SRを本当に乗りよくしたい(その3)
・・・ 遅れた長いプロローグ・・・

 2004年の夏も終わり頃、トライアンフT-140Vのオイル漏れの一件から、英車を愛でる会への参加を目指してかかりっきりになっていた。この間、T -140Vの整備途中、所用で新居浜へ出向いた際にSR500を使用しただけで、その前後は車体カバーをかぶったままで数回の台風をやり過ごしていた。
 SRはオイル交換を行っただけだが、高速道路で120km/hなどは簡単にクリアーできるし、普段どおりの走りで可もなく不可もなくの状態。
 はっきり申し上げて、数日後T-140Vの整備をして花園村へ行けるまでになった。これらT-140Vの整備作業のことはSRをさわるよりも、ずっと楽 しい時間であった。SRのことをすっかり忘れていた状態であった。
 11月を迎える頃、そろそろ冬へ向けての支度をしなければ... 、と思いつつ、車体カバーをはずしSRを眺めていた。どこをどう触るでもない。このままで十分。惜しむらくは、SRそのものが持つ国産車然としたところと 安っぽさかな... 。こんなことを考えながら手を下すべきところを考えていた。

 はっきり申し上げて、僕は全国的に行われている「SRのカスタム化路線」を好まない。最大のポイントは排気音が「ウルサイ」ことである。もちろん、比較 されるドゥカティとかトライアンフT-120Rとかの音もうるさい、と感じられるだろうが、要は音質の違いである。
 実際、継続生産とはいえ、現行生産車両のSRが出す排気音を今日の状況に照らし合わせると、この面に対しては相当に厳しい騒音関係の法律をクリアしなけ ればならない。それ故の「音」の本質まで突き詰めたレポートもないし、音対パフォーマンスを論じられたものも少ない。
 もちろん、ある程度の音量はあるにせよ、そのSRに相応しい速さを含めたパフォーマンスを有しているSRが在るのも事実だが、僕はマフラーを交換した大 半のSRは「音が速い」、と言い続けているのだ。
 おそらく、多くのカスタム化ユーザーには理解できないことであろう、と感じるが... 。

 もう一点は、SRというオートバイは何なのか?、という、トータルなスタイルのことである。どうも手を入れたSRはライダーを無視したスタイルのようで ならない。僕が考えるのは、SRの開発当初、ライダーの身長は172cm近辺を主としたように感じている。
 SRで触ることはマフラーとともにハンドルバーも多くのユーザーによって取り替えられる。そのハンドルバーにも少しばかり申し上げないとならないことも あるのだ。

 相当前、ちょうどスズキの「刀」GSX750が国内発売された当時のことであった。
 リリースされたGSX750には刀のエンブレムもなく、1000と同じクリップオンハンドルではなく、一般に言われた「耕耘機ハンドル」と称する、左右 別々ではあったが、大きく長く手前に引かれたアップハンドルであったのだ。
 これをクリップオンに交換するプライベートな改造が始まった。直ちに、官権が「刀狩り」と称する取り締まりにかかったため、多くのユーザーは苦虫をかみ 潰したのである。
 その中で、一部純正GSX1000が持つクリップハンドルに交換し、数十ページにわたる改造申請を添付して車検を取得した方もいらっしたが、乗りたい方 々の多くは、金額をもう少し上乗せして、GSX1000の逆輸入車を購入することになったのである。

 マフラーの一件はまだしも、えらく回りくどい言い回し、と感じられるかもしれない。しかし、当時の変形ハンドルの規定はまだ生きている。
 古い書物によれば、1973年9月28日、警視庁、運輸省が変形ハンドル装着車両の走行をテスト。結果として取締りを決定。同年10月26日に運輸省が 法令化した、となっている。
 僕の知る範囲では、この変形ハンドルの全面解除は聞いていない。が、唯一クリップオンハンドルは変形ハンドルに入っていなかったのである。この点には注 目して頂きたいのだが、PTAによる三無い運動、暴走族さわぎにまつわる改造車のこと、オーバー750の申し合わせなど、レーシングマシン然としたオート バイは車検すらおぼつかない状況だったのだ。
 この時期のほんの少し前、ドゥカティ750ssが輸入されたときには、不細工なバーハンドルを装着して車検を通した始末だったのである。
 それにもまして、どうして刀狩りが横行したのだろうか。それは国内仕様オートバイの各部分の規格に、刀の燃料タンク長が治まらなかったのであった。その ための耕耘機ハンドルだったのである。そのハンドルを短くすれば、当然車検証の記述に反した改造車であることから、やられたまでだ。

 以前、別の面でも記載してきたが、オイルクーラーさえダメという法律がガンとして存在していた時代だったのである。

 そういったことから、今のクリップオンハンドルが装備されたオートバイをご覧になればお分かりのとおり、トップブリッジに何某かの方法でハンドルの広が り角が変更されないようフロントフォーク(操舵装置部分)と一体化されるような仕組み(多くはハンドルダボをトップブリッジにボルト止め)がなされている はずである。

 ハンドルバーのことを先に出したが、SRは相当期間にわたっての継続生産車である。当然、クリップオンハンドルに変更するのなら、ドラムブレーキから ディスクブレーキへの変更申請をするように、車検を受けなければならない。

 もう一つ、これが僕の言いたい最大のことかもしれないが、SR400のボアアウトと運転可能な自動二輪運転可能な上限排気量の免許との兼ね合い、そして 車検証との兼ね合いである。
 現在SR500はリリースされていない。通常はSR400のシリンダーをボアアウトして、市販のピストンを組み込めば520cc程度に排気量が上がる。
 既得権の自動二輪免許、限定解除の自動二輪免許を持っているユーザーは車検証の記述違反に目をつぶれば大丈夫とは思うが、400ccまでの免許保持者が このSRに乗ることは、完全に違反である。
 プロショップなどがそこまで購入者に問うて作業を行っているかどうか、ピストンリングのクリアランスなどを指定して、個人で作業されるとどうだろう?。
 答えは出さないが、一気に官権が乗り出してくると、こんなのは朝飯前の作業なのだ、ということも理解して頂きたい。

 そこまで堅いこと言わなくっても... 、と。
 でも、生き続けている法律である。そこをどうやってクリアするのか。明確に違反が判るような改造パーツとすれば、マフラーぐらいではないか?、と考え る。
 かく申す僕もホワイトブロスのスーパートラップを取り付けていた期間は違反車両であった。ここは反省すべきかもしれない。

 今の白バイ警察官に昔のCB750の白バイのセルモーターがイカレテいる状態でキックして始動できるかどうか、その当時のオートバイの状況を逐次勉強し ているかどうか、はなはだ疑問点も出てくるのは事実だ。
 このように、道路運送法とか、道路運送車両法とか、いろいろ読んでいくと、警察ばかりではなく、運輸関係、工業規格関係も動き回ることから法律上の規制 をかいくぐるのは相当に難しいものだな、と思うところである。

 僕が昨今のSRに対峙していると、こんなようなネガティブな方向ばかりに向いてしまうし、その中でいかに気分良く僕流にモディファイすることができる か?。
 ここが現行車両のSRと過去のオートバイであるT-140との大きな相違点に感じる。SRはどうしても単品装着からトータル性能への道となってしまう。 オーナーの目指すSRを想定して、こことここをどうするか?したとき、たとえば、もう少し走らせるようにしたい、としてマフラーを交換すると、思い通りに ならない。次に吸入側を触る。そしたら、再びマフラー... 、といった状態になるのではないか... 。
 僕はホワイトブロスのスーパートラップを触りながら、こんなことを考えていた。でも、一定の結果が出るまではやり続けていた。
 そして気づいたのは、ダイシンの乾式クラッチを装着した時からだった。その時から忘れていたものが出てきた、と記憶している。
 もしかして、とノーマルマフラーに再び戻って、一層SRそのものの本質を、少なくとも僕のSR500を僕流の分別を持ってよりよいSRになるようにしよ うとしたわけである。



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