刀のディスコン

 君の刀は何本目?。いよいよスズキGSX750「刀」が生産終了になる。今は最後の限定1100台がリリースになっているだろう。僕はGS750のときからスズキの4サイクルバイクは知っているけど、つい、この間まで「刀」のディザイナー、ハンス・ムートの考えは知らなかった。彼曰く、スゥオードとしての刀をGSX1100のディザインにしたのではなく、侍のもつイメージをこのバイクに込めたかった、と、ある専門雑誌に記述していたが、一件無骨なスタイルに、なるほど、と思う。
 それにしても、この刀の国内リリースは寂しかった。当時はクリップオンハンドルを容易に認める御上ではないから、メーカーも渋々アップハンドル、しかも巨大なものを装着してのリリースであった。僕はDUCATIのクリップオンハンドルがダメという理由を知っていたから、この刀もそれにひっかるからだろう、と想像したし、仮にホンダのCB750Fのクリップオンだがアップの短いハンドルを流用しても、ダメであろう事は容易に想像できた次第だ。
 つまり、タンクの長さが道路運送車両法の規定値より長かったために、あの通称「耕耘機ハンドル」の装着止む無し、とスズキが判断したからだろう。皮肉にも海外ではレースレギュレーションの関係からか、国内仕様の750は人気が高かったし、国内では輸出仕様の1100の逆輸入車を必死の思いで購入する動きも大きかった。
 日本の巷では「刀狩」と称する一連の不法改造車摘発の一つとして、このバイクが血祭りに上げられたのも、当時の(からの)ユーザーには失礼だが、なつかしい思い出である。
 ところが、20年目の本年、生産を終了する、という。確かにファイナルエディションとして、シリアルナンバーはもとより、少しグレードアップした車輌など、なかなかいいものと感じているが、所詮は一般販売車輌である。おそらく、向こう十数年で底をつくストックパーツも出てくるのではないだろうか。すでに、限定ではないが、ヤマハのRZV500も主要なパーツはディスコンになっているのが実体だ。
 考えようによっては、SRのように連綿と造られないのだろうか、と思われるかもしれない。しかし、1100ccという排気量が国内でどういった動向にあるのか、現在でも通用するディザインではあるし、それなりの性能を有していても、免許制度をはじめとした一般受けしづらい多くの理由で、SR400/500のようにはならなかった、と思うのである。
 しかし、僕はこういった限定車を追い求めたりはしない。それよりは、神戸ユニコーンのリリースするコンプリートマシン、油冷の刀の方がよほどいいように感じる。おそらく、僕が最初に油冷のGSX750Rを見たとき「これはいい」と思った程だし、今回のユニコーンのコンプリートマシンに対して、雑誌にもこれが本来の刀がたどる道のようだ、と記載されている。そして、価格破壊はやってきているが、刀のファイナルエディションでも99万円、最良のユニコーンのコンプリートマシンが140万円、僕がスズキの愛用者なら迷わずユニコーンのマシンを選択することになるはずだ。
 1100台は完売になるだろう。「そういえば、あの頃こんなことがあったな〜」と思うようなマシンでは「ダメ」なのである。20年間の軌跡をユーザーの一人でもいいから引きずっていくようでなければならない。これからの20年、車検を5回パスさせてなおかつ、ユーザーグループがそこかしこに存在して情報交換もさかん、ストックパーツの流通、そして、絶版パーツの私的再生産など、刀に対して活発な展開が続けられているかどうか、僕には疑問なのである。

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