ホワイトブロスのスーパートラップ排気システムについて(1)
・・・
見直しと小細工 ・・・
2005
年2月6日(日)最初から...
私の持っているホワイトブロスのスーパートラップ(以下WB)は、結構後期のモデルです。エキパイはストレートで、ノーマルエキパイに溶接されているフ
レームへの取り付け部分もございません。当然、初期モデルのようにマフラーエンドが上を向くものでもありません。
エキパイ取り付けのフランジ部分と、マフラーのメガホンをリアステップとともにフレームへ共締めする部分の2か所のみでホールドするタイプで
す。そのため、メガホン部分の取り付けは左右2〜3mm幅で修正が出来るように、取り付け部分の穴が楕円になっています。
今回は、最初に戻って取り付け、ということから、エキパイとメガホン部分のつなぎ目から一度外して組み付けを行うこととしました。
当初排気漏れを予想してシリコンの液体パッキンを取り付け部分に使用したため、若干外しづらいものがありました。作業は決してラフに扱わないように注意
しま
す。
- 大半のスーパートラップは、メガホンの下側が溶接部分になっています。エキパイとの接合部分に若干隙間が出来ていますので、ここへWD-40
を吹き付けて、しば
らく放置します。
- 次にスリット部分の端にマイナスドライバーをあてがって、ハンマーで軽く叩き、エッジを少し立てます。ここへWD-40を吹きつけておきま
す。
- 段ボール箱を広げたのを用意して、エキパイのフランジ部分を上になるようにメガホン部分を置き、メガホンにあるフレームとの取り付けステー部
分を足
で踏んづけて、その方向と逆に(通常は右へ)エキパイをひねって動けばシメタものです。
- 次はエキパイを掴み、本体を立てて、フレームとの取り付け部分のコの字になったところをプラスチックハンマーで軽く数回叩けばメガホン部分が
抜け落ちます。
もしWD-40を吹き付けて赤サビが流れ出てくるようでしたら、この作業
を少しずつ行わなければ、エキパイが熱で痩せてしまっているので、エキパイかメガホンのつなぎ目がねじれてシワを掴むかもしれません。注意が必要です。
今回はWBを取り付ける前にディフューザーディスク(以下ディスク)を先に取り付けておくこととします。
ディフューザーディスクについて
一般タイプのディスクの枚数は400ccは6枚、500ccは8枚が規定されていることと思います。
エキパイの内径に対しては3枚が相当する、といわれ
ていますか
ら、最低でも4枚以上装着しなければ、スパトラの効果は発揮できない、ということだろうと思います。
ただし、ディスクが多ければパフォーマンスは上がるものの、吸排気系のバランスが崩れますし、音がうるさくなるのは事実です。この兼ね合いから、私はい
つも
ディスク枚数に悩んできたところです。
8枚というとかなりの音量になるはずですが、そうでもないんです。うるさいと感じるのは2500〜3000回転で後輪にロードがかかったときで、ここか
ら上の回転域は
連続音となり、かえって静かですし、ここから下はごく普通の音量であろうと思います。
いずれにしても、WBの説明書には、「ポン付けで確実にパワーが上がる」と記載されています。「これはウソだ」とするのは本当でもあるし、文字どおりウ
ソでもあり
ます。ここの処置なり考え方が私としての過去の失敗点でもあってWBをあきらめていた、という次第です。
ところが、今回はスーパーサンダーへの小細工からノーマルのマフラーで、なかなか良い経験をした手前、吸排気関係は大胆に行ってもいいのではないか。つ
まりWBで
あっても「ポン付けでパフォーマンスが得られなければウソ」であって、インナーコアから改造している私のWBは一層簡単にパフォーマンスを得ることが達成
できるかもしれない、と決め
つけて、結構いい気分で事に当たろうと決めたところでした。
前日の2005年2月5日(土)のこと
WBを眺めたおします。なかなかイイつくりの排気システムです。このWBだけ数本使ってきた、という猛者のSR乗りの気持ちが分かるような気がします。
取り付けフランジ部分から段をつくってメガホン部分へストレートに入るエキパイの造形。その間、エキパイの内径は決して変わらない、というかなり手の込
ん
だ作りもまた然りです。
確かに、ホワイトブロスではこのシステムをそのまま装着すれば、必ず効果が現れる!、と言っています。取扱説明書には前後ホイール、リアディスクの
SR500がウイリーして走っている写真が掲載されていることと思います。文章の最後の方に「これ以上を望むのなら、キャブレターを交換したり...
」と記載されているのは言うまでもありません。
しかし、最初の一文を信じてやっても、私としては失敗ばかり。どうしたことだったのか?。スーパーサンダーへの小細工から、この理由がようやく解り始め
たのです。
本体のSR500は?
SR500のBST34とMF
バッテリー付のモデルは本当に非力です。
すでに多くの方がご存知と思いますが、500ccと400ccとではエキパイの内径が異なる、というのはお解りのことでしょう。それに加えて、実は長さ
も微妙に
400ccの方が長いのです。
シリンダーヘッドも完全に違います。それに伴い、500ccは400ccと比べてインマニの長さが長く、吸入角度も右に少しそれていることを発見しまし
た。こ
れらのことから、BST34のキャブレター内部のノズルが異なるのでしょう。
また、シリンダーヘッドとインマニの関係から、わずかながら、右のシートチューブにキャブレターのトップカバー部分が接触します。
エンジン内部となると、クランクはSR400に比べてSR500の方が軽くなってます。かといって、ストロークの短いSR400の方がSR500に比べ
て圧縮比が高いのです。SR500のエキパイも短いことから高速型ということにはならない... 。
これらのことを考えると、おかしな
感覚になってきます。
したがって、現行のSR用のスリップオンタイプのマフラーがSR400をベースに
して作られているとすれば、SR500には完全に取り付けできない場合
も出て
くるわけです。
ズバリ言うわよ!、の細木先生ではではありませんが、これらのことから、どうやら「ミ
クニBST34のキャブレターを装着し、MFバッテリーを装備したSR500ではWBのポン付
けでパフォーマンスは上がらない」ということなのです。私も言いたくはありませんが、今回のスーパーサンダーへの小細工からの結果がそれを
物語っていまし
た。
あくまで「おそらく」の世界を抜け出せませんが、外部にコアを抱いた点火コイルと、大きくて普通のバッテリーを装備したSR500が、WBをポン付け出
来る最終モデルではないか、ということになります。
MFバッテリーを搭載したSR500は本当に非力です。500ccモデルとして各部の詰めを行わず、あくまでSR400をリファレンスとしての
SR500の位置づけ、そして共存をねらうわけですから、これ以上は言わなくても理解できることと思います。
それゆえ、オーナーさんの方で「スパトラの性能はもっと高いんだ」とする思い入れとも追求とも取れる考え方を実現しようとするため、BSTのキャブレ
ターを触ったり、吸
入側をオープンにしたりするのでしょう。
ご多分に漏れず、私もそうやって散々悩んだ挙げ句、WBをあきらめたところです。
このことに気づかれた方々は、FCRなどの高性能キャブレターに交換すると、ウソのように、一気に性能がアップする!、などの結果を得られることになる
のだろうと思います。
そこから再び排気関係へ進まれていい結果を出されている方も多くいらっしゃるのも事実です。
これらのことから、強いて言うとVWキャブを用い、フロントがドラムブレーキに
なったモデルまでがWBをポン付けできるSR500ではなかったのか、とある程度の目安が生まれてきました。
しかし、もはや、私のバックステップ付モデルのSR500でも過去のものです。今更古いモデルへ買い換えなども出来ません。したがって、私の'96モデ
ルでWBをポン付け出来るようにするためにやってきた数々の行為の中で、唯一確実なものがインナーコアの改造です。これによって、ずいぶんと特性が押さえ
られましたし、その後装着した古いエンドキャップの4インチスリップオンでの結果も参考にしていいものです。
私のWBは、ある程度メガホン部分で排気を押さえています。それをライディングスポット製のクワイエットコアで押さえてディスク4枚を経て排気、という
装着方法ですが、これでも結果は少々芳しくない。
二つのことが最近になって理解できるようになりました。
一つは、「SRダンディ」(http://homepage2.nifty.com/moonfish/)
での小細工論によるVPSSへの加工報告です。ダンディことT氏が行ったことは、インナーコアを改造することによるマフラー内の排気の流れをスパイラル化
し、
スパトラのディスクを逆に取り付けての整流化、マフラーエンドから後のスパトラ化
がもたらす排気効率のアップをねらった結果の賜です。
私は、この小細工論のモドキをノーマルマフラーに3インチのディスクでやろうとしたのですが、工具と加工にお金がかかり断念していま
す。
T氏の小細工論による加工で、マフラーエンド以降はWBででも実施可能だし、すでに日本仕様のインナーコアに近づけてある私のWBですから、クワイエッ
トコアを2つ
程度使用すれば、それなりに近づくのではないか、と考えました。
もう一点は、最近になってオレブル(http://www.omc-1981.co.jp/)
からリリースされたスパトラのディスク部分を外して、スペシャルのエンドキャップを装着する方法です。このリプレースエンドキャップに付いているマフラー
内部に入る消音器部分に目
が行きました。
つまり、クワイエットコアを段階的に追加すれば、ある程度この方法に似た結果が得られるのではないか、ということが朧気ながら理解できるようになってき
たのです。
しからば、その方法はどうするか?、ということになってきますが、以前に、ねずみ算まで引き合いにして、ディスクとスリットの数を考えてみたところで
す。今回の実験で、こ
こに一つの間違いが存在していたことに気づいたのです。
再び元に戻って2月6日(日)午後...
まず、クワイエットコアですが、純正物とアキシャルフローへのキャタライザータイプ以外は、いずれもディスクへの追加加工を施した改造品です、したがっ
て、ディスク間のスリットを無視することが出来ない。このことはクワイエットコアと
いえども1枚のディスクと考えるのが正しいのではないか、という結論で
す。
したがって、まずライディングスポット製のクワイエットコアの後ろにディスクを2
枚入れます。その後にアクティヴ製のクワイエットコアを入れ、ディスク2枚を追加。プレートタイプのエンド(これとてもディスクの改造品)を入れ、走行結
果によって変更有
りの場合
のためにダミーのディスクを4枚入れて、オープンエンドキャップを装着しました。
WBのSRへの取り付けも慎重を喫しました。
- メガホン部分へ、リアステップと共締めのサポート板を取り付けておきます。この場合は、フランジナットが使われていますから、14mmのアタ
マのボルト
を締め込むだけで
取り付けが確実に出来ます。そのため、ここでの取り付けは、指で締め付ける程度まで、としておきます。
- エキパイにトルクバルブを入れてシリンダーに装着します。ヘキサゴンのインナータイプナットはエキパイのフランジ部分が動かない程度に指で締
めておきま
す。(耐熱グリスとか、モリブデングリスをお忘れ無く)
- メガホン部分のエキパイとの接合部分にWD-40を吹き付けてエキパイに挿入します。エキパイを左右に振って、リアブレーキペダルのアーム部
分が当たらない適当な位
置をホールドして、リアステップとともにSRへ取り付け、エキパイをシリ
ンダーヘッドに取り付けます。
- 手締めしていたメガホン部分の取り付けボルトを14mmの短いメガネレンチを使用して取り付けます。両口スパナでは締め付け方向が一定しない
ためメガネ
レンチが必要です。
- この時点でWBの取り付けが一定化しますから、リアステップの取り付けボルトを締め付け、エキパイのフランジ部分を締め付けます。
- 最後にエキパイとメガホン部分をクランプバンドで一体化します。
これで完全に装着できるはずです。
午後3時、いよいよテスト走行開始です。
エンジン始動!。アッと叫びました。通常なら異常なほどアイドリングが低い回転になってしまうのですが、これがありません。本当に、ごく普段どおりにエ
ンジンが回りました。
30秒ずつ2段階でチョークを戻しても、ノーマルマフラーの時と大差がありません。数分の暖気の後、エンジンをプレップすると回転がついて来るではあり
ませんか。アクセルを戻してもパパッという
音も出ません。これは... 。
一気に期待が高まってきます。はやる気分を押さえ、一度エンジンを止めて身支度を調えます。
再びエンジン始動。やおらスタート。最初の信号待ちから1速で3000程度引っ張りアクセルを戻して2速へ。オ〜!、何だこれは?。真面目に興奮してい
ます。何しろ
SR400になったような感じなのですから。
歩道を歩く若者の視線が熱い。そりゃそうでしょうよ、コミネの赤いウインドブレーカーに黒のスラックス。キュルキュルと鳴る乾式クラッチの音にエキパイ
が
紫になったWB。しかも排気音が静かと来れば、自ずと注目を集めるものです。
市外へ出る最初の大きい右カーブも難なくこなします。国道56号線から県道へ入り、務田の坂への光満(みつま)街道を淡々と走ります。心なしかエンジン
の温もりが
ノーマルマフラーの時より穏やかです。
務田への坂では4速の守備範囲が一層広くなり、四輪車の隊列を先にやって単独になったとき、登り坂を5速でロードがかかった状態で走行しても排気音がう
るさくあ
り
ません。
務田の坂を下りて、三間街道をまっしぐら。60〜70km/h程度で流しても全く破綻がありません。直線で90km/h程度に引っ張っても何ら問題があ
りませんし、120kmの方向へ針が進んでいくため、慌ててアクセルを戻す状況になります。
それよりも、ノーマルのマフラーの時と比べて、各速度域での回転が低いことに喜びを感じます。
本当に、普通の状態からパフォーマンスが上がったな、と感じる程度の走り方です。いよいよ、最終確認の須賀川ダムの下りを迎えます。
カンリンの重量フライホイールを装着しているにもかかわらず、エンブレが大きく効きません。多少のバッバッという音を伴うものの、本当にこれでいいのか
な、という走り方です。下りのコーナーへ入っても、タイヤの性
能に全てを任せ、体を曲がる方向へ倒
すだけで事足ります。
もちろんコージーシートが影響していることも確かですが、車体の左右のバランスが良くなっているのが確認できます。これ以上倒すとヤ
バイ、としたときに膝を開けばいい、という、私好みのニーグリップを効かせたリーンウィズの古いライディングスタイルで走ることが出来るようになりまし
た。
そして新たなチャレンジへ
全くすっきりした気分で帰ってきました。昨日と同じように、丸穂温泉へ行って、ゲルマンで祝杯を上げました。
キャブレターはノーマルセッティングのままです。WBのメガホン内部へグラスウールを充填して得られたこと、旧エンドキャップのスリップオンスパトラで
の結果、そして今回の二つの事例から得られたことなどを参考に、マフラーエンド以後も段階的に排気を流すことによって得られた結果には満足していま
す。
が、結果からすると、大成功とまではいきません。
このままのセッティングで、次はスパトラのもう一つの良い点である排気からのカーボンコレクトを行うためにステンドームのエンドを装着することにしたい
と思いま
す。そのためにはスペーサーが確実に必要ですから、若干ディスクの枚数を変更する場合が生じてきます。
これらは直ちに実験が出来ますが、一定の調子を確認するまでには、しばらく時間が必要です。
というところで、再び快調さを取り戻した私のSRですが、しばらくはこのままで乗ってみたいと思います。