SR400/500用ダイシン乾式クラッチの修正(2)

何だかおかしい
 前号ではクラッチ関係の修正後のインプレを少々報告しました。そのときの状況は、どうも油圧クラッチの方もおかしい状況であったので、再びワイヤー方式 に変更しました。ところが、これでも思わしくなかったのです。
 現在のSR400に乗っていらっしゃる方は、おそらくクランクケース側で遊びの調整をやっていれば、プッシュレバー側での調整はそんなに苦にすることは ないので はないか、と考えるところです。しかし、SR500は私の乗った2J2の78年モデル、それに現在の'96モデルにしても、ほぼ一瞬で切れたり繋がったり の状況ですから、半クラッチの操作は若干難しいのではないかと考えます。
 もちろん、レバー形状などから、ドッグレッグタイプでない方がスムースなつながりを示すかもしれませんけど。
 レバーを引くときはアジャスター部分のホルダーからワイヤーが15mm程度でスパッと切れますの。それゆえ、その位置から半クラッチ操作をやると、少々 難しい鋳物があるのは事実です。
 一度、その逆をやって、レバー側の遊びを大きくとってみたのですが、これがどうもマズイのです。今度は思いっきり握る寸前で切れますから、繋がるときは 指の第二関節がレバーから離れるところでになりますから、半クラッチ操作がもっと難しくなる、という状況です。(このときはプッシュロッド2の摩耗を無視 し ていたのは事実です。)
 こういった状態で50km程度走りました。これがイケマセン。数回ピボット部分の調整をやらないとなりません。何というか、あまりに繋がる・切れるがピ ンポイント過ぎるのです。この辺から繋がり始めるというところが無視されてしまっているような感じなのです。
 そんなときにM.W.IさんのHPにプッシュロッド2の件が出ていました。それ以前にプッシュレバー側のドス穴の修正云々の記事があったのは私と同様で す。もちろ ん整備を多くやっていらっしゃるM.W.Iさんのことですから、詳しく報告されています。特に中古車では、キズ(穴)が2か所についている写真も報告され ています。私のはそれをやるより以前に穴状に深く掘られていたキズでした。
 そのプッシュレバーを交換し、クラッチ部分も修正が終わったにもかかわらず、何かおかしい、と気づいたのですから、プッシュロッド2を交換すべきであろ うことが明 白になってきたので、早速発注したところです。

 9月1日(土)に作業をしました。前日の未明は夢の中で、オートバイが盗まれて、パーツを盗られ放置されている。その犯人のトラックを止めようとしたと きに目が覚めたのを 思い出しました。
 ま、いい天気ですから、プッシュロッド2を交換することとします。左のクランクケースカバーをクラッチ調整のために外しておきます。ノーマルの車両で は、 この左側でプッシュレバーを外して作業をやらないとなりませんが、私の場合は右のクランクケースカバーを外すと乾式クラッチのため、10mmのボックスと トルクレンチでプレッ シャープレートを外して、簡単に作業ができます。クラッチスプリングがキシムので、エンドにシリコングリスを薄く塗って取り付けをすることを兼ねました。 (乾式クラッチキットに付属のプッシュロッド1は特注品です。)
 元のプッシュロッド2は、近所の永井モータースから借用したフレキシブルマグネットを使用しました。取り外して一見した途端にヘナヘナとなってしまいま した。
 写真をご覧ください。プッシュレバー・プッシュロッド2とはプッシュレバーの平面移動をして作動させるため、ピンポイントからやや広がった長円の接 (断)続の状態が判るのではないでしょうか。この状態はサービスマニュアル には記 載されていない、と私は記憶しています。この件は後ほど申し上げるとして、まずは新品と比べてみましょう。


プッシュレバー側の状態を横から見た写真です。
左が新品で右がこれまで使用したものです。
M.W.Iさんも記載されていますが、らせん状に切られたオイル溜まりの溝が、新しいものでは大きくなっています。
減っている部分が、整形部分間近のため、サイドを丸く削っても再使用は無理だろうと思われます。

プッシュレバー側の状態を上から見た写 真です。
この状態では、これまで使っていたものは、プッシュレバーと接する部分への給油は不十分であったように思います。
そのためにプッシュレバーの減りがいっそう激しいものになったのかもしれません。

 最初にレバー側です。横からの写真で減り具合はおわかりになることでしょう。が、減り具合はどうか?。私はこの部分がどういった形状になりはじめるとき がヤバイのだろうか、と考えてみました。
 減り具合を確認する前に、プッシュロッド1側(クラッチ側)を見てください。これこそピンポイントで減っています。しかも、この部分を丸めてやれば再利 用できるほどの減り具合です。


レバー側に比べて減りは少ないように思 います。
溝の昼間部にあるキズはどのような状態で入ったのか不明です。

同じく、少し上から見たものです。
この状態なら、トップに出来た段をヤスリで丸くしてやると再使用できるのかもしれませんが、レバー側が大きく減っていますので、再使用は断念するところで す。

 この写真からも判るように、プッシュロッド1側はお互いに焼き入れされていて、強固になっている。それがほぼ点接点で付いたり離れたりなので、お互いの 硬度が同じなら、オイルで潤滑されているため、それほど減らないのではないか、と考えました。
 一方のプッシュレバー側はレバーそのものの焼き入れの度合いはそんなに強いものではない。したがって、プッシュロッド2の先端に刻まれているスパイラル 状のオイル溝で潤滑はされ ているものの、クラッチを握ったままの機会が多い走行条件になると、ドリリング作用でレバーで穴が開くのではないか、と考えたのです。

どの辺が交換時か
 そこで、プッシュレバー側の頭を見てみますと、減り始めてすぐは、プッシュレバーと接する面が小さいため、半球型の周囲のエッジは立っていないわけで す。クランクケース側のクラッチの遊び調整は3000km毎に行ってほしいものです。それと5000km毎にプッシュレバーを上下させるアジャストスク リューを一度点 検して、減りが大きければアジャストボルトを交換します。アジャストボルトの減り(主に段付き)が少なければ、アジャストボルトの周囲をヤスリで面取りす る修正を加える べきではないでしょうか。
 この作業で、若干持ちは長くなるであろうことになりますが、アジャストスクリューのわずかな位置違いで、プッシュレバーの固定位置が変化するようになる と、まずは、アジャストスクリューを交換すべきです。同時にプッシュロッド2 を取り外して点検した後、修正すべきかどうかを決定すべきでしょうが、おそらくこの状態に至ると修正すること は不可能で、アジャストボルトとプッシュロッド2の交換を余儀なくされます。
 私の状況から考えられるのは、プッシュロッド2は10000kmで一度点検をするべきであろう、と考えます。そのときは、アジャストボルト (5000km毎)の点検をする と同時に、プッシュ レバーも抜いてプッシュロッド2の当たる位置 がわずか に凹んでいるか、それとも穴が開いてそれが深いかどうかも併せて点検をお願いしたいところです。前者の場合はサービスマニュアルのプッシュレバー表面の写 真もそうなってますか ら、この程度ならOKと判断するところです。
 プッシュレバー側の減りが少ないようなら、クラッチ側の減りは大丈夫と判断するのですが、この場合は修正した上で、サイドを入れ替えしてもいいのではな いか、と考えるところです。
 いずれの状態でも、プッシュロッド2の交換は25000km以内のようです。それを超えると、プッシュレバーそのものが (穴あき状に)減ってしまい、 下手をすると、この馬鹿高いレバーコンプを交換する羽目になります。
 プッシュロッ ド2はレバーコンプの1/5の値段ですので、5000km走行時の点検をすべきではないか、と強く感じた次第です。
 このときに初期潤滑としてモリブデングリスをプッシュロッド2へ塗布した場合、クラッチの滑りが発生する可能性もあるので注意してください。



inserted by FC2 system