SRとタイヤ
 1972年当時、カワサキのZ2が猛烈な勢いでホンダのCB750を追いかけていた。潜在能力の高さはカワサキの方が一枚上だったが、その前のKA-1、いわゆるマッハスリーの時はタイヤが持たなかった。
 このときのタイヤはダンロップK-70、マッハスリーの時にK-77が開発され、という具合だった。が、まだ、タイヤが持たない。結局CB750のときにK-87が開発された。ところが、このタイヤでもCB-750には不向きだったのである。特に当時の超大物のCB750を免許(125ccで取得)した方から、セミレーシングタイプのように一般道で使う方々に対し、過不足無くフィットするタイヤは無かったのである。
 ところがZ2が出現したときに、K-87のニューモデルを履いていた。どこを見てもK-87だ。唯一違うのは接地面のサイドの「>」溝が「>>」になっている点であった。リム幅2.50だと、装備重量200kg以上のオートバイにはベストマッチになる。このタイヤを境に、ホンダをはじめ、ダンロップを使用し始めたが、CB-750もIII型辺りからBSとの関係が深まった。ヤマハのTX-750はヨコハマを履いたが、間もなくBSを経てダンロップへ戻ることになる。
 1976年にGX-750の出現したときタイヤはBS、フォークはショウワというように、ヤマハの主要パーツが大きく変わった。II型が出現するまでこの関連は続いたが、翌年(77年)XT-500が出たとき、ヤマハは迷わずBSをチョイスした。とにかくゴム質が硬く、交差点ではよく滑った。1978年、SRがリリースされたときはBSのマグ・モパス。この成りゆきはトラックレーサーをイメージしていたSRにはなかなかフィットしたタイヤだったが、とても乗れたものではなかった。
 プロローグが長くなったが、僕のSRは旧メッツェラーのインチサイズだった。それを履きつぶしてダンロップのGT-501に交換した。このタイヤも最初はよかった。信じられないほどの性能を... 、ところが、センター部分だけが異常に減るし、四角い断面になって減っていく。グリップは落ちないものの、いい感じでコーナーにはいるとサイドの減っていない部分が設置した瞬間、車体が起きあがる、という不思議な現象が起こり始めた。
 次期タイヤは何にするか?。候補に挙がったのはBSのBT-45だった。が、多くのオートバイに装着されているBSのタイヤを見ると、ササクレだって減っていくのがよく解る。ハーレーの883とか1200のスポーツスターは顕著だった。それがグリップ性能云々に結びつくとはいえ、減りは困る。純正のメッツェラーのメトリックサイズもなかなかいいようだ。思いも寄らないことはコヴェントリーの清水さんがトライアンフのレーサーに使っていたダンロップのTT-900GPが目に入ったときだった。「フロントに持って行く分が細いかな?」という面を払拭した。それにサーキットを走っているにも拘わらず、BSのような現象が起きていない。
 確かに高価ではあるが、なかなか行けるんではないか、と思ってこのタイヤに決定した。
 使用開始がとんでもないことから始まった。まずは、徳島での四国自動二輪交友会で鳴門への道。全くもって高性能のかけらも見せない。試しに、とそのままにしておいたラベルテープの糊の跡さえそのままになっている。501と明らかに異なるのは横へのスベリが少ないことにある。少し倒してコーナーを抜けるときも、多少のギャップは気にならない。501だとグルーブと路面の荒れがタイヤにフィットするまで確実にスッと横に流れる。
 が、これが普通に倒しているつもりなのだが、想像以上に深く倒し込んでいて、たまにステップから外へ出しているつま先に触れそうになる。先に記載したK-87 MK-IIを使用しているときなどと同じなのだ。極端にいうと、メッツェラーのME-77の4.00を1.85幅のリムに組み込んで使う時と大差ない程度なのだろうが、最近経験していないから新鮮な世界に感じただけ、とそのときは思っていた。
 そこから1月、まぁまぁの走行を行って、British Runに再び徳島までこのSRで参加した。室戸岬を前に一時的に雨になった。「嫌だな」と感じたものの、意外とも思える程の走りをする。これって何だろう?。極端な話、緩いコーナーで避けて通れないマンホールの蓋でも気にならない。
 帰路はもう有頂天だ。近くの歯長峠を通るような道を走ったが、これも大丈夫であった。価千金の高速道路を高知から須崎まで走ったが、すばらしいものであった。愛媛に入って日吉村からは何の不安も必要無い走りか方ができていた。
 言わしていただければ、腕が上がったような感じになってくるのである。
 装着後3000kmになるが、減りも想像以上に少ない。18インチでもう少し幅の広い最適なフロントがあれば... 、と感じはするが、90という細身でも不満足なものはない。SRにTT-900 GPはお奨めタイヤと結論付けていいようだ。

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