スー パートラップの排気システムを考える(4)
・・・ ディフューザーディスクの不思議と... ・・・

 私の持っているSR500とホワイトブロスのスーパートラップの項でも 記載しましたが、プロトがリリースしている「スーパーサウンド」の専用ディスクのテストを行ってみて、何気なく使用しているスーパートラップのディスクの 隠された秘密を少しばかり感じた次第です。

 現在、12°の角度で排気を放出する仕組みのアキシャルフロー方式の排気システムがスーパートラップ社よりリリースされているのはご存知のとおりで す。若干押し殺したような音質で、最終ディスクにはシールリングが装着され、一部はエンドキャップより後方へ排気される仕組みになっていることから、音量 も若干大きいことが報告されています。
 スーパーサウンドは、それに先立つこと数年前、メガホン内のインナーコアから見直した、独自のディスクシステムとともにリリースされた製品です。
 私は久々に出たSRのムック本でそのことを知ったところですが、発表はあったものの、一向にリリースされなかった頃を思い出します。
 今回、思いあまって、というか、遊び心の一つとして、プロトよりオープンのディスクとトライアングンルのディスクを購入し、WBに装着してどうなるか? をテストしたところです。
 そこから得られた結果から、再びエンドキャップのみスーパーサウンドにして、その結果から、元のスーパートラップのディスク構成に戻したことは前回申し 上げています。
 その状態で四国自動二輪交友会へ 出かけましたので、その往復走行に伴うエンジンフィーリングの結果と、これまでの私の経験とを合わせて、現状のWBに何かしら想像以上のものが働いている のではないか、ということを感じたため、その考察を 行って みたところです。

2005年3月19日(土)はれ、3月20日(日)雨後くもり
 前回の・・・ライディングスポット製のクワイエットコア+ディスク3枚+アクティブ製のクワイエットコア+ディスク3枚+スーパーサウンドのステンエン ド+ダミーディスク+オープンエンドキャップ・・・というディスク構成で四国自動二輪交友会へ出かけました。結果は満足でしたが、すこし、引っかかるとこ ろが出てきました。
 まずは、データから
  1. 2月末のテストから、ガソリンはエネオスのハイオクを往復とも使用しました。燃費は22〜23km/lというところです。
  2. 点火プラグはデンソーのW20EPR-Uを使用しました。
  3. その他、吸排気、点火系はこれまでのとおりです。
 19日の天候は「はれ」。外気温はこの時期にしては少し低い14℃、風が少しある、という状況でした。鬼北町日吉まではノンビリと60km/h程度で流 します。久々の快調SRを満喫できました。
 それ以後は、相棒と二人旅。相棒のカワサキ「エプシロン」と750cc三気筒のような気分ですが、相棒のヨシムラ製マフラーからすると私のWBが若干音 が大きいような気がします。
 目的地の桂浜荘まで、過不足無く、本当に快調に走行出来ました。

 翌20日は生憎の「くもり」。少々気温も低く、風も強い状況下ですが、土佐市でエネオスのハイオクを補給。須崎市を過ぎて津野町へ着く頃からポロポロと 雨粒が... 。
 道の駅を過ぎ、鬼北町日吉へさしかかるまではずっと雨中走行になりました。異変に気づいたのは檮原町を過ぎた辺りでした。この辺りから、一発ずつのエキ ゾーストノートが硬質なものに変化し、カサついた音になってきたのです。
 かといって、ロッカーアームからの嫌な音も出ませんし、機関は極めて快調なのですから、全く不思議です。オイルクーラーは前面をカバーリングしています ので、エンジンの発熱量が大きくなったのかもしれません。
 日吉から近永へ抜けるころ、雨が上がり始めました。すると、再び通常の機関に戻ってきました。
 正午近く、帰宅したところです。

 何かが変化している。その原因は何か?往路は別に変化がなかった... 。復路は雨で気温が10℃にも満たないのにどうしてこのような現象が起きるのだろうか?。こういった現象は、単に高地走行による気圧の変化に伴うもの か... ?。それにしては往路では起きなかった... 。

 確かに快調なんですが、「引っかかるもの」の原因究明に、しばしの時間が必要でしたが、まずは... 。

いきなり考察から始まる
 このレポートは技術レポートでも論文でもありません。一アマチュアが経験と実験を重ねた結果の報告だけですし、独りよがりの所もあります。
 また、こちらかと思えばまた、あちら... 、とアイディア次第では別方向に飛ぶ場合もあり得るわけです。そのことから、今回の実験で即座に得たことは、考察を始めたときからでした。

 スーパートラップのスタンダードディフューザーディスクの1枚1枚をよくご覧いただきたいのです。特に、新品のディスクと使い古したディスクと比べてい ただきたいと思います。
 およそ90mmの直径のステンレスディスクのエッジを45°の角度をつけて曲げてあって、加工精度の高い取り付けボルトの通り穴と受け及び、裏側に出 来るスリットホールドの足の加工、そして、ディスクの内部ホール周囲の加工からできあがっています。
 そうかと思うと、エッジも立っていますし、少しばかりソリなどの変形もある場合がある、というラフな一面も見せる製品です。
 そうなんです、いかにもアメリカ的というものです。▼の切欠の無い初期のディスクでは、一度組み付けを解くと、ボルトは使い物にならないほど山が潰れる ほど に、ディスク間のスリットを大切にしていたようなもので、一般ユーザーにとって、それは使い物にならないような一品でした。

 それだけでしょうか?。
 私は今回入手したスーパーサウンドのディスクを手にして、「アッ!」と声を出したものでした。
 スーパーサウンドの穴は、「洋食のお皿の、盛りつけ部分を少し残して開けられたもの」に対して、スーパートラップのディスクの穴の周囲は、「残された部 分を、表面側へ少しばかり湾曲させてある」ことが確認できるんです。
 そのために、クワイエットコアなどのディスク利用の加工品は、穴埋めの円盤の溶接などが一部難しいところが見受けられるところです。原因はこの部分でな い か、と考えます。
 この部分の意味するものが何か?。これは後ほど。

スーパーサウンドのディスクについて
 加工の精度はなかなかのものがあります。オープンタイプのものからの判断は次のとおりです。
 メガホン内部の複雑な形状のインナーコアを通して出てきた排気ガスのある程度は中央の穴の周囲にある縁でストップされますが、多くは後ろへ行きます。
 周囲にある縁でストップされたガスが戻ろうとする。次に来る排気ガスの勢いで、ディスク間のスリットから外へ出る。この繰り返しを行うのであろうことが 想像できます。
 したがって、ディスクが多くなれば、多くなるほど、効率よい排気が望めるということでしょう。逆に、枚数が少ないと、メガホンのマフラー部分の容量が大 きくなければ消音は望めないことになります。
 この状況はスーパートラップと同じです。

スーパートラップのディスクではどうか
 スーパーサウンドに比べてスーパートラップでは、穴の部分は、ほぼ一定ですから排気は後方へ大半が流れます。いつも出しますが、3枚がエキゾーストパ イプの内径に匹敵します。理論上、4枚にするとスーパートラップの効果が感じられるところです。
 ここでディスクの穴の縁にある湾曲部分が重要になってくるのではないでしょうか。スーパーサウンドでは単に排気ガスを遮ることに徹していたのですが、 スーパートラップのディスクでは次に来る排気ガスの勢いによって渦を作ることにより、ディスク間のスリットから排気ガスを外へ出しやすくする役目を担って いるのではないか、と考えるのです。
 この方式の逆がSRダンディさんの小細工論での3インチディスクをメガホン内部に装着した件。それに、オフィシャルがリリースしているスーパートラップ のディスクを使用したエアインテークシステムではないで しょ うか。

うすうす気づくこととは...
 スーパーサウンドのディスクをWBのスーパートラップのディスクに置き換えてみた結果は先に記載しているとおりです。この時はライディングスポット製の クワイエットコアを装着していました。
 確かに、スーパーサウンドはインナーコアの構造から始まって、エンドキャップまで、すべからくスーパートラップとは別物です。分かり切ったことです。
 しかしながら、WBに装着したとき、どうしてSR500でのスーパートラップの欠点のようなものが出てきたのか?。
 決してガスが薄いとかの状態ではないものの、アクセルオフにした際に、バスッバスッという内部爆発敵な症状が出てくることです。
 その欠点めいていることは、おそらくSR500特有のものだろうと考えるのですが、 行き着くところ、5000回転ほどにしてアクセルを戻した場合、一 瞬、「パ〜ン」という大きい音が出る、ということにつながる恐れもあります。
 が、これは巧妙に設計されたスーパーサウンドのトライアングルディスクによって出ては来ませんが、いずれにしても、バスッバスッという音は気になるとこ ろです。
 しかし、先の実験ではライディングスポット製のクワイエットコアが入っていましたが... !?。

 これまでWBを最初に装着したときから始まって、リモーションがリリースしたマフラーなどを使用し、こういったことを極力抑える方向で、あらゆる方法を 講じてきたところですし、そのことを小誌で紹介してきました。
 そして、ノーマルエキパイへの古い4インチのスリップオンマフラーを装着したときから、一つのヒントをつかんだような気がして、再びノーマルマフラーへ 変更。
 その後、点火系の考察を行って、これまたヒラメキのような感覚でクワイエットコアの二 連装という方法をテストして、ようやく解決が出来てきたところです。

第一段階でのスーパーサウンドとスーパートラップへの考え
 今回のスーパーサウンドのディスクを組み付けての結果から、過去のことを少しばかり思い起こしました。
 それは、ライディングスポット製のクワイエットコアをディスクの手前から切り取って、なおかつ、バッフルに穴を開けた実験の結果でした。あのとき、もし も、バッフルに扇形の穴を開けていなければ、どうなったであろうか?、ということでした。
 と、いいますのも、スーパーサウンドのトライアングルディスクは円形バッフルに正三角形の穴を開けたもの2枚を一組にし、1枚を60°回転させて穴を正 六角形にしたものです。排気の流速からすると、前のディスクの三角形の頂点でのおかしい流れは次のディスクのプレート部分で遮られる、という仕組みの繰り 返しで、排気ガス本体の流れる道の径を小さくする方法は、OKの範囲でしょう。
 でも、これは400ccなら、の世界です。500ccでは、そう簡単にことが運びません。詳しくは申しませんが、500ccは400に比べて、排気の固 まりが太いのが流れてくるのではないか、と考えました。
 しかも、トライアングルディスクも、通常のディスクの改造品ですから、インナーコアから出る丸い排気の固まりを三角形(を交互に並べる六角形)に変形さ せることは出来ない、とい う結果ではないか、と一応結論づけてみたところです。

 もう一点の気がかりは、スーパートラップのセンターホールのエッジにある湾曲の働きです。ほんの小さな湾曲ですが、意外や意外、ディスクには重要ファク ターが多いのですが、この湾曲こそがスパトラのディスクが持つ最大の重要ファクターではないか、と感じました。
 少し見づらいのですが、ディスコジェット時代に紹介された3インチのスーパートラップの内部断面です。
 先に申しましたように、この湾曲部分が働いているとしたら、私はスーパートラップがインナーコアから含めて、いかに排気の流れをストレートにしているの かが 予想できる点です。



 
 今後の検討課題として、ディスクの変更としては円形を基本とすべき、ということが感じられるところですが、決してスーパーサウンドのディスクそのものが 良くない、というこではないので、この点だけは誤解の無いようにお願いします。

スーパーサウンドから教えられたお勧め
 いきなり考察から逆の入り方をしましたが、スーパーサウンドのディスク構成から教えられた部分が多くありました。
 当初、WBにダミーディスクを取り付けた理由は、走行テストを重ねるうちに装着ディスクの枚数の増減があるかもしれない、としての行為でした。クワイ エットコアの二連装でのディスク構成にしたとき、ダミーディスクをはずしたことがありました。そう、性能的には変わらないはずだったのですが、何かしらお かしいのです。その「おかし い」の原因が判りかねていました。
 そんなとき、スーパーサウンドのステンエンドキャップに入っていた取扱説明書の注意書きの中に、

排気ガスがエンドシールドに直接当たると熱によりエンドシールドが変色 する場合があります。
必ず仕切りディスク「穴の開いていないディスク」をエンドシールドより前に使用して、排気ガスがエンドシールドに当たらないようにして下さい。

と記してあったのです。
 おまけに、ディスク取り付け図中にも「仕切ディスク」の後にオープンディスクが装着してあるではないですか!。これってどうして?

 このことと、スパトラのダミーディスクをはずしたときの状況を合わせてみての結果から想像できることは次のとおりです。

 それは「エンドキャップの後のディスクはリゾネーター的な役割」をしているのではないか?、というものでした。




 上の画像は稚拙なフリーハンドのイラストですが、私の考えをまとめたものです。

 これらのことから、リゾネーター機能の理由づけの最大のポイントとしては、走行中は、ディスクのスリットから出た排気ガスは風で流される、というところ にあります。
 イラストどおりとすると、排気ガスはエンドキャップに沿って渦を巻いて四方八方へ流れるのではないでしょうか。
 エンドキャップ以降にダミーのディスク を装着していると、流された排気ガスの一部はダミーディスクのスリットから内部へ吸収されるのではないか?、と考えるのです。いわゆるリゾネーターとして 働いているのではないか?、ということなんです。

 もちろん、フォーサイクルですから爆発・排気の次の動作で排気が流れない時間がありますし、走行することによる風の力は大きいものがあると思います。通 常装備のディスク1枚で排気効率が 大きく変わることはスパトラの使用者の方なら経験済みのはずです。

 風洞実験室でのテストも行っていないので、私の想像の域を出ないことに違いはありませんがませんが、ダミーディスクの影響も、いい意味では無視できない ように感じます。

 スーパーサウンドではその名のとおり、このダミーディスクがなければ、おそらく期待通りの音(エキゾーストノート)にはならなかったことと思います。

これからやってみたいこと
 以上のように、今回の実験で思わぬことを掴んだ気がします。最大の点は性能と排気音とのソコソコのバランスです。
 インナーコア部分で一気に排気を圧縮して再び拡散するライディングスポット製のクワイエットコアは使用率が高い、という理由でしょう。その代わり、音は 若干大きくなることと、ディスクを減らさなくてもOKとした設計であることは確実です。

 その点、アクティブ製のクワイエットコアはインナーコア内で最初から一気に押さえ込むタイプです。最初に使用した同製品の溶接が使用中にはずれ、クレー ムで新しいのを送ってもらいましたが、送られたものは溶接部分が相当強固になっていたため、音は静かになるものの、装着後は排気熱と排圧と振動が相 当なもの であることが解ります。
 これらを含めて、どうしても大きくなる排気音への対処として、クワイエットコアとは別に、円形を基本としたインナーコア後の排気コントロールディスクの ような追加物が必要になってくるのではないか、ということなのですが... 。

 まずは、クワイエットコア2連装のスーアパートラップのディスク構成で、WBで良い結果が出せたため、スーパーサウンドのディスクの検証を十分に行って みよう。それからスパトラに戻すもヨシ、ということですので、スーパーサウンドのディスクそのものについて、WBとの相性などをテストしてみることにしま した。



inserted by FC2 system