ノーマルキャブの改造と考察

[ 初めの思いつき ]
 以前、ノーマルのキャブに装着可能なパーツの選定を述べ、その時はスプリング、ニードルともそのままで、クリップの位置を一段下げただけで留めた。
 それからしばらく後、PLOTのカタログからダイノジェットのセロー用システムの資料を引っ張り出して検討を加えていた。なぜか?、それはセローのキャブが2000年モデルまでのSR500/400と同一だからである。したがって、セローも排ガス対策前までのモデルはSRと互換性があるし、セッティングパーツなどでは参考になる面が多い。
 事実、僕のSRのキャブは合成樹脂部分を水性の落ちないマーカーで黒に塗装している。これは、セローの同じ部分が劣化していないのに、グレーのSR用は表面の劣化がひどいからだ。パーツを取り寄せればいいのに、と思われるだろうが、セローのパーツとしては存在しないから入手できないのだ。
 それにしても汎用パーツだから、といえばそれまでだが、多くの面でキャブの互換性があるということは、なかなかセッティングの範囲が広いと考える。残念ながら、今(2001年)のモデルからはキャブの形式が円柱ピストンになっているので2000年までのモデルと互換性は乏しいが、本来のSU、CVキャブの姿に戻ったような気がしないでもない。振り返ると、2000年モデルまでのキャブは異端であったのかもしれない。
 4インチのホワイトブロス製スーパートラップの排気システムを使用すると、僕の場合はどうもアクセルワークにキャブレターが追いつかない。吸入・排気、それに混合気の条件は満たしているが、圧縮比が低くピストンセンターが400と比べて高くない形状の500のピストンでさえ、アクセル操作に対応が追いつかない。したがって、あるところから燃料、あるいは空気の供給が緩慢になってくるようなのである。特に一気にアクセルをひねって、3000回転付近になると、ボボボッという状況になって、少しアクセルを戻して緩やかに開けると、こともなく上がる。
 余談だが、FCRは混合気を多く燃焼室に送り込むことを主眼とし、TMRは混合気を微細にして燃焼室に送り込むことを主眼としている、という記事を読んだことがある。
 それなら、今までの症状を無くするには、キャブレターより手前の空気の流れを何とかすればいい。それは分かっているのだが、仮に対処しても、緩慢なアクセルレスポンスの悪さと回転が頭打ちの状態になる状況は改善されないのではないか、このバランスを何とかすべき、と考え、実験を開始した。

 今回のレポートに直接関係があると思われる部分のスペックとしては次のとおりだ。
● エンジン:ノーマル
■ キャブ:ノーマル
◆ パイロットジェット:#47.5
◆ メインジェット:#165
▼ エアクリーナー:ダクトを取り去る
● マフラー:WB製スーパートラップ(ディスク8枚)
 以上である。



[ ニードルチェック ]
 どうしてここでいきなりニードルなんだろう?、と思われる方も多い。が、上記のとおり、ジェット類は全て上げている。しからば主要なジェットで残っているのはニードル(針)ジェットだけだ。
 特にこいつは通常走行時に一番働かせる範囲が広い。したがって、真のダイノジェットにしても、メインジェット含めたこの部分と負圧関係に重点が置かれているのは言うまでもないことだ。
 今回の改造はここの部分に注目した。
 
 まずはルーペ片手にシャーロックホームズばりにニードルジェットを点検することとする。

◆ ニードル長とクリップ位置など
 ※ニードル長は全長51.5mmでアルミ製だ。とがった方を下とすると、
 ・一番下のクリップの位置までは46mm、順に1mm加算して一番上が50mmである。
 ・ストックのクリップ位置3段目は48mmということだ。

 ※僕の目には緩やかな三段構成に見えるニードルについて眺めてみよう。(写真がないがご容赦願いたい)
 ・一番下の最先端部分から8mmのところまでがスクエア(フラット)になってる
 ・その上が25mmのテーパー部分になる
 ・そこから上18.5mmまでがフラットになる

 ※したがって、標準設定のクリップ部分だとニードルジェットの上のストレート部分は16mmである。

経験からの考え
 ニードルジェット全体の形状から、SRに装着した場合は中低速を重視し、しかも希薄燃焼、省燃費を狙い、不都合のないアクセレーションという味付けをしているようである。また、キャブ本体が汎用のため、ノーマルSRにはなかなかいい組み合わせ、ということが理解できるのではないだろうか。

 今回は、3000rpm付近の悶絶状態を回避するのを目的とし、ニードルジェットを加工し、それに関わることに手を入れることとした。


ニードルジェットの加工とそれに関わるものの加工

[ 加工に際して用意するもの ]
● 耐水ペーパー中くらいのと細かいの
● 金属磨き
● ルーペ
▼ドリルとボール盤
■ 純正ニードルジェット(2LN-1490J-00)1本
■ 純正ダイアフラムスプリング(3GW-14933-00)
ご自身の根気と労力と金額

[事前調査と方針と加工]

1.ニードルジェットの改造
 まずはキャブレターを「気化器」とせず、「噴霧器」、「霧吹き」とするケルンン石坂の理論と同様、自分でノーマルのニードルを削ってみた。
 ミニ旋盤がないので、リーぺを傍らに置いて、ペーパーでニードルをつまみ、縦方向と横方向を交互に削り、その状態をルーペで確認するという、こういった一連の作業の繰り返して行う比較的根気のいる作業だ。一応、先端のストレート部分とテーパー部分の段差を無くし、スムースな針状にする。
 写真では(横方向の削り取りが大きいため段になっているようで)見づらいが、2001年セローのノーマルニードルとSRの加工後のもの並べての写真を掲載した。先に記したように机上での味付け方向はスロットルの反応と頭打ちを改善しようというもくろみだ。

2.負圧取り入れ口の拡大
 わずかでも負圧をかせぐために、フラットピストンにあるの負圧の取り入れ穴を拡大することとした。
 ここで若干気になることがある。それは空気の流速が速くなると、ピストンがインレットマニホールド側へ押しつけられて動きがシブクなるのではないか、ということである。どうもキャブ本体のスロットとピストンとの当たりが均一ではない。ま、これはダイアフラムといっしょになった新品部品が入手可能だから、今回は気にせずに作業することとした。
 負圧の穴はどの程度にするか、非常に疑問である。この実験だけで結果を出すには、おそらくは1年ほどかかるはずだが、これは経験と勘でやっつける。また以前に申したとおり、500のはトップが高くないピストン形状だから、いたずらに拡大できない。スライドピストン幅からしても、およそ直径2.5mm〜4mmだ。これ以上は確実にスライドピストンの側面に干渉する。今回は3.5mmとした。

3.ダイアフラムスプリングの加工
最後にダイアフラムを押し下げているスプリングをカットして装着することとした。万一の場合、元に戻すため、このスプリングも1本購入しておくこととする。劣化していないSRのスプリングはどうやら2000年までのセローと同一のようだ。
 スプリングはバネの材質と強さが変更できないために、単にスプリングを引き延ばし、元の長さでカットして巻き数を減じることにより弾力を弱めることとする。各回転域でキャブのピストンバルブがどの程度上がっているかを見越してのカットとなる。
 ノーマルの全長は95mmである。経験からして、今回は両端を摘んで注意して引っ張って105mmとして、片側から10mm程度カットして95mmの長さにするわけである。
 切り取った方の最終巻き部分を、その前の巻き部分に無理なく接するようにラジオペンチなどで修正する。


 以上1,2,3,で改造したパーツを一気に装着するか、段階を追って行うか...。  痛し痒しの問題はあろうけど、今回は3つのパーツを同時に組み込むこととした。
 いわば、ダイノジェットシステムのアマチュア版である。裏を返すと、真性ダイノジェットの製品でキャブが同じなのはセローのものしかないから、SRそのもののノーマルキャブをよりよいものにしようとすれば、ダイノジェットの方法しかないのである。それ故の行為である。
◆ いつも申し上げるが、このレポートを読まれて加工をされた場合、結果の如何に関わらず責任はご自身で取られるようお願いする。当方およびレポート中に出るメーカーなども一切関係ない。


[ 現物合わせの加工と装着編 ]

2001年 5月16日(水)はれ
 気温が高いが湿度は低いため、暑いとは感じるものの、土曜日に本格的走行テストをするには今日しか時間が取れない、と判断して、午後から休暇を取って改造パーツをSRのキャブレターに取り付ける作業に取りかかる。
 はずすのは簡単だが、装着するのが難しいSRのキャブレターをはずす。トップのキャップをはずし、ダイアフラムに取り付けられたスロットルバルブをはずす。いつもやるのだが、上面にあるOリングを無くさないようにする。

▼とりあえずは、スロットルピストンにある負圧の穴の直径をどの程度にするか。
 SRのノーマルキャブではピストンに1個、ニードルジェットが通る脇に穴が開けてある。SRの場合はギロチン形式のスライドピストンで非常に軽い。ピストン側面と前後面に干渉せず、ニードルジェットが入る穴に当たらないように拡大となると、「過ぎたるは及ばざるがごとし」の例えにならないよう、現実面で3.5mmとした。ノーマルの穴が実測2mmの直径だから、1.5mmの拡大である。

 青空工房ではあるが、穴開けにはどうしてもボール盤が必要なため、市内のカワサキ専門店、永井モータースさんの工具を借用する。使い方を知っているから、ショップのオーナーの手を煩わすことはない。逆にショップからはお客扱いされない、いつものパターンだ。
 削りくずをエアーで吹き飛ばす。特にダイアフラムの部分に付着しているものを確実に取り除くこと。

 穴開けしたスライドピストンを持って帰り、加工したニードルジェットのクリップ位置はスーパートラップの関係もあるが、最初から始めるものとして真ん中(3段目)にセットしてキャブレター本体に取り付けを行う。
 キャブをエンジンに取り付けスロットルワイヤーの調整を行い、タンクを載せて終わりである。ここまで1時間。慣れているとはいえ、キャブの脱着装着に時間を食うためにかかる時間で、実質は30分程度だ。

 また、今回はニードルジェット周りが主になるので、前に加工したメインジェットを取り外し、ノーマルの#165に変更したことを、ここで報告しておく。 


[インプレッション その1]
 エンジン始動など、いつものとおりである。が、アイドリングが極端に低くなっている。アクセルワークに対しては一瞬のタイムラグはあるが、今までより少しばかりレスポンスがいい。
 まずは、緩やかな登りで負荷を与えながら、一気にアクセルを開けた場合にキャブレーションが追従するかどうかのテストを行うため、旧松尾峠へ持ち込む。わずか400m程度の距離だが、各ギアでの右手首60°の角度へ持ってきても追従性は問題がない。回転領域をスロットルグリップに記しているわけではないので、この程度の角度ということでご容赦願いたい。
 アクセルレスポンスは素晴らしく良好だ。体がのけぞるまでにはならないが、以前よりは「前へ」の感覚が強い。しかしながら、急にアクセルを開けると例の悶絶状態が3500回転付近でやってくる。
 したがって、急激にアクセルを開いたときの面を考えて乗ればいい、というわけだが、あくまでメインジェットのテストではない。キャブレーションのテストだから、この辺りで中断して帰途についた。
 帰り道はアクセルを戻すと、ポポポッという音が強くなってきた。エンジン全体が妙に高温になっている。おかしいな?、と感じながら状況を分析。ひょっとすると、混合気の流速バランスが狂っているのではないか、チョークがかかっているような状況だ。こういったことを考えながら帰ってきた。
 
 帰って全体を見回して、いつになくディフューザーディスクが黒く煤けている。不思議な考えだが、経験からしてスーパートラップの性格上、排気側はまずまずセッティングが出来ていると判断。理由はカリカリいう音も聞こえないしアフターバーンも起きていないため、燃料供給面ではOKのはずだ。各ジェット類は変更の必要はない。混合気の濃い薄いは別として、キャブレターを通って燃焼室へ送り込まれる混合気の状況はいいようだ、と判断。そうなると次なる問題は吸気側ではないか。しかもエンジンのインレットとかキャブレターではないところの... 。

 と、なれば、やはりキャブレターで混合気をつくる前の空気流量を多くし、効率をよくして、混合気をよりよい状態にして燃焼室に送り込んでやるのがいい、と頭に浮かんだ。
 実際のところ、ノーマルのウレタンスポンジエアクリーナーに疑問が生じてきた。この空気取り入れに加工を加えて空気の入りを多くしなければ、全体でのバランスがとれないのではないか、ということである。
 現在はダクトを無視した方法を採っているが、これはこれでいいものの、それ以上のものが必要だ。できれば、リプレースのデイトナ製のスポンジエアクリーナー、K&Nの旧タイプのパワーフィルターを改造する方法も考慮していいのではないか、と考えた。
 いずれにしても、現状のままでもっと簡単に結果が出せなければ、雨天時もガンガン走ることになるかもしれないるはずだから、エアクリーナーボックスは必需であり、ボックス本体への加工はできない。
 そこで、思い出したように古いSR FILE誌を引っ張り出して、そこに出ていた写真のようにエアクリーナーカバーの後ろと下側にシャシーパンチを使用して16mm径の穴を数個開けた。思わぬところで、真空管アンプの製作工具が活躍するとは。
 すっかり忘れていたが、セロー用のダイノジェットも空気流入量の増大化を勧めている。
 どうしてスカチューンにしない、と言われるだろうが、今のところ、ノーマルキャブレターのエアクリーナー側のクランプする部分の幅が小さいために、パワーフィルターのとりつけそのものへの疑問がぬぐい去れないのである。SUDCO MIKUNI、あるいは旧モデルのVMタイプのキャブなどに比べると、この部分の幅はそれらの1/3ほどしかない。ここへホースバンドをかけるとなっても、その幅の方が大きいのである。エクステンションなどが一般には受け入れられないため、現状ではエアクリーナーボックスを活かしたままの方法を採りたい、というのが本音である。
 
 満を持してテストを行う。パイロットのスクリウを指定の2回と1/2回転戻しから、2回と3/5戻しにセットしてエンジン始動。しばらくしてアイドリングの確認をすると、またまた下がって900回転ではないか。しばらくスロットルを一定にしてエンジンを回した後、メーター読みで1000〜1100回転ぐらいに針が来るようにセットした。パイロットスクリウは3回もどす。
 そこら辺を走ると、全体をググッと持って行かれるようなフィーリングが支配する。エアクリーナーボックスカバーの加工前より一段とこの感覚が増している。ローギアで5000回転当たりまで引っ張れる。ボボボッという状況も一切ない。重い感じが強かったSRがいい状態になってきた。
 エンジンには申し訳ないが、各ギアで右手の手首をグッとひねっても影響は少ない。どうやらいいようだ。これだけではわからないから、次に長い距離を走ってテストを行うこととして、本日は店じまいだ。



[ インプレッション その2 ]

2001年 5月19日()はれ
 午前10時半、昨日改修したSRを引っ張り出して、無制限のテストを行う。とりあえずはモービルガスを平田石油で入れて、出発。
 まず、宇和町へ進路を取る。快調なこと。すばらしいものだ。法華津(ほけつ)峠も難なくクリアする。が、しばらくして異変に気付く。排気音が高くなった感じが強いのだ。ひとまず、下宇和のどんぶり館でカツ丼をほおばる。

 余談だが、ここのカツ丼はなかなかイケル。春に一度経験しているので、今回も、とは感じたのだが、少々げんなり。量、味などは満足なのだが、如何せん、仕上げがマズイ。いわゆる半熟の卵の状態とカツの割り下の浸し具合が以前とは違っていた。気付く方が「困った奴」とは思うが、こういった少しだが肝心なところがリピーターを獲得できるかどうか、ということになるのだよな。

 そこを出て、明間(あかんま)から右折して歯長(はなが)峠を通って帰るコースを計画する。ディフューザーディスクを見ると、カーボンが多い。ちょっとセッティングが濃いかな、と思ったが、細いドライバーが無いのでそのまま走る。どんなにやっても振動などが強い感覚が同じだ。
 一度帰ってドライブチェーンを張り直して、再び走行。今度は津島町から下波を通って宇和島までのコースを採る。速度は出ているのに、自動車がススッと前へ出る。SRがタルイ感じがする。乗りながらいろいろなことを考えていた。
 再度宇和島へ帰り、訪問を約束した松野のOさんを訪ねるため、ダムサイドからのルートを採る。しばし会話を楽しんだ後、Oさん宅からの帰り道、心にヒッカカル案件に結論が出た。
 「今の状態はノーマルのXT-500だ」。そう、感覚が全く同じだ。それだけ、キャブレターの内部パーツ改造が発揮されていない。記憶にあるXT-500の乗り味と同じということは、ノーマルのSRよりはきびきびしているが、どことなく不完全燃焼。今のWR400のようなスパッとしたところ、軽い感じがない、というところだ。
 思いを巡らしながら、次のことを考えた。

●キャブセッティングをこれ以上薄くすると、「ここぞ!」というときにダメになる。
●今のままのセッティングで手っ取り早くイケル方法はディフューザーディスクを増やすことだ。

 再び帰って、スーパートラップのディスクを8枚から10枚に増やす。祈るような気持ちで、走行を開始する。時間も時間だから、いつものコースを採る。
 「何だ。何だ?」、尻の下からフッと持ち上げられるような、「前へ」と軽く進む感覚が増してきた。務田(むでん)の登りでも100km/hほど簡単に出せるようになった。後続の車が見る間に小さくなる。つい、さっきまで、自動車にあおられ続けていた同じ僕のSRがだ。帰ってディスクを見ると茶褐色のカーボンが付着している。間違いない。若干リッチなキャブセットが効いている。本当に過不足無い。すさまじい変化だ。第一に排気音が気にならない。トンネルの中を走っても先ほどとは違い、音質上好ましい方向になってきた。
 結局5時間ほど乗車していたのだが、ようやく隠されたSRのポリシーが分かったような気がした。これ以上は夜に向うから結果の確認がとれない。本日はこれで打ち切る。



[ インプレッション その3 ]

2001年 5月20日()はれ後くもり
 昨日は走りすぎたせいか疲れが残っている。続きを纏めると10枚にディスクを増やすと排圧が感じられなくなってフワーっとスピードが上がり若干丸い音になって、結構気分良く走ることが出来たのである。
 今日はテストを中止したい、と思ったのだが、明日からしばらくは天候が良くないらしい。午前中はPowerBookのP.T.Kにかかりっきりだったので、午後2時過ぎからテストを行うこととした。ルートは宇和(新しい道)〜八幡浜(夜昼トンネル)〜大洲〜宇和島のルートである。いつもと同じエンジン始動、快調な滑り出し、十分満足。途中、宇和のT君宅を訪ねた後、新しい道を通って八幡浜まで出る。快調だ。
 ところが、夜昼トンネルに入る辺りからおかしくなってきた。風も出てきた。おかしいというのは排気音で気付く。妙にパンパンという感覚の音が大きくなったような感じがしたのだ。駆動系がジャラ付く。乾式クラッチでも油温が上昇してくれば少々エンジンには酷な状況かな?、とも感じる。
 にもかかわらず、鳥坂(とさか)峠では、だらだらの登りながら120km/hに少しずつメーターの針が近づき、後方の自動車が小さくなっていく「事実」を知って、空恐ろしくなってアクセルを緩めた。宇和町からの帰りは若干元に戻ったが、どうもガスがリッチなようだった。
 帰宅して急遽パイロットのスクリウを1回と5/8回転戻しのSR400のセットで行ったが、エンジンは止まってしまう。それでは500の標準である2回と1/2回転戻しにセットしてエンジンを回す。このタイプのキャブはどうもプリセットの意味合いが強く、VMタイプのエアスクリウのように、回転の上がったところと下がったところの中間なんてものは存在しないのかしら?。でもどうしても安定しないから3 回の線は変更することが出来ない。
 一安心したのもつかの間、何か変だな?。そういえばオイル交換までに残り500kmぐらいだ。プラグも同様に点検をしてみよう、とプラグをはずす。スプリットファイアーのSF-426Cを使用しいている。普通でも若干電極付近の碍子は煤けている。感覚としてはNGKなら6番〜7番までをカバーするようなアバウトさのプラグで、SF-426Cは7番に近い仕様、と解釈している。
 BP(R)6ESでは本当にジャストの結果が出ていた。デンソーでは若干熱価が高い方に幅があった記憶があり、W20EP-Uを使用することとした。Rはプラグキャップにまかせるとして、プラグは抵抗なしを使用する。スプリットファイアーの適合表にもあるとおり、抵抗入りプラグは、極端な例だが、NGKの6番は抵抗入りとするとノーマルの5番に近い。もちろん点火システムにもよるが、およそそういった状況、と僕は判断している。
 プラグを換えてエンジン始動、エンジンは温もっているのでプリップしたところスパトラのディスクからバッと煤が飛び出してきた。タコメーターの反応が鋭い。ついさっきまでだとスッと上がって下りるのにモタツキがあったが、今度はそれもない。キャブレーションの関係はこれでよかろう。またまた、時間切れだ。本日はこれまで。



 
インターミッション
 過去何度かノーマルに戻したい、と思うことがあった。特にうまいところまでいって、急にガクンとダメになったりすると、今までやって一定結果を出したことが、ほんの些細なことで無になってしまう、このことに腹立たしささえ感じる。
 今回も、バイカーズ・ステーション誌の昨年(00年)12月号を見なければ今回のこういった改造など行っていないはずだ。逆に、一般に「SRなんてこんなもんだ」と決めつけて、それよりは、こんなような改造で少し良くなった、としたところだけでOKをしていたのではないだろうか。
 僕の場合はたまたま最初期のSR500に乗っていたし、XT500にも乗っていた関係から、発売当時からSR400がすごく魅力的だった。昨年(2000年)までのモデルでは、400は相変わらず快調だが、500はずいぶんと良くなったなー、と感じていただけであった。
 今のSR500('96モデル)を購入して、すぐさまノーマルマフラーのエンドに穴を開けた。感覚とプラグからヌケがわずかばかり良くなったが、途端に「パーン」というアフターバーンが頻発し出す。SUキャブなのに、こんなに薄いガスの状態でエンジン回しているのか、と感じた。この辺から何とかしたい、と思いはじめ出したのだろうか... 。
 当然、今回の改造レポートも日々の予定に忙殺されながらも、キャブの動きなど、手を伸ばせば物に届くという僕の部屋の資料を読み返し、気の付いたことをメモ書きして、どことどこを触ればどういったことになりそうだ、とか、その結果を得るために、こういったテストをしようかなど、メインブレインを働かせている。時として失敗した悪い夢を見たりするし、酒を飲んでいるときなどにアイデアが浮かんでくるときもある。この一文も5月24日までの天候が悪い間に記したものである。


[ インプレッション その4 ]

2001年 5月24日(木)くもり
 天候不順が続き、僕の予定が満杯で何も出来ないでいた。平日午前5時頃からエンジンを回せば近所に迷惑がかかるためにできない。たとえ100m程度押して外通りへ出、エンジン回して走るとしても、雨になると次が大変だ。青空工房の宿命でもある。
 土曜日(26日)に松山へ行く必要があり、トライアンフで行くかSRで行くかどうするか、いずれにしても、それまでに今やっているSRの改造に結果を出しておきたかったので、無理を承知で休暇を取ってテスト走行を行うこととする。思いつくところの確認だし、日暮れまで4時間ほど取れるから時間的にも十分だ。

前回までに変更したものをざっと纏めると
●エアクリーナーカバーの穴開け
●ディスクを8枚から10枚に
●パイロットのセットを3 回に
●プラグを交換
となる。

 もしこの状態でのテストでダメなら、交換したプラグの状態とスーパートラップのディスクの枚数による判断に限定すると、次はキャブのニードルポジションを変更する。それに伴いパイロットスクリウを多く戻す、という程度になる。
 意外に気付かないでいるが、エアクリーナーのスポンジエレメントは掃除をして置いた。わずかに黒くなっていた。次のクリーニングに便利なように、オイルはK&Bのパワーフィルター用を流用する。カバーに穴開けして以来、汚れ方がひどい。この辺の道路事情を反映しているのかもしれない。

 今日のテストはどの辺から走行するか、時間も時間だし、先日と同様の条件で近いところ、松尾峠〜三浦〜寄松のコースを採った。まず最初はW20EP-Uのプラグからだ。調子いい。この気分が変わらないように... 、と思っていたが、三浦に入って、海からの風も少々あってかしら、途端に夜昼トンネルを抜けた状態と同じ症状になってきた。無月(むずき)のトンネルを抜けた後、寄松の長い緩やかな下りでは後ろからの自動車に抜かれる始末。速度は出ているのに何かしらおかしい。
 帰ってプラグをBPR6ESに交換して、再度同じコースを走る。時間の経過だけが違うのみで、全く同じ症状であった。先日のテストランニングから薄々気付いていたが、いつもよりガソリン消費が多い。

 ここまでのテストで問題の一定のところはクリアーしている。プラグが燻るまでに数キロメートルも走行できるのだ。ジェットのセッティングを含め大半はクリアーしているのが感じられる。
 万一、元に戻したら、また悶絶状態になるのは分かり切っている。たとえその症状が出なくても、現在の腰から持ち上げられる加速、よどみなく上がるエンジン回転、気分のいいライディング感覚は消え去るはずだ。でも、どことなくおかしい。そこがどこか... ?
 
 ノーマルのままのキャブに手を出しているか所で残るはニードルポジションだけである。今回は濃い状態だから薄い方向へクリップを移動することとした。先に記した1段=1mmのニードルジェットの長さが占める部分の働きがどういったことになるのか、キャブレターをはずして、ニードルクリップを上から2段目にセットして再び取り付けた。もう、慣れっこになっているから、取り外し、取り付けにかかった時間は20分に短縮できた。
 先に掃除して置いたW20EP-Uでテストする。ガソリンスタンドの関係で、今回はいつもの三間〜広見へのコースに乗り入れることとした。

 エンジン始動はいつもと同じ。エンジンは冷えていないから、すぐさま走り出す。夕刻の自動車が多い。こんなところで事故やってしまうと身も蓋もない。が、SRは先ほどのプラグ交換して直ぐの感覚以上に、明らかに何かが違っている感じがした。ガソリン補給から国道56号線を北上し、光満(みつま)から三間町までのだらだらの登りは快調そのものだ。すでに10kmほど走行している。務田(むでん)までの急な登りに、アクセルを一ひねり、一瞬のタイムラグの後、グーンと加速し始めた。リャリャ、これは何だ?... 。
 三間から広見までのコースは自動車が一定の速度で流れない。先に自動車をやって、しばらく待つこととした。その間にスズキのγ250が過ぎていった。黄色いハーベイカラーのモデルだ。違反を知りつつ、70〜80km/hで追いかける。「エッ、SRってこんなに速かったかしら?」自分でびっくりしてしまう始末。造作もなく追いつく。しばらく併走して一気に抜き去る。相手はとんでもないものに抜かれた、というまごついた感じがミラー越しに分かった。そりゃそうだ、エキゾーストノートはまぁまぁで乾いた音質だし、それ以上に乾式クラッチのガチャガチャ・ヒュ〜のノイズの方がウルサイのだから。
 警察の鬼北(きほく)署の前を慎重に通り抜けて停車。後ろから来たインプレッサを先に行かせて、車のいなくなった頃を狙って各ギアで引っ張ってみる。ローでも6000回転ほどメーター読みで回る。フライホイールにカンリンの重いのを着けているから、そこでギアをつなぐことは出来ないが、そういった調子で回してシフトアップすると、3速で100km/hぐらいになってしまう。
 こういった確認の後、通常よりもアクセルを開けて引っ張りながら5速の通常運転をするのだが、タコメーターの針が電気式のように小躍りして、何かバーチャルのレースをやっているようで仕方がない。50歳にもなって、はやる心を落ち着かせることができないのだ。全く困ってしまう。須賀川(すかがわ)ダムサイドの下りもスピードを落としているつもりなんだが、先に先にSRを運ばなくてはならない、という気分になってしまった。
 わずかな時間だったが、多くのことを経験して帰宅。すぐさまプラグを点検。ホッホー、中心電極付近がいい具合だ。上はもう少し濃くてもいい。
 スプリットファイアに交換して、またもやテスト。今度は過去の日々と違い、長い距離で起伏のあるところを走る。南に進路をとり、渋滞の中と松尾の登り、引き返して、宮下から坂下津(さかしづ)のルートをとった。流石に今度ばかりは要領を得ているし、宇和島署の前を通るし、後の祝杯をあげなくてはいけないので、大胆且つ慎重にライディングを行う。
 先ほどと同様、今度は一層スムースさと力強さが増した、という相反する気分が占める。ガソリンは同じ銘柄だから、スプリットファイアの影響が大きいのだろう。素晴らしい気分で、ライディングを終えた。見上げると、夕刻の曇っていた空が少し赤みの入った青色になっているのを感じた。全てが成功だ。
 残念ながら、ライディングイメージが脳裏から消えず、深夜まで目が冴えてしまって、祝杯どころではなかったんだ。結局午前2時近くまで、頭の中で纏めをやっていた。
 しかし、重大な難点が待っていたのだけど.... 。



[ インプレッション その5 ]

2001年 5月26日()くもり時々はれ、
 松山への往復とも一般道を通ることとする。交通量は少ないが、マナーの悪いドライバーの多さには閉口する。僕はバイクで四輪よりは小さいため相手のこと考えて車間距離を取っている。今回も前が保冷車で、その前が見えないので車間距離を多く取っていたときのことだ。そういうときは必ず僕の前へ無理矢理入り込むのがいる。保冷車が一定速度で走っているのが分からなかったのだろうかしら、僕を抜いたのがイライラしているのがよっく分かる。バカみたい。
 途中、中山町の紅葉谷で止まってプラグを確認、状況はいいが、やはり上が薄いようだ。松山では、旧知のカワサキショップ・サキヤマの社長にプラグを見せて、「パイロットを少し絞った方がいい」との結論になって、そうしたが、今度はつながりが悪い。2回と3/4程度にした。

2001年 5月27日()くもり一時雨
 この状態で、復路もテストしたのだが、いい場合と悪い場合がある。いい場合は国道を60〜70km/hで走っているときなど、快調なこときわまりない。市街地にはいると、今度はレスポンスが悪くなる。要は一定速度域で走行している間はいいが、バリアブル状況になると、どうもマズイ。あらゆる回転域での安定性がない。ここが気になって仕方がないのである。

 帰宅して、すぐにキャブのばらしにかかる。まずは、メインジェットを#170、#180でテストする。170はなかなかいい。が、どうしても変わってしまうところがある。#180では高速域はいいが、低速域とのつながりが悪い。パイロットスクリウも散々触った。
 どんなに頑張ってもダメ。もはやこれまで!改造ニードルジェットの使用を断念して、ノーマルのニードルジェットにもどし、メインジェットも#165にして、夕暮れの市内を走る。
 リャリャ、かなり良いではないか。僕もこの頃には完全にダメになってしまっていて、ダイアフラムスプリングと負圧の改造をすっかり忘れていた。エアクリーナーケースカバーに穴を開けていることと合わせて、実はこの改造が一番効果があったのではないだろうか、ということなのである。
 本当にあと少しのところまで来た。この状態で結果がよければ、ダイアフラムスプリングの伸展カット、負圧穴の増大、これはお勧めとなる。長かったが、ここまで来た。



[ インプレッション その6 ]

2001年 5月29日(火)くもり
 何度も何度も頭の中で考え机の上で纏めた。今日はファイナルテスト、次の6月は実用度のテストだ。繰り返して自責するけど、3つのことを同時に行って、最初に掲げたニードルジェットを断念してのことだ。方法がテストランニングにならざるを得ない。松山往復にしても同様で、快適な走行などは蚊帳の外のことであった。

 今日は松尾峠〜三浦〜寄松のコースを採る。セッティングなど同じ。スーパートラップのディスクは10枚のままだ。
 走ってみると、かなりいい線を行っているのが分かる。が、何かしらおかしい。本来、ヌケがいいはずなのにレスポンスが悪い。強いて例えると古い話だが昭和51年排ガス規制を受けた自動車のようである。何かおかしい。
 帰ってプラグを見ると、下が濃い状況である。今更キャブ調整?、散々やって今の状態に落ち着いているから必要ない。残りは10枚のディスクを8枚に戻してみることだ。とっさに3000回転付近の悶絶が頭を走ったが、吸入側をいじっているから起こることはない。

 ディスクを8枚にして再び同じコースを同じぐらいのペースで走る。今度は妙に落ち着いた走り方をする。ホワイトブロスの説明書にもあった「確実にパワーアップします。それ以上を望むのなら.... 」の一文を思い出した。最初にマフラーをホワイトブロスのスーパートラップに交換したとき以上の変化をしているのは確実だ。よどみなく回るエンジン。無理矢理5速でアクセル上げてもノッキングもなく付いてくるエンジン。もう少し、もう少し走ろう、という感覚になってきた。あと少しのところまで追いついてきた。

 夕刻、永井モータースのK君にキャブの調整をしてもらう。3回と3/4〜5/8戻しにする。わずかだが過不足無いものになった。少しリッチなところもあるがディスクは相変わらず煤け方が少ない。排気音はエンジンが熱くなると同時に大きくなる。乾式クラッチのノイズと合わせて、想像以上の大きい音を発している。当のライダー(僕)がウルサイと思うのだから、周りは相当な音のはずだ。がそんなに大きな音でもない。実に不思議な音なんだ。でも、どことなく今までで一番安定している。ずいぶんと回り道もしたが、この辺りが現状での到達点かもしれない。



2001年 6月 2日()くもり
 吉田まで軽く走る。なかなか快調だ。音がうるさい、と感じる。このことを解除するにはなかなか難しい。SR400のようにスムースに、かつ調子よく、とまではいかない。が、どことなくちぐはぐな500の欠点はかなり押さえられているのではないだろうか。今回のキャブ改造はそういった面への対応も含まれているわけである。 
 朝夕は涼しいが、夏を迎える陽気になって来始めた。今までの改造を行い、走行性を報告したレポートは何だったのか?。ニードルジェットを改造して装着し、それに付随する吸入排気の関係を修正し、一定成果は出たが「これまで」と断念して、持ち上げていたものを一気に落とす。これが良かったかどうか。
 が、結果が良くないものは通常では出されない。しかし、アマチュアは今回のようなことをやって見ることも必要だし、結果が悪くても出すこと自体が必要ではないか、と考える。
 当然、レースの世界においても同様にプラクティスから始まって、本番の天候、コースの状態、ライダーの状態など、事細かにデータ蓄積されているものを検討して本番を迎える。そして結果が待っている。
 もちろんレースはレースとして「一発の勝負」だ。今回の僕なんかのレポートは一つには「なかなかいいや」という一方で、ダメな面が出てくるのではないか、結果を予想しながら、僕が考えたことを全く風邪の対処療法のように数ヶ月に渡って実行したまでのこと。その結果、キャブレターの加工で、まぁまぁ使えるのは「負圧の取り口の穴拡大」「ダイアフラムスプリングの改造」であった、というわけだ。
 今のところこの改造キャブレターでおかしいところは起きていない。SRそのものは今までよりも元気で動いている。これから夏のシーズン、それが終わって、秋口、そして冬を迎えてもなおSRに変化が出ないかどうか、これはまたまた未来の話になってくる。今のところは分からない。
 それに、2000年モデルまでの400ccに関しては残念ながら検討してはいない。そういった、少しばかり変則的でもあり、SR 500という過去のバイクに対して行ったちっぽけな改造を長々と報告しただけに過ぎない。
 次は、リプレース可能(と聞き及ぶ)なPLOTのスーパーサウンドのインナーコア(フィットすれば)とディスクを装着してみたい、と考えている。まだまだ、おもしろさは残っている。
 本当に止められないのである。

 
SR500ノーマルキャブレターモディファイ一覧(最終)
 ニードルジェット  スタンダード
 ニードルポジション  スタンダード(3段目)
 負圧取り出し穴径  3.5mm(φ)ノーマルは2mm
 パイロット(スターター)ジェット  #47.5
 メインジェット  #165
 パイロットスクリウ  3 回 1/2 〜 3 回 5/8
 ダイアフラムスプリング  10mm伸展、10mmカット
 エアクリーナー  カバーの後ろと下に16mm(φ)の穴開け数カ所
 エアダクト  エアクリーナーケース内の部分を切り取り
 マフラー  ホワイトブロススーパートラップ、ディスク8枚



[ 考察 ]
 とうとうキャブレター本体にまでアマチャンの手が伸びた。禁断の世界に踏み込んだ、と言えるかもしれない。が、幸いなことに失敗してもパーツがすべからく揃う。そのため、経験と勘でニードルジェットを削る行為に及んだのかもしれない。
 今回の改造では3000回転付近の悶絶状態のことを重視しすぎて、少々やりすぎたことも分かった。今回の僕の行為のうち、ニードルジェットの改造はお勧めはしないが、スプリングの改造と負圧の穴開けは少々イケルことが分かった。

 ヌケが悪い、音質が悪いなどでマフラーを変更する。エンジンの性格に対するエキゾーストパイプの容量と長さ、マフラーの容量などは一斉考慮されていない。吸気に関しても同様である。
 こういった面からすると、「ノーマルマフラーは一般ユーザーが想像する以上に優れた性能をもっている」ことは間違いない。ストックの状態で、少なくとも2回のオイル交換ぐらいまでの期間(4000km走行)は乗ってやっていただきたいものである。

 ストックのSRを乗り慣れていると、英語のチューニングアップという意味合いから異なるが、ストックよりいい状態にしようとして改造を行ったとしても、「もっと走るようにしたい」、「(エキゾーストノートの)音を良くしたい」、という理由が多く、「自分のSRをどういった方向付けするのか」、が明確ではないため、一般にはどうしてもストック(ノーマル)の味付けにちょっとスパイスを加えた感じで終わってしまうのが常ではないだろうか。
 今回のキャブレター改造を行ってみて、SRそのものが持っているポテンシャルは相当に高いのではないだろうか、と感じた。特に400ccのエンジン(2000年モデルまで)は、ほぼ完成しているのではないか、と思われたし、現在のSR400のエンジンにあっても同様の感が強い。したがって、SRのエンジン性能を遺憾なく発揮できる環境があれば、初心者にとっても今回の改造方向は間違ってはいない。

 しかし、これを最初から一般に普及させるとすれば、ヤマハというメーカーとしては「できない」ということだ。少なくとも、SRというオートバイは新車から乗り続けて、10年も20年も、雨の日も晴れの日も乗れる日常の足でもあり、ツーリングマシンでもあり、レーサーに改造してでも乗り続けられるような方向づけをしている、と僕は確信している。そうやって乗っていただくとメーカーとしてはうれしい限りだし、現在のSR400なら今後は一部改修はあるにしろ、そういった方向性を持っているように思う。
 メーカーとしてもユーザーの意見に耳を傾け、ユーザーが出来うる規程範囲内での改造を施されるような方針をも加味して継続生産されている、と聞く。
 そこに、オーナーとしてどういった改造を施すか、ここがSRのおもしろいところでもある。僕は極端な改造は避け、あくまでノーマル然とした方向性で行っているところである。その意味ではエンジンのボアアウトと同じで、今回のことは僕の行き方から逸脱するかもしれない。また、いつもながら、これらが、絶対、あるいは絶対に近い成功をする、というものでもないために、一般にはお勧めしないのである。

 今回の改造で、トライアンフ同様、SRでも「ずっと乗っていたい」感覚が支配し始めた。唯一ダメなのは、シートが僕のライディングポジションにフィットしていない。もう少し薄く、後ろへ長いものが必要だ。しかも後部のシートレールが見えないものが、である。
 何度も言うが、この改造を2000年モデルまでの400でやっても僕のような結果は出ない。そうかと言って500に施しても僕のようにはならない。改めてノーマルの偉大さを感じざるを得ない。が、こういった、さわれる要素の多いこともSRのいい点であり、おもしろい点でもある。 
 SR400の2001年モデルは市内では見かけないものの、連休には数台他県ナンバーの新しいのを見たし、今後とも「日本を代表するオートバイ」の一台と確信するSR(400)が愛用され続けることによって、生産が続けられることを願って筆を置くこととする。
 
 

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