オイルについて

 2001年3月、SRのエンジンがえらく快調に回り始めた。どういった理由でということは前に記載しておいた。ところが快調なエンジンにもかかわらず、どうもおかしい。エンジンの内部がカサカサしたような状態になるのである。
 これまでの5年間ずっとヤマハ純正のSJ 10W40を使用している。このオイルはなかなかのものだったんだが、前回22000km走行時のオイル交換でどうもオイルの色から初期生産のSJが注油されたようだったのか、冒頭に記載した状況に陥ったのである。SJは半合成オイルだ。19000km走行時のオイル交換は新しい生産のSJであった。これは色の濃さから判断できる。気温の変化などを総合して判断しても前回のオイルよりは妙にエンジンのカサつき、エンジン自体の発熱度が少々大きい。
 もちろん一般道を走行している内は何ともない。ところが、10km程度の高速走行であっても、その前と後とではエンジンの性格がまるで違っているのである。長年乗っていると、エンジンのカサつき、エンジン自体の発熱度の感覚以前に振動がべらぼうに大きくなることででも理解できる。
 少し話題を変えると、トライアンフT-140Vででもこのことは起こっていた。T-140VではエルフのSJクラスで15W50の半合成オイルを使用している。これはこれでなかなかいいオイルだ。ところが最近になって、半合成のオイル粘度は完全に薄い方向へ行ってしまい、10W50ぐらいになっている。APIの規格もSJはもっぱらミネラルオイルが多くなってきているようだ。当のエルフも同じような製品だがミネラルオイルになってきている。
 こういったことを考えに入れて、SRに戻して考えを巡らすと、最も簡単に対処することはコア数7段程度のオイルクーラーを装着することだ。が、待ってくださいよ、僕のSR500はエンジンはノーマルです。少し違うのはエンジン自体ではなく周辺機器からエンジンを少しばかり元気に回るようにしている。そのために、オイルクーラーを使用して冬場などにエンジンに冷えすぎの滑油を回すことはよくないしストックのエンジンに本当に必要かどうかに至ると、僕は必要ないと判断している。
 そうなると、オイルの温度対応粘度、しかも上の数値を大きくすることで対処できるのではないか、と判断した。ところが内部も含めて基本設計の古いSRのエンジンには合成オイルはふさわしくない、というのは知られているところ。僕の住んでいる地方では気候的にも10W以上でも問題はない。不純な動機でも何でもなく、万一の場合を考えると、メーカー純正ばかりでなく、あくまで一般の自動車用オイルが転用できなければならない。純正オイルはメーカーなりにオートバイの性能の最低線を保障しますよ、というだけに過ぎないものが加味されているだけ、と考えている。

 そういったところで、今回はT-140Vの車検を受けた手前、末広モータースの取り扱いでザーレンのSJクラス、15W50のミネラルオイルを使用してみることにした。交換したときに気付いたのだが、わずか1000kmの走行だけでも、ヤマハSJ(現在はエフェロSLになっている)の初期生産オイルは妙に水っぽいようだ。ま、半合成オイルの特徴かもしれないが。
 交換後、宇和のT君宅まで走行する。数キロメートル走るか走らないかのうちに妙な感覚になってきた。自動車用オイルを入れたものだから「そら、みたことか」と悪い方向に受け取られるとお思いだろうが、全くその逆、エンジンの振動がついさっきまでの1/3ほどに減っている。乾式クラッチで汚れの第一原因は無くなっているが、振動軽減と油膜の関係からかシフトもスムースだし、トルク感も大きくなっている。
 T君に乾式クラッチのカバーに水抜きの穴開けをしてもらい、JBLのLE8Tの音を聞いた後帰路につく。アイドリングがわずかに高くなる。カンリンのフライホイールの関係上1100rpmまで冷間時は押さえておいた方がいい。動き始めて油温が上がると自然に1200rpm程度になる。指定の1350辺りにセットすると別の振動が出始める。
 次に感じ始めだしたのはシフトの小気味良さだ。カチッ、カチッと微妙なストロークでシフト出来る。いやはやびっくりしてしまうのである。

 が、2002年3月23、24日の両日、香川は五色台までの525kmの往復ツーリングで、意外な面を知ることになったのである。
 エンジン性能などは全く変化がないのだが、23日は風が強いだけで天候もよく、一般道を快調なペースで走ることが出来た。最高気温も15℃ばかりを記録しているから、これはこれでいいのではないか、と感じた。翌日はこのことが仇になったようになってしまい、次のような結果を得た。
 朝は気温6℃ほど。空はくもり、晴れ間が少し出るかな、と思ったときに風が出始めるから、感覚としては1℃ほど低く感じる。春の標準装備で出てきたことに一抹の不安を感じながらのエンジン始動。ウォーミングアップの後、出発するのだが、回転がギクシャクする。一瞬「プラグかな?」と思ったが、どうもそうではない。アイドリングがなかなか安定しない。信号待ちなどで、ついついアクセルを少し開けて安定させようとするのだが、オイルポンプの吐出量は多いものの、シリンダー及びヘッド周りへのものが大半で、駆動系までのギアには低い油温のオイルしか回っていないようだ。善通寺を過ぎた辺りでようやく青空が、と思われたが、間もなく数時間前に雨が降ったような様子になった。風の状態から高速はあきらめた。オフロードベースのSRでは重心位置が高すぎるから、あおりを喰らうと修正が出来ない。往路もそうだったが石鎚連峰は冠雪しているのだ。
 新居浜当たりからようやく気温もいい状態になったし、川内から大洲までの距離で元に戻った。この頃の外気温度が14℃辺りだったから、15W50はノーマルエンジンでは少々キツイのかもしれない。もっともこの原因がミネラルオイルのためかもしれないが。

 このように走行1000km程度でこういった状態だから、ザーレンオイルそのものは以前言われたような程度のものではない。相当にいいオイルのように思う。おそらく昔のペンゾイルなどペンシルベニア産のベースオイルがすばらしかったように、ザーレン自体もオイルメーカーのオイルとしてのベースがいものなんだろうな、と感じる。SRでは外気温に対して若干堅めのオイルをチョイスしたわけだが、ヤマハでもAPI区分のSDぐらいの時代は、マニュアルの中にも夏場は20W40を冬は10W30を使い分けてほしい旨記載があった。そうやってオイルのことを一生懸命になって勉強していたわけだ。

 もちろん、ベースオイルの蘊蓄も盛んで、カストロールなどは同じGTXでもファーイーストのシンガポール工場製のものを必至になって探していた。ちょうどW1SからSAになった辺り、その頃画期的デビューとして僕らの前にGTXとシングルグレードのカストロールが出てきたのである。ヤマハはTX750のエンジンにガクガクになっていた頃だし、アメリカ向けの純正オイルクーラーは日本の道路運送車両法からは装着できなかった。変形ハンドルの種類も多数あった。そういった時代で、TX750にシングル40を入れるとぴたりとオイル問題は片づいた。オイルが漏れるのではない。オイルが「吹き出る」のである。今でも愛して止まないTX750オーナーには申し訳ないが、やはりトヨタのエンジニアが作るエンジンはオートバイ向きではなかった、というのが僕の考えだ。そういえば、今のF-1のトヨタエンジンのバルブにはヤマハの音叉マークが入っているのかな?。
 今回の僕の考え方はハーレーのショベルヘッド以前のオーナー、それも若い方々が一生懸命にエンジンとオイルのマッチングを考えられている。時代に逆行しているように感じるが、なかなかいいことのように感じる。いいたくはないが、何やかや取り付けたりしてカスタムバイク然としていることへの一種のアンチテーゼかもしれない。

 話を戻して、今回の場合は夏場でも雪の降らない地方では少々異なるし、北海道ででもこの条件は変わる。ノーマルSRにはマージンをとる意味から、SJ以上、半合成オイルで出回っている製品は少ないが10W50のオイルを使用されるといいのではないか、と結論づけたい。
 また、僕の場合はSR500だし、一般のSR400とでは絶対排気量、絶対発熱温度差などから、僕のこの考えも該当しないかもしれない。
 間もなくトライアンフもオイル交換だ、いずれの車種にかかわらず機会があれば、このオイルについては述べてみたい。

 また、僕がよく口に出すSAE、APIなどの規格については、http://w2.avis.ne.jp/~yanagi/tog_01/oil/sae_01.htmlに詳しく書かれているので参考にしていただきたい。

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