点火プラグの死ぬ謎

プロローグ
 ことの起こりは2001年11月24日の土曜日であった。およそつぎのような状況になったのである。

 9月の終わり頃、トライアンフT-140Vのプラグを中古のNGK B8ESにして良好な結果 を得ていた。それを新品の同じものに交換したのが10月の初め。ところが、11月24日、キャブのセッティングも変更していないのに、宇和町のT君宅へ行くまでにプラグの金属部分のユニクロメッキが赤みを帯びて、道中、エンジンストールが3回出てプラグが昇天してしまった。全く同じ条件で、大型量販店のBR8ESの2本セットを購入して装着して帰宅した。確認したところ、やはり金属部分に赤みが出る。
 
 そこから考えられることとしては次のとおりで、実際に行ってみたが、点火プラグは未解決... 。

 ことはこれで終わらず、翌25日、冬場に近づくからガスが少々薄い状態かもしれない、と思って、メインジェットを#230に上げて、試走してみたが、プラグが燻ったまま。外して置いた元のプラグを装着すると、赤みを帯びることもなく快調 だ。走りながら、SR500のBPR6ESも量販店のパック入りを使用すると同じような現象を呈していたし、SRに装着している今のBPR7ESは単品の箱入りの製品というのを思い出した。スプリットファイアに変更したが、電極部分が白っぽいだけで異常なしであった。(この電極の白さは後で気付くが、実は異常だった。)
 とにかく、このことからプラグ自体に対しての疑惑が一層つのるばかりだったのである。

 さー困った。SR500のことが少し出たが、NGKのスパークプラグの多くは金属部分がユニクロメッキだ。したがって、僕の言うこういった「金属部分に赤みを帯びる」などの色の変化も十分に理解できるのではないか、と思う。たまたまSR500ではエンジンがストールしなかったから、結果からみて「こんなものかな〜」と、この時点ではプラグの変化をそのように感じていたのかもしれない。



プラグへの疑惑
 トライアンフのエンジンが止まったときは、確実にプラグ自体にしか注目していなかったので、想像は次のとおりとなった... 。
 僕は、元のB8ESがヤマハから取り寄せた単品の箱入りであったことからして、金属部分が赤みを帯びる現象は、気温変化などでメインジェットの番手を上げたり、下げたりぐらいで現れた変化ではない、と確信している。
 最悪の考え方かもしれないが、量販店のパック入りのものは二級品が並んでいるのか?、とも感じられる。ま、事実かどうか再度実験をしないとならないが、量販店販売 のオイルについても、以前言われていた「同じものでも内容物が異なる」ということ が、点火プラグについてもいえるのかもしれない。
 このように感じていた。
 
 えらく長くなってしまったが、僕の経験からNGKのスパークプラグを使用していての経年変化を色から見てみると、黄金色のユニクロメッキが少しずつ艶を失い、黄色が消えていき、亜鉛メッキに近い色になってくる。おそらく多くの方がこういった経験をされているのではないだろうか。
 ところが、今回T-140Vに装着したB8ES、BR8ESの「金属部分が赤みを帯びる」変化は、どうやらこれまで経験したことのない(エンジン全体の)状況を呈しているのではないだろうか?、と感じたわけである。いい状態ではなく「苦しさ」を訴えているような... 。
 ことは、こうだ... 。
 黄金色の艶やかな金属部分全体が艶を失ってくる。しばらく後、取り付けナット部分の下側の窪み部分を主に、ナット部分が微妙にヤキが入ったように赤みを帯びてくる。この赤みは失せることなく、そのまま艶が無くなっていくのである。
 したがって、プラグ自体にまず注目するのは当然のこと。これから僕なりの推理を交えて原因究明をしてみたい。

 まずは、「バイク馬鹿の国」のサイトに疑問質問解決... 、のコーナーがあり、ここにこの疑惑を掲示させていただき、どなたかの経験を聞くこととした。そこで得られた経験談は次のとおり... 。

 量販店の二本入りのブリスターパックの製品は大半が吊しであって、客が手にしたときとか、吊す前によく落としてしまって、碍子の内部が目視では分からないのだがショートして最初から使えないものがあるようだ。
 事実、点検のために外したプラグをうっかりと地面に落として同じように昇天させてしまった。

という報告であった。

 僕のサイトの掲示板には、SR 関係のKEIさんから次のような報告があった... 。

 メーカーポリシーから二級品ということはない、と思う。しかし、ロット番号から確認する以外にないが、何処の製造工場で作られたものか、も問題になってくる。

 こうなってくると、どうやらプラグ自体の問題ではないのかもしれない、とも感じ始めた。が、古い同じB8ESで快調なのは一体どうしてだ?。このことが僕の頭の中から離れないでいた。それではNGKのプラグを検証してみることにする。

プラグの検証
 表面上古いプラグと今回ダメになったプラグで比べてみるとおよそ次のようになる。

 まず、その違いは取り付けナット部分下の円柱部分に記載してあるからすぐに分かる。僕の持っているものではマトリクス(刻印)が古いものは「:I:」になっている。今の物は大半が「 I I I I 」であろう。まるでライターのZIPPOの底のようでもあるし、もっと古いプラグは一個入りのパッケージのイラストのように縄目の模様も入っていたような気がしないでもない。
 ところが、いつの頃からか分からないが「JISマーク」が消えているのだ。特に抵抗入りの「R」プラグでJISマークの入っているものが少ない。台紙にJISマークの入っているブリスターパック入りのものは製品にも入っているようだ。
 マトリクスの内、一体いつの頃からJISの規格対象外製品になったのであろうか。どうもアナログレコードがJASRACの刻印に換わった頃から以降、新JIS規格施行に合致する時分ではないだろうか。
 したがって、JISの規格外品というのではなく、JISマークの表示制度適用品からスパークプラグがはずれるため、その表示の必要がなくなった、と解釈した。VXなどのプラグでもJISマークが無いので、おそらく廉価なスタンダードプラグでも基準値は従来どおりであろう、と判断した。自動車メーカー指定のOEMでNGKが作っている場合など、ホンダのプラグ、トヨタのプラグで確認したが、特に最近の物にはこのJISマークは記載されていない。全くNGKのプラグとして同一、と判断して間違いがないようだ。



以下にT-140Vに使用したプラグの外見を示す。室内撮影だし、低画素のカメラ故、若干のライティング、ピントの悪さはご了承願いたい。写真クリックで大きい画面に変わる。ブラウザ側の「戻る」などを利用して元へ。
 
9月の終わり頃から使用していて、11月24日に急に昇天したプラグ。
走行距離は、およそ200km程であった。
11月24日の午後から使用し始め、12月9日まで使用したプラグ。
走行距離は100km程度。(途中、スプリットファイアSF-405Dを使用)
現在使用しているB8ESだ。
走行距離は100km程度。上の二つと比べて金属部分の色合いが違うのはお分かりだろうし、それ以上に、全体の艶が違うと思わないだろうか。


個人的想像
 一応、プラグ自体については、そんなに丈夫さにバラツキがない、ということは分かった。次なる疑問点はプラグの「金属部分が赤みを帯びる」のはどうして起きるのか?ということである。
 プロローグでも紹介したが、とにかく再び古いB8ESを装着して走ってみた。キャブレター、(バッテリー追充電を除いて)電気系統など一切変更していない。(この追充電も重要な関係を持っていたことが後で気付くことになる。)

 プロローグからプラグ検証までの経緯は次のとおり... 。

2001年11月25日()はれ時々くもり
 昨日からの悶々がとうとう火を噴いた。いや、大それたことではないのだが、これ が信じられない実体として現れたから、僕が爆発した次第だ。次第は次のとおりだ。
 9月の終わり頃、トライアンフT-140Vのプラグを中古のNGK B8ESにして良好な結果 を得ていた。それを新品の同じものに交換したのが、先月の初め。ところが、キャブ のセッティングも変更していないのに、昨日宇和町のT君宅へ行くまでにプラグの金 属部分のユニクロメッキが赤みを帯びてきて、道中エンジンストールが3回出て、プ ラグが昇天してしまった。全く同じ条件で、大型量販店のBR8ESの2本セットを購入 して装着して帰宅した。やはり金属部分に赤みが出る。
 ことはこれで終わらず、本日、冬場に近づくから、ガスが少々薄い状態かもしれな い、と思って、メインジェットを#230に上げて、試走してみたが、プラグが燻ったま ま。外して置いた元のプラグを装着すると、ともなく赤みを帯びることもなく快調 だ。走りながら、SR500のBPR6ESも量販店のパック入りを使用すると同じような現象 を呈していたし、今のBPR7ESは単品の箱入りの製品というのを思い出したし、スプリ ットファイアに変更しても、全く異常なしであった。
 僕は、元のB8ESがヤマハから取り寄せた単品の箱入りであったことからして、気温 変化でメインジェットの番手を上げたぐらいで現れた変化ではない、と確信してい る。
 最悪の考え方かもしれないが、量販店のパック入りのものは二級品が並んでいるの か、とも感じられる。ま、事実かどうか再度実験をしないとならないが、量販店販売 のオイルについても、以前言われていた「同じものでも内容物が異なる」ということ が、点火プラグについてもいえる、のかもしれない。
 しかし、今日は天候も崩れずに、トライアンフの結果が出せたから、モヤモヤの一 部は晴れた結果となってよかった... 。


 元のB8ESで実験して、スプリットファイアSF-405Dにした時の変化から、再び疑惑が再燃した。

2001年12月 8日(土)はれ
 午後からTriumphを出す。どうなるか始動からずっとつき合うことにした。セオリーどおりエンジンを回す。アイドリングは1200rpm辺りにセットしているが、最低でも1000rpmになるまで10分近くかかる。外気温が16℃ぐらいでもこの調子だから、致し方ないかもしれないな。依然として発進がぎこちない。オイルの関係からか、完全に準備OKまでには20分程度かかるのではないだろうか。が、走行し始めると快調なことこの上ない。スムース且つパワフル。相反するようなことが、ごく自然に行われている。
 宇和町まで行って歯長峠の手前でNGKのB8ESをスプリットファイアSF-405Dに交換。振動が少し大きくなった。宇和島に到着してプラグを確認すると、少々白い。フム〜、SF-405Dでは熱価そのものはNGKのB7ES〜B8ESの間ぐらいのセットなのであろう。スプリットファイアに対してメインジェットを#10上げる、ということがいいかどうか?。と、なればB7ESでテストしてみる可能性が無きにしもあらずだ。しかし、現在の状況だと、今のキャブセットでB8ESのままの方が高速などをブッ飛ばすときのことも考えると都合がいい、と判断する。



 その日の夕刻、銭湯のゑびす湯へ行って湯船の中で自問自答を繰り返していた。

●とにかく、何かおかしい。どうしてプラグが死ぬのか?に対してはプラグの品質にバラツキはない。もちろん、そういった意味から新品のプラグを装着し、それから結果を出すべきだ。

●キャブレーションはパイロット、メインジェットとも、ほぼオールマイティーに作動できるようになっている。ボイヤーのトランジスタ点火で、着火などの問題は一切メンテナンスフリーだ。どこが悪い、という範囲は超越している。

■むしろストック状態を超越しているところから、ストック状態のチューニング、という一般に行われている方向へ転換しなければならない部分があるのではないだろうか?。点火システムはOK。コイル?、コイルはダイナコイル、二個封入で同時点火の3Ωだ。ボイヤーのトランジスタ点火方式にも合致させてある。フム〜、どうなんだろう。

 その時だった。TYLERのプラグコードだ!。確かにダイナコイルへ交換前、元のルーカスのコイルではジョイントを介して途中からTYLERに変更していたが、そんなに変化はなかった。今ではダイナコイルになって、点火コイルも強力なものになっている。TYLERに変更したときはキャブレーションの調整が主で、プラグは最高(低)5番まで下げて使用したりしてテストを繰り返していた。良くってもスプリットファイアー、それも6番相当のSE-405Fに変更していただけだ。

 お湯で逆上せそうになって、あわてて湯船から出た。

 夜、布団の中で考えを纏めた。その時はプラグのことも頭の中にあったのだが、とにかく点火系を元のルーカスから現在のものに変更した経緯を思い出しながら、どうしてこうなったのかをずっと考えていた。

 どこにもプラグが死ぬ、という悪影響を及ぼす行為は行っていない。何度思いかえしてみても同じ。とにかく、ダイナコイル〜TYLERのプラグコード〜NGKの抵抗入りのプラグキャップを通してプラグへ電流が... 。そして、最近になってプラグの金属部分が赤みを帯びはじめ、しばらく後にプラグが死んだ。その原因について、そうなった経緯... 。完全に堂々巡りだ。
 だが、待てよ、赤みを帯びるのが発覚したのは、キャブレターのセッティングが一応出た時点以降だ。それまでは、TYLERのプラグコードは電気の流れがいいようだ、と感じていただけだ。そのために、調子は上向いて来だしたのだろう、と感じていた程度だったのだ。自然にエンジン内部の状況もいい具合になり、プラグも8番まで上げられるようになった矢先、ダイノコイル〜TYLERのプラグコード〜NGKの抵抗入りのプラグキャップ、という点火系には手を着けていないのに、突然にしてプラグが死んだ、とこういった状況であった。特にバッテリーの追充電を行った直後であった。
 やや?!、バッテリーを追充電した後に発覚した?。待てよ、バッテリーの充電はT-140Vの場合は、2000rpmで13〜14Vの電圧がバッテリー端子で計測できる。バッテリー容量が満杯に近いのなら、余剰電圧は何処に行くのだろうか?。以前は電解液が少なくなったり、ケースが変形したりの過充電の様相を呈していた。
 また、トランジスタ点火におけるブラックボックス部のアンプと制御装置の消費電流はどの程度のものか?。そういった電気の流れからすると、どうやら、TYLERのプラグコードが現時点でのT-140Vにはフィットしていないのではないか、と考え始めたのである。
 たかがプラグコードなのに?、とも思ったりもしたが... 。

原因究明の確認
 翌朝、人間というのはおかしいもので、すでに布団の上で作業を開始していた。再び日記から... 。

2001年12月 9日 日曜日 はれ時々くもり
 さ、そういったところで、今朝を迎えたのだが、既に布団の上では、CHAMPIONのプラグキャップが付いていた元のコードから金具を外してコイル側へ、今着けているNGKのプラグキャップからTYLERのハイテンションコードを外し、昔のTX-650のプラグキャップに接続を終えようとしている。ハイテンション(プラグ)コードは1998年製造のYAZAKI電線のものだ。DYNAコイルとともにブリティッシュ・ビートさんから送っていただいた。これとYAYLORとをリプレースするためだ。
 結局のところ、オートバイ全体を司る電気関係が目に見えない。ここが最大の盲点であろうことはよく分かった。
 プラグの死ぬ原因もようやく分かった。いたずらに高性能プラグ、高性能点火コイル、高効率のプラグコードが一体となっても、本当にいいのかどうか、次号(www/Grid No.34)で報告することとしよう。ここで、申しておくが、もし、常用のオートバイで、ノーマルの点火システムなら、そのままで乗っていていただきたい。そして吸排気系に手を入れられた方は今のセッティングを十分に把握しておいていただきたい。
 意外と思われることが潜んでいる。特にSRなどの基本が古い設計のものは点火系のチューニングは一層の注意を払う必要があるのだ、ということを努々忘れられんことをお願いしたい。安易な点火コイルを交換し、高性能プラグコードへ交換するなどの電気的チューニングはどうも点火プラグを殺すようだ。
 とりあえず、この間、宇和町からの帰りに使用したBR8ESを使用してみる。ウォーミングアップの時間なども5〜10分。全く同じように走行できる。ところが、10kmも走らないうちに、何だか左右のバランスが悪くなってきた感じがしだした。一瞬この前に止まったときの不安が頭を過ぎった。スプリットファイアーだけポケットの中に忍ばせてあるから安心はしているが。
 とにかく宇和町のT君宅へ到着。プラグを外して「アッ」と叫んだ。片方は狸色。片方は真っ黒。真っ黒はカーボンだから、おそらくこのままこのプラグは昇天するだろう、とその時は感じた。
 プラグの死ぬ原因について僕の考えを電気的に解明する状況を彼から聞くことにした。

原因究明の理論
 事はこういったものであった。
 まず、TYLERのコードは芯線が細い銅線をグラスファイバーの糸にスパイラル状に巻き付けてある。一番外側は特殊シリコンラバーで覆ってあるものだ。径は8mmφ。
 現実問題として、電気が流れる線が細く長い物であれば、短く太い物に比べてあらゆる面で不利だ。これは理解できる。ところが、TYLERなどのこういったプラグコードというものはどういった仕組みで高性能なのか?。
 

 同じ電圧なら、芯線が細くて長ければ抵抗は大きくなって、電流値は低くなる。インダクタンスも増えるから、実際にはかなり効率の悪い物になる。
 ところがスパイラル状に巻いたものを一本の線とすることによって、インダクタンスが打ち消され、実際には抵抗が少なくなり、電流値は高くなる。当然、芯線自体はグラスファイバーの極細糸に巻き付けられているので、その外径の大きさに比例して高電流になるわけである。おまけに構造上フレキシブルだから、電流を阻害する要因が少ない。
 余談だが、このことからツインコア、トリプルコアなど、外皮までの太さが10mmφぐらいのコイルがいかに電流が多く流れるかが想像できるのではないだろうか。
 おまけに、僕のT-140Vではトランジスタ点火にしてあり、火花が出ている時間が一般のコンタクトポイント、CDIなどの点火方式の物よりも長い。一瞬だが、その間に強大な電流が流れることになる。

 強力な火花を飛ばすための手段でトランジスタ点火方式にして、その上にキャパシティーの大きい点火コイルに変更している。そして今回はバッテリーが満杯で発電した電力は逃げようがないのだから、電気の法則どおり、プラグへの負担が大きくなる、という考えである。
 そういえば、SR500でもキャブレーションのセッティングが煮詰まった後、BPR6ESに赤みを帯びて来始め、BPR7ESに変更したことを思い出した。電気の流れはバッテリーレスにしているから、容量の大きい電解コンデンサーに蓄えきれないものは点火プラグへしか行きようがない。常時点灯方式で、ワット数の小さいベーツタイプのシールドビームなどが切れる(飛ぶ)のはこのためかもしれない。まさしく今回の僕のT-140Vと同じである。
 良質のバッテリーはダンパーの役目も果たしていることも理解できた。バッテリーがダメになると、大抵抗となりうることはお分かりのとおりだ。
 
T-140Vでの検証
 しかし、T-140Vでは9番まで上げる必要はない。現にBR8ESで一本は狸色を呈しているではないか。12月9日、宇和町からこのままの状態で帰宅することとする。(後で述べるが、表中に記載したように、この時のプラグの燻りの原因はキャブセッティングが関わるものとは違う判断をしていた。)

 自分でも不思議に感じるのだが、宇和町〜歯長峠を通るコースを採っている。とにかく動いている事実は間違いないから、帰宅して急遽新品のB8ESに変更する。もちろんプラグへの疑念も少々残っているが、2本入りのブリスターパック入りの物でJISマーク入り、刻印番号は2本ともM72Mである。
 取り替えて、一瞬「これは?」と感じた。いつもの三間町から広見町のコースを走らせる。強大なトルク感、シフトアップにミスが出るし、滑るクラッチのいつもの症状が出始める。しかし、エンジンは見事に回っている。
 気付いたときにプラグの金属部分を見ると、黄色いユニクロメッキの色のままである。「しめた!、これだ、これだ」。そう、この状態でないとならない。そのまま走っていき、気が付くと妙にエンジンが安定している。灯火類への電源供給も過不足ない。僕は満杯のバッテリーに電気が入らないから、と理論づけていたが、先日、T君宅で発電電圧を測ったら13V付近で少し少なかった。彼曰く「点火システムに電流が食われて(電力不足になって)いるのかもしれない」といっていたが、あながち嘘でもないようだ。真空管アンプづくりでは一部交流を扱うから、小さい電流値でも強大な電力となってしまうが、直流ででもオートバイのようにぎりぎりのストレージキャパシティーであるバッテリーの電圧電流では大きい損失になる。供給電圧と電流、消費電圧と消費電力、この関係がニアイコールでないとならない。それゆえ、バッテリーをいたずらに大きくできないのはそういった理由からである。

 一応、T-140Vでの点火プラグが死ぬ原因の一端は分かったような気がした。

SR500での検証
 今度はSR500での実験である。
 現在のところ、スーパーサンダーの強力点火コイル〜TYLERのプラグコード〜ノーマルのプラグキャップへ行き、BPR7ESを作動させている。バッテリーレス方式の電解コンデンサーはヤマハ純正のDT-200WR用だ。したがって、このコンデンサーがバッテリーと同じようなストレージ機能は持っていない。この状態でT-140Vと同様の赤みを帯びる経験をBPR6ESで経験している。ただし、プラグが死ぬことはなかった。が、今にも逝きそうな感じになるのが分かっていた。非常に酷な状態で点火プラグが働いているのではないだろうか、と思えたのである。
 キャブのセッティング?!、これまで散々悩んできた。7番に変更したのは11月ではなかったか?。最終の6番の時はとにかく、中心電極周りと取り囲む碍子の異常な白さというか、ガラスのような感覚。それにL型電極の白っぽい煤のようなものは一体何だったのだろうか?。いずれにしても、かなり高電流による高温にさらされているのは容易に理解できていた。それゆえ7番に変更して事なきを得たのだ。それでもT-140Vのときとは若干異なる。後は走行フィーリングでの判断で、どうするかに至るのではないだろうか。
 再びノーマルのプラグコードに変更して実験。キャップはスーパーサンダー指定の純正だ... 。

2001年12月16日(日)晴れ時々くもり
 気温が上昇しない。天気予報では最高気温が10℃前後になる、と予測していた。鬼ヶ城はうっすらと雪化粧をしている。午前9時近くからSRに取りかかる。
 プラグコードはFUJIKURA電線のものだ。どちらかというと僕はYAZAKIのゴム被覆の方が好きだ。理由は被覆自体が内部の緩衝材の経年変化より早く硬化するように感じている。特にコイルとプラグキャップの接続部分はひどい。
 プラグはNGKのBPR6ES(マトリクスはH15NでJISマークは無し)の指定品を使用する。とにかくテストは新品プラグでないとならない。
 テストコースはいつもの三間〜広見を抜けて帰るコースである。スタートするやいなや通常では考えられないことが起こる。トライアンフの時に若干感じていたが、どうもシリンダー内部の濡れているような感じだ。表現が悪いが、プラグが赤みを帯びている状況では、シリンダー内部も乾燥しているような感じを受けていた。それゆえ「濡れる」と表現したが... 、そういった余裕があるような状況であった。が、決してガスが濃い、というものではない。
 プラグを外側から見ると、何の変化もない。新品の状況を呈している。これなんだな。数十キロ走ったぐらいで、今までは変化していたのだから、いかに酷な状況であったのか、ということが理解できた。
 ただし、SRはトライアンフと違い、プラグ周りへの風の回り込みが少ない。特に今のタイプになったシリンダーヘッドでは正面のフィンが連結されているので、直接の通風経路はタペットカバーの下側からだけだ。残りは回り込みの風のみである。したがって、若干ながらシリンダーヘッドに接しているガスケット部分は色が少々褪せる。
 これ以降、キャブレターの若干の変更を加えたので、これはSRの項で報告したい。

考 察
 今でも分からないのは、「どうしてこういった現象が起きたのだろうか?」という謎である。昔、ツーサイクルのRD250などではちょくちょくアクセルを一気に開けたときなど、プラグが死ぬことがよくあったが、今回のこういった状況でプラグが死ぬ、という経験は初めてであった。
 一般に低抵抗のプラグコードを用いることは一種のチューニングアップの手段として受け入れられているところだろう。結果もなかなかいい状況である。しかし、大きい容量の点火コイルに変更し、なおおかつ低抵抗のプラグコードでの実験結果は一部のメーカーのみ、プラグコード、点火コイルを指定している。バッテリー点火のトラックレーサーなどが比較的大きい容量のバッテリーを搭載していることは、発電機能を外しているし、過酷な条件下でのことで、一般車両の状況とは異なる。
 僕のT-140Vが急におかしくなって、「どうしてかな?」と思って実験をした結果、今回記載したようなことを導き出した。決してコジツケではない。単純にこことここをこうしたらこうなった、というだけに過ぎない。たとえば、SRの世界ではよく言われることだし、レースの世界でも同様にいわれているが、プラグコードを変更すると電極の細い点火プラグは溶ける恐れがある、という事実... 。まことしやかなことかもしれないが、現にそういった経験をされた方がいらっしゃる。
 今回の実験では、一つずつ原因を探っていった結果、プラグコードがフィットしていなかった、ということだ。決してTYLERのプラグコードが良くない、というものではない。別のプラグコードに変更すると、また違った結果になるのかもしれない。
 仮に点火コイルを変更せずに低抵抗のプラグコードを装着するといい結果が出るのかもしれない。これ以上のことを僕は実験してみるつもりはない。えらく「弱気」に思われるかもしれないが、今のところ、総合でノーマル以上の性能を発揮している、と自分で感じているからに他ならない。
 仮に、NGKのプラグでなかったら、今回の状況はどうなっていたことか分からない。単純にガスが薄いからそうなったんだろう?で処理されるのかもしれない。しかし、キャブレーションそのものは本文で記載したとおり、一定のパフォーマンスを発揮するまでに、セッティングしているのはいうまでもない。繰り返すが、キャブレーションのセッティングが出た時点で、プラグに赤みを帯びる現象が起こり、プラグが死ぬことで行った結果だ。
 実験結果からは、まことに曖昧な結果と考察になってしまったが、終わりに次のことを記載して、どなたかが追実験を行っていただき、その結果でも発表していただいたら幸甚に思う。
 

◆NGKの点火プラグで抵抗入りのRプラグが昇天する直前、抵抗値が低くなり、ノーマルプラグと同じような焼け方をする。この点から、抵抗入りを指定しているオートバイには、ノーマルの点火系で抵抗入りプラグを使用した状態で安定した電気が流れる回路に設定してあるようだ。
[その逆は真か偽か?]

参考文献(といえるかどうか分からないものも含めて)
・プロトの総合カタログ[TYLERのプラグコード]のところ
・NGKのプラグカタログ(構造のところ)
・DYNAコイルのカタログ及び雑誌のCM覧
・OldTymer誌別冊 ケルン石塚の本
・産業技術環境局 JISマークに関する項目

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