罪つくりなプラグコード
 僕のSR500で散々苦労したところがようやく落ち着きを取り戻した。最大の難題は点火プラグの焼け方が尋常ではないことから起因する様々な憶測、その確認テストと考察。これに相当の時間を費やしたところだ。
 ことに点火プラグコードには参った。一応FUJIKURA-NGKジョイント-TAYLERの組み合わせでOKの線を出したが、ことハイテンションコードとなるとどうも眉唾物という観点に至った。異論はあろうけど、この際だから、僕としては、高性能プラグコードっていうものはカンフル剤とか、その逆のトランキライザーのようなものと受け止めることにした。
 ここに至った経緯は詳しくは述べないが、最初に現れたのはトライアンフT-140Vの点火コイルをDYNA DCコイルに交換した時からであった。
 東京のブリティッシュ・ビートから送られてきたコイルにはヤザキのごく普通のハイテンションコードが付属してきた。どうしてだか、そのときは分からなかった。エーイ、ハーレーにしてもTAYLER使っているではないか、この際だからスパイラル芯線を用いた使いやすいものとしてTAYLERのプラグコードに全面変更した。
 ところが不思議なことが起こり始めた。点火プラグが死ぬのである。しかも調子が出始めると、ここぞ、というときに必ず死ぬ。散々点火プラグの品質問題を僕のページでも取り上げた。明確なものは無かったが、自動車などではリークする場合がある、と後日確認を得たことから、カバーのないオートバイでも少なからず同様のことが起こっているのではないか、とも感じた。
 点火プラグは別にして、プラグ自体が死ぬというのは少し異常ではないか、電流が流れすぎるのではないか、と一心に考え始め、直接のものとしてプラグコードを再びヤザキに戻した途端点火プラグが死ぬのは収まった。
 再びSRに目を向けたとき、キャブレターのセッティングなど吸排気系をすべからくノーマルに戻して、いざ気づいてみると、点火プラグの焼け方がおかしい。中心電極周囲の碍子部分が以上に白いのだ。このことからスーパーサンダーをノーマルのコイルに戻した。
 今度は少しばかりエンジンがカッタルイのだ。これはどうしたことか。不思議な現象が起きつつあった。それなら、プラグコードをTAYLERに戻したらいい状況になるのではないか。これはいい状態になったが、今度はアクセルのツキとかそういった総合判断としての結果が問われることになり、メインジェットの番手を上げることでOKとなった。
 SRとトライアンフの違いは何であったのか。それは点火方式と点火プラグの違いである。この二点に絞って、交換したものの最大要因である点火コイルをまず上げることとして、DYNAコイルのQ&Aを見たときに驚いた。
 そこに書かれていたのはハーレーであったがトランジスタ点火システム(DYNA 2000)を使用したときはカーボンサプレッサーのプラグコードを使え、としてあることであった。この瞬間、一気に疑問が解けた。ブリティッシュ・ビートが普通(カーボンサプレッサー)のプラグコードを送ってきたのはここに起因するためか、である。僕のT-140VはBOYERのフルトランジスタ点火方式になっているから、DYNA 2000のQ&Aに出ていたプラグコードの種類と一致するわけなのである。

構造から
 普通の黒いプラグコードから見てみよう。
 中心に位置するのは芯線としてスズメッキ銅線が6〜7本軽くツイストして(撚って)ある。その外側に黒いラバー上の外皮が覆う。最外周は合成樹脂の外皮が覆う。四輪の自動車ではこの部分がラバーのものが多い。
 芯線を覆っている黒いラバーにテスターを当てると導通が確認できる。アナログテスターだと針が少し振れる。およそ2KΩぐらいだろうか。この部分にカーボンが含浸してあるわけだ。
 
TAYLERはどうか
 中心はグラスファイバーの超極細糸の束があって、その外側にカーボン皮膜の新鮮がコイル状に巻き付けてある。それをシリコンラバーが覆い、その外側をグラスファイバーの網線で包み、最外周がカラーのシリコンラバーということになる。
 同じくスパイラル芯線部分を覆うシリコンラバーにテスターを当てると導通が確認できるはずである。

 そこで、Web上で何か興味のある記事があるのではないいか、と考えて探してみたところ、おもしろいところが見つかった。それがhttp://www.deltahf.com/foreign/truth.html にでていたので、思わずプリントアウトして読んでみた。
 このレポートは痛快きわまりない。特にノロジーホットワイアーの信奉者は逆撫でされる思いをするのではないだろうか。しかし、これはダイナコイルのQ&Aに出ているプラグコードのことでも分かる。つまりのところは、プラグコードも一つの消耗品と考えて、カーボンサプレッションワイヤーを使用する。これが基本、というわけだ。しかも外皮は良質のシリコンで覆われているものなどが好適、という。

 こういった製品は無い、と思いがちだが、さにあらず、かなりのものが出回っている。最近の四輪自動車に使われているものはかなり耐候性があるように感じる。僕はこういった素材を無視するべきではない、と考えている。まじめな意味で、比較的新しい自動車の事故車から、こういったコードを数本取り出して使用してみられるのが一番早い確認方法ではないだろうか。
 それに高性能タイプと呼ばれるプラグを接続してやって、その変化を感じ取られればいい。僕はそんなに変化するとは考えにくいのだが、いかがだろうか。みなさん方で実験をしていただきたい。
 とりあえず、僕の実験からすれば、テイラーの方がわずかにいいかな〜、と思われる程度の変化でしかない。
 コードの状況はお分かりになったと思う。今流のシリコンのコードでは大半が芯線がスパイラル状になっていて、このことがインダクタンスを発生させることから強力な火花を飛ばせる仕組みである。現状で別段不安のない点火状況なら無理してこのプラグコードをシリコンタイプだどに交換する必要は無いのである。



考 察
 トランジスタ点火に改造しているものはDYNAコイルのようにDC作動のコイルを用いるときは要注意である。通常は強い電流が流れるために、点火プラグの状況が焼けすぎのキライという状況だから、ユーザーの気持ちを打ち砕く。点火プラグの状態を見るときは必ず、碍子の奥の方を重視しなければならない。この部分がわずかに燻っていれば良好と判断して差し支えない。
 この部分も碍子の先端部分と同じように白くなっている場合は焼けすぎと思って差し支えない。この時点で、僕ならすぐさま元の普通のプラグコードに戻してしまうのは言うまでもない。
 アクセルワークも自然に多少リッチな方向に変化する。特にSRのようなシングルマシンにはクリティカルに感じ入る結果になるだろう。表現はおかしいがどことなく乾いた感じのエンジン回転が、少しばかり粘っこく回り始めるはずである。
 SRでもトランジスタ点火のT-140Vでも順良な点火コイルなら結構いい火花を発生することが出来る。点火コイルも消耗品とはいえ、そのオートバイ固有の性能を引き出すためと、それを持続させるために選ばれているものと思う。その状態で吸排気系に異常が無い場合はプラグコードをさわって強い火花を出す必要はない。特にストリートユースのオートバイではそう感じる。
 まさに、罪作りなプラグコードと言えるのではないだろうか。

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