ピストン形状について
 5年ほど前にトライアンフT-140Vの腰上を分解したときに、得も言われぬピストンヘッドの形状を見た。この車のエンジン形式はハイカムのOHV、しかもロングストロークである。点火はシリンダーヘッドの側方から行われる。シリンダーヘッド自体はOHVということもあって厚さもない。ピストンヘッドの形状は中心部が盛り上がった形式を採用していた。圧縮比もあまり高くなく、当然、カムの形状によるところも大きい。この辺りの文章はタッチバイク誌でトライトン清水さんが詳しく書かれているし、別冊MC誌にダイナベクター時代の富成さんが、T-140のエンジン整備された連載を参照されるといい。
 一方、SRのピストンはどうか、中心部が高い断面カーブを採るのは400の方で、500はXT-500時代そのままで、トップはフラットに近い円弧の形になっている。当然、両車とも側方からの点火である。そこで考えたのが、燃焼室の形状とプラグの取り付け位置、そしてピストンヘッドの関係である。
 現行のSR500で一番簡単なパワーアップは、こと、エンジンに関しては400のピストンを装着することであろう。リプレースパーツでは同じボアの鍛造ピストンを装着する。当然、周辺の調整は必要だが、おそらくはパワーアップするはずだ。
 しかし、どうして国内仕様のSR500はXT-500のピストンヘッドが平らなものを装着しているのだろうか。整備性は同じことととして、どうもレギュラーガソリンの使用などを考えて、ストック状態であれば、国内ではこのピストンの方が好ましいエンジンになる、と判断したのではあるまいか。
 そうすると、飛行機のレシプロエンジンと対比させてはいかがだろう。大きいボアのエンジンは隅々まで火が飛ばない。そのため、ツインプラグ形式を採用しているものが多い。おまけに、ピストンヘッドは盛り上がっていないものが多い。
 それでは、SR用のリプレースパーツではどうだろうか。すでに僕を含めて多くの方がオレブルのスーパーサンダーという点火コイルを装着されているかもしれない。これに、中心電極の細いイリジウムなどのプラグを装着すると、力強さを体感できるはずだ。
 それでは、こういったフラットなピストンヘッドに強い火花を隅々にとばすためにはツインプラグにすればいいのではないだろうか。ヤマハのXJR1300などがそれに当たるはずだ。あるいは、オレブルのツインプラグ化の改造を依頼するか、ということも考えられる。残念ながらデイトナのヘッドはノーマルキャブとエアクリーナーが装着できない。
 それでは側方点火している現在のSRで、サードパーティーのリプレースピストンを持ってくるときは何がいいか。僕はこのことを一番考慮しているのはヨシムラのピストンではないか、と思う。ヨシムラのピストンは中心部が突起しているように盛り上がり、まるで富士山だ。したがって、燃焼室トップより中心から外れた部分に圧縮混合気が溜まり点火される。プラグ近くで点火された火はスムースに隅々にまで回るように思うのである。どう考えても最小のボーリングで確実にエンジンのパンチが増えるように巧みに設計されているように思うのだがいかがであろうか。
 ま、このように考えてみたが、仮にヨシムラのピストンを装着してツインプラグ化するとなると、火の流れが一層良くなるのではないか、とも想像する。以上の考え方はあくまで僕の想像である。木戸先の整備工場で、公道がテストコースとして自分のいじったバイクのリサーチしている僕が考えることだし、あやふやである。それではエンジンをいじれ、っていわれると、まだやりたくない、というのが本音だ。
 そういえば、トライアンフでツインプラグ化する場合はシリンダーヘッドのトップにプラグを装着するようになっているし、古い話だが、BMWのR100RSを4バルブ化したクラウザーのプラグもセンター装着であった。当然、巨大なボアを持つボクサーツインBMWではピストンヘッドもフラットに近いから、僕の考えもあながち間違ってはいないのかもしれない、か?!
 ご意見があればお聞かせ願いたい。

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