SR400/500のエンジン始動方法

 最近SRのエンジン始動におけるキック方法がよく分からない、とかいうことで、ずいぶんと質問を受けます。これから述べるセオリーに従ってエンジン始動を試みても「かかるとき」と「かからないとき」が多い、という質問が多数です。はて?どうしたものだろうか、と私なりの考えを巡らせたのですが、そもそもはエンジン内部、ピストンの上下させる位置を決定せずに、クランキングしてしまうことにあったようです。
 今、教習所でどういった始動方法を指導(笑)しているか定かではありませんが、大半の教習車はセルモーター始動のオートバイでしょう。教官の中にはクラッチレバーを握ってセルモーターを回そうとする不心得者もいらっしゃるのではないでしょうか。当然そういった方はギアがどの位置であろうと、キーのみをOFFにして停車させることを勧めるかもしれません。まるで自動車の教習と同じ行為をオートバイに当てはめることにする、といった類です。
 このような中で、数少ない一般の古い式のオートバイであるSR、キック始動で、おまけに大きいボアのエンジンですしデコンプという圧縮を一部逃がす装置がマニュアルで作動、キャブレターもマニュアルチョークという、極めてオートバイ本来の基本を保ったところにあるわけですから、その始動方法でつまずくと、これからが思いやられる、という感じがしてならないのです。
 ずいぶんとオートバイに携わった私でも、SRの前身であるXT500のキックは少しばかり苦労した経験があります。キックアームの踏み下ろしが足らなかった、という簡単な理由が分からないのですね。どうしてSRのキックアームが緩やかなRを描いている形状なのか分かりますか?
 それでは、ストックのSRを使用して、よく陥りやすい問題から拾い上げてみましょう。

かからない理由で多い問題点
1.ガソリンタンクの上に記載してある説明書きをよく読まない。
2.始動方法は間違っていないと思うが、始動が難しい。
3.サイドスタンドを使用してキックする時に始動が難しい。
4.etc... 。

 1.の問題はどうすることも出来ません。
 できれば、数回の乗車の時は剥がさないようにして、そのとおりに始動してみられると、よく分かるはずです。
 2.の問題は次のように考えられます。
 まずは、チョークを引かずにエンジン始動を試みる場合ですが、ヤマハの多くの車種ではチョークを引いて始動することを推奨しています。すでにお分かりと思いますが、この場合はチョークを引いてエンジンを始動してください。
 もう一つは、チョークを引いたままキックをし続け、混合気の飲み過ぎで、プラグが湿ってしまった場合に起こります。チョークを戻して、キックし続けるとエンジンがかかるときがあるかもしれません。しかし、湿ったプラグでは少々難しい。
 それに、この場合は始動方法そのものが間違っている場合があります。この始動方法は後ほど。
 3.の問題は、スカチューンを施したSRに多く見受けられます。
 つまりセンタースタンドを外している場合などに起こります。大半の方々はヤマハのSRのカタログなどでサイドスタンドを立てて始動しようとしている姿を想像してキックされているかもしれませんが、あの方法はモトクロッサーのように、キックアームが短く実効作動円周が小さい場合に適用されるもので、キックアームの実効作動円周が比較的大きいSRでは、下まで踏み下ろさないと始動ミスの場合が起こりうるわけです。(そのためにキックアームがRを付けられている形状なのです。)
 
 それでは私なりのセオリーでSRのエンジンを始動させてみましょう。基本は2000年モデルまでのBTSキャブ付きストック(ノーマル)のSRで行います。表の中の写真と文章を見ながら実際に行ってみてください。
 

 チョークを引いて、キーをONにします。チョークは気温が低い場合は二段、気温が高い場合は1段とします。
 キックアームに足をかけて静かに下ろし、足裏に重さを感じるところで、キックアームから足をはずし、元の位置にします。
 デコンプを引いて、キックアームを静かに下げて、エンジン右上のマーク確認位置に金色(ユニクロームのメッキの色)が出た位置で、キックアームから足を外します。
 少々難しいのですが、数回やれば、最初の動作(デコンプを引かずにキックアームが重くなる位置まで下げる)からカンで上手く行きます。
 キックアームを下げた位置が若干違うのがお分かりと思います。
 思いっきりキックアームを踏み下ろします。踏み下ろしの感覚はキックアームで右のステップを蹴り飛ばすぐらいの気分です。この動作はゆっくりと行ってもエンジンはかかります。
 分解写真の要領で、足の状態とキックアームの踏み下ろしを感じ取ってください。

●別の注意点として、チョークを引いて始動させようとしているのに、右手は知らない間にアクセルグリップをひねろうとしていることがあります。加速ポンプこそ付いていませんが、負圧タイプのMIKUNIのBTSキャブでは燃焼室へガソリンが少しばかり多く流れます。
 そのために、チョークを引いている時の量より多くガソリンが流れるので、チョークを引いてキック始動の時はアクセルをひねるときは厳禁です。

●一度でエンジンのかからない場合は数回この動作を繰り返します。
●数回行ってもエンジンのかからないときは、チョークを全部戻し、さらに同じ方法でキックします。
●サイドスタンドで始動する場合も同じです。

 以上のようにクランキングをすればエンジンは回転を始めるはずです。
 ここで堂々巡りになってはなりませんが、私なりに考えたQ&Aを羅列してみます。



Q:キックバック(ケッチン)は起こらないでしょうか?
A:不用意なキックアームの位置ではまれに起こります。しかし、多くの場合はキックアームを下まで踏みおろさないために起こるようです。

Q:チョークを引きすぎた場合の判断の仕方は?
A:最初からエンジンが回りそう... 、という感じがせず、カツン・カツンとキックアームがストッパーに強く当たっても一向にその気配がない場合は、プラグがかぶっている場合があります。チョークを引いて5回もキックしてもエンジンに音沙汰がない、となればチョークの引きすぎでしょう。
 この場合はプラグを交換すればいいのですが、プラグをはずして、アクセルを回さず、デコンプを引いて数回キックしてやった後、元のプラグから火が飛ぶことが確認できたらプラグを装着し、チョークを引かずにキックすればかかる場合があります。
 
Q:キックするときの決めごとはありますか?
A:まず、デコンプを引かずにキックアームが重くなるところまで踏み下ろし、キックアームから足をはなして元の位置にします。
 デコンプを引いてインジケーターにマークを出させます。ここでキックアームから足をはなして元の位置にします。
 ここでキックしてエンジンを回します。
 このように、キックアームの動作は必ず、元の位置から踏み下ろす!、と憶えておかれるのがいいようです。

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