点火コイルとプラグコードの関係とキャブ調整

 別項でトライアンフを例にして点火コイルとプラグコードのマッチングを少々述べてみた。トライアンフではキャブセッティングはそのままでよかった。ところがスーパーサンダーという点火コイルを装着している僕のSRではプラグコードを取り替えただけではダメであった。
 話が前後するが、真のキャブセットは出来ていなかった、あるいはストックのキャブレターでは満足な結果が出せなかったのではないか、と感じてしまった。それでは現実はどうだったのだろうか?

これまでの状況
 今回のキャブセットに至るまでは、スーパーサンダー点火コイル〜TYLERのプラグコード〜BPR7ESのシステムで動いていた。バッテリーレス方式で、代用コンデンサーはヤマハ純正DT200-WR用だ。発電方式などはストックのCDI方式である。
 当初、キャブレターのセットはダイノジェットの真似をして、結構気に入ったフィーリングを示していた。これはこれで良かったのだが、スーパートラップが真価を発揮し始めると、吸気が追いつかないなどの状況が出てきて、それを対処する、そうするとプラグが燻る。今度はその対処、それをするとまた違うところが出てきて、それをまた対処するなど、病気の風邪の対処療法のようなことばかりを行っていて、最終、キャブレターのセッティングが出て来始め、ついにはトライアンフ同様に6番プラグが昇天しそうになり、プラグの状況から判断して7番を装着して、全体として、まぁまぁのところまで持っていくことが出来ていた。
 これで、しばらくは何の不安もないはずだったのである。ところが、プラグの焼け方に一抹の不安が過ぎった。前回提示した写真を見ていただければお分かりのとおりだが、その後、碍子部分がおかしい燻り方を示すようになったのである。
 つまり、電極の周囲は少し濃い状態で変わらないが、電極周辺の碍子の燻り方に黒い部分、白い部分がまだらにあって、焼け方にムラがある、と感じたのである。
 たまたまトライアンフで、ダイナコイルに変更してキャブセッティングが出始めた頃の実験結果とスーパーサンダーを取り巻くSRと状況がニアイコールであったことから、もしや?!... 、と思い、2001年12月16日(日)に手を下したわけである。
 やったことは、まずTYLERのプラグコードをスタンダードのフジクラ電線製にしたこと。プラグを新品のBPR6ESに変更したことであった。
 ここで改めてSRの点火系で重要な部分を紹介し、検証したい。

スーパーサンダーがディスコンになった理由?
 スーパーサンダーとノーマルのコイルを比べると1.5倍程度の大きさである。コアの鉄心はループさせてある。ストックは両端に鉄心を出したもので、一次・二次ともコイルの状況は容量が小さいものであろう、と想像する。
 おそらく、ヤマハが排気ガス対策からSU(CV)キャブを装着し、希薄燃焼方式を導き出すための結果からの処置ではなかったのか、と想像するのである。始動性云々が先に取り上げられて、この方面、つまり排ガス対策に注目が集まったのは'01モデルになってキャタライザーなどの装置が付加されてからだが、実際はもっと排ガス対策に早意地点から手が入れられていたのではないだろうか。
 そこへオレブルの藤井氏が点火系を見直す、とばかりに、まずは点火系の重要部品の点火コイルに着目し、スーパーサンダーをリリースしたのではないだろうか。製品自体はなかなか優れものであった。
 ノーマルと換装して、プラグの焼け方がぐっといいものになってきた。抵抗値の関係から純正のプラグキャップを用いるように指示されていた以外、注意するものはなかった。それ故、トライアンフで結果を得ていたプラグコードをTYLERに変更した。するとプラグがドンシャリの焼け方になって、上は薄い・下は濃いというキャブセットは全く修正のしようがなくなった次第である。
 もし、ノーマルの点火コイルで... 、と考えてみてはいたが、おそらくスーパーサンダーに変更したら、こういった考えには至らなかった。それほどのパフォーマンスを示していた。
 ところが、オレブルから伺ったのだが、スーパーサンダーは製品の製造過程が相当に難しく、大量に生産できないとのことであった。僕の場合と同じように、スーパーサンダーをチョイスしたときのノーマルキャブを使用しての吸排気系マッチングの許容範囲が狭い点などがあって、製造中止になったのではないか、と想像するのである。

僕のSRについて施したこと

2001年12月16日(日)はれ時々くもり
 いきさつはともかく、スーパーサンダーを使用してプラグコードをスタンダードなものに変更し、プラグをBPR6ESに戻してみての結果から言うと、「良くなった」、である。不思議なことだが、トライアンフ同様に高性能製品を組み合わせてみても、性能アップにはならないし、一品のみをカンフル剤のように付加してもトータルでは落ちる、という結果を学んだ。
 ここに至る前まで、特にエンジン内部がカサカサしていた状態から、どことなく潤沢な状況で燃焼している、という感覚が大きく支配した。しかし、三間から広見を抜けるいつものコースを走らせると、下り坂でアクセレーションが速度に追いつかない。もちろんホイールの回転部分の整備がよくない点もあるが、それ以上にエンジンの回転がスムースに上昇しないのである。
 大方のセッティングはフィットしつつあった。たかがプラグコード、とも思えるが、やり過ぎは危険である。
 帰宅して急遽、ニードルポジションを三段目のスタンダード位置に戻す。その他は全くさわらずだ。同じコースを走る。今度は下りでも加速している。
 帰宅してプラグを見ると、電極周辺がわずかに黒いだけ。その他は白く燻っていて、新品同然の状況である。40kmぐらいの走行距離ででも「新品プラグが真っ黒」などの変化がない。素晴らしい結果である。今後1000kmぐらい走っての結果から、あるいは季節が変わってからか不明だが、キャブの再セッティングを行わない、といけないかもしれない。
 急激に変化した、といっても、わずかにプラグコードを交換しニードルポジションを変更しただけである。

BST34のキャブについて
 僕のノーマルキャブはダイノジェット風の改造を行っている。大きい変化はないが、わずかにレスポンスが向上したように感じる。
 TYLERのプラグコードに変更してからは、どのようにさわってもドンシャリの状況であった。こればかりはどうすることも出来ない。どのようにニードルポジションを変更し、パイロットスクリウを開け閉めしても修正することは困難であった。
 トライアンフのVMキャブを検討したとき、多くの方がFCRをSRに装着するのは、BSTのSR(CV)キャブはSRのストック状態を主に、先に記したように点火コイル同様に排ガス規制に関係するクリア条件から、このキャブは1988年から2000年モデルまでのSR専用として開発されたものではないか、と想像するのである。
 ヌケが悪いと言われているが、実際は効率がいいマフラーを含めて、こういったものが渾然一体となってSRの燃焼関係が構築されているのではないだろうか。特に1988年からのバックステップモデルから'00モデルまでは、この関係が統一されているように感じてならない。ヤマハもパーツ供給メーカーも一切何にも言わないし、何処にも記載していないが、今回、僕の行った一連の実験からすると、このように想像できるのである。

最終考察
 以上示したように、現状ではどうしても均一に、なおかつスムースに改造が行えない。'00モデルまででもこういった状況だから、真に排ガス規制が加わった現在のSR400では、エンジンを主とした改造はかなり困難なものになっているのではないだろうか。
 音質から来ることからヌケの悪い、と思われるマフラーも、実際はかなり綿密に考えられた末での一品で、VMキャブ時代のように、マフラー換えて、キャブをチョイトさわって、で結果が出るとはとても考えられないまでに、SR400(500)はメーカーで完成されている。正に「逸品」といってもいいようにも思えてくる。
 言いたくはないが、今の時点では、マフラー容量から始まって、吸排気系、点火系には一切手を加えず、軽量化、走行性能をアップさせるようなやり方が流行るのではないか、と考えられる。そうした方が絶対に有利だ。特に初めて乗るバイクがSRだとすれば、かつてのような感覚で改造はできない、と断言してもいい。普段「絶対」とかいう表現はしないのだが。
 仮にノーマルででもマフラーだけ変更すれば性能が上がる、というヨシムラのエキゾーストシステムでも2001年モデルからは少々難しいものがあるのではないだろうか。もちろん、インラインフォーのエンジンのようにお互いが引っ張り合うなどのことが無いシングルエンジンでは非常に難しい。オフロードモデルとではエンジンを含め動力特性、性能曲線、セッティング状況などが違う。ましてや、500クラスの重いクランクマスを持ったオフロードモデルなど無い状況だから。
 僕と僕のSR500ではここまで来るのに大変遠回りをしたように感じられるが、一般の地方在住のアマチュアエンジニアが行った行為から出された結果として、SRユーザーに受け入れていただければ幸甚である。

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