STP オイルトリートメントのこと

 1968年、この年の2月頃原付免許を取得して、10月頃に南宇和郡の 城辺町までホンダのスポーツカブを受け取りに行った。これが、僕とオートバイとの最初の出会いである。
 初めて乗るクラッチ付きの4速ミッション、キタナイ車体。しかし、どことなくいじめることが出来ない。当時の3,000円だから致し方ない。とにかく、 スピードが出せないままで3時間以上かかって帰ってきた。世の中チョッパー大流行だから、シーシーバーも自作して取り付けていたり、結構おもしろいことを やっていた。
 どこでどういった気分でか不明だが、タンク、フレームの塗装から始まってCB72のハンドルを付けるまでになった。エンジンは腰上のみバイク屋に依頼し た。エンジンったってOHVだから比較的簡単な金額で収まった。しばらくは快調だったが、どうしてもエンジン自体が非力なこと、この上ない状態のままで あった。
 1年後、和霊町にあった「カーショップ三愛」へ出かける。主人が好き者だったし、店をたたむまでにはクライマックスとか、ベルのTXとか、チャンピオン のプラグなど、なかなかのものが装備してあった。「STP入れてみたら?たぶん今よりは良くなるはず!」と勧められた。純アメリカ製の水飴のようなチンケ な物質が入った青い缶が僕に手渡された。
 わずかだがエンジンが改善されたかな?、というものであった。発進時「ウッ」と来る感覚は以前より増したような感じであった。
 これが、STPオイルトリートメントとの最初の出会いであった。
 次に迎えるのはトライアンフ。腰上の整備のとき、バルブガイドにバルブを入れてテストするとき、このSTPオイルトリートメントを塗布してジワリっと下 りればOKだ。そのまま、オイルに混ざってしまうので便利なことこの上ない。負荷に対しても強いのだし。もし、ここにモリブデンを持ってくると、T- 140Vの場合はプライマリー側にも回ることになり、クラッチが滑ってしまう。
 前書きが長くなったが、今回はSRのことだ。
 2003年9月26日(金)、好天に恵まれた中、午後2時頃から松山へ向けて出発。とばしたいとも思わないし、基本どおりの運転をする(空)タンクロー リーの後に着いて56号線を走る。ダイシンのクラッチが相変わらずうるさい。排気音はなかなかのものを出している。ノーマルマフラーも捨てたものではな い。
 中山の紅葉谷で一服。ここへ来るのも久しぶりだ。再び松山に向けて発信。目的地の近くに来て、エキゾースト側のロッカースピンドル回りのカタカタカンカ ンの異音に信号待ちで気付く。
 翌27日は午後3時半に出発。帰路のルートは双海から長浜経由だ。出発直後に昨日同様の音が出る。が、向原を超え双海町に入った途端、音が消えた。風は 昨日よりある。外気温も27℃程度だろうか。太陽は西に傾いている。ヘルメットのシールド越しに入ってくる日光が間もなく無くなるはずだ。
 大洲からも市街地を抜け、国道56号線へ入って宇和島までの50km強、異音はついぞ出なかった。
 「2J2当時の音と全く同じだ」この対処の方法は今のモデルでは無いんだよな。強いてやるとすると、オイルライン取り付け部分のナットのオリフィス径を アップしてやると、シフトの回り止めスプリングが入るが... 。
 また、今回は回転域が上がると消える。どうやら外気温とシリンダー(ヘッド)温、それに油温などの関連から、オイル粘度が極端に落ちることによって生じ るのではないか、と考えた。
 それなら、オイル交換がまず最初。次にエキゾーストスピンドルへのオイルライン(金属パイプ)が下から注油になっているのを上からに変更する方法とか、 オイルクーラーを視野に入れた考えをまとめながら、眠れぬ夜を過ごした。とにかく何かおかしい。
 翌日、直ちにネット上で色んなものを検索する。オイル粘度からすると、現在入れているカワサキのSFグレード、半合成10W40の耐久性が一時期から急 激に落ちる性格を持っている、と考えるのが一番だ。
 もう一点は、400では起こりえないことが500では往々にして起こりうる。それほどエンジン自体が400とは異なる。従って、SR500にはオイル クーラーの装備は必須だったのではないか、と考えた。もちろん、前身XT500の時と比べがちだが、エンジン自体と点火方法が異なることから、エンジン自 体の発熱量はSR500の方が遙かに大きい。対コストの関係などから、おそらくオイルクーラーは見送られたのではないか、と考えた。
 オイルクーラーったって、サークのコアでも最低7段だ。心配するのは「冷え過ぎ」に伴うエンジンへのダメージだ。今の季節からは考えられないかもしれな いが、9月27日の状態を考えれば十分に納得がいく。ま、小さいものも無いことはないのだから、気にはとめておくこととしよう。
 そこで、考えに考えを巡らせたところにたどり着いたのが冒頭の「STP オイルトリートメント」だ。これならDIY店に格安で置いてある。9月28日昼過ぎ、DYIショップへ行こうとしたのだが、ヘルメットをはずしてエンジン を始動すると、エンジン右もクラッチの音とは別に結構な音が出ている。アッ、これはカムチェーンだ。シャフトの沈み込んだ位置とロックナットでわずか 1mmという、わずかな調整代だが、結果はすごい。カチャッチャチャという音が消えタコメーターの動きも若干反応が良くなる。
 次に現在のカワサキのオイルがどのような状態にあるのか、確認の意味でオイルフィラーゲージを外してびっくり。このサラサラ感は一体何だろう、これなら 異音が出るのも無理からん。しかし、粘度は保っている。そんな不都合なことはないと思われるが、現実には高温にさらされると、極端に液化が進むのではない だろうか、と考えた。手持ちのelfの半合成オイル15W50を100cc程度追加。



 早速SR500でSTPオイルトリートメントを買いに行く。往復5km程度の道のりだ、エンジンのウォーミングアップにはちょうど良い距離だ。エンジン がいつもより静か。これならオイル交換してやった方がいい。とはいえ、STPの確認はまだまだ必要だ。
 帰宅してSTPを150ccほど添加。次なるテストは手渡し品を持参する手前、宇和のT君のところまで走行することとした。
 あ〜、凄まじい変化だ。というよりは、これが当然のSR500であるはずだ。そんなことはない、とお思いなら... 、とは行かないんだ。いつも、この言葉でのインプレッション、特にいい方向への美辞麗句無しでの表現はなかなか難しい。まずは、アクセレーション。グ ワーっと上がっていたのが、サーっと上がる(これでもおかしい、難しい)つまり吹け上がりがスムースなんだ。フリクションロスが改善されたのかもしれな い。
 どこからも異音は出ない。エキゾーストノートと乾式クラッチのガチャガチャ音だけが存在する。それを除けばエンジンは400ccに少しパンチが加わった ような回り方をする。5速2000回転前後でのシャクルような揺れがスムースだ。1速落とすかどうかのタイミングが取りやすい。もっともこれはチェーンと スプロケット交換によるところが大きいかもしれないが、STP添加前まではこのような状態ではなかった。
 一方でのSTPオイルトリートメントはオイルの粘度アップだけ、と言われているが、僕にはそれだけには思われない。どうしても、ノイズ防止に一役買って いる面もあるし、このことから浸透性を生かしてエンジン内部のパーツに入り込むとも考えられる。そのために、潤滑向上剤としても紛れもなく働いている、と 考えるところだ。
 往復40km、相当に気分が良くなった。T君には「オイルクールフィン」を褒めてくれたし、一定、僕の考えも妥当なレベルを進んでいるように感じた。わ ずかに600円のチューニングアップ。STP自体は相当老舗なメーカーだ。少し古い時代の設計エンジンには好適なアイテムではないだろうか。そして、テス トするに値する。400ccクラスの通常のオートバイなら、オイル交換時に20%をメドに添加すればいい。おそらく2回のオイル交換で300ml1缶使う わけだから、3000km毎のオイル交換なら、コストパフォーマンスは高いと思う。
 一度おためしあれ。

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