ヤマハよ、お前もか! 美しいSRを返せ

 2001年 1月中旬、別冊モーターサイクリスト誌に小さい写真であったが、新しいバージョンのSRの写真が出ていた。コメントは「シックなSR云々」というものが記載されていた。僕自身は憤懣やるかたない気分に陥ってしまった。
 そもそも、SRの前身であるXT500がブリックレッドという煉瓦の赤より、もう少し赤いカラーの外装と黒く塗装されたエンジンでリリースされた。当時のオフロードモデルの一般である、放熱(耐熱)塗装のブラックエンジンは常識の範囲だった。もちろん、車体のカラーとのマッチングもなかなかだったし、最終モデルのシルバーまでブラックエンジンに変わりはなかった。
 ブラックエンジンにしたもう一つの理由は右クランクケースカバーの材質による。これがマグネシウムで作られていたからだ。高校の化学の授業でイオン化傾向ということを習ったであろうが、アルミとマグネシウムは傾向度順が隣りだ。つまり、両者をぴったり合わすと腐食が始まるのである。その保護からもエンジンは塗装されていた、と想像する。
 SRが発売されたとき、対ヨーロッパ仕様はシリンダー部分が黒く塗装されたエンジンでリリースされた。日本仕様はそのままシルバーのエンジンであったが、どことなく間抜けな感じがしたものだ。
 しかし、シリンダーヘッドとクランクケースは耐候性のある塗装がなされていたし、クランクケースカバーはバフがけがされていて、この状態は今でも連綿と続けられていた。特にクランクケースカバーは凸のYAMAHAの文字のエッジを削ることなくバフがけしてある、という高度な技術を必要とするものだ。このことは、すでにムック(本)などでご存じであろう。
 昨年、対排ガスとディスクブレーキ仕様に変更を受けたSRだけど、問題はシルバー塗色のモデルが加わったことだ。こんなノッペラボーが売れるんだろうか、と思った。昔「ユニコーン・ユニオン」というSRだけの組織があったけれど、ここの代表が、シルバー一色に塗装したのに乗ってらっした。僕はこのシルバー一色の塗装のモデルは嫌いであった。
 で、別冊モーターサイクリスト誌の写真に戻るのだが、僕は、こいつはシックでも何でもない、と思う。ブラックエンジンを一言でいうと、コストダウンの集大成だ。下地処理のための金型を整備すればいいだけで、バフがけをしなくてもよくなる。おまけにクランクケースの塗装もブラックにできるのなら、言わなくても分かるはずだ。
 タンクのピンストライプなんて、今ではテープ張り付けのクリアー仕上げである。テープはデカールと同様、表クリアーのステッカータイプだから、この位置とこの位置とで位置合わせをすれば簡単に張り付け可能だ。
 で、できあがった車体は残念ながら綺麗とは思わない。やがて訪れるであろう、雨中走行時、その後の清掃などで、ブラックが少しずつはがれてくることは確実なんだ。そこをリペアしようとすると、色調がわずかに異なる。こういった状況になってくるのである。南部鉄瓶の漆の焼き付けなどとは違う。
 メーカーとしてもコストダウンのことは言わないが、やがて訪れる排ガス、騒音の規制には現在のエンジンではクリアできないのは明白だ。ヤマハとしても、現行のSRをお蔵入りさせて、そろそろ次期モデルを考えているのではないだろうか。ホンダのシングルがリリースされて一層拍車がかかったようでもある。しかし、ホンダはあまり売れていない。同様にSRもあまり売れてはいない。高校卒業して、多くの方々がSRに乗っていただければいいが、大半がチョイスするのはインラインフォーのオートバイであろう。悲観論を記載して顰蹙をかうかもしれない。しかし、やがて来るであろうことはユーザー諸氏も十分に理解されておいた方がいいのではいだろうか。
 もちろん、写真のSRがリリースされるかどうかは分からないが... 。

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