ノーマルのリアフェンダーを使用するワケ
1977年暮れ、前年の6月にGX750を購入していたので、少しばか
り躊躇していたが、初のビッグシングル、しかも男の500cc。エ~イ行け~、と購入したのがXT500であった。
何ともはや、僕自身は相当裏切られた気分になってしまった。当時のことだから今のSR400の感覚でXT500を想像していただいては困るのだが、ま、
技術的には6V電装のことを除いては相当完成されたモデルであった。が、世が世であったら今のSR400のスイングアームピボット部分、フレームのステア
リングヘッド部分などの補強が入り、エンジンはWR250のようなシンプルなACGによる電装などが装備されていながら、かなり軽量で堅牢な、いわゆるオ
フロードモデルのSR500的な位置づけで、欧米辺りで大ブレークになっていたのではないか、と感じるところだ。
余談が長くなったが、そのXT500にはリアフェンダーはループ状になったリアフレームにボルト止めされていた。フェンダーのピボット部分は2J2
(2H6)当時のSRとほとんど同じのため、取り付けも酷似していたのは言うまでもない。
翌78年、2J2のSR500を購入。問題はモトコのシートを装着したときに起こった。つまり、フレームのエンドからXT500ではループになったフ
レームの代わりにSRではフレームエンドを梯子状のプレートを溶接して補強としていたのだ。
当然、リリースと同時にモトコのシートがリリースされたのではない。ほぼ1年程度経過してブルックランズのブリティッシュモデルの多数がリリースされた
頃からだからかもしれないが、梯子補強が入った僕のSR500には梯子の溶接を削るより、簡単ではあるが上質のFRPを削らない限り装着が出来なかったの
である。
したがって、このハシゴのおかげで、僕は平気でリアフェンダーをFRP製に変更したりして楽しんでいた。梯子の補強は相当に堅固でフレーム剛性に関与し
ていることが十分に解っ
た次第だ。
当時、SRはこの辺では人気のない車種であった。400でも同様だ。免許制度上のこともあるが、当時は並列4気筒のモデルが人気になる寸前であったか
ら、当然のことかもしれない。
久々に旧内田自転車商会へ新しいSR400が入ったときであった。当然メーターは表示板が黒、透過光はオレンジのタイプ。タンクのラインがホワイトの流
れるラインになったモデルだ。
たまたまシートがはずされたところを目撃したとき、「梯子がない」と気付いた。本当に何気ないことなんだが、あるものが無い。リアショックの取り付け部
分より後ろに補強が入っていないフレームはどことなく不安なのは言うまでもない。
いつから変わったの?と僕、メカニックのS君が「ヤマハの本社のメカが言ってたけど、この部分はネジレとか下からのショックとかの実験したところ、強度
上無くてもいい、という判断から梯子を無くしたと聞いています」とのこと。加えて「生産性も向上するらしいよ」という返答であった。
現在はどうであろうか?。僕の場合、追突されてトラックのバンパーがリアフェンダーとリアホイールの間に入り込み、7m程度フロントブレーキをロックさ
せたまま滑り出しをされた経験があるが、やはり、大きい鉄ハンマーで叩いて修正した。
もっとも、このエンドフレームは左右で誤差があるのは確実だが確かに大きい影響はなかった、という経験を得ている。
しかしながら、僕は今のフレーム材質からすると少々不安である。上記の僕の場合はトラックのバンパーがホイールの頂点へ行かずに止まった。フレームは梯
子のないもの。大丈夫?
もし、アルミのフェンダーであったらどうだろうか?。あるいはステンレスのフェンダーながら、取り付けステーはフェンダーと同じ厚さのステンレスならど
うだろう?。ノーマルと同じ取り付け方法のFRP製ではどうか?。
あのときの状況からしたら、相当奥へバンパーが入り込むし、DIDのアルミリムはH型のリムのように強くない。したがって、スイングアーム取り付け部分
下
のフレームはフロントブレーキを無意識にロックさせているため前方へ曲げられてしまっていたのではないだろうか、と思うのである。
もう一点はグラブバーの存在である。このグラブバーもリアフレームの補強の重要な部分を担っている、と確信するのである。
なぜ、あの時、リアホイールの頂点までトラックのバンパー部分が入り込まなかったのだろうか?。僕は純正のリアフェンダーが鉄製で、裏にスタビライザー
的な補強があり、その補強をグラブバーが増強していたから助かったのではないか、と確信しているのである。
事故は予想しなかったときに起きるし、予想されない結果で終わることもある。僕は純正のリアフェンダー、それにループのグラブバーをアフターマーケット
製に替えるつもりはない。替
えるのであればフレームの方に梯子を溶接するだろう、と思う。
もっとも、2J2(2H6)の初期型でありながら、梯子補強のないものをM.W.Iさんが言っている「もどき」と名乗る一因かもしれない。が、僕として
は純正の鉄製リアフェンダーとグラブバーが梯子補強に替わる効果をもっと重要視すべきではないか、と考えるのだがいかがであろうか。
モノホンはなかなかお目にかかれないが、2J2(2H6)の初期型のパーツリストを見られると梯子状の補強はお分かりになるはずだ。
ダミーで作ると、こういった状況になっていた。
モトコのシートを取り付けると、ウインカー取り付け部分の溶接の盛上がり部分が当たるのである。いずれ記載しないとならないであろうが、当時のヤマハは
重量車(もう死語だな)のフレームはハイテンションパイプ(高張力管)が用いられていた。自転車に詳しい方なら溶接かロウ付かという問題でもお解かりのよ
うに、C鋼のパイプのように温度管理など気にしなくてもいいものとは少々違い、一発で決めないとならない溶接方法を採っていたのではないか、と思われる。
そのため、ヤマハの溶接はキタナイ、と相当言われたのはそういったことからではないか、と思うのだが、1980年代の中ごろから、ハイテンション鋼のグ
レードが下がったのかもしれない。
おそらく今ではカタログには鋼管クレードルフレームなどと記載されているのかもしれない。
それゆえ、大げさなようだけど当時はグラインダーで削るのにも少しばかり注意を要すると思い込んでいたのである。
以下は思い出だが、ウインカー取り付け部分を大きいモンキーレンチで挟んで曲げようとしても、梯子の補強が効いていて、全体を上手く曲げることは、まず
出来なかったのであった。それほどの補強だったのである。
もちろん、今でもブルックランズからリリースされていると思うが、FRP製のリアフェンダーにルーカスタイプのテールユニットとナンバー台を取り付けて
今の
SRに装着するのは躊躇する。
くだらない実験だが、リアフェンダーをはずした状態でセンタースタンドを立ててエンジンを始動されると、どういった状態になるか。その結果からすると、
僕の言うノーマルフェンダー(とグラブバー)じゃなくてはならない、というのが理解されると思う。
一時期、ハシゴの補強がないフレームでカウルのついたシートでリリースされていたSR400があった。この反省から、現在のループしたグラブバーが標準
装備となったのはデザイン上からではなく、リアフレームの補強を兼ねる役割をある程度持たせることに気づいたヤマハの方策ではないか、と考えてしまった。
余談だが、フロントフォークに堅固なスタビライザーを取り付けるとフロントフォークの剛性とステアリングヘッドの関係がおかしくなる。適度にしならなけ
れば、コーナーはカチッと勝
手に切れ込んで行くし、サスペンション本来の適度さは一切なく、ガチガチの動きしか出来なくなる。同様にフロントフォークのオイルの粘度も量も剛性の強い
スタビライザーに合わせなければ、ライディング自体に影響を受けるのである。
このような状況から、僕は今のところフェンダー類を替えたいとは思わない。特にリアフェンダーは。
したがって、純正のフロントフェンダーも結構考えて作られていることがよく解ると思うのである。アルミ材のフロントフェンダーに対してどれだけのスタビ
ライザーを適用すればいいのか?。結構難しいものがあるのだ。二輪車が傾いてカーブを走り抜ける限りは... 。