SR500 夏の思い出(その2)晩秋になっても

 2011年の夏は結構凄まじいものがあった。もちろん、僕の年齢がそう 感じさせるのかもしれないが、夏場の過ごし方が尋常ではなかった。その最大の要因は東日本大震災以降の節電だ。もちろん電気代の節約は大切だが、仕事環境 で冷房の強さが一定でないフロアで、送風口だけの温度設定で済ませるのだから、少しばかり頭に来るのである。温度差については数度違いで大きく変わるの だ。

 この前書きと同じような状況がSR500にも起こっている。購入当初からこれは変わっていない。暑さにはめっきり弱い、としていた。M.W.Iさんも夏 場にSR500を乗るのは... 、とおっしゃっている。
 これまで随分とBORE-ACEのパーツを組み込んでこの夏場対策を行ってきた。僕の感じる最大のイヤ〜な点はエキゾースト側のロッカーアームの揺れが 音となって出てくることにある。1996年モデルでは出ないであろうと思っていたが、やはり出る。
 これへの対策は、オイルライン、シリンダーヘッドの容積拡大、シリンダーヘッドフィンなどなどを装着し、あと一歩のところまで来ていた。

 ところが、考えるところあってノーマルマフラーで走りつつ、下りでのアクセルワークの難しさに閉口。そのとき、正式リリースになったヘッドレスポンスを 装着。好結果を得てこれなら、夏も乗り切れると思っていた。
 ほぼ同時に、マンロウさんのブログ(現在閉鎖)で、両ロッカースピンドル(シャフト)へ行くオイルラインに冷却フィンを装着する、というパーツを知る。
 当初はこれだけでね〜、と思っていたのだが、もしかして、これだけの大きさなら、取付穴も若干広いはず。となると、バンジョーボルトのオリフィス が... 。
 とすれば、油温そのものが下がるということは... 。
 もしかしたら、いけるかもしれない。加えて、エンジンの温度上昇からすると、シリンダーヘッドの冷却フィンは一段拡張しなければならない。この二つで結 構イケルはず、との結論を出したのだ。
 本当に油温が数度下がることは非常に好ましい。しかも、こんなちっぽけなパーツでそれが可能ということは並々ならぬ研究成果が盛り込まれていることにな り、チープな価格とは裏腹にコストパフォーマンスにも相当に優れたパーツであることに違いない、と感じられたのだ。

 この時点で、僕が判断したのは、このフィンとバンジョーボルトのオリフィスとの関係である。バンジョーボルトを差し込む際のガタはどう対処するのか?。 いや、わざとガタをつくっているのではないか、と微妙な関係に注目した。



 最終的にはボルトのサイドにあるオリフィスとフィンの内側には少しばかりの空間=オイル溜まりができる。決してオイルの出入りがあるのではない。オイル ポンプからの圧送オイル。BORE-ACEのホースキットではこの部分がノーマルの8倍ほどとされている。
 したがって、この冷却フィンに接しているシリンダーヘッドへのオイル供給パーツの冷却も兼ねている、ということになる。
 直感だが、これは装備してみる可能性大、と決定づけた。
 もう一点はシリンダーヘッド冷却フィンだ。これに拡張コアを装備する。シリンダー冷却フィンのウェーブ加工はあえて改造してもらっていない。単なるこだ わりだけである。



 というところから、BORE-ACEのマスターと相談し、バンジョーボルトはアルミのブラックとして、拡張フィンとも発注した。
 早くも8月12日に到着。お盆を前に忙しいさなかのため、13日の土曜日早朝に装着することとして、パーツを確認。
 バンジョーボルトの形状を見た途端に僕の理論が正しいことを確認した。えらく自信たっぷりだが、油温が数度下がるだけでずいぶんと変化がある。期待が一 気に膨らんでくる。

 8月13日(土)午前5時過ぎ。装着を開始。ゲー、インテーク側のバンジョーはどうも5度曲がりのものが必要のようだ。長さは問題ないから、さしあたっ て装着できるよう、取り出し口側もボルトを緩める。
 ちょっと時間を食って、シリンダーヘッドフィンの取り付けとも終了したのは6時過ぎとなった。



 すぐさま着替えをして、エンジン始動。始動性などは全く問題がない。まずは焼き付きが起きないかどうか、アイドリングを3分ほどやって、軽くプレップ。 オイルは回っているようだ。
 あいかわらすの低いアイドリング。後ろへ回ると、結構強い排圧をノーマルマフラーから感じる。が、これまでとどことなく違う。このことにしばらく気付か なかった。

 イザ発進。これまたいつもどおり。早朝の街を快調に走る。風は若干涼しい。これではテストにならない、とその時は感じた。
 が、どこかが今までとは違う。ヘッドレスポンス?。いや違う。こう、何と言うのか、とにかく違うのだ。
 残念ながら燃料が少ない。それゆえ、本来の暑さ対策になっているかどうか、その確認は午後からに回すとして、梅林口で引き返して来た。帰りは鳥越から国 道56号線へ。
 申生田までの直線で謎が解けた。キュルキュル音が強いだけでクラッチまわりが静かなのだ。ということは、シリンダーヘッド、特にバルブ周りが静かなので ある。
 わずかこれだけのオイル溜まりで!?。信じられないことが起こっている。これは午後からのテスト走行が楽しみになってきた。

 お盆の準備も一通り終わり、午後3時過ぎからテストすることとした。時間設定は、帰って一段落して迎え火を焚くということからである。
 始動性など快調快調。燃料系統など変化させないため、今回もコスモを5L給油。裏通りを通って光満へ出る。30℃を超えているが、これだけの外気温でも 少しばかりエンジンが硬い気分になる。何かが大きく変わっている。
 最初の変化は務田の坂までの急なカーブで出た。5速のままで入ってしまったのだ。出口で多少ガガッと来るけど、グギグギッと来るようなものではなかっ た。
 三間街道で対向オートバイの一団と出くわすが、何もしない。昔のようなピースサインも出さないし、僕は僕だけの走行をしている。うかつに手など振れやし ない。僕のエゴだろうけどね。
 ところが、ついついこれまでのアクセレーションでやっていると6速ミッションが欲しくなってくる。今までは4速の守備範囲が広かったが、今は4速と5速 も結構使えるようになってきた。

 奈良のトンネルを抜けることとする。上り、おや?、いつもよりスムースに駆け上がるではないか。こりゃいいぞ。これだけの距離走っているのに、エンジン は快調そのものだ。
 水分までの登りでも、事故処理中のパトカー見て急にスピード落とす車などをパスするのだが、妙に走りやすいのだ。

 問題の下り前のカーブでも2速まで落とす必要もない。もし、前の車がもう少し速ければ4速のままで切り抜けることができたはず。ヘッドレスポンスの影響 もあろうけど、大変化だ。

 須賀川ダムの下りも快調にこなす。以前のようなギクシャクした走り方をしなくなっている。別もののエンジンではないが、明らかに状況が好ましい方向へ変 化しているのである。
 ところが市街地へ入ったとき異様なものを感じる。ゲー、太モモの内側が湿っぽい。ゲーッ、すっかりタンクかき上げキットを装着していることを忘れてい た。

 もうお解かりであろう。放熱効果が増したエンジン。それを冷やす風が風通しを良くしたタンクの下を通って流れてくる。最初に当たるのはライダーの太モモ の内側、というわけである。


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