か つてのイギリスの人との考え方の違い

 そう、はっきり言ってものの考え方の違い、と称した方がいいのかもしれ ない。実はトライアンフT-140Vのフロントホイールセンタースピンドル(シャフト)にある左側ベアリングの調整ナットが、この24年来ほどけないでい た。
 とにかく、国産車に慣れていると、フロントもリアも取り付けはセンターシャフトを貫通させて片側クランプ、片側ナットで止める方法が採られているはず だ。ところがT-140Vのフロントの場合はベアリングとシャフトがかっちり、というかきつめにフィットされ、あらかじめシャフトがとりつけられたままの 状態で、フォークレッグにはクランプのみで取り付ける方法が採られているわけだ。
 話を24年前に遡らせると、1976年12月26日にこのT-140Vを受け取ってから2年目、冬のボーナスが近いため、その年('78年)の12月に 入って市内の末広モータースへ車検に出した。このときの整備担当者が相当な(整備に気を遣った)もので、前後のホイールのベアリングがダメになっているこ とを指摘し、国産のTNTのラバーシールベアリングにすべからく交換した。交換前のベアリングを手にしたとき、わずか2年にもかかわらず相当にガタが出て いた。
 そのときは、左側ベアリングの調整ナットはモンキーレンチで軽く緩めることが出来ていた。ところが今から3年前にディスクブレーキのフルードラインを メッシュに交換するときになって、この部分を調整しようとしたところ、この調整ナットが緩まないのであった。
 昨年、ブレーキパッドを交換したときになって大弱り。それでも、パッドをガラスの上にサンドペーパーを置いて均一に削ってOKにした。
 本年、フロントフォークをオリジナルに変更したとき、ディスクパッドの迫り出しに際してセンターが出ていないことに気づき、スペーサー制作をしたとき再 度この部分に手を入れようとしたわけである。



 ヘインズのサービスマニュアルにはこの部分の分解法方は詳しく載っていない。パーツの配置など、頼りはどうしてもパーツリストだ。少し見づらいのはご容 赦いただいてパーツリストの配置イ ラストを乗せておくが、ベアリング交換したときの装着内容としては次のとおりだ。

○ ハブの右側に内側のベアリング受け(リテーナー)を軽く打ち込む。
○ ベアリングを打ち込む。
○ 外側のリテーナーをサークリップの溝が出るまで打ち込む
○ サークリップを装着する。
○ 左側からシャフトを打ち込む。
これで右側のベアリングが装着される。
□ 左側のベアリング受け(リテーナー)を装着する。
□ ベアリングをベアリングアウターストッパーのネジが切ってあるところが見えるまで打ち込む。
□ ベアリングアウターストッパーをねじ込んでおく。
□ ベアリングセットナットをねじ込む。
▽ シャフトを回して軽く回るかどうか確認する。

 パーツリストにもあるとおり、あくまでこれはベアのベアリングを使って組み立てた場合だ。
 あらかじめシャフトが装着されたフロントホイール状態以外に何か不思議なことを感じないだろうか。これら回転部分の構成をじっくりと見ていただきたい。
 そうなんだ、ベアのベアリングを組み込みした場合にはラバーのシール部分が全くない。最初の車検を受けた時、メカニックがわずかな回転ムラというか、ゴ リゴリ感に気づいて分解したところ、シー ルが一切無いことに気づいて、ラバーシールのベアリングを使用したのだろう、と思われる。

2003年 6月21日(土)
 降り続いた雨が昨日に上って、今日も少しムシムシするけど雨は降らないようなので、午後から永井モータースのK君にお願いして、問題のナットをはずして いただいた。
 どうにもはずれないため、CRCを吹いてナットに振動を加えたのだがダメ。アウターストッパーがほどけてフリーになるまで、アウターストッパーを緩め、 右側からシャフトを叩くことを繰り返す。
 ベアリングは買い置きがあるので、ともかく左のサークリップを取って、右側から シャフトを叩いて左のベアリングを出してしまうこととした。
 はずれたシャフトには左のベアリングとセットナットは取り付いたままだ。
 もう一度セットナットを軽く叩いて、バイスにくわえてトライ。ようやくはずれた。苦労してはずした最大の理由は、ネジのピッチの関係からか、山と谷のス ムースさが無く、オイル分が一切無い状態だからユニクロメッキ部分の腐食で固着していたためだった。

 組付けは僕が行った。残念ながらシールベアリングのため、セットナットとアウターストッパーの間に隙間が出来すぎる。国産なら、片側のベアリングを奥ま でたたき込んで、反対側のベアリングはハブ内部に装着されるスペーサーに当たるまでたたき込むという方法が一般的だ。
  T-140Vでは、ハブの内側部分になるのだが、シャフトの(フランジ状)出っ張りに当たるまでベアリングは打ち込まなければならない。そうしないと、ま ずベアリングの センターが出ない仕組みなっているようだ。
 ベアのベアリングなら、セットナットとアウターストッパーとで左右の取り付け位置は数ミリ単位で移動可能だ。
 したがって、シールベアリングを使った場合、こういった作業ができない。数種フィット可能なシールベアリングの中から幅広のベアリングを見つけるのは困 難だ。
 このような状態だから、ディスクローターとブレーキパッドとのセンターを出すためには、どうしてもローター取り付けのスペーサーが 必要になる、ということがようやく分かった。

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