じている。
 少し前まで、シリンダーの両側へアルミ材のフィンを作り、左右のそれをスプリングで止めて使うシリンダー用フィンが売られていたが、ディスコンになっ た。
 はっきり申し上げて、この手の追加フィンは止まっている間は機能を発揮しない。走っている間でも、フィンの間を通過するラムエァー(古〜い)の効果が発 揮されないのなら、かえって保熱作用の方が高くなる。
 昔流行った「洗濯バサミをエンジンのフィンにつけると放熱効果がある」と いう、まことしやかな方法と同じだ。1段目と2段目で間を空けた洗濯バサミなら配列はOKだろうけど、フィンとの取り付けは強固なものにしないと洗濯バサ ミ自体が熱を持ってしまう。洗濯バサミ単体の放熱面積は小さいのだから、効果はありませんよ、ということから、僕ならお止めなさい、と言いたい。

 が、SRのエンジンにBORE-ACEのシリンダー放熱フィンを付けたときに感じたあの熱気は、そういったことを計算に入れて開発された製品というのが よく判った。すると、SRのエンジンでヘッドカバーを除いて熱を持つくせにフィンが無い部分はどこだ?。
 再び見回すと...。そう、カムチェーンテンショナーのキャップナットだ。ここから熱を逃がす方法はないか?当初、XT500同様SR500も樹脂の キャップであった。今考えると、樹脂製の方が好ましかったのではないだろうか、と考えるところである。
 理由はT-140VでANALコンセントリック MK-Iのキャブと同じく、断熱材としてのベーク板を用いない通常の取り付けは、金属製のインマニがシリンダーヘッドに接しているため、キャブレターとは Oリングで気密と遮熱をしているだけなのである。
 XT500も初期のSRも樹脂製のキャップだったが、今と同じくOリングで気密とオイル漏れを防いでいた。十分な強度もあるにもかかわらず、この部分を 金属製としたため、かえって熱を持つようになったように感じるのは僕だけであろうか。
 BORE-ACEのインマニのように、歯車状のエンボスでもいいのでこの部分に削り込みをやっていただけたらな、と感じていた。まさに、ヘッドカバー部 分を除いて、このカムチェーンテンショナーキャップの放熱を何とかする方法はないものか?、と思いついたのであった。

 が、オイルフィルターキャップにはフィンの切られたものがリリースされているが、流石にこのキャップナットはパーツとしてアフターマーケットにもない。
 ワンオフで作る?。金額上からとんでもない。それじゃ何かフィットするものがあるだろうさ。すでに樹脂製のキャップはディスコンだ(と思う)。
 そこで思いついたのがT-140Vのエキパイ取り付けフィンである。おそらくフィットする。下側のクランプ部分を平行以上に広げるようなことがなければ フィットするはずだ。面でキャップに当たって、放射状のフィン。しかも走行中はシリンダーから流れる風に当たる。冷却効果もあるはずだ。

 薬湯の湯船の中でしばしの間、こういったことを考えていた。湯が温めだったのでのぼせることはなかった。

 帰宅して、T-140Vのエキパイ取り付けフィンを探して取り付けてみる。げ、カムチェーンテンショナーキャップはテーパーになってる。とすると、当初 の方式では取り付かない。
 T-140Vの場合は、一部風を受け入れるようにも...。そんなことはない。単にエキパイへの取り付け部分が面一になっているだけだ。でも、前から見 ると隙間がある。
 それじゃ、反対に取り付けるとどうだ?。何とジャストフィット。本日はこれまで。



 翌7日の日曜日。やることは早い。午前8時頃より作業開始。
 一度はずして、シンチュウブラシとWD40で清掃して再び取り付けた。この時点では効果は2の次にしてしまう。相当な憶測をしているのにデザイン優 先?、という何とも情けない話だ。取り付けは5×30mmのボルト。取り外しとなじみの関係からステンレスを用いた。

 テスト走行をしなければ...。オー、そうだ。三間でバイオ燃料関係のひまわりが満開らしい。テストコースの途中だし、チョイト道をずれてカメラに収め よう。とニコンF-4を持って出かけることにする。燃料は十分だ。
 10時半にスタート。快調だ。オイルラインを加えたことによってアイドリングが安定するまでが早い。夏場とはいえ、これは特筆ものだ。ニコンのコンパク トデジカメを忘れたのでそれを取りに階上へ。降りてきてもアイドリングは安定。(900〜950rpm)

 これまでと同様。若干エンジンから上がってくる熱が感じられないのは気温が以前より低いためかもしれない。
 いよいよ光満街道から務田の坂へ、というところで雨脚が早くなった。粘っても仕方がない。風邪を引いている関係から、こじらせてはならじと引き返す。も のの200mも引き返すと降っていない。狭い市内でもこういった自然状況を相手にだから、文句の一つも出てくる。
 宇和島道へ入ると、少しばかり困ったことが起き始めた。加速が重いのだ。わずかなことではあるが、何だか燃料が十分に行っていないような、そんな気分で あった。その他は十分なパフォーマンスを発揮している。
 イン側のオイルラインを引いて、オイルクーラーをはずしても大丈夫ではないだろうか、夏冬関係ない状態にするのなら、この方法のほうが好ましいかもしれ ない。ただし、全体の発熱量からすれば、オイルクーラーは必需品だろう。取り出し口の銅パイプの改善をすべきかもしれない。(... と、この時は思ってた)
 宇和島道を降りて、エンジンから別の音がしているように感じた。タペットとかエキゾーストのロッカー部分のカンカンカチカチという音ではない。何か軽い 音が相乗している。

 帰宅して、エンジンをストップしないままヘルメットを取って聞き入ると、カムチェーンのシャラシャラ音であった。もちろん、エキゾーストのタペットは広 い方へ合わせている。エキゾーストのロッカー部分のカンカンカチカチという音は願い下げだが、この場合のカチカチ音は小気味良い。シャラシャラ音がどうし て高くなったのだろうか。カムチェーンを少し張ってやればいいだけのことだが、今回のフィン着けでエンジンの振動係数が変化したのだろうか。



 エンジンをストップして、シリンダー放熱板に手をつけると熱〜!。ほぼ同様のことがカムチェーンテンショナーキャップに着けたT-140Vのエキパイ フィンも同じく熱〜!であった。が、オイルフィルターカバーは、この2つよりもわずかに低い。ということは、走行中であれば、通風に留意するのが一番の方 法であり、オイル自体を冷やすことを目的ならオイルクーラーも必要だが、現状ならBORE-ACEのオイルラインを追加してやる方が好ましいのではない か、と感じた。

 実は、凄まじい変化の始まりのヒントはこの時からなのだが、僕自身はまだ気にもとめていなかった... 。


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