今(1999年)から31年前、最初に入手したホンダのスポーツカブはとんでもない代物だった。近くのショップにピストンリングの交換をお願いしただけで快調になったが、根本の対策、圧縮とかそういったバルブ回りは手を付けていなかったので、非力さはただちに出現した。
25年前に購入したTX650では新車から2000km走行時、ベースパッキンからオイルが漏れた。購入先の内田自転車商会さんの整備ルームにて、僕の目の前でヤマハ本社のスタッフに分解整備をやっていただいたが、オイル漏れは治らなかった。結局、エンジンの換装という、今では少々考えられないことをやっていただいた。
これらと唯一違うものはトライアンフである。これは、プッシュロッドチューブがさびてしまって、おまけに、エキゾーストパイプが取り付け部分から折れてしまったために、シリンダーヘッドから上を分解した。分解前においての確認では、オイルの圧送もできていたから、クランクケースなどは分解する必要がなかったのだ。
こういったことから、快調なものには手を出さない。不特定多数のユーザーを対象にしたバイクとして、一つの完成された心臓部に、現在のところ快調なら手を入れなくてもOKだ、ということを僕は守りたいのだ。
だからして、僕のSR500は新車からずっと定期的にオイル交換をしているし、全体としては快調だから吸排気系だけのチューニングにとどめ、カンリンのフライホイールでスパイスを加えたわけだ。
これ以外には機関に対しては何も行っていない。
Sicken SRでも報告したとおり、今の状態で行うとしたら、どうしても吸気系ではないだろうか。排気系はホワイトブロスのスーパートラップに換装してあるから十分である。
それでは早速、軽いチューニングを行ってみることにする。今回はエアクリーナーボックスのダクトをカットしてみることとした。
■用意するもの
・カッターナイフ
・ドライバー各種
・サンドペーパー
・白マジックペン
・櫂出版のXJR1200のムック本
・紙と鉛筆
・ダクトをはずしてカットする場合は、合成ゴム系の接着剤
いつも言っているとおり、これは改造である。いかなる場合も自己の責任で対処をお願いしたい。このことで、いかなることになろうとも当方は一切関知しない。
◆まずは、右のサイドカバーを取り、エアクリーナーケースからエレメントを取り外す。
◆次にエアクリーナーケースに接着剤で取り付けられているラバーダクトを取り外す。
◆キャブレターとシリンダーの取り付け部分をもう一度確認しておくこと。
●このところは、500ccの場合、キャブがフレームに当たっている可能性が強いから、その修正も含めての確認である。当然当たっている場合は余計な振動がキャブに伝わるので当たらないように修正をする。ラバーインシュレーターへの取り付け修正だけでOKと思う。
◆取り外したラバーダクトを下から7cmのところに白マジックで印をつけてカットする。
●全長14cmなので約半分の位置となる。ここはスクェアにカットしてかまわない。ノーマルどおりにスラントをつけてカットすると、今度はカットする前と同じように、下から上に空気を送り込むことになり、エアフィルターのウレタンの直下側しか空気を吸い込まなくなる可能性があるためだ。
●この行為はノーマルのマフラーに対しても有効になる。理由はエアクリーナーのウレタンをはずして、エンジンを回し、掌をエアクリーナーのインレット部分にかざして、アクセルを開けるとかなりの吸引力を感じるはずだ。つまり、ムック本のXJR1200のダクト取り付けとは違い、エアは直接キャブレターに入ることが分かる。したがって、チャンバー効果を上げるためにも、空気の流入効率を上げるためにもSRはダクトをカットするだけでいいはずである。
◆カットした面を粗めの布ペーパーで綺麗にする。
◆エアーで削りかすを飛ばす。
◆元通りにエアクリーナーボックスに接着剤で取り付ける。
◆エレメントを取り付けサイドカバーを取り付ける。
これだけである。
以前は、エアクリーナーのカバーに穴を開けるなどのことが勧められたが、現在ではK&Nなどのエアフィルターが普及したのでその必要もなくなった。
また、ノーマルのエアクリーナーボックスは一つのチャンバーの意味あいを持っているので、エアフィルターだけにして、いたずらに四方八方から空気を取り入れるのがいいのかどうか、せっかくのブリーザー再燃焼機能も壊したくはない。そのためにはエアクリーナーケースは取り付けたままの方が好ましい、と僕は考える。
この行為から上を行くのであれば、デイトナから出ているフィルタースポンジに変更するとか、K&Nのノーマルフィルターのリプレース品(要一部修正)に変更するなどをしていただければ、一層効果が分かるのではないだろうか。
試乗してまず分かるのは、若干レスポンスがよくなっていることだろう。VMタイプのSRに乗ってらっした方なら、アクセルのツキがよく似ていると思われるはずだ。唯一VMタイプと違うことはアクセルワークがラフでもエンジンが止まりにくい、ということにある。
逆に言うと、雑誌などでケイヒンのCRとか、ミクニのTMRなどを使用すると性能が向上する、と述べてあるが、空気の流入量などのことは述べられていない。今回のこの方法でのチューニングを施しての結果なら、まだまだノーマルのSUキャブレターを使いきっていない、と言えるのではないだろうか。
最初に心配していたカンリンの重量フライホイールの心配はなくなったので、取り外さないこととした。
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