スプリングを交換して最初に感じた時も、リアが沈み込む感じが強かった。切り替えによってリアのポジションを二段目にすると少しつらい。このままで乗り続けると「当然のこと」のように体になじんでくるのだ。結果として、リアタイヤが早く減り始める。フロントタイヤはほとんど影響ないのが不思議でならなかったのだ。市内のアゼモト鞄店のご主人がストック状態のSR500に乗っていらっしゃるが、走行距離を別にして、僕のSRがリアタイヤの減りの早さとフロントタイヤが減らないのは異常である。
しばし考えたのだが、どういったことでこうなるのかがようやく分かったように思う。要はライディングポジションもさることながら、リアにトラクションを多く持ってきた場合、フロントは異常に軽くなりすぎるのではないか、ということなのである。決して、ハイパープロのスプリングが悪いのではない。むしろ、サスペンションも、キャブレター、エキゾーストのチューニングと同じようにツメを行わなかった僕がうかつだったわけである。
●どうするか
そこで常人なら、タイヤサイズを変えたり、シートを変更したり、となるのだが、そもそものSRが必要とする、目に見えないバランスのいい前後の重量配分はどうなっているのだろうか、に注目すべきではないだろうか。実は僕も別冊モーターサイクリスト誌で浅川トライアンフの記事を目にするまでは、バイク全体の挙動に目が向かなかったのである。その記事で目にしたのは、フロントフォークをトップブリッジから突き出すことであった。突き出しの長さによってキャスターが変わる。これを行うことによって、トレール量も変わるから、走行性がストックと異なるものになることである。すでに、僕のSRはスプリングが変わっているので、ノーマルと同じままでは、そのパフォーマンスを出してはいないわけだ。
たとえば、35mm径のインナーチューブを持つフロントフォークなら、メーカーや車種が違うものをリプレースできる。当然フォークオイルなどで特性変更はできるが、おそらくは、突き出しの長さで走行フィーリングを変更するはずなんだ。ストックの状態なら、この方法がもっとも簡単に走行変化の確認が取れるものなのだ。
●突き出しを20mmにして
だが、いったいどの程度からはじめるのか検討がつかないが、とりあえず、20mmから行ってみた。実のところ、これ以上になると、フロントフォークのストローク量に影響を及ぼすし、ハンドルバーの調整が出来なくなるからである。おまけに、前傾がきつくなってしまうのである。
この20mmにしてのテスト走行結果は、いやはやびっくり。フロントタイヤがしっかりとグリップしている。フロントタイヤも自ら路面をかき分け(?)て走っているように感じる。が、路面の凹凸からのキックバックもすごい。振られるところも出てくる。それに、リアタイヤの作動が軽くなりすぎるように感じる。
●突き出しを17.5mmにして
こういった感じを受けたので、次は17.5mm程度に変更する。文章にするとさっさと調整できるようだが、この方法がいくら簡単でも、ノギスで正確に左右の突き出し量を出して、トルクレンチでボルトの締め付けをして、と1回ずつの作業だけでも大変なのだ。
そして、20km程度の走行テスト。これを、一気に数回行うわけだ。そうしなければ、モニターなどを装着していないので、僕の記憶が時とともに薄れてしまう。
それでは、この17.5mmの結果は、というと、実によかった。が、フロントフォークの作動が好ましくない。リアタイヤのトラクションはなかなか良くなったが、タイヤ交換によっては、この差が変化してしまう。特に今のメトリックサイズなんかでは顕著であろう。
●突き出しを12.5mmにして
それならマージンをとって、12.5mmに再設定してテストを行う。
結果は、実に前後のバランスがとれて快適である。すでにエアクリーナーの加工も終わっているから、アクセルワークに対するレスポンスと車体の挙動との間にタイムラグがなくなったように感じる。このままの状態で、タイヤを交換しても現行のリムサイズなら、メトリックサイズのリア120/80、フロント100/90辺りはタイヤの溝面全体を使うことが出来るように感じる。その後は、フロントフォークのオイルを考慮すればいい。
●考察
こういったことで、セッティングを終えたのだが、意図していない12.5mmという数値は、よく考えてみると次のようになる。
以前のSR500/400はフロントタイヤの直径が19インチだった。ヨーロッパ輸出向けには現行の18インチメッツェラーとディスクブレーキの仕様になっていた。
国内モデルでは、この状態をとばしてドラムブレーキ仕様になって、走行バランスをメーカーがあらためて取りなおしたものであろう。
今回僕が結果を出した12.5mmは19インチから18インチにして、なおかつ、その上に半インチ小さくしたフロントホイール径のものになったわけだ。
つまり、17インチの扁平率の小さいサイズのタイヤを入れたものになるわけだ。どうりで作動がクイックになるわけだ。
ストック状態でこの12.5mmというのはハンドルクランプのポスト部分とフロントフォークの上面がツライチになるようにすればいい。そういえばGX750の2型ではこの突き出しの位置が刻印されていたが、1型にはそれがなくって、ずいぶんと苦労したのを思い出した。
しかし、問題がないわけではない。
それは、僕の体重が80kgある。僕より軽い人が乗ればかまわないだろうが、重い人が乗れば、突き出し長を元に戻して、リアショックを1段強いポジションにするだけでいいのかもしれないし、フォークオイルの粘度を硬いものにするだけでいいのかもしれない。
このレポートを読まれた方で、ご自身所有のSRで実験をされた結果を報告していただければ幸甚である。
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