何か間違ったことをしているのではないか?(その1)

 点火プラグとT-140Vの関係はこれまで何度となく触れてきたし、逐 次稚拙な推理をつけて紹介してきたところである。これまで触れてきた中で一番多いのは「こ れこれ、このような状態になったときにプラグが昇天する」という 状態に自分流の説明を付けるのだが、頭の中ではどうも納得できないでいた。(苦笑)
 はっきり言うと、通常ダメになるような状況ではないときに、これ(ダメになる)が起きる。とりたててキャブレターのセッティングが濃くないのに濃い 状態になったような... 。それじゃ、ってことで熱価を下げても変化なし。むしろ前と同じ状態の時間が短い。そして逝ってしまうのであった。このことが全く解らないでいたところで ある。

最 初は...
 まず、ノーマルのT-140Vの点火方式はバッテリー点火で、タイミングはコンタクトポイント方式である。スパークアドバンサーは錘とスプリングのオー トガバナー。発電はオルタネート発電、出てきた電気はシリコンブリッジの清流、ダイオード制御という、バッテリー点火方式だ。簡単な2サイクルなどでのフ ライホイールマグネトーの発電、と、ここ15年前ぐらいまでは世界中でもっとも確実な点火方法であった。コンタクトポイントの調整なんて... 、とボヤキが出てきそうだ。
 T-140VのエンジンはOHVの直立2気筒、ピストン口径よりクランク行程の上下が長いロングストロークタイプである。圧縮比も9行くか行かないか で、T-120R よりは回転の上がりが穏やかなものである。
 そういったエンジンのくせに、ChampionのN-3が指定の点火プラグである。NGKならB8ES、デンソーならW24ESである。オートバイを購 入して以来、くすぶりは若干あるもののB8ESで通してきたのを思い出す。
 ボイヤーのトランジスタ点火方式に変更したときに、最後期のデボントラT-140Eがルーカスリタのトランジスタ点火方式を採用し点火プラグがB6ES に指定されていたのを知ってから僕の考え方がおかしくなってきた。
 幸いなことに、ボイヤーの点火方式を先に装備したために、この点火プラグの問題は熱価の件だけで片づいたのだったが、キャブレターをSUDCO MIKUNIに変更して迷路に入り込んでしまった。もっともT-140EはAMALのMK-IIにキャブは変更になっていたが... 。
 その後、ダイナコイルに変更して何とかB7ESを使ってきて、一定の成果を出していたところであったが、状況は芳しいものとはいえなかったところだ。
 その上に、書類上でのことを実際に合致させようと試み、コトのごとくそのとおりにならないジレンマも感じていたのは事実だが... 。

大 半の方々は... 、そして今は...
 6年前、1998年10月の花園村、ドンダン大阪の小川さんがロビーでお仲間と談笑中にポケットからプラグを出してきて「トラの場合はこれぐらいでない と、高速では(ピストンが)心配だな」と提示していた。相手はそんなことはない、もっと白い色でないとダメだよ... 、と一歩も譲らなかった。
 そのプラグはえらく燻っていたが、どことなく、高速を1時間も走ると碍子部分はタン塩色になるのは僕にも明白に解った。
 残念ながら僕はSR500で出かけていたために、T-140Vのことを思い出しながら「そうかもしれない」とおもっていたところだ。
 こういったことも忘れて、何とかB6ESをフィットさせようとしていたところだ。これまで、B6ESを4本、スプリットファイアを4本、B7ESを8本 ばかりパーにした。いずれもこの辺だからのセッティングを出す途中での昇天だ。3000km走っての交換ではない。ひどいときは数キロ走ってダメにしたこ と もあった。
 ダメにしたのはとりもなおざず焼け具合だった。一般にいわれる、「きつね色とか碍子部分の奥の方まで白っぽいとか、そういった状態にならないとウソ だ」、と思いこんでしまっ ていたに他ならない。

 実のところ、これは現代の希薄燃焼方式、そして四輪自動車での使用率が高かった突出型の点火プラグに大半のオートバイのエンジンがフィットさせる状況に なってきた、というのが最近になって解って きた。
 T-140Vでは若干オムスビ型のピストンヘッドの形状とともに、点火プラグは2サイクルと同様、スタンダードタイプを使用する。NGKでいうPタイプ の プラグ形状ではないのである。2サイクルのオートバイに乗っていらっしゃる方ならお分かりだろうと思うが、点火プラグは結構燻っているし中心電極部分が狸 色ぐ らいで調子がいいはずである。金属部分には少しウエットなススが付着している状況だろう。

 しかし、僕が解せないのはB7で燻るのならB6にしたらOKのはずだ、と考えた。すでにこの考え方を証明しようとする方向付けが間違っていたのだが、 「色」に狂っていたのだから致し方ない(爆)。
 そのつもりで6番にすると電極も碍子も白くならず真っ黒になって点火プラグは昇天するのである。走行距離はわずかに30km程度、始動するのは3回程度 だ。全く不思議な現象なんだ。
 白くなって昇天するのなら解るが、全く逆の状況で逝ってしまうのだ。このときはもう一つの状況に注目していなかった。

こ れだろうか?
 ところが、全くひょんなコトから、これらの原因が明白になり始めた。これについては後まわしとして... 。
 当然、こういった状況になってしまうと、吸排気系の問題、点火系の問 題などに気が向くものであるが、今回はどうも違う。AMALのキャブの時でもそうだったし、ことにSUDCO MIKUNIのキャブは外観からして、まるで2サイクル用だ。それも左右非対称だ。逆に機構自体はAMAL同様シンプルなVMタイプだ。エンジンの腰上を ばらしたときも バルブ関係には全く手を加えていない。マフラーさえオリジナルの排気効率に近いものだ。

 そうなると、どうやら点火系がプラグの死と関係があるようだ、というのがおぼろげながら解りかけてきた。

 そう知らしめた事件は、プラグコードをカーボンサプレッサー+スプリットファイアのツインコアに交換したときであった。点火プラグはスプリットファイア のSF-405Dであった。
 このプラグはNGKのB5ES〜B6ESをカバーする。焼け具合を重視すればSF-405Fに軍配が上がるが、これでは焼け気味になることは使ってみて 判っていた。
 が、このとき(SF-405Dで)は、ほぼ良好かな?、という、少しいい状態を示していた。この仕様で2004年の春のBritish Runへ参加したのであった。
 その後、勢い込んで、カーボンサプレッサー部分をテイラーのシリコンコードに変更した途端にSF-405DがB6ESが死んだのと同じ状況(プラグが失 火したりする)で逝ってし まった。
  アッ!そうか。
 ようやく気づいた。一つ一つ点火系を整理してみよう。

ノーマルのコンタクトポイント、し かもAMALのコンセントリックでパイロットジェットが装備されていない状態でもB8ESで大丈夫 だったのは、当初か らT-140Vではこの熱価を必要としていたのだ。
トランジ スタ点火に変更すると、強い火花が長く続くので混合機の燃焼効 率がよい。
ダイナコイルの2個封入、同時点火の3Ω抵抗(二次は14000Ω)コ イルはかなり強い火花を飛ばす。
ほぼ同一状態のシリコンプラグコードは強大な電流を流す。

と、いうことになるのだろう。

比 較したのだけれど...
 すでにお分かりのことと思うが、電気的な特徴として、点火コイル、プラグコードなどで点火プラグへの供給電流料が多くなる方向とするのなら、熱価は上げ るべきだと思う。
 ただ し、ここにも一定法則のようなものがあって、スタンダードのプラグを用いる 場合、は今の突出型のプラグでの焼け具合をフィットさせるべきではなく、あくま で、そのエンジンが必要としている点火プラグの熱価をまず基準とすべきである。そこから上下1番ほどの熱価で様子を見ることにとどめるべき だ
 この件はキャブレターを変更した場合は、スタンダードのカーボンサプレッサーコードと点火コイルを元に戻して再度確認した方がいいが、おそらく熱価は1 番下げることで要件は満たされると思う。

 SR500の場合は点火コイルとプラグコードを交換した場合はBPR6ESからBR7ESに変更するとしっとりと落ち着いた燃焼になることが確認されて いる。一説には点火時期まで変化させる、といわれているが、これは着火位置が異なるためにそう感じられるのであろう。
 つまり、突出型は燃焼室の圧縮された混合機の中で着火させる。それに比べてスタンダードのプラグは圧縮された混合機の頂点に着火させて隅々にまで火 を伝播させることになるのだろう。そういえば、T-140Vのピストンヘッドは少しトップが盛り上がっているが、SR500ではほとんど自動車と同じフ ラットに近いもの な。

 後ほど熱価のことで迷路に入り込むが、このことを頭の隅に入れておけ ば... 、と思っても後の祭りとなる。実際はそんなに甘くはなく、次なる結果が待ちかまえていたのである。

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