点火系の怖さを知る

 SR500の点火系も排気系と同様に結構いじくったところです。決して 大きい変化がライダーにもたらされるものではありません。理由は簡単です。オートバイの点火系で電流が流れる長さは四輪自動車のそれに対しては無視できる ぐらいの長さだからです。
 もちろん反論はあります。私も反論を申し述べる者の一人ですが、たとえば点火プラグコードを変更すれば本当に変わるものかどうか?。これまでテイラーの コードを使用して実験を重ねてきました。
 一方、点火コイルに対してもオレブルがリリースしたスーパーサンダーを修正したものを使っていました。この方が変化の体感は理解しよいと思います。けれ ども、「激変」などの感覚は味わえないものです。

 2006年の暮れより2007年春にかけて、トライアンフT-140Vの点火系をフルトランジスタ方式に変更し、整流充電回路まで電子化しましたので、 ACGを除いて、電気回りは今流のものになったと言っても過言ではありません。その結果、現在のオートバイと同等かそれ以上のものになっているほどの変化 をもたらせました。
 もちろん、T-120などの650では、こういった変化が起きづらいかもしれませんが、別項で記載しているとおり、効率の悪い750エンジンでは 相当にいい方向へ変化したのです。

 SR500ではどうなんだ?、ということになりますが、スーパーサンダーを装着した当時、それから元のコイルに戻して再びスーパーサンダーに変更したと き... 。これらの時は排気系が一定していなかった頃に行った結果から、何かが変わった、と言ったような感じを受けただけでした。
 2007年、春のBritish RunはSR500で出かけました。乾式クラッチの滑りが若干出ているコトを除いて快調でありました。点火プラグのBPR6ESが若干焼け気味、というこ とからノーマルプラグのBR7EVXに変更していました。
 写真でもおわかりのとおり、プラグコードはテイラーをダイレクトに点火コイルのスーパーサンダーに装着したものです。当然、吸排気系はノーマルに戻して います。



 出発して80km程度、どうもエンジンがパサつく感じがしてきました。加速などは指定である先端突出のBPR6ESよりは、はるかに快調なのですが、ど うも火は強 力だが大きいだけで消えるのも早いという余韻がない状態。次なる爆発までに間が生じるようなそんな感じがし始めたのです。
 そこで、持参した(使える状態の)点火プラグの中から、焼け方がスムースなスプリットファイアSF-426Cをチョイスしました。
 以後、快調の内に往復の路程をこなし、春のBritish Runを終えました。

 帰宅して、どうもエンジンの発熱が大きいのではないか、と思い始めました。確かにスーパーサンダーは強力な点火を約束してくれました。プラグキャップは ノーマルを使用するよう指定がありました。プラグキャップの抵抗値はそのままにしておいてくれ、ということでしょう。
 が、どうもエンジンに対して大きすぎるエネルギーが加わっているのではないか、と考えるようになったんです。

 少しだけ言い訳させてください。それは、「スーパーサンダーを使用す るときはノーマルのプラグキャップを使用してください。」を無視している使い方のため、点火コイルの特性を発揮していないのかもしれませんし、逆に発揮し すぎ ているのかもしれませんし、ノーマルのプラグキャップは10KΩ程度の抵抗が入っています。それゆえ、テイラーのプラグキャップでは電流がストレートにな ります。結果として、点火プラグが白っぽくなる可能性は否定できません。
 にもかかわらず、エンジン自体が何かおかしい... 、というところでのことです。

  話を変えて、T-140Vの点火コイルを変更した時はどうだったのか?。それまでにはボイヤーのトランジスタ点火に変更していましたが、性 能は良くなっ たものの、イマイチ納得がいかなかったのです。
 ボイヤーの取説の一文に2個封入のコイルがいい、と記載があったため、ボイヤーのものがリリースされていない頃でしたので、ダイナコイルの3Ωのものを 東京の ブリティッシュビートで選んでもらい普通のプラグコードで使用していましたが、同時点火ということから点火系、ことに点火プラグの状態が一定したことぐら いしか変化が感じられませんでした。

何かが足りないし、何かが違う。

 こういったことから、点火プラグまでのプラグコードに再び注目したのです。低容量でありながら、強力さは「ここぞ!」というときだけに出るもの。そう いったプラグコードを探していたのです。
 この頃、雑誌などに掲載されている記事や広告ではノロジーのホッとワイヤーを推奨していましたが、これでは効率の悪いエンジンの上に同時点火になったT -140Vでは、異常爆発もなきに しもあらず、と考えて止めにしました。

 2004年、コヴェントリーの清水さんに相談したのは丁度その頃でした。そこでのチョイスはスプリットファイアのツインコアでした。
 別項で記載しているとおりですが、結局このコードの特徴は想像以上に穏やかな部分もあるんだ。その上にストレートという、相反するものをこのコードが 持っていることを知るのは、2007年T-140Vの点火系を全て今流に一新した後で解ったことです。
 相当に解説めいた前書きになりましたが、私の場合、所有のSR500は1996年製造品をその年に購入して今に至っています。長年同じ車 (オートバイ)に乗っているため、エンジンがぱさつくなどの表現が出来るのでしょうけど、前述のとおり、一般ユーザーにはプラグコードを変えたぐらい で、即座に能書きどおりの感覚は得られない、というのが本当のところではないでしょうか。

 2007年4月30日、午後からは天候が悪くなる。昨日の判断からやはりツインコアだろう。その前に点火コイルをノーマルに戻そう。当然プラグも BPR6ESに、でしょうが、昨日までの(走り方の)感じを掴んでの変化ですから、点火プラグはSF-426Cのままとして、これらの換装を行いました。

取り付け1
 ツインコアの修正は次のように行います。
 まずは付属のアダプターを使用して、ノーマルのプラグコードとツインコアを接続する場合、ダイレクトに接続する場合、いずれもSR用としてはコードが長 いため、15〜20cm程度カットします。付属のアダプターを使用する場合はもう少しカットした方がいいかもしれません。
 もう一点、プラグキャップの形状違いから、従来のSR500(2J2)/400(2H6)のように、エンジン後部からコードを回すようにします。

取り付け2
 次のようにすると、ダイレクトでツインコアが点火コイルに接続できます。
 プラグコードの先端から18mm程度、外皮の青い外皮をカッターナイフを使用して剥きます。このときなるべくファイバーグラスのメッシュを切らないよう に注意してください。
 その後、熱収縮チューブでカバーするか、ビニールテープを巻いておけばいいと思います。この状態でコードが動かなくなるまでコイルにねじ込めば、きっち り装着で きます。カバーはツインコア付属のジョイントカバーを使用しています。

 純正どおりのコードの取り回し、以前のSRのように後ろからの取り回しであっても燃料タンクの底板と側板の合わせ目のエッジがかかります。念のため、接 触部分をスパイラルなどを巻いて保護することをお奨めします。

 

 いよいよ走行しますが、条件を先に提示をしておきます。
 最初は、春のBritish Runの後ですので、点火プラグはスプリットファイアのSF-426C、マフラーはノーマルの3GWです。その後、思わぬエポックメーキングなことがあっ て、マフラーをスパトラ+スーパーサウンドに変更したもので、様々な点火プラグでテストを行ってみます。
 したがって、1つの点火プラグで100km以上は走行しなければ結果が出ないのではないかと考えて、当初はレポートのみとし、最終で纏めることとして数 回に分けての記載になる、と思います。

2007年5月5日
 少しばかり滑りが気になる乾式クラッチではあったが、走ることとしました。始動から発進までは何ら変わりません。「エ〜ッ、何にも変わらないじゃん」

プラグコードを変えたぐらいで、大きな変化が 判ることなどない... 、といっておきながら、このザマです。(冷)

  確かに最初はそう感じましたね。ともかく、いつものテストコースを走らせます。
 10km程度走ったところでしょうか。妙にエンジンが落ち着いているんですね。不思議です。これまでのようにガッ!と来るようなこともありません。どち らかというと、落ち着きつつも「ソソルような」エンジンの回り方をするんです。
 今までですと、のろい四輪車がいると、ここからスピード上げて抜く... 。が、この気分を押さえるような感覚になるんです。ところが、タコメーター見ますと2200回転程度ですから... 、エッ!?、65km/h程度出てるじゃないですか。何だ、これは?。考えられることと背反する動きをSR500が行っているわけなんですね。

何とか過去のことを思い出してみようとしてい るのですがダメ。正に初めての経験を得たところです。

 最大の結果をもたらせたものは何だと思いますか?。意外と思われますが、SR500の場合は点火コイルでした。
 スーパーサンダーがディスコンになった理由として、製造元のオレブルが言ったのは「充填剤の硬化が均一な条件じゃないと効果が 発揮できないため、大量に製作することが出来な 」い、というものでした。



 しかし、3HT用までのスーパーサンダーは確かに別物に思われますが、後期用のスーパーサンダーの姿を見てみますと、私としてはノーマルの3GWの点火 コイルのコア部分(鉄芯)のみをループ化して増量したものとしか判断できません。その結果として火が強力になる、というものであろう、と想像しています。 DENSOの刻印はありますが、デンソーに発注したようにも思われません。
 ACGのピックアップ部分など、ACGそのものも変更がありますが、バッテリーをそれまでの1/2程度の大きさのMFバッテリーに変更する、とヤマハが 決 定したとき、点火コイルまで小さくしたのは、ヤマハの設計陣とデンソーの技術の賜ですから、この部分は変 更しなくてもいいのではないか、というのが今回解ったことです。





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