SRの点火コイルを再び見直す
・・・ スーパーサンダーへの小細工 ・・・

思 いから...
 ノーマルマフラーで一定の成果を上げたことは先に申し上げたところで す。2004年末は比較的暖かく、気にもならなかったのですが、2005年1月中旬はかなりの寒さを感じました。コージーシートに交換し、ハンドルバーを とっかえひっかえして、ごく自然のうちに、購入時に近いSR500戻ったところです。
 ところが、全てが基本に戻ったような状況の下、おかしいことが一つ全面に出始めました。最初は何か判らなかったのです。
 と言いますのも、素晴らしく乗り良くなったSRなんですが、エンジンが暖まった頃から、何というか、エンジンの回り方が快調にもかかわらずパサパサして いることに気付いたのです。
 webサイトのここで、このような文章表現するのは難しいのですけれど、火花の出方がバチッ・バチッ・バチッと出ているようでならないんです。1速で 4000回転ほど回したりしてもバチバチバチバチ... 、と感じ取れるんです。
 通常ですと、私が感じるのはバッ・ バッ・バッと来て、回転上げるとババババババ〜、っとなるはず なんです。当然、私のSRの場合はオレブルがリリースし ていたスーパーサンダーなる点火コイルを装着してあり、点火プラグを BPR7ESに交換しています。
 もう1台のトライアンフT-140Vにはダイナコイルが装着されていますが、やはり、バッ・バッ・バッと来て、ババババババ〜、っとなるんで すね。

点火コイルのこと
 ここで、少し思い出してみると、単純に見て、スーパーサンダーはノーマルのコア(鉄芯)の外側にU字状にコアを増やしたものとして間違いないようです。
 1997年当時、オレブルへ発注したのはいいのですが、一向に音沙汰がない。問い合わせをすると、内部パーツをケースに入れ、樹脂で固めて完成なのせす が、天候 不順で、樹脂の固着が安定しないため「しばらくお待ちください」という返答がありました。
 私も、オーディオ関係で特注して作ってもらったアウトプットトランスなどは、トランスをケースに入れて、樹脂蝋を流し込んで固める方法を採っているのと ころです。
 樹脂蠟の量が不足すると、慌ててケース から呪詛蠟を溶かした容器に戻して、樹脂 蝋のビーズを追加し、溶かしたものを再びケースに入れる、ということがあったので、一定量の数をこなしてコイルを製品化するとなると、それも有りかな?、 と思っていました。
 数か月後、すでに夏を迎えようとしていた頃、ようやく届きました。コイル表面のステッカーの有る無しに関わらず、その製品は当初の製品はどこか違うよう に感じま した。
 このスーパーサンダーもしばらくするとディスコンとなってしまう始末。この辺りから、オレブルのオリジナル製品は、2年ほどの継続生産物でなければ手を 出さない、という私流の基本 が出来上がったようです。

 ダイナコイルの場合は特殊な設計がしてあって、プラス・マイナスどちらに接続してもOKというものです。SRとトライアンフとでは比較になりませんが、 トライアンフにルーカス社製のノーマルコイルと比べるのはいかが か、と思いますが、ダイナコイルでは強力な火が出ているにもかかわらず、乗車フィーリングが前述のようにグゥ〜ッと来る感じなんです。
 ところが、SRに装着しているスーパーサンダーはそうならな い。強い火が出ているにもかかわらず、どうも違う。それが何かが分からないままで過ぎたのです。
 もちろん、トライアンフとはエンジンの形式をはじめ、点火システムも違います。が、1つ前のモデルのSRと私の持っているSRとではバッテリーが違うこ とをはじ め、ACG、点火 コイルも違っています。
 が、吸気・排気は同じなんです。となると、適切な混合気を吸ってエンジンの四行程を経て排気されるのは同じなんです。じゃ電気的に爆発をさせる方法が1 つ前モデルのSRと私の持っている SRとでは、私の持っている年代のは一層強力に燃やそうとしているのではないか?、と思ったのです。
 すると、ノーマルの小っこいコイルはかなりの高性能コイルではないか?、という疑問とも何とも言えないものが持ち上がってきたのです。

ノーマルの点火コイルにて
 となれば、即座に交換です。ノーマルコイルにノーマルのプラグキャップとハイテンションコード。プラグはBPR6ESに戻してやってみることとしまし た。
 乗り出した途端に「アッ」と感じましたね。
 これはダメです。と同時に、これがヤマハ流の押さえ込んで、なおかつ完全燃焼を目指した(MFバッテリー+センターコアのコイルの)SRの作り方なんだ ろう、と感じたところです。
 ここから一般の方 々は、マフラーを換えちゃうんですよね。そして、吸入側を変更... 、っていう泥沼に入り込んでしまう。事実、私も「Sick'n SRを何とかする」と題して数々の実験を行って報告してきたところです。
 この「ダメ」と判断するところは全体に穏やかなんです。400なら許される穏やかさも500ではギクシャクしたものになってしまいます。
 まず、手始めはハイテンションコードをテイラーに交換することから始めました。過去、抵抗入りのプラグキャップを使用していますから、ここはテイラー純 正のコードとプラグキャップを使用します。点火プラグの頭は四輪自動車と同じようにアダプターを装着します。点火プラグもデンソーのW20EPR-Uに交 換しました。熱価としてはNGKのBPR6ESと同等です。
 結果からすると、振動も少ないし、点火コイルの性能をピークに近いところまで引き上げることが出来る、という感じでした。なかなかいい状況ですし、この 組み合わせで十分いいものになった、と感じたところです。

スーパーサンダーがネ〜
 というところで、ことは終わるか、と思われたのですが、どうも「スーパーサンダー」がもったいない、と感じはじめました。”コアのボリウムが増えるとイ ンダクタンスが上がるのだから、コイル自体は強力なものになる”のは事実です。ところが、スーパーサンダーではどうもその方向へ行かない。 そのため に、ノーマルのコイルで、少しでも電気の流れを良くしようとして、テイラーのコードに交換したところです。
 スーパーサンダーの性能をごく普通に発揮できる方法はないか?。これまでのことの繰り返しをやってしまうと元の木阿弥になってしまう可能性が十分にある こ とは解っています。
 何か秘密というか、欠点があるのではないか、ということが少しだけ解ってきました。

オーディオのトランスから
 ここで、先に出したトランスのことですけれど、専門的になって申し訳ないのですが、真空管アンプを触っている関係から、このことは「コイルが発する二時 電圧(電 流)=点火プラグから発する火花が強力になるはず、ということが理解できる... 」となるはずですが、そうはならない、という、こういった諸々のことが単純に解決できないでいるところに的を絞ることとしました。
 で、もう一度スーパーサンダーをよーっく見てみると、追加のU字型のコアはコイル 本体を貫通するセンターコアと外側2枚のコアプレートでカシメて結ばれ ていることが 判ります。
 このことはトランスのコアなどで言われるEIコアのようにE型のコアとI型のコアが組み合わさった状況ではなく、「単純にコアを増やしました。増や したコアはセンターコアを外側から包み込んでいますから、事実上はセンターコアと合体しています」になっているし、導通も確実に存在するのです。が、増 やされた部分は元のセンターコアと端の部分が外側の2枚でカシメられて一体化されているだけで、その他のコアは単に元のセンターコアに線接触しているだけなのです。
 コアが増えた分コイルが強力になった、ということが、実際に作動している状態でもそのようになっているだろうか?。素朴な問題がここに存在するんです ね。

 1988年、LUXのOYシリーズのトランスを使用して、真空管 EL34のプッシュプルアンプを作りました。回路は上杉研究所の上杉佳郎先生のものです。組み立て前、パワートランスがどんなになってるのかな?、とパ ワートランスの9F220のコアシールドベルト引っ張り出そうとして切ってしまったんです。
 性能上は問題がないのですが、どうしても気になるとこ ろから、市内のモーター整備工場へ持ち込んで処置をお願いしました。

 出来上がってきたものは銅製のシールドベルトを包み込むよう にハンダが盛り上げてありました。これでいいの?。正直なところ、そういった気分でした。お かしいかもしれませんが、不安が先に立つものです。
 結果は、最初よりいい状況になっていました。オープンコアの 電源トランスですからノイズの面で不安があったものの、ストックの時より低減されていたので す。

再びスーパーサンダーへ
 今回、このことを思い出したのです。
 つまり、センターコアにU字型のコアを追加して、その外側2枚のプレートを使用してセンターコアにカシメただけで取り付けられている。
 ノーマルの プラグコードにフェライトのコアを装着してあって、なおかつ、ノーマルのプラグキャップを用いよ!。これがスーパーサンダーの通常の使用方法でした。
 このことから分かるように、スーパーサンダーはノイズ面で若干不安が生じるのではないだろうか、ということが浮かんできたのです。(もちろん、カーボン のノーマルコードとフェライトのノイズフィルターが装着してありましたが)ノーマルのコイルに対 して強力になっているにもかかわらず、その対策は非常にアバウトな方法を採っていると言っても過言ではありません。
 まるで、高出力のコイルをノーマルのコードと キャップで押さえているのではないか、とさえ、感じるものでした。



 西予のT君にこの状況を相談。「2枚のプレートで追加コアを取り付けてあるのだから、そんなに変わらないよ」という、私の期待を裏切るような答えが帰っ てきました。
 いや、絶対に違う。カシメてあるだけだし、内部のコアは元のコアと線接触だけなので、これはコア同士が単につながっているだけだ。そう判断せざるを得な いのです。何がどうのこうの、ということ ではありません。
 ともかく、「つないであるだけ」では「つながっているだけ」であって、コアが一体化しているものではない!。この状況表現なら多くの方にもお分かりに な ると思います。

2005年2月4日 小細工開始
 そこで、LUXのトランスのことを思い出したんです。そうだ、スーパーサンダーのコアの(面取り部分がミゾになっている)接合部分にハンダを盛ればいい のではいか。これで一体化する、と同時に、ノイズの面でも有利になるのではないだろうか?、と考えが及んだところです。
 そうなれば、ヤルっきゃありません。少しばかり大きいW数のハンダごてを用意し、千住金属のスパークルハンダを用いて作業をすることにしました。コアは ニッケルが混入された鉄板ですが、60Wクラスでも、やはり熱の損失は大きいようです。接している部分(もちろんコイルの前後のその部分とも)に出来るだ け全域に広がるようにハンダを盛って、冷 えた後ヤスリで整 形しました。



 ふたたび、SR500へ装着します。その際に考えたのは、今までのスーパーサンダーではないことから、今回はテイラーのコードをダイレクトに接続しまし た。プラグはデンソーのW20EPR-Uのままとしました。

2005年2月5日(土)テスト その1
 始動してみてビックリ!。数日間動かしていないにもかかわらず、キックを2〜3回。すんなりと始動をしました。ノーマルコイルの時ではこのようには行き ません。今の季節なら5回ほどのキックが必要ですから... 。
 チョーク2段階で1分。チョークを戻して1分。冬場にもかかわらずアイドリングが900rpm付近でピタリと動きま せん。何かが変わって来始めた予感です。
 ともかくサンダル履きですから、キーをOFFにし、ライディングスタイルを整えて、再び始動。いとも簡単に始動します。乾式クラッチの切れを確認し、 ちょいと市外部の書店まで走ることにします。
 いよいよ発進。レレ、何か違う。この時点ではその変化の原因が全く分かりませんでした。
 午後より少し距離を走ることとしました。
 午後3時より本格的にいつものテストコースへ入れます。若干右へ傾き気味のいつものライディングです。三間の道は測道に雪が積もったままで、天候が良い にもかかわらず、どことなく寒々した風景の中を走ります。本当は、もっと気温の高い日にテストを行うべきでしょうが、来週からは天候が一定しなくなる予報 が出ています。そういったことで、この土・日の両日しか走行のチャンスがないため、テストを行ったところです。こういった天候の判断は、この地に長年住む 者にしか理解できないところでしょう。
 機関が暖まりだした頃、後ろからマセラーティが車体に似合わない排気音とともに近づいてきました。一瞬排気音の共鳴が無くなるようなとき、妙に私のSR のポッポッポッポという音が大きく聞こえてきます。以前のスーパーサンダーの時とは比べものにならない、まろやかで力強いものになっていました。
 こんなようなところで、走りはいつもと変わらないのですが、少しこれまでのことを振り返ってみますと、4速の守備範囲が相当に広がってきたように思いま す。とり もなおさず、5速の上の部分がラクチンになっているのは明らかです。
 務田の坂を下りることから、どことなく本当に力強さが加わってような... 、そんな言いようのない気分になってきました。
 かつてのスーパーサンダーの時は、コイツは強い火花は発するものの短い時間しか飛ばない、という確認が取れたところです。そのためにパサついたエンジン のフィーリングになってしまい、 それを回避するためにノーマルのコイルに戻しました。そしてスーパーサンダーに改善策というか小細工を施した次第です。
 決してT-140Vのフルトランジスタ点火とダイナコイルのような状態にはなりませんが、何というか、力強さが加わって、グ〜っとピストンを押し下げ る。カンリンの重量フライホイールがピストンを押し上げる、という一連の動作が見事に生きています。とりもなおさず、強く長い火花が発生している結果だろ うことが容易に判断できました。
 もう一つの良い結果は須賀川ダム沿いの下りで得られました。本来ならカンリンのフライホイールが反発を起こし、必要以上にエンブレがかかってくる感覚が 一掃されたような気分になりました。先に三菱のランサーがオモイッキリ速く走っているのですが、苦もなく追いつきます。
 以前ですと、下りではアクセルを開くべきかどうか?、で悩むところですが、今回はブレーキに頼る部分が多くなって、アクセルをどうのこうのする必要は無 くなってきました。
 ダムサイドを下りて信号待ちでエキパイを見下ろしますと、陽炎が上っていました。黄変したエキパイがわずかに黒みを帯びて来始めました。かなり、長い強 い火が発生している証拠であろう、として、意気揚々帰宅をしたところです。

再び何かが...
 祝杯を上げるため、丸穂温泉で冷えた体を温めたのですが、湯船の中で今回の結果から妙なことが思い浮かんできました。本日の結果と、現行のSR400に 至った経緯の記事などを思い返してみますと、私のSR500は再びXT-500に戻ってしまったような気分になってきたのです。
 点火コイルのパフォーマンスが上がった。点火プラグまではストレート、点火プラグは抵抗入り。強く長く飛ぶ火花。そして、少し力強くなったエキゾースト ノート、ライディングの楽しさ。この方向からすると行けるかもしれない... 。
 そうなんです。ホワイトブロスのスーパートラップが使えるのではないか... 、ということが再び思い浮かんだのでした。





 
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