誰 も教えないSR 500用スーパートラップの勧め
そ の3 スリップオンタイプの実力は?
[古 いタイプのスリップオンを装着する]

 そう、一体どのくらいホワイトブロスのスーパートラップと対峙してきた のだろうか。現実には6年になる。その間、いろいろ実験的なことを行って小誌に掲載してきているところだ。自画自賛の稚拙なものではあるが、これらの結果 は僕 の頭の中に入っているし、アマチャンで工具が使えれば普通に行えるものの記録として資料になるんじゃないか、とも考えているところだ。

ホワイト・ブロスでの最終仕様
 2004年3月までの仕様はエキパイフランジ部分にトルクバルブを装着し、出口はライディングスポット製のクワイエットコア、それにディスクが4枚とス テンレスドームのエンドキャップであった。
 ただし、インナーコアには若干僕の手で修正、消音に努力してきた。
 この状態で一応の満足は得ていたが、もう一歩踏み込んだところの何かを得たい気分がなかなか抜けないでいた。
 それに、スリップオンタイプはどうだったのだろうか、ということも興味津々でのところであったが、本来の仕事と職員団体の仕事が多忙の中、トライアンフ を先に整備しておかなければならなかった手前、SRに手が出せなかった。

※  以下に記すことは、1980年代初めの相当に古いタイプのスーパートラップで、SR専用の内部構造を持ったスリップオンマフラーについてです。現在のタイ プ とは多くのところで異なりま すので、その点をご了承ください。

※また、最終で簡単なセッティングを記載していますが、当方と同じような結果を得られない場合が出るのも事実です。このことはあらかじめご了承願います。

1. 古いスーパートラップの入手
 2003年11月、ヤフオクで旧タイプのステン・サテンのスリップオン・スーパートラップの新品を落札した。仕上げはゴツイが、ディスク以外はすばらし い もので あった。
 アルミのエンドキャップをバラしてびっくりした。何と内部にはステンドームのエンドが収まっていたのである。カ−ボンコレクターは必要なのだ な、と改めて感じ入ったところであった。
 また、内部コアも特別なもので、マフラー部分のエンドは小さい穴が開けられたリバース型のバッフルになっている。
 それから2週間も経たないとき、何とセンターボルト4インチスリップオンをヤフオクで見つける。流石に中古だが、いても立ってもいられなくなって落札。 特徴のある▼切欠の位置決めがある古いディスクモデルである。
 長さは今のスリップオンタイプのショートとロングの中間辺り、ディスク部分がリアホイールの取り付けシャフトのナット部分に位置する。重さは結構重量も あるから、SR専用のスリップオンであろうと思われる。
 これらを手にしてみて、頭の中をスーっと風が吹き抜けた。懐かしいとかそんなものではない何か... 。

2.取り付けてみる
 2004年も4月が終わろうとしている。T-140Vのキャブレターセッティングが一段落した後、センターボルトの4インチスーパートラップを我が SR500に取り付けてみること とする。
 頭の中を吹き抜けた風を確認するために... 。

2004年4月24日・長い土曜日が始まる
 T-140Vが一段落したものの一向に暇にならない。休日でも「何が何でもSRに向かうのだ」と自分で決めつけていないと、別の予定が直ぐに飛び込んで くる始末だ。
 午前中にセンターボルトのスパトラを取り付けることにしたのだが... 。
 まずはノーマルエキパイに交換。これはフランジ部分のナットが錆びついていただけで、WD-40を吹き付けて、しばらくすれば外すことが出来た。
 いざ、マフラーを取り付ける段になって、「アッ!、取り付けクランプがない」。どうすりゃいいのさ思案橋ではないが、ノーマルマフラーのクランプを使う ことが判 明したのは数十分 経ってからだった。思わず1978年暮の当時を思い出してしまった。1979年には僕のSR500にはブルックランズから入手した最初の3インチスリッ プオンスーパートラップが装着されていたのだから。
 今回のセンターボルトの4インチにはエキパイ(ノーマルの)とのガスケットも装着されているから全くのスリップオンだ。今のステンレススリップオンはエ キパイの外径にジャストフィットになっているから、若干異なる。
 ▼の切欠があるディスクは5枚しか装備されていないため、そのままで走らせる。キャブの調整も全くノーマルのままである。



3.最初のインプレ
 「本当に古いスーパートラップを付けてんだよな?」南予路のいつもの三間周りのテストコースを走らせ、わずかにガス が濃いような感じを持ちつつ、何か狐につままれた気分になって帰ってきた。
 「これほどSR500って走らせ易かったのか?」。ノーマルのマフラーでは味わえない。ピストンをワイセコ辺りの圧縮比を上げた鍛造ピストンに交換した 力強さか... 。いや、そんなものではない。今のままで十分にして、扱い良さもこのままでいい、確かにそういった感覚が支配したのだ。
 けれども、もう少し抜けが良くってもいいのではないか。おそらくディスクは8枚を限度として、そこから減していく方法を採ればいいだろう、ということも 思い浮かんだ。



4.ディスクは8枚か?
 同日昼食終了後、新しいディスクと▼付きのディスクを交互に入れて8枚とした。外径が▼付きのディスクの方が大きいので、純8枚仕様の排気の効率などと は若干 異なろうけれど、装着感は▼付きのディスクの方が好ましい。
 走り出して直ぐに変化を感じる。フヮーっとした気分で知らない間に70km/hに速度が上がっている世界。1速では途端に頭打ちになるため、ギア比 を変えたくなってくる。いつもどおり引っ張れないんだ。
 が、シフトアップしアクセルを戻すときに発生する不快なバスッバスッという音。どうもこれが2000回転付近で発生していることに気付く。
 まてよ、これって昔も経験したことではないか。こんなところからも500はダメだ、としたのじゃなかったのか... 。
 このことは加速ポンプ付きのVM34からポンプ無しのXT-500用のVMキャブに交換しても治らなかった。そうか、あの当時と同じだ。
 少し考えてみよう。

5. 思い出してみる
 1979年も半ばにはいる頃、ブルックランズより3インチのスーパートラップを購入。取り付けたはいいが、全く走らない。センタースタンドのストッパー も市場に 無いよ うな状況下でのことだ。稚拙と言う無かれ。僕のスーパートラップの全てはここから始まった。
 こいつを装着後、ガスはちょうどいいのに、アイドリングからアクセルを上げていくと、どういう訳か2000回転を超えるときに「ヒッ」とエンジンがス トールす る。ある程度の 速さでアクセルを開くと、この症状は起きなかった。ガスが薄いのかな、とも思って、ディスクを4枚にしてクワイエットコアにリゾネーターを装備すると、 ガ スが濃いなどというものではく、プラグが真っ黒で全く走らない状態になってしまった。
 これってエキパイの長さじゃないか?、とスエプトバックのエキパイを購入してキックアームの後ろ3cm付近でマフラー部分を取り付けられるようにカット したものを用い たが、やや安定はするものの好転には至らなかった。

 今になって分かったことだが、エキゾーストパイプの内径は様々あるが、 ノーマルのエキパイをリファレンスとし、リプレースマフラーに換装するのなら、エキゾーストパイプは、そのエン ドから18.5cm 程度長くし なければならない
 現在のスリップオン4インチショートスーパートラップでもエキパイの延長部分的なものがあるし、ホワイトブロスのエキパイが異常なほどマフラー内に入り 込むことはそのことを物語っている。ノーマルマフラーもサブチャンバーへ到達するまでがエキ ゾーストパイプと考えられるような内部構造になっていることからも理解できる。
 この長さの追加がなければ、SR500では僕が経験したことと同じことが起こるはずだ。

 何でかナ〜が分からなかった頃、スポーツショップヤジマの3インチロングスーパートラップが出現する。取扱説明書には「キャブレターはさわらないようにしてください。 500ccはディスクを8枚、400ccは6枚にしてください」と記載があったので、再び加速ポンプ付きのVM34純正品に戻したところ、 俄然走り始め た。
 すでにバンゼンのバックステップ、モトコのシングルシート、ブルックランズのリアフェンダーにルーカスタイプのテールランプ、それにGX500のフロン トフェンダーなどを装備し、純正のブリックレッドの「赤いタンクに黒のフェンダー」というコントラストが結構精悍なスタイルを醸し出していた。
 しかしながら最初期のSR500のエンジン内部は(ご存知のロッカーアームが揺れまくる症状のため)ダメであって、とうとう売却した。もし、ヤジマの スーパートラップを付けずに売っていたら... 、と悔やまれる。
 現在ではSR500はキャブもヘッドもカムも変わってしまったが、すでに新車は存在しない。今さら500のことを言ったところで 400の参考にはならないかもしれない。それほどSR400は完成されていると感じるのである。
 これら、ぼくの持っているSR500と当時のSR500とでは、XT-500からの根本が変わっていないのだから、当然といえば当然のように、エンジン 特性を考慮したリプ レースマフラーに交換した ら、2000回転付近でのエンジンストールは起こりえないことなのかもしれない、と、ふと思い出したところだ。

6.キャブレターを考える
 では、何がどうなんだ?。いくらマフラーの容量が変わってもSR500のスーパートラップにはディスクは8枚がリファレンスだ。これは経験からも分か る。もちろんスーパートラップに付加装置なしでのことだ。
 もし、1979年当時4インチのスーパートラップが流行っていればどうなっていただろうか?、というところは興味が尽きない。何しろケニー・ロバーツ (父の方)がXS650(実際は750になっていたが)のダートレーサーに装着していたのも3インチだったんだから、4インチはまだまだの時代であったの だ。
 本当にヤジマのスパトラは良かった。1982年、高松で開催された自動二輪交友会に出かけた折には27km/hを記録してしまったほどだから。
 形状は今の4インチスリップオンの外径を3インチ用にしたものと考えればいい。若干長いインナーコアを別として、メガホン部分のエンドキャップも全て純 正3インチと互換性があった。内部はその長めのインナーコアにきっちりときつくグラスウールが巻き付けてあり、さしずめ、今のカーボンマフラーの内部と同 じような構造になっていた。
 ご存知のようにSR500とXT-500とではシリンダーヘッド部分、特にバルブの大きさが大きく異なる。それに当時のSR自体の吸入側の欠点も忘れて はならない。クランクケース内のブローバイガスはダイレクトにエアクリーナーに導かれ る仕組みになっていたし、エアクリーナーエレメントもモルトプレーンで、吸入の効率はそんなに好ましいものではなかったのである。
 今ではどうだ。SR500は途中からMIKUNIのBST34mmSUキャブに変更されている。ブローバイガスもXT-500で使われていたオイル キャッチが再び用いられている。当然カムも変えられているところだから、全ては排ガス対策、それに総合性能を上げ、安定性を増すために行われたことである こ とを 認識しなければならない。

 ここに一つのキャブレター...
 トップキャップを黒塗装、SR500に装着するため負圧取り出し用のパイプを追加してある。本来、この部分はシンチュウのキャップボルトが入っている。 装備し たパイプはヤマハチャピーのものだ。いったい何のキャブ?。
 ここまで言うとお分かりのとおり、XT500の加速ポンプの装備されていないミクニVM34mmである。こいつにコースティングエンリッチャーが取り付 けられたのが、最初期に装備されていたSR400用のキャブレターだ。



 SRに装着するリプレースのキャブは少し口径の大きいFCRを装着されるのが一般的のようだが、現実には32mm程度のFCRの方がノーマルの(キャブ を除く)吸排気系にはフィットしているのではないか、と僕は考えている。
 吸気のバルブがXT500より大きくなっているけれど、排気系が高速型に近づけてあるのだし、SR400のショートストロークで圧縮比を上げた仕様のエ ンジンにはVM34から直ちにVM32に変更になったことを見ても解るとおりだし、このタイプで当時ヨシムラがリリースしていたものは33mmであった。

 もう一つ ... 。
 悪名高い(と僕は思っている)2J2のSR500用でコースティングエンリッチャーと加速ポンプが装備されたミクニVM34mmである。こいつの欠点は XT500用と同じような外観のくせに、試作品の域を出ないようなものだ。加速ポンプを使用するような状況は今ならいざ知らず、加速ポンプの付かない SR400用の方が遙かに調子が良かった。
 コースティングエンリッチャーの作動はすこぶる快調であったが、ついぞ加速ポンプの恩恵に与ったシーンは全くなかったし、作動ロッドの調整は個人で行 わないようにヤマハは指示していた。
 僕はこのキャブを今になっても使いたくない。



 これら二つのキャブレターから得られたことは内部パーツの互換性のことだ。ほとんど同じセッティングであった。何度も言うが、XT500とSR500の 最大の 違いはシリンダーヘッドとそこに付属するパーツだ。にもかかわらず、キャブレターに互換性があるということは何だろうか。
 というよりは、メインジェットが取り付けられるノズルが違うだけで、セッティング方法が同じ。したがって、メインジェットがXTでは#280に対し、 SRでは#320となっている。パイロットジェットは#25で共通だ。ここがミソなんだ。

 現在のBST34では、400と500ではメインノズルだけが違うもののジェットは共通だ。しかもメインジェットはリバース型だから#162.5 という半端なサイズにパイロットジェットは#45ときた。
 数値のゴロ合わせのように感じられるかもしれない。どこかの書物で読んだ気がしたが、リバースは通常のメインジェットの1/2に近い、というのを思い出 した。
 とすると、メインジェット#162.5は通常の#325になる。じゃ、パイロットを逆に1/2とすると#45は#22.5となる。妙に2000年モデル までのSRは下の安定性がSUキャブによって得られるから、カッタルイといわれる上の回転域に少しでもアクセレーションを重視したキャブセッティングに なっているのではないだろう か。
 そして、この数値は2J2のSR500のVMキャブと同じ口径、ほぼ同じジェット類の数値ではないか。それゆえにスリップオンのスーパートラップはポン 付けでもOKですよ、ということだ し、 「もっとパワーを得るにはキャブのセッティングを行うこと」につながる、と僕は考えている。

 では、VMとSUでの違いは何だろう?
 まずは、シリンダーヘッドのキャブ取り付けフランジをご覧アレ。今のBSTではただのラバーだけだな。もっともシリンダーヘッドとの取り付け部分は金属 の ラバーコーティングだが、ともかくBSTのキャブを止めるのはバンドだけである。
 ところがVMキャブの時はフランジ部分の外回りに金属の補強材のようなものが使用されているはずだ。どうしてだろうか?。そんな大きい問題ではない、で は済まされない。
 これは キャブレターが重いから 「フランジの補強」として装着してあるんだ。
 決してウソ言っているんじゃない。その証拠にSR500の加速ポンプ付きとXT-500の加速ポンプ無しとの重さを計測すればこの理由は理解できる。そ れほど加速ポンプ付きのVMキャ ブは重たいん だ。
 そのことに対して1988年にヤマハが狙ったのは軽量化、それにコストダウン、その上に機関の安定策。これらからBST34のキャブが採用されたのでは ないだろうか、というこ とであ る。あくまで僕の推測の域を出ないが、次の点からある程度は間違っていない、と判断するのである。

 乗ってみた方でないと分からないが、最終モデルのSR500はエンジ ンフィーリングなどがXT500の乗り味に近くなっている。知る人ぞ知るの時代になってし まったが、それほど最初期の SR500はダメだったのである。言い換えるとSR400がメインに開発された、ということも今だから理解できるような気がするのである。
 もし、XT-500のシリンダーヘッド構成を使用したSR500のエンジンだったら... 、と惜しまれる。
 事実、島  英彦 氏の設計したフレームにXT-500のエンジンをそのまま乗せたSIMA 498 ロードボンバー(本当はロードボマー)が1978年 鈴鹿の8耐で8位で完走 したことはご存知のとおり。
 最近復活したモデルは、エンジンがSRになってしまった以降のものだから、当時のものとは全く違うものだ。
 僕は吉祥寺にモトコがあった当時、鈴鹿のレースの後のこの車にまたがることが出来た。SR以上に相当コンパクトで、XT-500をそのままロードモデル 化する気 分が相当に高かったことを感じた。
 逆にSRにXT-500の外装を装着してもXT-500と同じとはならない。相当に寸詰まりでファット、不細工な印象を与えてしまう。これをを拭いきれ ないのはSRのフレーム自体がXTのそれとアライメントなどが全く違うからである。
 僕と同年代で、ロードライダー誌上で連載が始まった1977年から鈴鹿の8耐後、SR500のパーツを組み込むまでの、このSIMA 498 ロードボンバーマシンの開発記を熱い気持ちで読まれていた方には、これらのことがよ〜っくお 解りのことと思う。

 そこで考えたのは... 、
 今回のスリップオンスパトラは根本的にVMキャブ時代のSR500にフィットさせてあるのではないか、ということである。
 僕が持っているSUキャブのSR500に、このスリップオンを装着すると2000回転付近でエンジンがヒッと止まることはないが、バスッバスッという動 きは出るために、このことがSR500固有 のものではないか、という考え方に変わりがない。
 ヤジマのスパトラには「キャブレターはさわるな」とあった。今キャブ形式の違うSR500にスリップオンを装着すると... 、わかったぞ!。
 VMキャブとSUキャブでの根本の作動が違う点を除いて、動作自体の大きい違いは何であろうか。それはスロットルレスポンスのタイムラグだ。

7.予測を実際に
 ご存知のようにSUキャブは負圧を利用してキャブレターのピストンの作動を制御している。アクセル開度はインマニ手前にある弁の開閉に使われるだけだ。
 ダイノジェットはそこに着目して負圧を大きく取って、スプリングを弱くしてキャブレターのレスポンスを上げると同時にパフォーマンスを上げる方法を採っ ている。僕も以前に実験した。
 VMキャブに較べての微々たるタイムラグの欠点を解消するためにはどうすればいいか?。スリップオンマフラーが一定パフォーマンスを発揮しているのだか ら、今さらキャブレターを改造する気にはならない。
 シフトアップするときにアクセルをオフにしたときとか、下り坂でエンジンブレーキをかけるようにアクセルをオフにしたとき、それらの時にバスッバスッと いう 不整脈が出るのだ。おそらく、その時にはキャブレターのバランスがマフラーで取れていない。
 しからば、バタフライとスライドピストンの作動のタイムラグを少なくしてやるには... ?。
 賢明な方ならお分かりだろう。SUキャブでは各々のジェットなりカッタウェイなりの作動が「負圧」というものを抜きに出来ない。したがって今回の場 合なら、アイドリングの状態ではOKであってもいけない。アイドル時からアクセルを少し開けてもニードルが上がるようにして、燃料を供給できるようにすれ ばいい。そのためには ニードルクリップの位置を1段下げればいいのだ。
 わずか1段だが、これはすごいことになる。

8.もう十分だ...
 考えに思わぬ時間を割いてしまった。 
 同日の午後3時近く、早速キャブのトップ部分を分解。予想したとおり、ホワイトブロスを装着していたときの名残であるスライドピストンに縦キズが入って いる。吸排気のバラン スが崩れるから、ガイドレールの前後に打ち付けられながらスライドしているんだろうか、それともフルエキタイプで、エキゾーストのフランジとマフラー部分 だけの 取り付けだから、エンジンの振動がもろにキャブレターにも波及するためだろうか、と想像する。キャブレター自体も交換した方がいいのかもしれないし、でき れば、合成樹脂のスライドピストンがほしいところだが、今度はスプリングなどの強さなどが変わってしまう。今のところはどうにもならない。
 ニードルクリップを下から2段目に変更し、キャブを元に戻す。
 スロットルワイヤーの戻し側も若干遊びを設けておくこと。これをやらないと、スロットルグリップを軽く戻したつもりでも、機構上それ以上に戻る ことにな るため、エンジンの低回転域が不安定になる。
 この間の時間40分。午後4時、いつものテストコースへ入れる。「何だこれは?!」。若干排気音は大きいものの、直ぐに頭打ちになるローギア。あまりの 変化に愕然としてしま う。100km/hなんて直ぐに到達。ホワイトブロスの時よりすばらしい。
 広見から須賀川ダムの下りでは、エンブレも加速もほぼ満足。ノーマルマフラーでも出ていたアクセルオフ時のボッボッという低い音は別として、バスッバ スッという音は一切でない。久々に実験成功の瞬間であった。
 あまりの調子良さに興奮してしまった。このままで生かすようにして、できれば現在発売されている純なるスーパートラップ のロングス リップオンマフラーを装着してみたいところだが、何とも言えない。

9.さらに追い込む
 簡単に煮詰まってきたが、どうも気になる点がある。それは何から何まで良すぎることと、それに反比例して、始動時から30km以上走ると排気音が強大に なる。イン ナーコアを止めるリベットが違うのでセラミックウールは巻き替えてあった。ウールの飛び出しがないので、落ち着いているのだろう。幸いオイルクーラーを装 着しているためだろうか、油温の上昇に伴うエンジン各部のノイズは出てこない。
 もう少しバックプレッシャーを大きくしてフワ〜っとする感覚を下げたい。もう少し排気音も下げることにしたい。これらの気になる所を何とかしたいのだ。 時間も限られてきた。少しペースを上げて作業をすることにして、まずは、現在のキャブレターセッティングのままでディス クを▼付きの4枚でテストする。
 ありゃりゃ?、バスッバスッという音が頻繁に出始める。走れたものではない。次、▼付きディスク5枚にすると若干収まる。おかしいな、何か的はずれなこ とをやっているのではないだろうか?。
 新しいディスクを2枚マフラーエンドに持ってきて、その後に▼付きのディスクを5枚重ねる。

 そんなに簡単にディスク交換できるの?。出来るんです、ハイ。何しろエンドキャップの▼の切欠にディスク自体がササッと収 まる。
 ステン ワッシャーに挟まれたスプリングを1/2インチスパナで動かなくところまで締めつける。それで終わりだ。セッティングが終了すれば、シャフトのエンドに袋 ナットとそれをロックするナットによる(片方を締めて片方を緩める)ダブルナット方式で終了だ。



 排気熱を防ぐ方法を採れば、ディスク交換はものの5分だ。


 合計7枚にすると、8枚に近いものになるが、どことなく排気効率が高いような感覚になってくる。もしかして... 、どうやら▼付きのディスクの方がディスク間のスリットが広いようだ。そうか、ディスクそのものを現在のボルト止めタイプに全て交換したら結果が分かるは ずだ。
 そう感じて、ディスク全てを交換する。8枚から始めると、あれれ、▼付きとの組み合わせ8枚とは少し違うフィーリングだ。若干エンジンが落ち着いて、効 率が今のエンジンにフィットしているような感じに なっている。
 これほどまでにディスクの違いによって変化するのであろうか?。

 間もなく夜が来る。組み合わせの8枚と、今のタイプのディスクだけの8枚構成を頭の中で比較しながら、しばらくの考えを纏めた結果、キャブレターのニー ドルポジショ ンを1段下げた今のセッティングの下、先の実験から、マフラー内部の容量は増えても3インチに較べて4インチは排気の効率が高いと判断し、新しいタイプの ディスクは6枚が、このスリップオンをSR500に装着する一番いいものではないか、に行き着いた。

10.6枚での最後の試走
 エンジン始動、8枚の時よりは若干軽めの音。スタートしてすぐさま大きく変化していることに気づく。ローで4000回転程度まで引っ張ることが出来る。 夕刻の渋滞の中、ノロイやつを外の車線からパスする。不得手な右のコーナーも想像以上に寝かして通過している。全く破綻がない。
 信号が赤から青になり、前の車がノロノロ出そうになって、僕が思わず止まろうとする手前で4速のままアクセルをオンにするとギクシャクしながら加速す る。ま さにノーマルマフラーのときのようにSR500が持つギクシャク感も失っていない。SR500では5速2000回転、50km/hをキープして走らせるの は難しい。
 須賀川ダムの下り、バッバッという音は時折出るが、バスッバスッという音と同時に2000回転付近の悶絶状態は一切出ない。犬を引いて散歩している人を 見かけるが、僕に対して犬は吠えない。ホワイトブロスの時はひどく吠えられた。もっともキュルキュルキャンキャンという乾式クラッチの音が犬にとっては敵 というか不快な音として聞こえるのかもしれないが... 。
 市内へ入る手前のトンネルでも大反響音は一切感じられなかった。
 今のディスクの方が外径が▼付きのディスクより小さい。上野写真と較べれば判ると思う。



11.まとめ
 今回、久しぶりにスリップオンタイプのスーパートラップを装着してみたが、実力はなかなかのものがあるように感じられた。しかし、最初にお断りしている ように、相当に古いタイプのスリップオンだし、内部構造も今の簡単なものとは異なる上に、本体であるSR500そのものが過去のオートバイになってしまっ ている。
 言うまでもないが、SR400のコンロッド、クランクを500に変更し、ピストンはSR400のままで圧縮比の上がったSR500に対しては、この策は 当てはまらない。
 それをふまえて、BST34のキャブレターを装着したSR500のノーマ ルエ キパイにエクステンション無しで直接取り付けるロングタイプで、SR専用とされた内部構造を持つスリップオン・スーパートラップで最も簡単 なセット アップは次のとおりである。
  1. ニードルクリップを下から2段目に下げる。
  2. センタースタンドストッパーは万一のため装着する。
  3. ディスクは6枚とする。
 おそらく、これでOKのはずだ。そして最後に、SR500そのものとして、
をこの場で申し述べておきたい。

[もどる]



 
inserted by FC2 system