SR500は失敗作だったのでは...

 いきなり叱られそうな題目になってしまった。オイルクーラーを装備して 以降、相当に改善されたSR500に乗ってみてのこと、400と500は似て非なるもの以上に... 、ということから思いつき、まとめたことだ。
 未だかつてオイルクーラーの必要もないオートバイに乗ってきたし、エンジン本体を改造などしなかったから、その必要性も無かったのも事実だ。2003年 夏、関東では冷夏が続いていたが、この地方では10月初旬まで残暑の名残が続く状況にあったため、SR500にはオイルクーラーフィンなるものを装備した り、10年来使っていなかったSTPのオイルトリートメントを使ったりした。
 ことに 9月26日、日中の気温が30℃を上回る中、松山市まで100km程度の走行を終えようとしたSR500のエキゾーストバルブ付近からのカタカタカンカン という音を聞いたときには戦慄が走った。まさしく四国で最初に購入した2J2の頭番から始まるSR500最初期型そのものの大欠点が近年のモデルにでも出 てくるのか、と感じたからだ。

 ここで話を 1977年に遡らせよう。「500は男のロマン」とばかりに出てきたXT500を一も二もなく購入した。XT500そのものは唯一の欠点である6V電装以 外、大変素晴らしい完成度であった。誰しも「これのロードモデルがあれば... 」と考ていたはずだ。
 翌年の1月、同様の形式であるホンダXL350をロードモデルに改造する(今は無き)城北ホンダの記事が雑誌「モーターサイクリスト」に掲載された。こ れをXT500に応用しようと考えたが、費用だけで20万ほど必要だから、断念せざるを得なかった。
 とにかくXT500は始動時のコツさえ飲み込めば、暗い電装を除いて最高にいいオートバイであった。僕が行った最終仕様は、フロントフェンダーを YZ250のものに変更し、試作モデルのカラーリングのようにリアフェンダーをホワイトに塗装して全天候型のマシンに仕上げていた。乗車感覚は馬そのもの だった。
 これがXT500の大まかな僕の記憶だ。とにかく丈夫であった。今のようにトラックレーサー用のいいタイヤとセロー程度のブレーキ周り、それに12V電 装があれば素晴らしいマシンになっていたはずである。

 翌年問題のSR500がリリースされる。最初に見たときから予約を入れた。ある人に請われるままXT500は即座に売却した。このことはXS650と TX650を入れ替えした時、両車を比べながら泣く泣くXSを売却したが、TX650が想像以上につまらないことを知って愕然とした二の舞を避ける目 的も あった。
 その後、その気に入らなかったTX650も売却し、それらの金額を頭金にしてSR500を迎え入れた。ここから悪戦苦闘が始まる。SR500そのものに 懐疑 の念を抱くようになってしまうきっかけを作ってしまったが、XT500の方が良かった、という感じは持ったけれども、SR500をさわることの方に喜びを 感じて いたから、XT500を買い戻すなどの考えは浮かばなかった。
 迎え入れて2週間、走行500kmの初回点検とオイル交換をやり終えてしまった。最初のトラブルめいたものが出始めたのはその後からである。
 まずはカムチェーン。こいつが信じられないほど伸びるのである。シリンダー右下の調整ナットでのギャップがわずか1mmに満たないのだが、2週間に1回 ほどのペースで調整を余儀なくされた。むしろウナリが出る程度にしておかないと持たないのであった。
 2000km程度の走行になると、カムチェーンは落ち着いたが、エンジンが温もるとロッカー周りからカチカチカンカンという音が出始めた。主にエキゾー スト側が主だけど、オイルが熱くなるとインレット側も鳴っているようだった。耳を澄ますとカチカチ音として聞こえるため、タペットクリアランス調整を行う のだがゲージ測定では大きく狂っていない。にもかかわらず、カチカチカンカンという音が突如出始める。
 ほぼ同時購入した友人のSR400では一切出ない。不思議な話だが、SR400の方が開発が後だろ?という疑問がこの時には湧かなかった。XT500を 修正したエンジンの方が絶対に安定感があるはずだ、と考えたからだ。
 数度目のタペット調整のとき、何気なくロッカーアームを指でつまんで... 。何とグラグラするではないか。XT500よりインレットのバルブは大きくなっているが、エキゾースト側は変わっていない。クランクケースはCDI化され ているので変わっているが、シリンダー側はこの部分だけ変更になっているだけだ。しかもSR400と大半が共通ということなのになぜ?。
 ここで、この問題はしばらくおあずけ。

 2J2のSR500の外装関係は結構いろんなことをやった。すでに当時から自分流のスタイルに仕上げたいという気分になっていた。
 最初に行ったのはブルックランズから取り寄せたスーパートラップの3インチ。これはまだ持っているが、2000回転付近でウっとエンジンが止まる。どん なに調整してもダメであった。
 今から少し前の3GWの純正マフラーのように素晴らしいパフォーマンスを示さず、加速するときもモァ〜と不快な振動を伴ってスピードに乗る。パサパサ音 は大きいがXT500のようにスパッとしたものが一切無かったためである。
 フロントフェンダーはGX500の鉄板のスタビライザー付き合成樹脂製に交換。リアはブルックランズのFRPにルーカスタイプのテールライトで決めてい た。ハンドルバーだけ違和感あり。
 でも、スズキの刀狩りが横行していたように、改造ハンドルに関しては今とは比べものにならないほど厳しいものがあったからどうすることも出来なかったの である。XS650の360-26111-10のハンドルバーを装備していたが、猛者はホンダのCB-750Fのクリップオンを装着していた。トップブ リッジにボルト止めだから車検はOKなのだ。アルミの輝きが怪しい当時のマグラのクリップオンハンドルはまだ持っている。
 今のフレームと違い、リアの部分が左右一体となったタイプだから、こういった樹脂製のリアフェンダーも装着することに不安はなかったが、今のようにリア 部分が別々なら強度不安がないとはいえ、剛性のないリアフェンダーは取り付ける気にならない。
 おかしな走り方をする純正タイヤBSのマグモパスをダンロップのK-81、通称TT-100に交換した。
 ステップは作りは雑だがスチールにメッキ、安価で機能は万全、という名前のとおり、バンゼン製のバックステップを装着した。シートはモトコにした。左の リアステップステーは溶接だったから、ステップのみ取っ払って一人乗りとしていた。今でもかっこいいスタイルに仕上がっていた、と感じる。
 その後にキャブを改造してXT500の加速ポンプなしのVMにしてみたりしたが、スポーツショップ・ヤジマから3インチスーパートラップのロングサイズ に交換するとき「キャブレターなどノーマルのままご使用ください」の取扱説明書に従って元に戻した。
 結果は素晴らしいものであったし、軽量化も手伝って、かなりいい状況になってきた。この仕様で乗っていた期間が一番長い。
 残念ながらバンゼンもスポーツショップ・ヤジマも今は無い。

 再びエンジンに戻って、例の異音について腐心していたとき、突如ヤマハから裏技とも言えるような対策方法の通知があった。
 何と、それはロッカースピンドルのオイル通路にミッションの周り止め用のスプリング(90501-10062)を挿入すればいい、というものであった。 馬鹿なことさせるなよ、それでもヤマハか!と憤りすら感じたが、2本で1,000円以内という安い部品だから、早速やってみた。
 結果はGood。ほぼ許容範囲に収まっていた。同時に、クランクケースブリーザーを上向けにしてメインチューブに沿わせるよう取り回し変更もこの頃行わ れた。

 これらのこと以上に、僕の最初期型のSR500では、今とは逆に両輪のアクスル(スピンドル)ナットをセルフロックから割りピン入りに交換、穴の空いて いないエキパイを黄色に変化させないために上と下に穴が空いたものに交換など、かなりのものが購入後短期間の間に変更されてしまった。
 こんな状態だったし、金銭面で苦労して購入したトライアンフT-140Vの方が、噂よりずっといいものと確信したから、SR500に対する意識がどんど ん後退してしまい、ついには2年を待たず売却してしまった。決して紅毛碧眼の女性の魅力が大和撫子の良さを上回ったということではない。

 SR500を決して捨て去ることが出来ないものが一つだけ心の中に残っていた。エンジンを除いて僕の行ってきた自分に合わせたSR500そのもの、これ が決して心の中から離れなかったのである。そしてキャストホイールから再びスポークホイールに戻ったりして、他のモデルがすぐさま消え去る中、基本は変え ずラインナップから落ちることもなかった。そう「SRならいつでも買えるし乗れる」気分、これが一向に消えなかったのである。
 2J2のSR500を売却して数年間、SR500のインサイド的なノウハウを身につけるようになった。雑誌類でSRの「これ」と思われるものが出ると購 入した。2J2のおぼろげな記憶を頼りにして、リアホイールの(トルクロッドの取り回しから)取り付け変更、ロッカーアームの変更、オイルラインの取り回 し変更など、ともかく何がどう なってきたのかを把握しながらの1997年6月まで、SRを巡る気分はそんなに後退はしていなかったのである。
 徳島出張が目前に迫ってきた1999年5月、T-140V、RD250の整備がままならず、何もかも走らせるオートバイが無くなってしまった。
 ご存知のように、宇和島から徳島へ出かけるのは大変な苦労を強いられる。特にJRでは向こうへ行って引き返す、というように、高松での乗り換えだ。時間 の配分もあり、どうしても陸路が中心とならざるを得ない。
 思えば18年目に新しいオートバイを買う。どの車種にするか、もちろん予算的なものもあるし、日常の整備も簡単。それなら「SR」。400か500 か?、妻は400までなら乗れる。息子はまだオートバイに興味を示していない。それなら500、迷うことはない。この時まで18年の期間が過ぎ た。

 本題に戻し、新たに1台の新しい1JNのSR500を乗り始めて、ずいぶんと変わったな、と感じた。しかし、一面ではSR400にしておいた方がよかっ たのかもしれない、と感じたことも事実だ。
 これまでにこのSR500に行ってきた一連の行為はこのホームページで紹介しているところである。
 ところが、5年目に1JNのSR500に2J2と同様の症状が突如出たのである。2003年9月26日の午後、戦慄が走ったのは本当のことだ。一瞬、も はやこれまで、として「買い換え」という気分にもなったのも事実だ。それほどの気分が僕を支配した。
 この時に、SR400はどうもなぁ、今さら中古のSR500を買うのもバカらしい。オレブルの改造500もどうも納得がいかない。もし、次の大きい異変 が出れば今度は完全にSRを手放すときだ、と決めていた。

 対処として行ったSTPオイルトリートメントを添加してから助ったと感じた。このSTPは僕自身が古くから使っていたものであり、その効果のほどを知っ ていたから即座に添加したまでのことである。とにかく、ひとまずはこれでよかった。
 オイルクーラーフィンのときもそうだったが、油音を下げることはSR500のエンジンには必要なことである、と強く感じたのもあのときだ。
 一時期流行ったシリンダーヘッドフィンを大きくする改造は今のところそれほど流行っていない。僕自身がエンジンそのものをクールにするには「シリンダー より上を改造しなければダメ」とある程度解っていたから、この改造ではなく、シリンダーをデイトナの広いフィンを持ったものに変更し、純正のヘッドととも に使用するのがいい、と確信していた。
 しかし、この場合でもエンジン全体を一種類のオイルで冷却する方式、オイルタンクを別に持つドライサンプとはいえ、タンク部分の放熱対策が採られていな いSRではオイル全体を冷却する方法を採らなければならない。特にSR500には必須条件だ、と感じ、オイルクーラーを今回装備して、好結果を得た。

 

 今さら新車がリリースされていないSR500に対してとやかく言うべきではないが、1978年のSR500リリースの時、XT500と似て非なるエンジ ンを制御することがどうして出来なかったのだろうか。
 その後、SR500はドイツでベストセラーモデルとなってはきたが、まずはピストンが異なる。日本仕様のSR500は最後の最後までシリンダーヘッド以 外はXT500のままで終わってしまった。このことが何を意味するのか。
 免許制度のこともあるだろう、売れないモデルをリリースし続けることはメーカーにとっても好ましいことではない。車両全体の仕様が変わらないのだから、 ヨーロッパモデルを逆輸入するような業者も出現しなかった。
 いずれにしろSR500は2000年モデルを最後に姿を消した。

 それじゃ、XT500をリファインした特別仕様だったはずのシリンダーヘッドは一体何だったのか。僕が考えるのはいかに手間をかけず高性能にするために 考えられた結果、SR400という100ccも排気量の少ないニューモデルが用意されたものだったのではないだろうか、と今になって考えついた。
 逆に、新しいシリンダーヘッドを乗せられたSR500はとんでもないほどバランスの悪いエンジンになってしまっていたのではないだろうか。ヨーロッパで は48Uのピストンが入れられるまで、(ピストンがXT500のままの)日本ではさらに遅れててSU(CV)キャブレター装着モデルまでそれは続いたはず だ。
 カムとロッカーアームなどが完全に見直されたSU(CV)キャブレター装着モデル1JN以降、これは改善された問題と思い安心していたが、やはり熱的に 苦しい場面が出てくるのは紛れもない事実を2003年の夏に経験した。
 どんなにシリンダーヘッドのフィンを大きくしてもダメ。エンジンそのものをクールにする根本は、オイルを今以上に冷却する策を採らなければダメ。 2003年10月、ロックハートの簡単なオイルクーラーを装着してみて、確信した。

 1978年のあのとき、最初からオイルクーラーを装着しておけば... 。が、当時の道路交通車両法はオイルクーラーの使用を認めていなかった。SRX6がオイルクーラーを標準装備するまで、時にはオイルタンクに凸凹を付けて オイルクーラーのように見立て、その取り付け位置にあっても「サブタンク」とした当時のホンダにしても抜本解決できなかったモデルも存在する。
 SR500にオイルタンクを増設してオイル容量を3リッターとしてもいいが、それだけの容量を確保できるスペースは無い。

 SR500もオイルクーラーを装備したモデルをリリースしていれば... 、と考えたが、すでに時としては遅かった。

 やはり、SRは400が基本だ。過去、この項で「SR500オーナーよ奮起せよ」と題した一文を紹介したこともあった。今回オイルクーラーを装着して SR500(の エンジンが持つ)固有の欠点は改善されたように思う時、野暮な話だが、クランクウェブなどがSR500より重いSR400をボアアウトして排気量を上げて やった方が、はるかにいいものができ上がるのではないかという点が気になった。
 XT500からザッとしたものを記載してきたが、これ以上は愚痴っぽくなるし、誰も興味を示さないはずだ。SR400にしても2003年モデルからは AISが装着されてずいぶんと変わった。次期リリースモデルは抜本的に変わるかもしれない。
 いずれにしろSRは400という考えの基、基幹部分の新品部品が入手できるまで僕はこのSR500に乗り続けようと思う。

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