再び訪れた点火プラグへの疑問

 2004年10月、花園村へのツーリングにおいて、トライアンフT- 140VのキャブレターをSUDCO MIKUNI 32mmVMへ換装して、でほぼ満足のいく結果が得られた。どうしてもこの程度、というところまでしか結果が出せなかったが、気分は満足だ。
 それからしばらくして、SRを考えてみて、車体を各方面から眺めて、妙にヘンテコリンな格好だな、と感じるに至る。一つにはハーディーのバーハンドルが どうも車体にマッチしない。現実にはもう少しアップ気味の方が好ましいようにも感じるが、ツンと立ったメーターが動かせないことと、ステアリングヘッドの ハンドルバークランプの位置が高いこと、それに、バックステップが標準のため、どうしてもライディングポジションをよりよいものにするとスタティックな状 態では、車体自体のスタイルはスポイルされてしまうのである。

 このどことなく違和感のあるライディングポジションに加えて、僕のSRで施している機関の関係では、強化(かな?)点火システムのパーツは、オレブルの スーパーサンダー点火コイルだけである。その他はダイシンの乾式クラッチとカンリンの重量フライホイールだけど、エンジン自体に及ぼしているパーツとする とづーパーサンダーだけではないか、と考えている。

 ご存知のように、ノーマルの点火コイルは相当に小さい。これでいいのか?と思わせるほどの小ささである。
 それに比べて、スーパーサンダーは(鉄芯の)コアが2.5倍ほどあって、巻き線部分を覆う形になっている。当然、中身も異なっているのだろうと思うが、 ノーマルの鉄芯部分をループにして囲ったもの、と解釈していいようだ。僕は執拗にオレブルの奨めとしての、カーボンサプレッサー(プラグコード)とノーマ ルプラグキャップを装着していた。したがって、点火プラグもBPR6ESのままにしていたのだ。

 スーパーサンダー取り付け当時は、ホワイトブロスのスーパートラップに対してのノウハウを見つけ出すのに必至になっていたものだから、点火システムのこ とに対しては、ノーマルのキャブでどこまでイケルかに気が行ってしまい、点火プラグの熱価のことまで十分に気が向かなかったのである。
 7年後の2004年になって、再びノーマルの吸排気に戻したとき、点火プラグの状態から不一致部分と思われるか所として浮かび上がってきたのが点火系で のスーパーサンダーの点火コイルであった。

 再びこの部分に着目してみると、ノーマルでは、10KΩの抵抗値のプラグキャップにBPR6ESのプラグ。BPR6ES点火プラグの抵抗値は5Ωであ る。
 それに加えて、吸入側は安定度を優先したMIKUNI BST34だ。いわゆる負圧キャブレターで、本当にこのままのセッティングで十分です、といわんばかりのものであった。実際のところ、各ギアでのパワーの 出方を配慮したアクセル操作で、本当に速く走ることが出来る。
 今の僕のSRにはスーパーサンダーが装着されている。ノーマルに比べて、かなり大きい点火パワーが引き出される。後付けのトランジスタ点火は別として、 ノーマルのCDI点火と吸排気も一定としたところへ強大な火を飛ばす。しかも抵抗入りの点火プラグ。おそらくは相当の熱が放出されないのではないだろう か、と考えた。

 これらのことから、カンリンの思いフライホイールを加えた今の重いクランク状態に、エンジンオイルの負荷がなどが軽減されるダイシンの乾式クラッチ、そ れに少し強い点火システムのエンジン仕様のSRを気分よく走らせるには、どうすればいいか?。もしかして点火プラグかもしれない、と考えて、テストをする こととしたのである。

2004年10月23日(土)
 キャブレター(BST34純正)のニードルポジションをスタンダードの位置に戻した。実は妙におかしい、と思いつつ、プラグをはずすと真っ黒けのケだっ たので、ありゃりゃ、ニードルクリップを戻すの忘れてた、という始末。
 元に戻したニードルはそれ相応の働きをして、NGK BPR6ESの突出部分だけが真っ白けのケになっていた。
 ところが、SR専用のスリップオンタイプのスパトラを装着するには、クリップ位置を1段下へ下げるだけでよい、という実験結果が立証された次第。

 が、どことなくおかしいのだ。エンジン自体がキャンキャンしているようで、おまけに振動も不快だし、ツゥーっと回転が上がらない。どちらかというと、全 回転域呼吸困難な状況になってしまっているようで、チト原因究明といっても、どこをどう触れはいいか判らないところになっていた。
 何だろうな?が暫くの間続いた。

 7年ほど前、高知の南海部品でBPR6EVXを買おうと思って探したが無かったため、BR7EVXを購入し、それを暫くの間装着して、「このフィーリン グっていいな」、という結果を思い出していた。その時にはすでにスーパーサンダーは装着してあったのだ。
 もちろん、NGKのPタイプでの7番のプラグは少しばかりテストをしてはいたが、どことなく落ち着きのないものに思えていた。時に燻る、時に快調という 状況を呈するものだから... 。
 もっとも、その時はホワイトブロスのスパトラのテスト期間中だったし、スーパーサンダーといえども、SUDCO MIKUNIの時と違い、SRのキャブBSTでは吸入側の変更にエンジン自体があまり変化しない、というものであったから、6番の方がいいのだ、としてい た。
 ところが、ノーマルの吸排気系に戻して、何が違っているのか、といえば、点火の最終から2番目、点火コイルの電力が上げられたスーパーサンダーが取り付 いていることだ。このことを、T-140Vにダイナコイル+ツインコアケーブル+テイラーシリコンコードを装着しての結果と照らし合わせてみたわけであ る。

 もちろん自動車の世界ではEFIの普及があって、点火プラグは白いままというのが常識のようになっているが、SRが持つBSTのキャブとCDI点火等の 近代点火方式ではあっても、全般はアナログの世界、吸入は未だ気化器を用いるのがオートバイだろう。
 BSTでは、アクセルワーク如何に関わらず、ほぼ均一の吸入量を確保するようセッティングがなされている。ほどほどの圧縮比の燃焼室に閉じこめられた混 合気に適度な火を与えると、効率の良い爆発する。
 その状態に、もっと強力な火を出す電力を与えると、点火プラグが持たないのではないか、と考えるのだ。
 近代点火方式でも、ポイント点火当時のXT500からの発展である全体が古いSRのエンジンは、トランジスタ点火が与えられたT-140Vのようにはい かない。となれば、コイルを元に戻すか?ということになるが、それでは、より大きいパワー、つまり、燃焼室内の高圧縮混合気に対してはノーマルのコイルよ りスーパーサンダーの方がよろしい、ということを元に戻すことになる。
 それよりは、点火プラグを1段冷え型にすればいいのではないか、という、単純なことに結論づけたのである。

 もう一つは突出型のプラグだ。国内仕様のSR500のピストンは中央部もあまり盛り上がっておらず、スキッシュエリアなども少ない。そのためなら、圧縮 混合気の中央付近で火を飛ばしてやると効率は上がるのだろうけど、点火コイルが強力なものになると、吸排気がノーマルなら、点火プラグもスタンダードなも のに変更して、少しディレーをかけたように点火させる、というか、一歩引き下がったところで点火するようにした方が好ましいのではないか、と考えたのであ る。

2004年10月24日(日)
 午前中は新潟の地震のことはあるが、昨年より後退した避難訓練に出ていたため、午後からBR7EVXを装着して、西予市のT君宅へ意見伺いに走る。1週 間前の花園村からの帰りを思い出して、農協のガソリンを入れる。確かにいいフィーリングになる。どうなってんだろうか。
 質問内容の点火コイルのコアと巻き線の関係だが、いずれも増えれば電力が上がる、ということになるようだ。BR7EVXを見るとなかなかいい色に焼けて いた。
 ところが、エンジンの回り方がどうも遅れて点火しているように感じる。特に3000回転以上になると、揺するような感覚のエンジンの回り方になるのだ。 ここに来て、SRの場合、CDIのピックアップ部分が、どうも突出型の点火プラグにフィットさせてあるように感じてきた。
 帰宅してBP7ESに交換し、いつものテストコースへ入れる。変化が現れたのは務田の坂の手前、あれよあれよという間に前の四輪に近づく。どうなってん のか不明。
 三間の直線で身体を起こしたまま120km/h。ドンドンと針が進もうとする。身体を伏せるとスッと針が140km/hの方向へ。車体は安定している し、凄まじい。
 速度を落としても、ポポポポポという排気と共にスーっと回転が落ちる。鬼北(きほく)警察署の前からツーっとスロットルを上げると、サーキットでのコー ナーの立ち上がりのように走る。車体もかなり倒れているのだろうが、コーナリングも全く安定。須賀川ダムの下りのコーナーにかかって我に返ると、まるで スーパーバイクレーサーのようなライディングポジションを採っている。
 これってヤバイんじゃない、と思いつつ帰ってきた。全く素晴らしい結果で終わった。

 たかが、点火プラグで、というけれど、ノーマルキャブのBST34は混合気の供給量とスピードとかが手を加えないエンジンに対して決定されている。
 その状況で時に強力な火が加わると、効率よい爆発が促進されるといえるのだろうけれど、火が強すぎると、時として点火プラグではない、エンジン全体のバ ランスが狂うように感じるのである。
 総合バランスとして、最初にエンジンの性能を思う存分引き出すには、マフラー交換ではなく、キャブレター交換、ということが出来るのではないか、という ことである。
 いきなり点火プラグから離れたところへどうして進むのか不思議がられると思うが、マフラーより数万円高価ではあるが、BSTのキャブをおよそノーマル SR用にセッティングされたFCRに交換するだけで、相当にパフォーマンスは上がる。そして、それなりに出されたセッティングでは季節等で大きい変更はな い、というのも事実だ。エアクリーナーを装着することも出来る。
 今回の実験では、強い火花だけを与える方法を採ると、SR500の場合はプラグを1段冷え型にする必要がある。それをコントロールするとなると、トラン ジスタ点火方式を追加すればいい、という図式も成り立つような気がする。
 仮にダイナコイルの3Ωに変更すると、僕の報告したとおりになるだろうと思う。パワーアップのかなり簡便な方式である。が、先にも申したとおり、大方の ユーザーはマフラーを先に交換してしまうのである。
 ノーマルのエキパイ・マフラーは大変効率がよろしい。まずは、このノーマルを生かしてみることだ。そこから少しエンジンの能力を引き出したい、とする と、FCRなどのリプレース高性能キャブレターに換装すれば、おそらくや、かなりの代物になるはずだ。

 ふたたび、点火プラグに戻って、どうして最近はレジスター入りのプラグを使うのであろうか?。当のSRはEFIなどの電子頭脳をもってはいないから、ス タンダードプラグで十分だろうと思う。その上に、プラグキャップに抵抗が入っている。
 ところが、最近の四輪自動車の世界を考えて、オートバイを走らせようとする道路交通社会では、回りの四輪車への配慮を必要としているため、抵抗入りの点 火プラグを使っているのであろう、と考えた。僕はどちらかというとスタンダードプラグの方が好きである。特に古い設計のエンジンなどでは、抵抗がないプラ グの方が好ましいように感じてならない。

 現在のSR400は相当に調教されたものに変更されている。花園村へ来ていた1台はAISをはずしていた。明らかに調子は狂う。
 そういったところで、SRそのものを眺めてみると、どの時代のSRがもっとも今の時代をも生きられるのだろうか?。
 僕個人の考えではこれはMFバッテリーを搭載する一つ前の年式が一番いい、と考える。それ以降、MFバッテリー化に伴い、完全燃焼を目指したセッティン グに点火時期などが変更され、点火コイル、ピックアップ部分などが一部変更になってくるのである。
 その路線が受け入れられると、常時点灯の方法改善、ステップ位置の前進化がなされて、2002年まで生産された。来る2003年規制の厳しい環境へも対 処できるようAIS化される。同時に、キャブレターの口径を小さくして、混合気の吸入スピードを上げる工夫がなされてきたのではないだろうか、と考えた。
 MFバッテリー以前のSRとMFバッテリー化され、AIS化される前までのSRを比べると、僕の言うことがご理解頂けるのではないだろうか。ことに 500ccモデルにおいては... 。


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