SR400/500 のシートについて(最終)
/// 走らなくなる原因は? ///

 これまで相当期間デイトナのコージーシートを何とかしたいとして実験を重ね、2006 年10月号で報告。それにOMCのシートを入手しての結果を報告、シートベース形状に関して若干の考察を加えてきたところです。
 コージーシートを装着するとき、燃料タンクの取り付けボルトの頭が当たるため、取り付けが不安定で、後部取り付けボルトのネジ部分が合わせづらいことか ら、何とか改造して取り付けをスムースにしたい。前号でその改造を行ったところです。
 現在はノーマルの吸排気システムです。つまり、エアクリーナーも付いていますし、キャブはミクニのBST-34のSUキャブ。そしてノーマルのエキパイ とマフラーです。この状態でノーマルシートを取り付けて快調な走りをしておりました。



 コージーシートの改造が上手くいってシートの装着にはほぼ満足できる状態になって、意気揚々取り付けを行い、花園村への旅に際してクラッチワイヤーを発 注するために、オートショップワタナベまで走ったところ、妙にフン詰まりのような、かったるい気分になってきました。
 走りそのものが全く走らない。何というか、ガスが濃いような、そんなような状況になってくるのです。よく言われる「マフラーの抜けの悪い状況」を呈して きたところです。



 ノーマルの吸排気系で非常に満足していたところですし、今回やったことはシートの交換だけです。と、すればシートベースの形状が、吸入に何らかの影響を 及ぼすことになるのではないか、と考えて、シートベース裏の形状違いによる変化をもう一度見直すことにしました。

 コージーシートのシートベース裏と形状がほぼ似通っているのはモトコのシートであろうと思います。
ところが、モトコのシートはなかなかの優れもので、スポンジなどの厚さも薄いのですが、FRP部分は無類の剛性と均一性を保っています。ことに形状から来 るものが良好で、もう少しハンドルバーを低くしてやると、純正バックステップで軽い前傾姿勢のフォームがとれます。
 振動などもダイレクト感が強くサスペンションの状況が若干ライダーに影響が出るのではないか、と感じたところです。



 同様にOMCのシートもこういった方向付けで、後部のストッパー部分に空洞が出来ているし、後ろから見ると、ノーマルシートと同じような位置に取り付け られます。
 燃料タンクからリアショック取り付け部分までは、シートベースが覆いかぶさりません。

 以前に記したとおり、モトコのシートではコージーシートの時のように、フン詰まり感が感じられないのです。シートベースで最も違うのは前の部分にある シート取り付け(U字型)部分のダンパーに入る厚さが6mm程度あることから、そこでピタリと位置決めされます。したがって、前の部分はガタツキガ一切無 い、という状態ですから、シートベースにはダンパーラバーなどが一切ありません。それでビクともしないのですからFRPの樹脂・ガラス繊維、それに厚さな どが相当に煮詰めてあるというわけです。
 シングルシートですから当然のようにシートストッパー部分の裏側は大きい空間が広がります。同社のBMW用シングルシートと同じように、「ここに物入れ を作ってくれていれば良かったのに... 」と誰でも考えることでしょうが、当初はハシゴ部分があるフレームであったことでもあり、ストッパー部分の形状を高く長くすれば物入れが設置できるので しょうけど、私としてはスタイルの件と、おそらく、この部分の内部を埋めてはならない、ということが理解されていたためではないか、と思います。
 私は試していないのですが、ペイトンのシートも前部は同様の取り付け方法ですし、着座位置から後ろのエグリが大きく広く取ってあるのは、このことが考え られているからではないでしょうか。
 今回入手したOMCのシートはモトコのシートのツイン版のようなもので、ハンドルバーを若干選びますが、ほぼ吸入関係に対しては無関係のように感じま す。



 さて、48Uのヨーロッパ向けシートはどうでしょうか。純正シートと明らかに違うのはシート後部がリアフェンダーに丸いダンパーラバーを介して接して装 着する、ということです。
 ベースは柔軟性のある合成樹脂。ポリプロピレンかもしれません。それに前後左右にリブが入れられた射出整形で、シート表皮はエアカッターで止められてい る状態です。
 このシートは私のSRに結構長い間取り付けていたのですが、エンジンは少しばかりフン詰まり気味でもありました。
 ことにシート後部とリアフェンダーの下り部分の隙間は少ないことが確認できます。



 これらの状況変化から、もしかして、と思われたのは着座部分から後のシートベースの形状です。この部分のエグリが小さいとフン詰まり現象が起きるのでは ないか、と感じたのです。
 もう一点は、シート前部の取り付けでシートのサイドがフレームを包み込む形状のものも同様ではないか、とも感じました。

 リアフェンダーの一番高い部分にシートベースが乗る48Uのシートのようになれば、ダンパーラバー部分の数ミリ厚の空間をとってエグリが入れられてい る。つまり、モトコのシートはこの部分がモロ、ストッパーになって、ベースは巨大な空間が存在するという次第です。OMCのシートにしても同様です。

 一方、現行のノーマルシートはどうでしょうか。ご存知のようにベースは鉄板です。シートを支えるダンパーは48Uのシートと同様に純正のダンパーが前後 左右に一つずつ。後ろは取り付けボルトのナットと共通のダンパーという具合です。
 当然のようにベースが鉄板のため、強度の不安は一切ありませんから、取り付けは後ろのボルト2本のみです。
 リアフェンダーが入る部分の空間はモトコのシートは別にして、テールカウル部分を無視できますから、現行の純正シートが一番深く広いエグリを持ってい る、ということになります。

 それではコージーシートはどうでしょうか。リア部分は48Uのシートと同様、えぐりは小さい形状です。ベースの材質が丈夫なためか、純正の取り付けボル トのナットと共用のダンパーラバーのみで取り付けられています。
 前部はどうかというと、穴あけにより取り付けの簡易さは向上しましたが、純正シートと同様の上下のガタツキはあるものの、エアクリーナーのダクト部分ま でをシートが覆う形状になっています。リアフェンダーの頂上部分はそこが入るだけぐらいのエグリしかありません。

 ペイトンのシートを写真で見る限り、シートベースはコージーシートと同様の形状ですが、前部の取り付けはモトコ、あるいはOMCのシート形状で、着座位 置から後ろもノーマルシートのシートベース形状を踏襲しています。したがって、空気の流入は十分に確保できるのではないか、と感じるわけです。

 2J2の`78年のSR500のシートもペイトン、OMCのシートベースと同様の処理はされていましたが、エグリ部分の広さはあるものの、後部の下側が リアフェンダーに近いため、吸入に対しては少しばかり不十分ではなかったか、と思い出すところです。

 これまた写真からですが、K&Hのシートはどうでしょうか。
 このシートも後部のエグリが比較的大きいものになっています。よく見ると前部にも純正よりは小さいタイプですが、ダンパーラバーがあって、シートベース がフレームに直接触れないようになっています。取り付けの写真から判断して、フレーム部分とほぼ平行してリアフェンダーと合成樹脂のマッドガードとの接合 部分からわずかに上へ上がるようになっています。
 同様な方法ですがポッシュのBSA(ゴールドスター)タイプのシートもそうなっているようです。

 以上、ほぼ感覚的なものからのとっかかりではありましたが、シートベースの下側の形状はノーマルの吸排気系を有したSRにとっては大変重要ではないか、 と感じました。

 若干古い話ではありますが、私がSR500の‘78年モデルに乗っていた頃のことをおぼろげながら思い出し、現在の状況とを併せて気づいた点を記してみ ます。
 と、言いつつ、その前身であるXT500との比較になることをお許しいただきます。
 というところで、私が初期型SR500に乗っていた当時は、上記のようにコージーシートを取り付けたときの状況に良く似ていたのです。ブローバイガスの 還元装置はダイレクトですし、キャブは不調の加速ポンプの付いたミクニVM34。全く新しいロードバイクになってしまっていたのです。
 即座に来たのが、アクスルシャフトのナットを割りピン付きにしてくれ。その次がエキパイに穴の開いた物に変更してくれ。この2点がヤマハの指示でした。 これは保管できず、確認のためヤマハへ送り返しでしたから手元に保存できていません。
 3000kmも走った頃でしょうか、異常とも思えるシリンダーヘッド周りからのカチカチ音に苛まれることになります。カムチェーンを張りすぎると唸りが 生じる。タペットクリアランスは正常。ある日、ロッカーアームが異常に動くことを発見し、このことをメーカーに代理店を通じて言わせたのですが、無しのツ ブテで、例のシフタの空回り防止スプリングを挿入して大いに助かったものでした。
 それから、スポーツショップ・ヤジマのスリップオンスパトラとモトコのシートで好結果を得ました。
 キャブは上手い具合にXT500のノーマルVMを装着し、パイロットジェットをチョイト上げてやって良しとし、タンクバッグとデイパックの装備で、香川 の五色台での四国自動二輪交友会へ行ったのが最後でした。
 その後、トライアンフの方が何となくおもしろい、と感じたところで、このSR500を手放したのでした。

 SR500の初期型のシートは素晴らしい出来であったように思います。見かけは、XS650、TX650のシートベースの形状と同じように思われます が、実は、リアフェンダーを取り囲む形状になっていますが、現在のカウル付きのシートと同じくエグリが施してありました。
 シート後部はクッション性のよい形状とウレタンで厚さがあるように見えますが、きれいな表皮模様の後ろの部分が若干上へ上がっているような形になってい ることでもお判りのように、この部分の内側にはシートベースのくりぬき部分があるわけですから、そんなに厚いクッション、というものではなかったのです。 えぐりの形状は良いのですが、リアフェンダーの下りに近い部分まで覆いますから、空気の流入が若干阻害されるのかもしれません。
 それからキャストホイールになって、再びスポークホイールになってということなのですが、国内仕様では、一時期を除いて現在のシートカウルの付いたシー トが標準装備されるようになりました。
 後部フレームの左右連結部分は省略されたものの、鉄製のリアフェンダーがスタビライザーと補強をかねていることは意外に知られていません。私は、このよ うな変更を恨みましたが、今になって思うと、ヤマハとしてはおそらくエアクリーナーボックスへ空気を導くにはシートの形状が大いに関係あるのだ、と無言の うちに言っているように思えるのです。

 以上、取り留めの無い話になりましたが、私はノーマルの吸排気系なれば、リプレースのシート選びはなかなか難しいものが存在するように感じられるので す。おそらく当らずも遠からずの状況であろうと思いつつ、この項を閉じることとします。


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