知らないものを受け入れるときの疑問

 人というものは何かを言われると、多少の知識と経験があればただちに応答するようだ。その知らないものの科学的データの良否、使用者のレポートなどが良好だと、すんなりと受け入れるのにははばからない。
 しかし、個々の良好なレポート結果は思う存分表面に出すが、一部分であっても負の部分は往々にして取り上げられないことが多い。特に20パーセント代に至らない場合は、無視する、というか、実例は挙げないまでも、効果がなかったなどと数字を上げるだけにとどまり、その細部に渡った点検結果報告などは出されない。
 オートバイにおいて僕の場合は多少なりの経験と知識とがあるから、こういった周辺機器の受け入れにもずいぶんと慎重だ。ガンスパークの時もそうだった。ハスコーは発売を中止したが、当時、妻の乗るスバル360に点火コイルをBOSCHのブルーコイルにして好成績を収めていたから、発電器、レギュレーターが完全なら点火はコンタクトポイントとコンデンサー、それにコイルがマッチすればパワーアップはある程度可能、ということは分かっていた。当然、コンデンサーはオートバイにも装着していたボン・ファイアである。これは半永久保証製品ということも歓迎されたし、事実凄まじい変化をもたらせたのである。ついこの間までトライアンフにも装着していたし、コンタクトポイントの表面を磨くなどは一切しなかった。
 そういったことから、プラグの火花を強くするのは根本の電気を何とかしないとならない、と考えていたところである。話は飛ぶが、実際に点火プラグが死ぬということも起こりうる、ということも数は少ないが、ネット上で知ることもできた。

 
 が、僕のSR500に装備したU-マグは少々間違っていたようだ。
 SRの項で申し上げているような結果だったが、どうもその裏付けは強力すぎるし磁化方向が一定、というのはSRにはフィットしないように感じられる、とする僕の考え方が纏まって、「このままでは、どのようにしてもキャブレター通過後の混合気は薄くなる」という判断が生じたからだ。この点はエポックメーキングなこととして、あまり記載をしなかったが、項を改めてここに記載したい。

 まず、U-マグ本来の考え方は、磁場を作ってそこを通過させる燃料の分子を細分化して空気との結合を多くする、というものである。この理論は疑いようがない。磁化盃でもこのことは経験しているし、家庭内に入ってくる水道管用の大きいものまで市販されている。
 そういったものだから、小さな部品だが高価なことこのうえなかったにもかかわらず購入した。そして最小取り付け範囲を満たしていたから大丈夫として取り付けた。が、2002年5月26日の走行中に上記の判断で取り外したところ、その後の走行状態から僕の考えどおりだった、という次第だ。

 ここで考えられることはSU(CV)キャブでは、負圧によって(ダイアフラムの)ピストンが上下する。その開度はバタフライ部分をスロットル操作で動かされて働く仕組みだ。従って全閉の時もバタフライ部分はある程度開いているにもかかわらず、シャッター部分は上がったり下がったり、微妙な動きをしているように感じる。
 このバタフライ部分はどうも修正のしようがない。フーム、全閉時にはわずかながら燃料の供給をパイロットジェット部分から行っていることになる。
 そうなれば、U-マグによって細分化された燃料の分子は空気との結合を増すように活性化されているから、微細に入り込むパイロットジェットからの燃料も空気との結びつきが多くなる。少々表現はおかしいが、燃料は一定にもかかわらず空気は通常よりも増えるのではないだろうか。ニードルジェット、メインジェットが働くときも同様にU-マグ効果が現れるのは疑いがない。
 そうか、そのために、常にプラグ電極部分の碍子先端部分が白いままなんだ、ということに行き着くのだ。

 それでは、四輪車ではどうなんだろうか、答えは簡単だ。最近では混合気を送り込むのにEFIが使用され、そこまでは長い経路で燃料が電磁ポンプで運ばれる。そのため、U-マグを装着する場所もずいぶんと広く、キャブレター手前まで6cm以上離す場所も十分に取れる。(SRの場合は6cmという装着範囲の長さはぎりぎりである。)また、希薄燃焼方式を採用している。
 そういった、僕が出したキャブレターの特性のことと装着場所のことからU-マグを外すことによって、SRの場合は元の調子を取り戻した。不思議だが一瞬にして変化が出てくるから、U-マグの威力そのものもすさまじいものがあるのだろう。

 でも、確認を怠ってはならない。まずは、ネット上で、ヤマハR1Zに装着して好結果を得ている、というのがあった。そうか、さもありなん、と思う。
 考えられることは、燃料タンクからキャブレターまでの距離があること。2サイクルで分離給油だが、いずれにしてもキャブレターを通った後にオイルが添加される仕組みは変更のしようがない。それに、2サイクルゆえ、混合気は直接シリンダーの中に噴霧される。このことによって、U-マグ本来のいい面が出てくるのであろう。
 それではオートバイの場合、キャブレターの違いで結果が変わるのであろうか、ということになるが、これは少々難しい問題を含んでいる。というのは、トライアンフで確認してもいいのだが、装着場所がトランジスタ点火のアンプ部分に近い。そのために強力な磁界が影響すると元も子もないからである。この点はU-マグの説明書の中にも四輪車のブラックボックスへの影響の解除の方法が出ている。
 ネット上のBBSで報告されていることだが、R1Zの場合は燃料コック1つを途中で分岐して二つのキャブレターに燃料が送り込まれる。そのために、U-マグはキャブレターから6cm以上離したところ1か所に装着すればいい。ところが、トライアンフなどになると、コックが2カ所、そのために通常なら2つ必要になるが、この考えからすると、僕のMIKUNIキャブでは燃料ホースの分岐部分に一つ持ってくればいい。そうしないと並列四気筒は少なくとも2個でいいはずだし、直六の自動車ではもっと必要になってくるのではないか、ということになって磁界緩衝などが出たりするとU-マグの効果が出ないのではないだろうか、とも思われる。

 個数と位置はおよそ理解できた。次なる問題は、SRで感じたことだが、ほぼシリンダーの左右中心部分にキャブレターが装着されている。が、燃料は左からキャブレターに入る。強力な磁界はニッケル部分、鉄部分を介して左側が強力に現れる。当然プラグの鉄部分も強力な磁石で引っ張られるのではないか、電気も磁力で強力に動かされるのではないかと考えたのである。
 そこで、水道管に装着するものを思い出したが、こいつはN極とS極を交互に数個併せた形式を採っている。磁化盃ではグラスの周囲を磁石で覆っている。もうお分かりと思うが、直列で強力にした上で磁力の方向を均一に保っているのである。
 実はこれがU-マグにもレーシング仕様として存在するのだ。これにするとどうなるか、いずれにしてもSRでは設置場所がない。
 これが現実だろう。したがって、VMのキャブレターに変更したとしてもFCRのようにフロート室の下側から燃料注入する方式でないとU-マグの効果はなくなるのではないか、と想像せざるを得ないのである。
 はなはだ推論の域を出ない面もあるが、現在ではオレンジブルバードの広告に出されていない点などからしても、ストックのSRに導入するのは難しいものがあるのではないだろうか。
 何度も言うが、U-マグそのものが決して悪いのではない。しかし、SRにはフィットしづらいものである、ということが分かった。

 最初の導入のように、確かに理論と実際が合致していても、使うものに対しては僕のSRのような結果になる場合も往々にして存在する。ここの見極めははなはだ難しい。できれば、実績状況などをweb上で開示すればいいのだが、これもなかなか少ない。雑誌などでは、強烈な批判記事は出ないようになっているものもあるから、効果のみを鵜呑みにするのは考えものだ。
 ケーヒンのFCR39mmがSR用にプリセットされてリリースはされているが、宇和島で装着した場合、結果が満足に出るかどうか不明だ。FCRばかりでなく、内燃機関に直接関連あるものでは、テスト場所と宇和島では条件が異なる場合も実際に存在するのである。
 僕も久々にいい経験をさせていただいた。U-マグに限らないが、もし、現実に調子が狂っているが、それが表面に出てこない場合などの場合、付けたものをはずしたりして元に戻す、ということも必要ではないか、と思った次第だ。

[もどる]

inserted by FC2 system