カンリンの重量フライホイールについて
このパーツは少々考え物だ。本来なら " Sick'n SRを何とかする
" のところですでに出してなければならないはずだ。なのにどうして?、と思われるだろう。それは...
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今(2001年)から25年ほど前に遡る。当時ホンダがバイアルス125というトライアル車を出した。サミー・ミラー監修である。CB125Sのデチューンエンジン。大きい減速比、比較的楽な乗車感など、結構販売台数を記録した。一つの欠点が提示されたのは数年後にヤマハがTY-250というトライアル車を出したことで急浮上した。それは車重だ。どうして125が250より重いの?、という簡単な疑問だったが、解決するのは現在まで待たねばならない。
TY250のニューモデルがミック・アンドリュースの協力で完成したとき、TY-125というモデルが出た。国内では大月選手がそれで戦った、と報道され、僕も即座に購入した。走らないの何のってなかった。これは単なるスタイルだけだった。後で知らされたのだが、実は大月選手が乗っていたのは175だったんだ。
僕は知らないものだから、最初にフライホイールを削った。点火の関係などから、DT-125のフライホイールは用いなかった。今度はエンジンを回していれば難なくバイクは操作できたが、ツーサイクルだからエキスパンションチャンバー〜マフラー(スパークアレスター)の関係がフィットしなくなる、などで結局手放した。
えらく長くなったが、カンリンのフライホイールに変更する場合はTY-125の経験と今のSRのエンジン特性のことも考えねばならない、と判断して遠慮していたわけだ。
3年前だったか、小野カツジさんのBSA-SRのテストレポートで、カンリンに軽量タイプのフライホイールを作ってもらい装着したところ、この程度の重量が500ccのSRにはいいようだった、という記載を見つけた。「やはりナ」。僕の考えは間違ってなかったようだ。
また、旧ペンタグラムのSR(XT)ベースのレーサーのフライホイールを重くしていった時の報告もあったんで、これらのことを総合して、一定速度域での慣性重量が加算されるフィーリングはいいかもしれない、と判断して取り付けを試みよう、と決めていた。
が、またしても問題が出てきた。改造すると、元に戻すには3万円近くの金額が必要だ、ということである。これは頭が痛い。しかし、人様に売るときに元に戻せばいいわけだから、この際だ、BSA-SRのクランクケースカバーをデイトナから取り寄せるよりは安い、と判断して購入に踏み切った。
が、次なる問題も出てくる。それではかいつまんで記載しよう。
最初に何をしなければならないか?。それは今付いているフライホイールをカンリンに送付しなければならない。つまり、送られたフライホイールにカンリンのフライホイールを装着して返送される、というシステムなのである。この時点で一つの問題が出てくる。年式によって、ノーマルのフライホイールが異なる場合は、車両変更によって、再びカンリンと相談、という具合になるからだ。
当然のごとく、返送されるまで数日間だが、SRには乗車できない。
数日して加工されたフライホイールと、そのケースを受け取ることになる。
取り付けだが、おそらく加工が必要になるはずだ。これは、アフターマーケットのこと、いくらボルトオンのキットパーツであっても、最終は装着車両に合わせて修正を加えなければならないのは当然だが、今回ばかりは少々状況が違う。
僕のモデルは最終のバックステップ使用の500ccモデルだ。カンリンがCMで出しているのはその前にリリースされたモデルで、一部変更がある。
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まず、エンジンをフレームに止めてあるボルトで左側下部の10mm径一本をはずして入れ替えなければならない。この場合、外のナット止めになっているものを内側にナットで止めるようになる。そうしなければ絶対にインナーフライホイールカバーが取り付かない。
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この時に必要なのが、自転車のハブシャフトを止めるときに使う厚手のワッシャーである。添付のワッシャーと併用して使用することだ。
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次に、おそらくクランクケースにある金属のオイルラインにインナーフライホイールカバーが干渉する。ここはヤスリなんぞでは加工できない。リューター、やすり、サンドペーパーを駆使して、オイルパイプに干渉しないようにする。やりすぎると、その部分に穴が開くので、十分注意することだ。ただし、先に記したように、各モデルによって状況が異なるので、全てのモデルに加工修正が必要かどうか、は不明である。ここに、パッキンを介してインナーフライホイールカバーを装着する。
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フライホイールを元通り取り付けるのだが、この取り付けトルクは不遜の事故を起こさないためにも確実に守ること。
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アウターフライホイールカバーは液体パッキンを薄く塗布して取り付けること。そうしないと、この部分から水が混入するおそれがある。
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添付のスプロケットカバーを装着して完了だ。
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装着後の難題として、普通のメガネレンチがクラッチアジャスターのナット部分に入らなくなるので、この部分のクラッチ調整には若干注意を要する。
これですべては終了なんだが、ここまでの作業を振り返ってみると、大真工業の乾式クラッチのような完全なボルトオンキットではないことがお分かりであろう。そのために、ここまで、このフライホイール取り付けの報告をしなかった次第だ。
一応、取り付け後のフィーリングについて申し述べてみたい。
ノーマルの点火、吸排気系のSRなら別段変化も感じないのではないだろうか。吸排気系をさわったエンジンなら確実に変化が生じる。特に500ccでは顕著であろう。
まず、5速で70km〜80km/hのとき、エンジンの足の伸びがいいように感じる。もちろんいい方向に。ノーマルエンジンでこういった調子だから、それ以上走る、といいうSRではもっと行けるかもしれない。しかし、そこからの振動とかその他の良からぬ面が出るなどは不明だ。
バッテリー装着車では若干始動ミスで、クランクが回り過ぎてのケッチンが来るかもしれない。バッテリーレスのSRでは、このケッチンがまれにくる程度だろう。特に下まで一気にキックアームを下ろさない場合に多く発生する。
装着して一番いいのはエンジンの対回転安定性がノーマルの比ではないことだ。それほどの安定性は確実に分かる。春夏秋冬、いずれの季節もとわずにエンジンがいかなる時でも安定して回転する、ということがどういったことなのか、言わずともお分かりのことと思う。
取り付け時の細かい修正、フライホイールが加工されて、元に戻せないことなど、これらの点を気にすることなく取り付けてみよう、という方がいらっしたら、僕はお勧めする。確かに高価だが、特に500にはいいものになるのではないか、と思っている。
400ccにはどういった感じになるのか不明だが、想像するところ500とは違って、フライホイールのマスで引っ張られるように感じるところが多く出るのではないか、と思われる。
非常にアバウトだが、こういった状況でのことと、あらゆるSR400/500に有効とは限らない。重量フライホイールそもそものが、カンリンのロングストロークエンジンにフィットさせたものとしての開発だから、いくら軽量のタイプとはいえ、結果が全て良好とは言えない。繰り返すが、僕の場合にしても、ノーマルの500で吸排気系をさわっている上でのフィーリングだ。
はなはだ申し述べにくいが、この程度でレポートを終えておく。
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