SR500のシート選び(1)
最初から躓く

最 初に
 スタンダードのシートはどういったものを満たしているのだろうか。僕の身長は174cm、股下は通常の日本人と同様に短い。が、燃料タンク長が法的に規 制のあった頃のハンドルクランプの位置関係からか、SRのバックステップでも、希望のクラウチングスタイルにはならない。かといって、腰を後ろに引いたス タイルでは昔のカミナリ族風でヤダ。
 実際のところ、SR関連のムック本にはライディング中のSRの写真が非常に少ない。その理由の一端は意外なところに同様のシーンを拝見することができ る。それは、何時か記載した覚えはある、雑誌「美しい部屋」である。
 この雑誌の最大の欠点は何か?を妻に尋ねたことがあった。彼女は判らない、と言った。
 実は、「美しい部屋」の写真の中には人間が不在なのである。それは解っている、とおっしゃるだろうが、雑誌の写真を見ているあなたを、その部屋に入れて みられるといかがだろうか?。
 もう一つは写真のいたずらで、大径広角のレンズで部屋を写すから、言わずもがな、「この部屋が... 」、となるのだ。
 実際に標準レンズで、そこに人を入れて生活が営まれている状態で「美しい部屋」として売り出すには非常な困難がつきまとうし、雑誌が売れなくなるのは必 至なのである。
 同様、SRのような古くさい一般のオートバイをいくらカスタムしたところで、どういったオーナーがどういった乗り方をしてらっしゃるのだろう?、と想像 させるのはいかがなものか、と感じるのだ。その上に、オートバイというものは全てがむき出しの乗り物だし、キカイとしてのオートバイは人がかかわらなけれ ば動かすことが出来ない以前に、左右どちらかに倒れてしまう。それに、その人のライディングスタイルまで加味すると、止まっていて「GOOD=良いもの」 も走らせるとどことなく「BAD=良くない」ものに受け入れられてしまうし、ひいてはオーナーの
 えらくシート選びからかけ離れたようなことを記載してしまったが、実際、ノーマルのSRに身長いくらの人が乗って走らせたら、どんな状態になるのか?、 という紹介記事はパーツ関係の取っ付け引っ付けの関連雑誌ではなかなかお目にかからない。
 以前発行された「SR完全マニュアル」に女性ライダーをモデルにしてライディングポジションの良否を紹介していたが、スタティックなときの「良いフォー ム」が、実際のライディングでは「悪いフォーム」になってしまっている、というバカらしさ。
 こんなこともあるから、ライディング中の写真掲載は難しいのだろうな、と感じる。
 モデルさんと雑誌社の名誉として言っておくけど、このような結果になるのはXT-500時代から引き継ぐ、SRの持つ欠点の一つでもあるということが存 在するからだ。
 もし、ノーマルシートにノーマルハンドルの状態で、身長170cm前後の方がスタティックな状態でポジション設定したとしよう。
 普通にライディングし、しばらくするとスタティックな状態で決定したポジションより、燃料タンクの端が股間に近づいていることに気付くはずだ。いくらお 尻を元に戻しても、走って信号待ちなどで止まると不思議に間が詰まっている。
 残念ながら、これを修正するには、ハイマウントのバックステップと燃料タンクを長くしなければならない。あるいは、今のモデルのステップ位置なら、少し 高くワイドなハンドルバーならOKとなるが、着座の自由度は制限される。
 面白い現象だが事実だ。それゆえ、少しでもこれを食い止めるため、1996年モデル頃から表面がのっぺりした比較的スムースなレザーを用いたノーマル シートにしているわけである。一時期のアニバーサリーモデルや、現行のヨーロッパ向けタックロールのシートにして、他をノーマルのままだと、おそらくや、 僕の言う状態になってしまうだろう。
 実際の取り付けを確認すればよく解る。 シートをはずして、フレームとリアフェンダーの頂点の位置を比べると後者の方が高い位置にある。ベースのえぐり 部分と着座位置のスポンジの状況からすれば、ノーマルのポジションでは前(燃料タンク側)へ臀部がずれてくるのは間違いがないところだ。
 おまけに、ヨーロッパ向けのため、日本人と体格がずいぶんと異なる。彼らの身体状況からすると、この純正タックロールシートは好適なのに違いない。

 2002年、コベントリーの清水さんにお願いしてT-140Vのシートのあんこ抜きを行った。スポンジの経たりはあるが、いい位置でのポジショニングが 出来るようになった。SRと違うのはタンクレールの位置が高いことと、リアフェンダーの頂点がSRより低い。そのために、わずかしかトリミングしていない のに、効果は大きかった、という次第だ。
 そのような観点から、今のSR500のノーマルのシートをカットするか?、となるが、これはサンダーなど、かなりのものが必要になるし、内部の防水機能 を無視することになってしまう。やはり、リプレースシートを選択せざるを得ないのである。
 若干低くて、腰のあるもの。シートレールが隠れるもの。ベースの設計から起こしているもの。これらが選択の対象になるが、その上にライディング状態がい いもの。ライディング姿を見られても「いいな」と思わせる要素を持っているものなど、満たす内容が多く、選択にはなかなか難しいものがある。

モトコのシングルシートから得られるもの
 ずーっと昔にモトコのシングルシートを装着した。実際のところ、これで高松往復をやったものである。このことから解るとおり、トライアンフの改造シート と同様に、ライディングポジションが最適なものであれば、かなりの面でライディングが楽しいものになる。
 が、このシートの最大の欠点は水を吸うことと、内部のウレタンの弾力性が落ちること。この2点が改善されれば一層すばらしいものになるように感じた。
 現在でも継続生産されているが、少々高価に感じられるが、材質の強度、ゲルコートの仕上げなどからすると、十分見合うものと感じられる。

SR400/500の トータルディザインからシートを考える
 トライアンフT-140Vから離れてSRを見つめてみると妙なことに気づく。本来はXT500のエンジンを、アライメントを少し修正したフレームに載せ たものだから、若干おかしい面が出てくる。
 特にシートは本来のティアドロップとは少々違うヤマハ独特のティアドロップタイプであり、シートとの境目は幅がかなり広い。
 このため、ノーマルシートではシートの前端がタンクの最終部分に覆い被さるように装着される。XS-650の時も同様だし、GX750でも同様であっ た。
 SRのリプレースシートの多くはこの部分が広いため、どことなくリプレースシートを改造することがなかなか難しい。この部分を以下にクリアーすべき か... ?。
 これがSRのスタイル的な面でリプレースシートを選ぶ条件の一つになる。
 
ダイナミックな面からはどうか
 バックステップ付きのSRと今ののっぺりしたシートはおかしい、と思われがちだが、実際はなかなかいい結果を残す。ヨーロッパ向けのタックロールシート よりも好ましい。
 本来は、このシートを改造すればいいのだろうが、残念なるかな、手を出せば必ず失敗する。理由は簡単。先に記したタンクとの連結部分の処理が非常に難し い。仮に、ここが改善できても、今度は外付けのテールピース部分の処理が上手く行えない。
 結果として、表皮に少しばかり余裕を持たせたような形にしか仕上がらないのである。業者へ出してアンコ抜きをやってもらうなら、この部分に留意して表皮 までオーダーしなければならない。ここまでやると結構な金額を請求されるのは言うまでもないところだ。
 このような観点から、どうしてもリプレースシートは比較的しっかりとした表面が平らで、スタティックなライディングポジションを取った場合におしりの移 動がスムースに行えるようなものが要求される。
 また、SRの持つフォルムを著しく壊すようなものは願い下げである。

コージーシートに落ち着く
 以上のような点に注目してシートの特徴を出してみると
1.燃料タンクを変えずにシートとタンクの接合部分がスムースなもの
2.1日に500km程度走っても疲れないもの
3.中央部分がフラットでウレタンの強度も十分なもの
4.SRのイメージを壊さないもの
5.ライディングスタイルをウインドーなどに写したときおかしくないもの
ということがチョイスする面での留意点ではないだろうか。

1について
 ベースに加工がされていない場合は、この部分はどうしてもノーマルシートと同じようにタンクに被さらないとならない。でなければ、シート前端とタンク後 端との間に隙間が空き、不細工になる。
 コージーシートではこの部分のベースが上向きに造られている。
2.3.について
 ウレタンの材質が重要になるし、シート表皮から雨水が浸入しない方法を講じているものでなければならない。多くのリプレースシートでは、この部分はあら かじめ断りを入れてあるものが多いが、スタイルのみではない。実用度も十分でなければならない。
 この点はK&H、コージーシートがクリアーしている。
4.について
 これは多数あるので、好みからすると、K&H、ポッシュコージーシートなどがあるが、3.との兼ね合いからK&Hとコージーシートぐら いだろうか。
5.僕ぐらいの年になると、どうもペイトンプレイスの形状のシートではつらい。したがって、これまで装着していた純正タックロールシートと違和感のないも の、ということになる。
 ここはK&H、コージーシートであろか。
 このような観点から、デイトナのコージーシートに落ち着いた。この中での最大のポイントはウレタンの状況、シートベースの仕上げ。この2点が K&Hよりコージーシートを選ばせた、となる。

コージーシートの取り付け
 入荷したシートをシゲシゲと眺める。カタログではベース部分が金属でできているのかと思ったが、どうもそうではないようだ。通常のFRPかな、とも感じ たがそうでもないのかもしれない。いずれにしても、表皮が(おそらく合成ゴム系の)接着剤で止められていることから、接着剤が効かないポリプロピレンなど ではないだろう、と推測する。強いて言うとゲルコート部分をこちらに持ってきたのではないか、とも感じるところだ。
 シート止め前部は金属製で、純正との違いはボルト位置が左右に振ってあるところだ。ライダー着座位置はフレームとの間のダンパーラバー無しのダイレクト であり、このことからも、ベースはかなり強固なもののと推測される。
 シート取り付けナット部分のダンパーセットを純正シートより移植して、若干位置合わせに苦労するが純正ボルトで止めれば装着完了である。
 説明書にはヒンジとダンパーの取り付け方法が記載されているが、あらかじめシートにフランジナットが装備されているから、これを使用する方がいいように 感じる。
 また、グラブバーを外すように指示があるが、そのままでも十分に装着できる。

実際は交換しただけでは済まなかった
 意気揚々シートを交換したまでは良かったが、乗ってみると、今度はハンドルバーとの兼ね合いがイマイチになってしまって、逆におかしいライディングポジ ションとなってしまった。
 ハンドルバーも結構高価で、1本当たり5,000円を下回るものは皆無だ。どうしたものか?。まずは、現在取り付けているハーディーのローハイトバーで テストしてみることとする。
 レーシングスタンドでSRを固定させる。やおら跨ると、ノーマルシートのままのハンドル位置だとハンドルバーを下側から斜め前に押し出しているポジショ ンになる。これでは押さえも何も効かない。
 このため、まずはクランプを外して、ハンドルバーを手前に引き寄せることとする。数回腰を引いたり、前へ持ってきたりしながらイイ位置を探す。
 若干良くはなったが、今度はバーエンドが下がり気味になって、少しばかり抑えが効かない。強いて言うとノーマルのハンドルバーでシートだけ低くなった感 覚である。
 この結果、再びハンドルバーを考慮しなけりゃならないのか、と思うと、少々困ってしまった。

 
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