見かけの28mm その1

 「え、また元に戻るのかよ〜。バカやってんじゃねー!これだから素人は困る。」そうおっしゃらずに、話をさせてください。お願いしますよ。口径を少しずつ下げるのは比較的簡単ですけど、逆はキャブそのものを変えないと出来ないんですからね。「妙なコジツケいいやがって.... 。」
 我ながらそう思うのだが、ま、読んでいただきたい。ずいぶんと遠回りをしたのかもしれない。



2000年12月9日(
 どうしても、キャブレターの調子が今一だ。ここまでにどれだけの時間が経過しただろうか。それでもAMALには戻れない。それ以上のものをこのSUDCO MIKUNIのキャブは何か持っていそうでならないからだ。
 キャブレターのセッティングを再びさわってみた。ニードルポジションを一段上げたところにクリップを持ってきての確認は、走れるもののぎくしゃくしてダメであった。
 もしかして電装もおかしいところがあるのではないか、と考えて点火系を見直して、接続を確実なものとした。目に見えない電気の流れのロスは確実に存在するようだ。少しずつ良くなっていくのが分かった。日暮れが近いし、「これまで」、と切り上げた。キャブレターのセットはパイロットの戻し数を1回転と3/4にセットした。スロットルの付きは若干よくなったが、アイドリングが安定しない。何かが不足しているのだろうか、ちょいと割り切れないところがある。
 ここで考えを巡らしてしまうから一歩前進二歩後退になってしまうのかもしれない。僕の性だろうかな。
 
2000年12月10日(
はじめに
 あいにくの朝からの雨。朝食のパンを購入するため新町のステファニーまで往復する間、昨日のことを再び考えてみた。人間というのは恐ろしい「カン」というようなものが必ず存在する。もちろんパンがどうのこうの、というものではない。食事を終えたとき辺りから雨が上がり始めた。天気は曇り空だが風もない。気温も低くはない。とにかく路面が乾いたらテスト走行しよう、と決めていた。
 それまでに、まずは落ち着いてバイカーズステーション誌2001年1月号のキャブレター特集号を読み返す。休日のひとときとか、雨のときぐらいしか、しっかりと本など読めない。
 記事中にある、「とにかくパイロット系のセットをして、その後で云々」のところを、僕の場合に当てはめようとしたが、これはTMRとかFCRの近代的キャブレターでの話だ。(実はそうではないのだが)SUDCO MIKUNIなどの普通のVMキャブのこととは違う。
 けれども僕のやってきたことは、この特集号の記事内容とあまり変わらないではないか。そういった気分でセッティングの一つずつのカテゴリーを読んでいて、一カ所気になったところがあった。それはキャブレターの口径が大きいとシリンダーへの吸入負圧が少なくなり、燃料より空気の方が大きく流れて息付きなどを起こす、というところであった。そうか、TMRなどでも僕の場合と同じようなことは起きるんだ、ということが分かった。

はじめに仮説
 この見えない現象に今まで散々苦労したのではないか。もちろんそれを克服することは楽しみでもあったがなど、ぶつくさ言いながら早速キャブのセットパーツを引っ張り出して、あれこれ考えを巡らせていた。ページ中のキャブレターの断面図を見ながら、混合気の流れをどこで押さえるか、僕がいつも使う通常のスロットルに反応を良くするには.... 、などなどと。
 「まさか?!」。各ジェットからの燃料の流れはキャブ本体の下からだ。吸い上げられた燃料はまっすぐに入ってくる空気と混ざる。霧吹きの原理通りだ。だったら、混合気の流れを阻害することなく効率をわずかに落としてやる方法なら行けるのではないか。
 ちょうど数ヶ月前のモーターサイクリスト誌に出ていた、ホンダのX-11のフルパワー仕様にする記事に出ていたキャブレターに付けられていたような遮蔽板のようなものでもいいではないか。その時の記事はそれを取っ払うのだが、僕の場合は手っ取り早くそれを装着するには.... 。
 そのためには見かけの30mm口径で使ったアルミパイプを加工すれば.... 。ン、間違いないはずだ。少しだけ混合気を濃くシリンダーに送り込むようにすればいいのではないか、と考えた。
 しかも、トライアンフの場合はSRなどと違って、混合気はほぼ真っ直ぐにシリンダーに送り込まれる。効率は非常にいいもののように感じる。

実験開始
 それでパイプを略図のような形に加工した。山勘だがシリンダーへの吸入口は28mmから26mm口径の表面積になる。この曲げた部分をインシュレーターフランジの上側に来るようにして装着する。
 プラグはB6ESのケルン石塚風チューニングモデルだ。プラグキャップはNGKの抵抗入りを使用する。ボイヤーのトランジスタ点火システム、ダイナコイル、と変更はない。電装系の確認の意味から先にプラグからの火花を確認。ふるえが出るほどのスパークだ。音までバチバチと聞こえる。いよいよエンジン始動の後、走行を行う。

走行フィーリング
 エンジン始動はいつも通り、何の変化もない。ところが、びっくりすることは、2000rpmで、ものの1分もエンジンを回し、アイドリングが900rpm辺りになった時を見計らってプレップしても、スロットルにエンジンが付いてくる。アレレ、今までこんなことはなかったんだが。この天候だと、もう少しウォーミングアップに時間がかかるはずだが.... 。
 このバイクの性格上、数日乗らないとクラッチディスクはフリクションプレートとぴったりくっついてる。そのクラッチの切れを確認して、エンジンが完全にスロットルに付いてくる頃を見計らって走行を開始した。すぐ先の国道へはエンジンストールするかもしれない不安から遠慮して、裏道を走る。ことはすぐ近くの交差点を過ぎて起き始めた。
 おお、スムースに走る。今までのように回転を上げてクラッチミートする必要もないし、いつもの走行を行えばいい。何も気にすることはない。ちょうどノーマルマフラーでAMALのMK-Iを装着していたストック当時の感覚だ。まずはショートトラック(周回コース)のテストコースへ、と思ったが、雨上がりのためか車が多い。したがって、城山半周の後、吉田町まで走る。往路は緩やかな知永(ちなが)峠への道も苦もなく上っている。今までの残留ガスのためか少し重い。
 帰路はどうだろう。僕の感覚としては申し分ない、と思えるものであった。どうやら今回のことでこのキャブは満足行くところまで来た。

考 察
 誰も考えるのは「それなら最初から28mm口径のSUDCO MIKUNIにしておけばいいのに」とおっしゃるであろう。確かに、あらゆる記事を読んでも、28mm口径の方がいいという、そういった結果報告がなされている。それほどのものであろう。
 しかし、先に記したがSUDCO MIKUNIのVMは形こそスタンダードであるが、どうも一般のツーサイクルエンジン用のキャブレターに手を入れたもののようだ。当然、フロート部分、メインジェットの装着部分など、ヤマハのモトクロッサーに装着されているミクニのキャブによく似ている。考え方がレーシングキャブレターのようである。ストックのAMAL MK-Iは30mmで、このキャブもラフであったが、効率はいい。このAMAL以上にSUDCO MIKUNIは効率が高いように感じるのだ。
 が、今回の手っ取り早い方法ではなくって、何とかできないものか、とまたまた考えを巡らし始めるのが。
 
続く.... inserted by FC2 system