Sick'n SRを何とかする最終章・高次元バランス
点火プラグその後
 簡単に行こう。キャブレターセッティングはスタンダードのSR500だ。パイロットジェット#45、メインジェット#162.5、点火プラグはNGKのBPR6ESである。つけ加えるとガソリンはレギュラーだ。僕のSRでノーマルと違うのは、プラグコードがFUJIKURA-NGKジョイント-TAYLERとなっていることと、キャブレターはダイアフラム制御スプリングの改造をしていること、それにエアクリーナーエレメントのオイルが今はK&Nを使用していることである。
 前回のテストではPOSH製とミクニ純正のメインジェットの違いを申し述べ、ノーマルのセッティングに戻したところであった。
 
 2003年 2月 2日の日曜日、久しぶりの晴天だったのでテストの続きを行った。

再テスト1
 決して追試ではない。このことは前もってお断りしておく。
 ノーマルセッティング、相当に煮詰めてあると思う。が僕の場合はどんなにしても... 、つまりキャブレターのジェットとスクリウセッティングを変えずにBPR6ESのプラグの焼け具合から判断すると、いずれも碍子部分が白い。特に金属部外周から奥まった部分も異常に白い。誰が見ても焼け気味だ。白いぶつぶつみたいなものは出ないが、金属外周が少々焦げているだけで、碍子と中心電極は新品以上に白いのだ。
 何だろうか、全く分からない。
 とにかく、キャブ(の全ての)セッティングはそのままとして、まずは点火プラグを数種変えてみるが、すべからく同じ状態を示す。唯一スプリットファイアSF426-Cだけが良好だが、金属部分が少しばかり焼けている状態だから、薄いことは確認できた。
 それでは点火プラグにBPR7ESを使用してテストするのだが、比較的落ちつくも、今度は焼けムラが大きく支配する。ブラインド部分は真っ黒だ。

考 察
 このセッティングは間違いじゃないか、と感じた。しかし、フィーリングはスタンダード然として申し分無い。
 テストコースは宮下周りのショートコースだ。気分が乗れば宇和島道でスロットルを開けることが出来る。利点は多いが、そういった気分にならない。走りながら思いを7年前の夏に戻した。
 ちょうど、ホワイトブロスのスパトラに交換するときであったが、最初のSR500の時から唯一リプレースマフラーで成功したのは今は無きヤジマスポーツのスリップオン3インチロング管のスーパートラップだけであった。「キャブレターは絶対にさわらないでください」という説明書きがあったのを覚えている。
 その時のノーマルSR500の走行状態を思い出すと、即座に浮かんだのはホワイトブロスのスパトラだ。今のSR500もこれに交換したけど一向に調子が出なかった。それ故、「Sick'n SRを何とかする」として数々実験したところである。
 確かにノーマルのマフラーでは何とも言えない走りしかしなかった。そこからさんざんやって、ノーマルのマフラーに戻った。
 が、ノーマルのように走らない。オイオイまた堂々めぐりじゃないか。そうなんです。ここのところが重要なんです。
 つまり、点火系統などに手を入れずキャブレターの動作をよくするとどうなるか、はっきり言ってアクセルレスポンスと同期しない。この点を重視すればいい。その判断としてプラグの焼け方を参考とするのは青空工房の僕の世界だ。
 6番では焼けすぎる。7番ではイマイチ。次なる方法は... 。

再テスト2
 人間は簡単に済ませようとする方向にいつも走るものだ。僕もご多分に漏れずまずはプラグに手を出した。
 今のままのセッティングで6番では焼けすぎ、7番ではいいがムラが出る。それならスタンダードのB7ESではどうか。手持ちがなかったのでB7EVXを使用してみた。ン!、なかなかいいじゃん。しかし、加速なんかがカッタルイ。言うまでもなく、燃焼効率はいいが、点火時期が遅くなっているような感じがする。
 次はBP7ESだ。これはR付きのプラグより焼け気味になる。一体なんだろうな。何が原因なんだ。
 フム〜、6番で焼け気味なら、メインジェットを上げてみるのはどうだろうか。これなら何か変化があるのではないだろうか。さぁさぁタンクをはずしてメインジェット交換。慣れたもので20分だ。
 まずは#165と思ったが、穴の大きさからすると#2.5ぐらいでは変化ないだろうから、ミクニの#170に交換する。プラグはデンソーのW20EPR-Uだ。なかなかいいぞ。アクセルのツキがノーマルの比ではない。快適だ。いい気分で帰ってきた。
 が、相変わらず碍子部分が白い。BPR6ES、BPR6EVXなど様々試してみた。最終はBP6ES-IIのグリーンプラグ。このグリーンプラグが良かったが、碍子部分は相変わらず白い。
 いずれも金属部分は良好な焼けかただ。

次なるテストを前に
 一体どうなっているのだろうか。碍子部分が白いままだ。本当に良好な焼け方なんだろうか。不安とも疑問ともつかないような気分になった。
 今までの結果を逐次頭の中で考えての結論とすれば、もう#5だけメインジェットを上げて実験してみよう、としたことだ。つまり、プラグはデンソーのW20EPR-Uに再び交換。メインジェットは#175だ。
 これだけ上げると低速時なんかはパイロットジェットとの兼ね合いで上手く行かないかもしれないが、やってみる価値はある。

再テスト3
 メインジェットは残念ながらミクニの手持ちが無く、POSH製の#175に交換した。ミクニとの若干の違いはあろうが、プラグの状態とアクセル反応に注視してのテストなので、メインジェットのメーカーは無視することとした。
 結果は下がリッチになりすぎる。1速でもたつく。一般市街地では5速が必要無くなる。こういった走行結果だった。
 走行後のプラグの焼け方は最初と全く同じ。強いて言うと金属部分に囲まれた碍子部分が煤けている。

考 察
 使ったプラグをルーペで見比べる。まずは碍子部分から... 。
 僕は思わぬ考え違いをしていたようだ。碍子の白さは異常に白い、ガラス状になっているなどを除いて、突出型のプラグでは燃焼の温度が高いと外周金属部分から飛び出した碍子部分は必ず白っぽい。L字電極部分のブラインド部分が黒くなっていることを除いて、碍子の奥の部分へ行くにつれて、少しずつ灰色っぽくなる。
 L時電極の金属部分はわずかに赤みを帯びて焼けている状態だ。外周は黒く薄く煤けている。
 何度やっても僕のSR500ではこういった状態がベストである。ここから判断すると、メインジェットは#170だ。後はスロットルレスポンスだけだ。
再び点火プラグ
 メインジェットは決まった。点火プラグをデンソーのW20EPR-Uにする。いいのはいいのだが、イマイチだ。炎が燃焼室の隅々にまで行っていない感じがする。
 NGKのBPR6ESにする。よけいにぎくしゃくする。何というか、そこの辺まで火が来ているのに、排気の方を促されているようで、点火プラグの下側に未燃焼ガスが留まるような感じがしてならない。言うまでもなくスプリットファイアを持ってくると一気に解決するが、この場合はあくまで実験だから、スタンダードのプラグを使用したい。
 そこで、ケルン石塚氏のリファインプラグ(BPR6ES)に付け替える。
 いい!これはいい。L字電極の先端付近まで火があふれるような感じだ。残念ながら、この加工は今のところ、どの辺りでL字電極の先端をカットするかに良否がかかってくる。僕の場合は先端から約1mmのカットである。この位置で、わずかに中心電極の端から中心部分にL字電極の先端がかかるぐらいになる。カットしたところが横から見て垂直でなければならない。もし、釘切りをお持ちならいとも簡単に加工できる。
 それと同じようなものならNGKのVタイプが該当するだろうが、最近はL字電極の先端をV字に細めたVXしかない。しかも同程度の金額でイリジウムプラグが購入できる。このイリジウムプラグも今のVXと同じ格好だ。
 僕はかねがね中心電極の細いプラグは中心電極の構造自体が弱い、と感じている。しかもオートバイの場合は先端部分の減りが早く、白いカスのようなものが付着する。おそらく先端部分は丸く減っているのだろう。元々は水平にカットされているのだろうが、減った場合はルーペで見ても判断しづらい。
 そういったものを3000km毎に交換するのはもったいない、と感じる。そして、時としてこのタイプのプラグは死ぬのである。しばらく放置すると復活するが、再び装着し、しばらくすると急に火が出なくなる。
 少なくともスプリットファイアの中心電極の太さはほしいものである。
ノーマルの吸排気系から
 これまで点火プラグを主として点火系に注目して結果を出した。と同時に、旧BTS-34キャブを使ったモデルの排気系に対して、一般には相当に間違った考えが行き渡っているように感じた。
 若干データは古いが、2J2辺りの最初のSR500のヨーロッパ仕様では圧縮比が9.0、指定ガソリンオクタン価は99以上、プラグはNGKのBPR7ESである。これに対しての国内仕様はピストンが1E6のXT500のままだったし、レギュラーガソリンを使用するわけだから、通常の500シングルマシンの醸し出すものとは大きく異なるものが常に支配するのは確実なのである。400と乗り比べると明らかに違うが、「やはりSRは500だ」といった感じにはならない。
 この何とも言えない感じを何とかする方向付けで、僕のSR500にはキャブレターのダイアフラム制御スプリングをカットして反発力を弱め、エアクリーナーエレメントの空気通過性能を向上させたに過ぎないだけだが、ノーマルの排気系を含め、パフォーマンスは相当に高いと判断できた。その、かなり高いパフォーマンスを400よりトルクフルという方向付けのみにしてしまっているように感じるのだ。
 特に国内仕様ではピストンヘッドはフラットに近い。まるで四輪の乗用車並に仕立てられていたのではなかったのか、と考えてしまった。そういった構成の中で、いかにパフォーマンスを発揮させるか?。
 一般に悪く言われているようだが、実際は効率のいいノーマルマフラーはエンジン本体の内部部分をさわらなければ捨てるべきではない、と確信する。
 その証拠にケーヒンのFCRキャブレターの39mmはノーマルのエキパイ・マフラーを使用してもパフォーマンスが向上するセッティングがなされている。
 そういったことから僕のSR500の吸入・点火・排気系の最終仕様は次のとおりだ。
  1. エアクリーナー ノーマル(エレメントオイルはK&N)
  2. キャブレター ノーマルBST-45 (メインジェット#170、パイロットジェット#45、ジェットニードル-ノーマル・クリップはセンター、ダイアフラム制御スプリング短縮、圧減少)
  3. 点火コイル ノーマル
  4. プラグコード FUJIKURA-NGKジョイント-TAYLER-ノーマルプラグキャップ
  5. 点火プラグ NGKBPR6ES、リファインBPR6ES、デンソーW20EPR-U、スプリットファイアSF-426C
  6. エキパイ、マフラー ノーマル 
 これでいいのだ、といったことになるはずだったのだが、実際はそうならない。特に吸入系統は何度やっても薄い混合気に悩まされる。が、調子は決して悪くない、という不思議な現象が支配し始めたのである。
 そして、不思議な現象が季節とか天候を無視して、大まかなところで吸入系のセッティングミスで生じるのか、点火系のセッティングミスで起きるのか、この時点では全く分からなかったし、点火プラグに右往左往... 。

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