Lockhart Oil Cooler for YAMAHA SR500

 SR500の抜本的なオイル関連のモヤモヤのため、2003年の夏場は えらく苦労した、というか、気に病んだこと、この上ありませんでした。最終段階でやってきた時は2003年の9月26日。松山までの100kmの一般道、 到着間近、この時のロッカー周りの異音に心を痛めました。翌27日は外気温も下がって異音は出なかったのですが、帰宅してすぐさまSTPオイルトリートメ ントを添加してひとまずは収まった次第です。
 オイルクーラーフィンの項でも触れましたが、まじめな意味でオイルクーラーの装着を考えていました。が、クーラーのコア部分の大半は7段以上、これだけ の段数はオイルの「冷え過ぎ」を招くことが懸念されますし、ストック(ノーマル)のエンジンには不相応のものです。
 トライアンフのT-140Vだと80℃前後で悠々とした油温を保っています。どう考えても夏場におけるSRの油温は高すぎるし、平気で95℃など、その 状況で素知らぬ顔のSRでは決してないはずです。また、その状態でも可とするのは絶対によくない。
 残念ながら、これはSR400には無縁の世界ですし、このSRという機種でベーシックマシンとなると、やはりSR400というのは間違いのないところで しょう。
 そういったところから、夏場における30℃ほどの外気温の下では、油温が高くても90℃ぐらいに押さえることがSR500には必要だと思います。この点 はオイルの粘度などでは解決できないようです。オイル容量を増やす手もありますが、基本設計を変えることなく、熱を持ったオイルを溜める部分を増設すると なれば、スペース的に入れ込むところが見あたりません。今以上のオイル量を確保するは難しいところです。いずれにしても抜本的解決となるとオイルクーラー 以外にはない、と確信します。
 ところが帯に短し襷に長しでして、いずれもノーマルのSR500には過ぎるオイルクーラーばかりです。コア3段から4段、そんなものはないものか、もち ろん、モンキー用なら武川辺りから専用のものが出ているのですが、今度はオイルクーラー自体の容量が不足します。本当にこれだ、というのは巷には転がって いないのが現状です。

◆ 懐かしいものをゲットする
 何気なく見かけたヤフオクのオイルクーラー、アールズとかプロトのものはあるのですが... 、としたとき、ハーレーの項から回ってロックハートのオイルクーラーを見つけました。信じられないような安さ。どうやら数人しか確認していないようです。
 掲載された写真からすると、 アルミのインゴット状のものとクーラーコアがホースでループになった何ともヘンテコリンな取り回しから「本当にSR用かいな?」と思ったところです。まず はウォッチリストにチェックしておきました。落札締め切り日まで数日ありますので、オイル取り回しの確認も含めて研究してみました。その結果は以下のとお りです。
 
 蛇足かもしれませんが、オイル潤滑方式のドライサンプ、ウェットサンプはもとより、このオイル経路すら知らないでも「オートバイ通」としてまかり通るご 時世ですので、あえて記載させていただきました。

○SRの場合は、クランクケースの中央から太いホースで、燃料タンク下の太いセンターチューブへからフレーム全面ダウンチューブタンク下のオイルタンクへ 戻される。
○SRはこの経路にオイルクーラーを入れることにより、エンジン内部を潤滑した戻り側の熱いオイルを冷却する。

となります。この方式なら、クランクケースのオイル取り出し部分とセンターチューブのホース取り付け部分のフィッティングが完璧なら、比較的簡単にオイル クーラーの装着が出来るわけです。
 このことが解って、再度ヤフオクの掲載写真を見ますと、アルミインゴットの部分がクランクケースのオイル戻り側へ装着されるアダプターということが理解 できました。
 となれば、コア部分のステーを何とかすれば、ホースを2本追加してオイル経路を変更するだけでOKということになるではないですか。
 フィッティングは後で気にするとして、とりあえずは落札に励むこととします。5,000円から参入して6,250円で難なく落札。スムースな取引の後、 手にしてみて驚きました。
 まるで、武川のモンキー用のオイルクーラー並です。汎用の4段コアのクーラー部分は別にして、オイル取り出しのアダプター、思った通り、これこそが、こ のオイルクーラーセットの白眉でしょう。このアダプターだけでオイルクーラーは大成功だ、と思いました。

◆ 取り付けを考えるが...
 机上の考えだと、とりあえずの必要なものは
ということになります。
 U字ボルトとクランププレート、それにボルトナット類はユニクロメッキで8mm径、内径45mmのものを市内のDIYショップ・ディック宇和島店から購 入。純正Oリングはオートショップ・ワタナベから。内径9mmオイルホースは宇和島船具から購入しました。これらパーツ類の合計が2,500円程度でし た。
 これで取り付ければOKと思っていたのですが、とんでもない伏兵が待っていました。まずはアダプターのジョイントパイプの外径がことのほか細く、オイル クーラー側にフィットさせたオイルホースの内径では「何とかにゴボウ」でアダプター部分がゴボゴボとなり、どうもフィットしません。この問題を解決しなけ ればジョイント部分からのオイル漏れ、それに泡の混入などが考えられて走り出すことが出来ません。困った、困った... 。

◆ アダプターの加工
 検証してみると、まずはオイルクーラー側にフィットさせるホースの内径は8.5mm、これはインチ換算ですから、取り付けパイプ部分のフランジを合わせ ると内径9mmでいいようです。ここまではスムースに運びます。
 ところがアダプター側の銅パイプは外形が7mm弱です。フランジ部分を加味して内径7mmのホースがフィットします。
 素人考えなら内径7mm、肉厚1mmのパイプをアダプターの取り出しパイプにかぶせてロー付けする、となるのですが、いかんせん、ホースとの合わせ目が 少なすぎるため、フランジ部分すらカットすることも出来ません。
 浮かんだのは「人間は考える葦である」というパスカルの言葉でした。すべてを生かせて簡単な方法は... ?、あるんです。直径1mmの銅線をジョイントパイプにスパイラルに巻き付け、その部分をハンダ付けします。これで完成。
 と、まぁこんなに簡単にことは運びません。フレキシブルな考えを持っていれば、こんなことも考えつく、として、再び検証に時間を費やします。
 悠々とやるのならダイレクトにアダプターをつける必要が出てくるのでしょうけど、今回はアダプター側のオリフィスなどと、ロックハート全体の状況からは シンプルな通常の取り付けに従うべきだろう、と判断し、どうするかを考えます。
 完成後から見直すと、ハンダの盛りつけに均一性を持たせるにはどうするか、が最大のネックになり、この結論として、1mm径の銅線を巻き付けるのは少し 難しいと考えました。
 ようやくにして、効率よく外径6mmのパイプを外径9mm強にするには、30芯の配線コードの被覆を20cm程度剥がして取り出し、その芯線をツイスト したものを装着 しハンダ付けすればいい、という方法が解りました。
  1. 配線コードの被覆をカッターナイフで切り込みを入れ、小さいマイナスドライバーで芯線の一部分を取り出し、その部分を手前に引けば被覆から離 せます。
  2. 比較的強くヨリをかけます。それを3号プラスドライバーに巻き付けて、巻きクセを付けておきます。
  3. アダプターの銅パイプのホースを取り付ける位置までペーパーで磨きをかけておきます。それ以上深い位置までペーパーをかけると、ハンダが流れ る場合が あるので注意が必要です。
  4. スプリング状にクセ付けした芯線をゆっくりとアダプターにねじ込むようにして装着します。
  5. 60:40のごく普通のヤニ入りハンダを使用し、80W程度のハンダごてで一気にハンダ付けを行い、コードがハンダで埋まって消える程度まで 盛り上げます。
  6. ハンダ付けが終わったら、ヤスリがけをします。ホースの内径と合わせながらですから、落ち着いてヤスリをかけます。芯線の銅が見える程度に なったら、 次の面に進む、という具合にゆっくりと、真円の外径となるよう心がけます。
  7. 最終仕上げはペーパーで行います。

 私の行った完成写真を掲載します。




◆ 取り付けステーの考え方
 次なる問題は取り付けステーです。このクーラーコア部分のフレームへの取り付け方法がなかなか見つからなかったのです。もっとも、ロックハートのオイル クーラー自体が古いものですから、当時流行ったカタログなんかを探すべきでしょうけど、これは今となっては至難の業です。
 まずはどうなっているかを検証する必要がありますが、大まかな点として、
  1. コアは「横付け」であること。
  2. 付属のステーと共締めは難しいこと。
  3. コアの上側を正確に取り付け、下側は補助的なものでいいこと。
この三点に沿って考えをまとめてみた結果、付属のサブプレートは振動をうまく逃がすようにしていることが理解できました。
 まずは、U字ボルトと同列での取り付けは、コアの取り付け穴の位置からほぼ不可能であること。このことからU字ボルトにコアをハングさせるようにして取 り 付けようと、2mmのアルミ板でステーを製作することとしました。材料はDIYショップで購入したいつものA1050Pです。
 今回の場合、コアのセンターホールが空きますので、この部分にも8mmのボルト止めとしておくように計画しました。
 下側も同様にステーを作って付属のステーを取り付けることとします。横付けのアフターパーツの大半のオイルクーラーは、上側の取り付けが主で下側は単に 支えと位置決め的になっているようなのでこれに従いました。
 準備物の取りそろえは、この方法以外に横置きの取り付け方法は無い、と確信してのことだったのですが... 。

◆ 取り付け
 [アダプターの取り付けとホース移動]
 2003年10月11日(土)午後から宇和のT君宅で取り付けを行いました。
 まずは、オイルの取り出しですが、アダプターを使用するのか、今のオイルパイプの金属部分を切断してゴムホースでつなぐのか、を確認することにしまし た。
 戻りのオイルホースをクランクケースからはずします。そこへアダプターを仮組みしてみますと、ことのほかしっくりと装着できることから、とりあえずは ロックハート純正のオイル取り出し口のアダプターを使用することとしました。T君曰く「切断したものは元に戻らないし、パーツとして直ちに補充できない」 という至極自然な道理も含まれます。
 取り付けは6×30mmのヘキサゴンボルトを使用します。アルミとの相性からステンレスボルトを使用しました。取り外したオイルホースをアダプターに移 動して装着します。アダプター、ホースとも決して締めすぎないよう、なおかつOリング1個でオイルが漏れない仕組みですから、均等にそれ相応のトルクで締 め付けます。アダプターのオイル戻り側の穴を新聞紙を丸めたものなどで塞いでおきます。
 これでオイルの取り出し部分の加工(アダプター取り付け)は完了です。



[コア部分の装着]
 次にクーラーコアの装着に必要なステーをアルミ板で加工します。あくまで試作段階ということもありますが、動かず、なおかつ、力をかけないような取り付 けに心がけな心くてはなりません。
 僕が図面を引いてアルミ板にケガキしたものをT君に作ってもらったのですが、コア装着の時にどうもうまくいきません。寸法的にもバランス的にもどんぴ しゃりなんですけれど... 。
 フレームのダウンチューブとタンク下の太いメインパイプを結ぶ連結用の緩いカーブを描いたパイプ、その空間に上側の取り付けU字ボルトが来ます。そうし て、アダプターからの2本のホースをコア下側から装着。セオリーどおりだったのですが... 。
 「オイ、コアを天地逆にすべきだ」とT君が言います。いや、どの写真でも下から来ている、と反論する僕。「考えてみ〜や、アダプターから上へ向かってオ イルを圧送しているものを、それをまた下からコアへ入れるのはナンセンスだ」と。
 だから、僕は縦置きのほうが好きなんだけどな、といったところでダメです。写真の判断ですが、縦置きでも横置きでも、コア部分を一つのオイルタンクとす れば関係ないことではあります。が、燃料タンクを乗せることを想定してみると、やはりこの場合は上からコアへ入れるべきかな、と判断し、今回はオイルホー スは上からコアに 入れるようにします。
 そういえば、コアに貼られたLockhhaertのステッカーが異常にきれいなのは、この取り付け方法が正解なのかもしれません。

 装着した写真が以下のとおりです。



[オイル循環の確認]
 空キックを15回程度行って、オイルを循環させた後エンジンを始動します。
 一応、エキゾーストバルブへ行くオイルパイプの取り付け口からオイルが出れば、オイルは循環していますので、この確認は必ず行ってください。しばらくし てオイルクーラーのコアをさわれば暖かい、と感じられればオイルは循環しています。
 数分のアイドリングの後、オイル量を確認します。今回は200cc程度継ぎ足しをしました。
 以上でオイルクーラーが装着できました。

◆ インプレッション
 テスト走行ですが、T君宅から帰宅の道がそれになりました。数百メートル走るか走らないかのうちに効果のほどが出てきます。この季節の夕暮れにもかかわ らず、おか しな気圧配置のためか気温が27℃程度あります。風が少しあったので気にはならなかったのですが、非常に快適です。カンリンの重量フライホイールが力を発 揮し出しました。グッググっと前へ押し出すような感じがスムースにやってきます。この重量フライホイールの効果でもある500特有のノッキングではない シャクルようなエンジン回転も押さえられていますし素晴らしいものです。
 オイルクーラー、その効果が何であったのかを知ることになるのは吉田町に入っての渋滞で確認出来ました。何と膝の部分に暖かい感じがし始めます。それが タンクの前方から太股にかけて流れてきます。明らかにオイルクーラーが働いている証拠です。
 快適なうちに帰宅してオイルクーラーをさわると熱ささえ感じました。
 しばらくはこのままで様子を見ることとしますが、装着内容自体には満足しているわけではありません。特にコアの取り付けに際しては当初の位置から天地を 逆にしたために若干下側への装着にならざるを得ません。目下のところ、アクティブ辺りから出ているU字ボルトクランプを使用すればOKになるようには感じ ま す。
 もう一点はオイルラインです。アダプターはなかなか優れものというのは解りましたが、ホースの材質を含めてこの部分も、もう少し検討する必要がありま す。
 このような点があるにはありますが、ともかくロックハートというノーマル仕様のSR500に最適なオイルクーラーを見いだしたことと、その性能に満足し ています。
 そして、もしも2J2のSR500がリリースされた時からオイルクーラーを標準装備としてSR400との差別化を図っていたら... 。このことは別項で記載しましょう。

◆ コアカバーの製作
 オイルクーラー取り付けサポート板を作ったついでに、冬用にコアカバーを作ってみました。K&Nのエアフィルター専用であるダストカバー的な製 品をリリースしていただければいいのですが、そういったところは 今のところ存じ上げません。
 しからば、かっこいいものを作ろうではないか、と算段したところ、ロックハートのコア部分は横が8インチ、縦が3インチ、奥行きが1インチという、アバ ウトながら単純明快なインチサイズというのが分かったために作業を開始しました。厳密に言えば、これも改造ですからご自身の責任の範囲で対処してください ね。
 用意するものはすべてDIYショップで手に入りますので、まずは100×300mmの0.5mm厚のアルミ板、20cmのタイラップ4本です。コア部分 に直接カバーのアルミが当たらないようにするため、アルミ板を曲げた部分の内側にビニールテープを少々。これだけです。
 工具としては、大きめのカッターナイフと金属製の物差し、ニッパー、プライヤー程度で すかね。作った写真を掲載しておきますので参考までに... 。

 ただし、サークとかアールズ の現代的クーラーのコアにフィットさせるのは少しばかり難しいかもしれませんので、この辺はご自身で工夫のほどを... 。と言いつつ、クーラーに造詣の深い方のサイト では作り方が出ているかもしれませんし、「カバーなんか必要ないよ」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。

 実際のところ、今回装着したロックハートの製品はノーマルエンジンのSR500には好都合でした。日中の外気温が25℃を越える場合はカバーなしで十分 いけます。これが目安のようですね。私の場合でしたら、10月の中旬から下旬にかけてカバー装着開始ということになりました。

 おもしろいもので、オイルクーラー装着時から、私の青空工房においてもオイル交換を自分で行うようになってきました。家の前の道路に面して新聞紙を敷い て、SRをおっ立ててオイル交換をやるわけですから、道行く人は興味津々でしょうね。ただし、残念なことにお隣の定休日の水曜日でないとこの作業が出来 ない。祝日はまだしも、平日ですと半日の有給休暇を取得しての作業になります。SRでは技ありの方法で2か所、トライアンフになると4か所と二種類のオイ ルを必要とし ますから、結構大変なので有給休暇ももったいないとは言えないのです。交換料金などを考えると自分でやった方が安上がりです。
 廃油は処理剤(材)が整っているし、翌日の木曜日は燃えるゴミを出す日ですから、この点も助かります。オイルクーラーのコアカバーから話が進みました。 冬の シーズンに入りますが、2004年のSRは変わらないのかな?。

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