SR400/500用乾式クラッチの改修
4月に装着してこれまで、故障らしい故障もなく快調に作動してきた乾式クラッチだが、次のような症状が現れたので、早速調査をして改修を行った。
まず、雨天走行を行った後の件だが、雨に濡れる場所での長期駐輪はなるべく避けるように願いたい。理由は簡単である。クラッチ部分カバーの前側切り欠きから雨水が進入し、そのままカバー下部に溜まるからである。
この状態で乾燥させたりすると、必ずクラッチが張り付く。これを無理矢理やるとどうもまずいようだ。
洗車した後も同様の結果になる。むしろ洗車の後の方がエンジン、クラッチとも冷えた状態だから、事態は悪くなる。確実に分解して、クラッチディスクの点検フリクションプレートの清掃などが待っている。しかも、ペーパーなどで削り取ることが出来ないので一層やっかいだ。
次の方法をお勧めする。
-
雨天走行後、必ず雨避けのある場所に止めること。ツーリングなど一時的な駐輪はその必要がないが、一泊などのときは、必ず雨水を避けるように駐輪すること。
-
洗車した後は、ワックス掛けした後でいいので、エンジンを必ず回して、クラッチ内に溜まった水を外に出すこと。信じられないほどの水が飛び出してくる。そして、少しでいいので走ってやることをお勧めする。
次はメカニカルな面での問題点だ。
-
クラッチディスク、フリクションプレートを装着してプレッシャープレートを取り付ける。このときのスプリング、ボルトはダイシンのスペシャル品である。聞くところによると取り付けボルトはチタンらしい。ところが、僕のものだけかもしれないが、どうもこのボルトがよろしくないようだ。まず、しばらくするとクラッチの切れが一定しなくなる。エンジンの熱からは一部分遮断されているし、クラッチ部分の通風もなかなかのものがある。にもかかわらず、どうもクラッチの切れ方に変化が見られる。
-
そこで6本のボルトをはずして、再度規定のトルク(0.8kg/cm)で締め付ける。ところが、一部のボルトにトルクがかからない。あわててはずすとネジ山部分が伸びているのだ。このまま締め込むと確実に切れる。
チタンだから丈夫なはずなんだが、どうしてこうなるのか、疑問に感じていた。当然リプレースしなければならない。何で行うか。そう、ノギスで正確に長さを計ると24mmであった。これは純正のボルト長と同じだ。応急のため、全てを交換する。
ついでにメッキがパラパラはがれるスプリングも純正に戻したのだが、これは長さも一緒だけどバネレートが違うので、ダイシンのスペシャルスプリングのはがれるメッキを先に取り除いてから装着した。
以後、クラッチのおかしな切れはなくなったのだが、先に記したチタンの状況がさっぱり分からない。参考書をひもとくと....。
まず、ポジポリーニのカタログでおよそのことが理解できた。まずは6mm径のボルトでは締め付けトルクが0.6〜1.0kg/cmとなっている。アルミの場合はそれから0.1kg低い数値だ。この面ではダイシンのスペシャルボルトもクリアしている。
ではどうして伸びるのか。原因はおもしろいところにあった。まずは強硬度アルミニウム製品の使われているものは何か。スプロケット、リム、マフラーなど。チタンはエキゾーストパイプ、バルブリテーナーなどだ。どうだろう、アルミのスプロケットなどを除いて、それ自体にかかる負荷を分散などするもの、応力を考える場所に使うものはどこにも存在しない。ボルト類などもスプロケットの歯先と同様の処理を施されているにも係わらず、サイドカバーの取り付けなどに用いられているに過ぎない。しかもトルク管理が指定されている。
乾式クラッチの場合でも、強力なクラッチスプリングの伸び縮みに、あるいは半クラッチのときの伸び縮みが強力な回転方向に掛かる力に対しては弱みを見せたのではないだろうか、と推測する。
マグネシウム合金にしても、クランクケースカバーなど、イオン化傾向でアルミと接触したときにバーストするなどのことも過去のことになったが、こういった、動くものを止めるボルトに掛かる応力などはまだまだ一般の「鋼」に対しては追いついてはいないように感じる。ステンレスでもそうであった。今では包丁など「ステンレス鋼」が存在する。やがては「アルミニウム鋼」「チタン鋼」というものが一般に出回ることであろう(笑)。
ダイシンさんには申し訳ないが、この変更によってずいぶんと安心感が増すものである。ダイシンの乾式クラッチを装備している人は少ないだろうが、別の面からでもいいので、軽合金の特性など、どなたか、僕の考え処理に対してご意見があれば、ぜひお聞かせ願いたい。
[もどる]