ホ ワイトブロスのスーパートラップ排気システムを考える(5)
・・・スーパーサウンドのディスクは移植可能か?・・・

 前回では、WBの続きとその上のことを少しばかり申し上げました。その一件は、ほぼ確定していたことと信じ切っていたところです。
 が、そうではなかった... 。現実としてSR500は改造スーパートラップを装着してとてつもないパフォーマンスを示して高知の往復を支えてくれました。
 帰路は雨中走行になったにもかかわらず、エンジン特性、ことに排気系列に関して、問題は皆無であったことは報告のとおりです。
 排気音の大きくなった点など、若干の変化は感じられました。このことが、どうも気になって仕方がないため、再びスーパーサウンドのディスクを検証するこ とにしました。

一度分解してみる
 このような改造WBが、ほぼ完調に近い状況ではあったことにもかかわらず、大きなものを忘れてしまっていたことに気づかなかったことなんです。それは何 か?
 スーパーサウンドの応急的なテストと、そのフィーリングからの考察は前回までに報告しました。こればかりは、スーパーサウンドのシステムそのものを想定 しての、本当に応急的なテストでした。四国自動二輪交友会から帰って来た日、丸穂温泉の湯船に体を浮かせて、帰路の雨中走行の時を思い出してみました。
 そこで得られたのは気温が6℃にもかかわらず、オイル粘度が低下したような... 、かと言って、ロッカー周りからの異音も感じられない。走行後20分も過ぎるとエキゾーストには素手でさわれる。
 これらのことから、決して吸排気システムが悪いというものではない。しからば何?、と考えを巡らせていたところです。

 翌21日の朝、ディスクを外してみますと、かなり良好な焼け方になっています。インナーコアのセラミックウールが不均一になっているためか、若干排気の 流れが異なっていますが、ほぼ満足のいく結果になっていました。
 どうも、排気の圧が大きく、流速も速いのではないか?、と感じました。それでは... ?、というときになって、何か方法が違っているのではないか、と迷路へ再び入り込もうとした矢先、「ライディングスポット製のクワイエットコアを装着し て... 」をすっかり忘れていたことに気づいたのです。
 スーパーサウンドのシステムとしてWBに置き換えるとどうなるか?が、あの時の実験でした。多くの結果を得ましたが、再びクワイエットコアの二連装によ るスパトラのディスクに戻しました。
 ディスクの考察もある程度まとまりましたから、今回はスーパーサウンドのディスクがWBにフィットするかどうかのテストに限ればいいわけですから、テス トパターンは数種になるのではないでしょうか。
 けれども、T-140Vのミクニキャブのように、闇雲にいじくると本当に迷路に入り込むことになりますから、リファレンスは「クワイエットコアの二連装 によるスパトラのディスク構成」と「SR500用フルエキ・メガホンタイプのスーパーサウンドのディスク構成」としました。

テスト1(ダイレクトにスーパーサウンド)
 では、何か?。確認方法は簡単なこと。スーパーサウンドを直接WBに装着してみることにします。エンドキャップはプロトのカタログではステンを使用して いますが、あえて、アルミのエンドキャップで行ってみることにしました。
 結果は、すばらしいものでした。まさしくマイルドでいてパワーの落ち込みも少ない満足のいくものでした。これなら、軽量化も含めて、ステンのエンド キャップでもOKではないか?、とステンのキャップに交換したところ、これがダメなんです。バスッという音がアクセルオフにともない出始めるのです。
 まさか、エンジンが熱くなると起きる現象か?とも思いましたが、ディスク交換の間は、ほぼ同じ時間(およそ20分)をおいて交換していますから、影響は そうも出ていないはずです。

テスト2(机上のテスト)
 最初に装着したときのこと、これを仮にテスト0としましょう。
 テスト0ではスーパーサウンドのインナーコアの効率を考えて、ライディングスポット製のクワイエットコアを挿入していました。
 トライアングルディスク5枚が有効作動枚数ですから、スパトラの4枚以上に合致する、として、ライディングスポット製のクワイエットコアにスーパーシー ルドを装着して、必要ディスク枚数からは除外しての構成でした。
 この時のフィーリングとテスト1のフィーリングでは、明らかにテスト2の結果の方が好ましいものでした。またしても疑問が生じます。
 もしかして、ライディングスポット製のクワイエットコア、アクティブ製のクワイエットコアについて、再び考えをまとめてみなければならない、とまとめま した。

再びクワイエットコアの比較
ライディングスポット製
 インナーコアに入るパイプは直系25mm程度で、長さは100mm程度、先端部のみ内部に2cm程度の長さで∪∩の鼓状の断面になった仕切りが設けてあ るため、この部分で一気に排気を押さえ、押さえられた排気は比較的広い内径のパイプを通ってディスクに導かれる、ということになります。
 的を押さえたなかなかのもので、オフロードでの使用率が高いことも理解できます。おそらく、「クワイエットコア使用時の規定ディスク枚数4枚」の定則を 無視し、ディスク枚数を減すことなく、騒音レベルを下げるために使用するため、というのが狙いではないか、と想像できます。

ラ イディングスポット製  インナーコアに入るパイプは直系30mm程度で、長さは100mm程 度、先端部のみ内部に2cm程度の長さで∪∩の鼓状の断面になった仕切り(ニップル)が設けてあ るため、この部分で一気に排気を押さえ、押さえられた排気は比較的広い内径のパイプを通ってディスクに導かれる、ということになります。
 的を押さえたなかなかのもので、オフロードでの使用率が高いことも理解できます。おそらく、「クワイエットコア使用時の規定ディスク枚数4枚」の定則を 無視し、ディスク枚数を減すことなく、騒音レベルを下げるために使用するため、というのが狙いではないか、と想像できます。
アクティブ製  アクティブ製は少し肉厚(1.75mm)で、内径が20mm程度のス テンの パイプ70mm程度をディスク改造のバッフルへ溶接したものです。初期の製品よりは 丈夫になっています。
 アクティブ製では、一気に排気を押し殺してそのままの状況でディスクに導く、という方法です。このことから、クワイエットコアを使用する場合は「ディス クは4枚以内に収めよ」が、アクティブ製には当てはまるところです。

 急激に排気ガスを押さえ込み排出は抵抗無く... 、というライディングスポット製のクワイエットコアは、比較的エンジン回転数を上げる中排気量のオフロード車には、まさしく好適であろうことは想像できま す
再び、これまでに紹介したクワイエットコアを下記に示します。左がアクティブ製で右がラ イディングスポット製です。

    

項     目
アクティブ製
ライディング・スポット製
 パイプの長さ  73.0 mm  100.0 mm(ニップル部分 20mm)
 パイプの外径  22.0 mm  32 mm
 パイプの内径  18.5 mm  30 mm(ニップル部分18mm)
 パイプの肉厚  1.75 mm  2 mm
 その他  ストレートパイプ  パイプの先端内側に臼型のニップル装備

 以上のことから、ライディングスポット製のクワイエットコアでは、スーパートラップの通常の枚数を変化させない場合で使うと良い、ということが導き出さ れるのではな いでしょうか。
 それに対して、アクティブ製は本来のクワイエットコアの条件を満たしている、とすべきでしょう。
 すると、テスト0ではバスッバスッという音が出るのは当たり前、と いうことでしょう。ダイレクトにスーパーサウンドのディスクを装着した場合は、トライ アングルのディスクで調節しますから、ディスク直前までの排気の流れ、速度などが変化されない。そのためにバスッバスッという音も比較的出なかったのでは ないか、とまとめてみました。
 もっとも、本体がWBということから、完全にそうとは言えない結論ではありますが... 。

テスト3(アクティブ製クワイエットコアで)
 それなら、アクティブ製のクワイエットコアを挿入して、スーパーサウンドのディスクを装備したどうなるか?。ここに行き着きました。
 再度プロトへ電話をして、ディスクの枚数と構成を問い合わせをしました。決算期にもかかわらず丁寧な応対に好感が持てます。前回と違って、スリップオ ン、フルエキで構成が異なる、との回答を得ましたので、スーパーサウンド・フルエキのメガホンの構成で返答を求めました。
 そのディスク構成はメガホンエンドからトライアングルディスク5枚+仕切りディスク+オープンディスク6枚の構成でした。
 ついでですから、エンドキャップはどの種類でも変化はないか?と問うてみたところ、変化はないとの返答を得ました。
 しかし、ステンエンドでは少々マズイ結果を得ていますから、テスト1で結果が良かったとおり、ステンエンドの上に、アルミのエンドキャップを用いること としました。ステンのエンドキャップにもエッジが立っているのですが、若干フィットしズラいので、この場合はスーパーシールを用います。



テスト走行インプレッション
 おそるおそるの組み付けです。ものの20分で終了です。ディスク構成は上の写真のとおりです。取り付けボルトはスーパートラップのものを 使用しました。どうもハイテンプグリスの調子がイマイチですので、これまでと同様にモリブデングリスを主として、取り付け部分のみハイテンプグリスを使用 します。
 結果は... ?。
 想像したよりも下回るものでした。たしかに、スーっと回転が上がることには違いないのですが、何ともヌケが悪く、ノーマルのマフラーより悪い感じになっ てきます。クワイエットコアでこれだけ違うのか!?。これには改めてビックリしました。
 テスト走行のコースには少し急な下りがあります。4速でエンブレを効かしながら下るのですが、バスッという音は出ません。むしろよどみのない回転に好感 が持てます。この状態がいいものかどうか、再び検証と対策の一件が浮上してくるのです。
 引っかかりの何かが解ったような... 、そんな感じでテストを終えました。


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