何か間違ったことをしていたのでは?(その2)

兆 候と処置
 K&N エアフィルターをラウンドタイプに変更して暫くの期間が経過した。特におかしな動きをする数個の台風の影響から2004年8月末はT-140Vの走行テス トをすることができな かった。た まに乗るとオイル量の減りから、外気温が高い夏も加わってオイルが吹き出る始末。
 まじめな話、今夏の状況から来年を目指してT-140Vにもエキゾース ト側にブリーザーを増設 し、オイルクーラーを装着しなければならない、と考えるに至ったところだ。

 エアフィルターをラウンドタイプに交換して間もなくプラグが死んだ。キャブセッティングが狂っているのか、点火プラグの熱価の不一致かどうか不明の中 で、バスバス、というエンジンの不正爆発のような兆候が現れていたのだが、あまり気にすることなくそのままにしていたところ、エンジン始動後にBR7ES が昇天した。
 同時に前側のプッシュロッドチューブの下側からオイルが吹く。時に2004年8月21日昼前のこと。外気温35℃、15W50のオイル量1.1リッター の状況であった。プラグを交換してOKになったので、直ちに交換用のelf 15W50(API-SL)を購入に走る。が、天候が一定しない。青空工房のガレージに車体カバーは必須だから、エンジンを回すことができない。今の季 節、エンジンの熱は外気温の高さと同様に2時間程度では常温に治まらないからだ。
 で、オイル交換もできないまま時が過ぎた。
 オイル交換のこともさることながら、こうまで点火プラグをはじめとした枝葉部分に悩まされることは、SUDCO MIKUNI 32mm VMのキャブレターセッティングで何か間違っていることをやっているのではないだろうか、と、フト気づいた。

エ アスクリウ
 ようやくのことで、8月27日の午後、オイル交換のみ行った。わずか5 分程度の暖気時間にもかかわらず、ドレンからは水のような腰のない、さらさらオイルが下りてきた。
 2.1リッターをメイン、150ccをプライマリーに注油して終了。メインタンクには200ccのSTPオイルトリートメントを添加した。鉱物油にポリ マーは何となく粘度関係には好ましいように感じる。考え方は違うが、T-140Vのエンジンはシリンダーが鋳鉄だし、自動車と同じと見なせば、オイルの性 能をもってしても、今夏の日本の酷暑にはエンジン全体としてセルフバランスが取りづらいからに他ならない。
 STPを添加すると、暫くの間ガサゴソ感が強くなる。そういえば、過去にヤマハのTX750で実験された方もいらっしゃるかもしれない。
 対米輸出仕様には純正のオイルクーラーがあったのだが、国内では数年後、CBR400のサブタンク的なものしかオイルクーラーを国が許可していなかった と いうバカげた実例があったためである。

 オイル交換が終わって、エアスクリウを回してみる。あれ?、何回やっても1回と3/4でいい感じになり、その次は3回転で最高になる。何かおかしい。
 残念ながら、台風が近づきつつあるし、この炎天下では最終が夜になってしまうため、この日はこれで作業を終えた。
 オイル交換後のこの確認作業を行わなければ、キャブレターセッティングで再び泥沼へ入り込むことになっていたのかもしれない。

セ オリーは普通なのか
 AMAL コンセントリックMK-I では口径30mmでメインジェット#190、パイロットジェットなし(内部のブッシュは#25相当)が標準であった。僕のはパイロットジェット#20を装 着していたけれど、それでも濃い 状態でずっと通していた。その時のセットはエアスクリウ1回と1/2から始めていた。ニードルクリップはセンター。

 従ってSUDCO MIKUNI 32mm にしても同様の方法を採って、今のセッティングを出したところだ。完全にいい状態になっていたのは数週間しかなかった。それほどの結果しか出されていない し、その時を含めて、これまでのセッティングのセオリーはメインジェット#220、パイロットジェット#25、ニードルクリップを下から2段目という辺り を基準において、僕なりの実走行を主にセッティングを出してきたところだ。
 当然、点火系等も今の装備品になってなかなかいい状況になったのだが、もう一歩踏み込んでのセッティングをやって、その8割をリファレンスにしたい。 が、そう希望した場合、今までのセッティング方式で本当に正しいのか?、という疑問がわいてきた。当然、WEB上なんかでもキャブレターの調整は次のよう な調子で記載されているのを見るばかりであった。

・一応エンジンの回る状況ならウォーミングアップの後、エアスクリウを1回と1/2回転開いておく。
・エンジンを始動してアイドリングを2000回転ぐらいにする。
・エアスクリウを左右に回して回転の一番上がる位置にして、アイドリングを規定回転に戻す。
・再度エアスクリウを回して回転の上がる位置を出し、そこから1/8〜1/5回転ほど閉める。

 これがセオリー通りだ。後はシャシーダイナモなどで測定するのが本来の行き方だろうけど、地方に住む一般のユーザーはそういったことができない。どうし ても実走行が次のステップになって、各ジェット類の決定、スクリウの戻し回転などが決定される。
 このように信じて疑わなかったのだ。

 ところが、少し違うセオリーからキャブレターのセッティングを行っているサイトを見つけて、一般のユーザーが行うセオリーがおかしいのではないか、と感 じ始めたのだ。
 そのサイトは「PROJECT H-2」http://www.project-h2.com/project/pj_04aj.htmlで ある。対象はカワサキのMACH-IV(国内はH-2・750SS)を主としたもので、2サ イクルエンジンが主体になるけど、それでも僕にとっては参考になることが存在することを確信した。
 このサイトでは、まずは、そこそこ走れる状態にしてあるかどうか?、というところから始まる。僕のSUDCO MIKUNIと同じだ。次は当然パイロット系から... 、と思いきや、メインジェットが一番先に来るのである。
 要約すると次のようだ。



MACH- IVの場合は2サイクル並列3気筒だから、4速、5速で 7000回転以上回らなければメインジェットを小さくする、とある。(4サイクルとの違いはデトネーションが出るかでないか、ということだ。その他は4サ イクルにも適合してもいい。)


次はニー ドルジェット。1/2開度付近でスムースについてこない、と か、モタツキの後開けると飛び出す場合はニードルジェットの番手を下げる。スムー スでもついてくる力が感じられなければ番手を上げる。後者は中域までに薄い場合に発生とある。


パイロッ トジェットが次に来て、1/4開度付近でジェットニードルを合 わせてもダメな場合は変更する。開け始めにもたつくときはパイロットジェットを 小さくする。


エアスク リウのセットでは、パイロットジェットが関与する部分で回転の 落ち方に段付きがあればエアスクリウで調整、となっている。


最後に ジェットニードルのクリップ位置は変更しない、とある。ただし、 濃い薄いの方向性を見極めるには位置を変えてみることも役立つ、とある。
 
 そろそろ来たぞ。思い当たる節が少しずつ解りはじめた。

僕 の場合と照らし合わせる
 表中1
の項目ははどうやらクリアーできている。SUDCO MIKUNIの場合のメインジェット交換は比較的簡単だし、さんざんやって、#210の時から操作してきたが、再び#190ぐらいに下げなければならない のだろうか。
 が、#210では高速走行がイマイチになってくる。#220のままとしたいが行けるところまで、とするなら、#210も検討してもいい。

 表中2については交換が不可能である。5で記されているとおり、ク リップ位置を下から2段目にして濃い状況にしている状況がいいようなので、このままと する。
 ただし、二段ロケット気味も感じられるからクリップ位置をセンターに戻してセットを試みるのがいいかもしれない。

 表中3、コイツが問題だ。表中5とも関連があるが、クリップをセン ターに戻して開け始めにもたつくのならパイロットジェットは下げなければならない、は少し 当てはまらないのだが... 。

 表中4、セット開始時のエアスクリウの開ける位置は1回と1/2回 転だ。ここより閉め込んでいったときに回転が上がればパイロットジェットを大きくしな ければならない。
 が、僕の場合はパイロットジェットを交換しても大半はこの1回と1/2回転で落ち着いているから、わずかに閉め込むだけでいいように思っていたのが、こ れ まで行っていた結果だった。
 今回のオイル交換で、これは間違っている... 、うすうす解りかけてきた。

 表中5は今のところ各部をいじっていないので、そのままのポジショ ンである。

 まずは、これまでのセッティングをもう一度出しておこう。

項目
状況
内容
キャブレター
SUDCO MIKUNI VM32
ハイパフォーマンスキャブレターキット
メインジェット
#220
キタコより購入(ミクニ純正)
パイロットジェット
#32.5
キタコより(ミクニ純正)
ニードルジェット
6DP17 SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルクリップ位置
下から2段目

インマニアダプター
SUDCOのキットに付属 エンドより1段目の滑り止めをカット
インシュレーターラバー
50mm長
東洋ゴム製耐油(耐熱) 内径38mm
エアクリーナー K&Nラウンド
エキパイ
ノーマル

マフラー
メガホンタイプ
リプレース品


机 上の考え
 オイル交換時に確認した作業を思い出しながら次のように考えてみた。
 この2点だけでケリがつくのなら、相当に回り道をしたセッティングになってしまったことになるが、いい勉強をさせてもらった、としよう。
 机上の考えは以上のとおりだった。

 しかし、これがそのままT-140Vに対応できるとは思えないところが出てくる。じっくりとこれまでの結果を検討してみる。
 出てきた方法は次の2点だ。
  1. MACH-IVの調整の方法とT-140Vのこれまでからすると、パイロットジェットの番手をどの程度まで落とすか。
  2. ニードルクリップのポジションを中央にして走れるかどうか。

い よいよ実走行へ
 これらのことを一気にやってみる必要がある。相変わらずの「バカンスはいつも雨」の週末ばかりだ。意を決して2004年9月3日(金)、午後から休暇を 取って問題解決に取りかかる。
 1.に対してはマージンを取って#27.5とした。過去のテストで#25と#30でやって、その中間あたりがよかった結果を以前に得ていたからだ。
 パイロットジェット交換はいつものとおり20分もあれば終了する。概略をつかむためにウォーミングアップを5分ほど行って、エアスクリウの調整を行う。 およそ1回と3/5でOKとして走らせる。スタートした瞬間。多少バラついた回転域であるがアクセル操作1/4程度でスタートできる。極端にリッチという 気分で はない。全体に濃い状態で作動している、という気分だ。
 そのまま、いつものテストコースへ入れる。
 夕刻の秋の近い空気の中、とんでもない走行状態を示してくれる。あっという間に100km/hへ近づいてく る。ストレスなど全く感じられない。グワァ〜っと来る気分だ。
 が、これは乗せられている気分に他ならない。この気分は高速道路なら実に軽い気分でいいかもしれないけれど、走行全体の味としては少々行き方が違うよう に感じた。
 帰って、エアスクリウの調整を再び行う。1回と5/8でセット完了。夜のとばりが近いため本日の作業は終了。
 考えてみれば、課題の2.が残っただけだが、もう一つ困ったことが起こった。天候が急変しそうだ、ということである。

 本日のセットは次のとおり。
項目
状況
内容
キャブレター
SUDCO MIKUNI VM32
ハイパフォーマンスキャブレターキット
メインジェット
#220
キタコより購入(ミクニ純正)
パイロットジェット
#27.5
キタコより(ミクニ純正)
ニードルジェット
6DP17 SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルクリップ位置
下から2段目

インマニアダプター
SUDCOのキットに付属 エンドより1段目の滑り止めをカット
インシュレーターラバー
50mm長
東洋ゴム製耐油(耐熱) 内径38mm
エアクリーナー K&Nラウンド
エキパイ
ノーマル

マフラー
メガホンタイプ
リプレース品

 明日は早朝から調整とテスト走行を行うと決めてオヤスミとした。

 明けて9月4日(土)5時半起床。夜露が降りたというか、少々しっとり気味だ。台風16号が去って以降、秋が急速に近づいている。寝床を片づけてジェッ ト類と工 具を先に用意しておいて、身支度を整えて昨日のセッティングのままでニードルクリップの位置のみ中央へ戻す。
 わずかにスタートが難しい。スタート後の数キロメートルはいつものぎくしゃく感が取れない。加速のスムースさは昨日よりも好ましい。広見町から成川へ入 る手前で、再びクリップ位置を下から2段目に戻す。
 昨日は暴力的な高速走行を目的としたセッティング結果を得たところだ。確かに高速域が良好としても、これまでの経験から判断して、ニードルのクリップ位 置は下から2段目に決定することとした。
 一度帰って、2.の確認を行う。陽が出始めると気温ほか朝夕の秋めいたものが一変して残暑の様相を呈してくる。
 暴力的ともいえるグワ〜っと来る感覚からもっとフレキシブル感に富んだ方向付けにしなくてはならないため、まずはメインジェットを#220から#210 へ落とす。ニードルクリップ、エアスクリウには手をつけていない。
 スタートしての異変はすぐに感じられた。
 これは... 。
 そう、全く別のマシンに感じられはじめた。走り方が実にスムースなのである。何とも言えない。まるで新しいコンセプトでリリースされたT-140Vのよ うに感じられたのだ。

 アクセル一ひねりで... 、の気分は決してないし、ここぞ!、というときでもインラインフォーの大きいオートバイではないから、5速でも追い越しをかけるときは1速落として行うの は、ごく普通の行為ゆえのものだ。そうやって、僕はMACH-IIIのときからやってる。
 そりゃ、古い時代の... 、と言う無かれ!。ダルを決め込んで、と言う無かれ!。そういったことができる今のオートバイは誰にでも乗れるようになった反面、人車一体になってのライ ディングができない、オートバイ優先の世界を形成しているのではないだろうか。
 壮年のヒガミのようにも感じるが、僕は事実だ、と思っている。反論される 方がいれば、ツーサイクルの50cc、 クラッチ付きのオートバイに乗せれば、僕の言うことは理解できるだろうと思う。

 このような感覚でのセット内容は次のとおり。

項目
状況
内容
キャブレター
SUDCO MIKUNI VM32
ハイパフォーマンスキャブレターキット
メインジェット
#210
キタコより購入(ミクニ純正)
パイロットジェット
#27.5
キタコより(ミクニ純正)
ニードルジェット
6DP17 SUDCOのキットに付属(ミクニ純正)
ニードルクリップ位置
下から2段目

インマニアダプター
SUDCOのキットに付属 エンドより1段目の滑り止めをカット
インシュレーターラバー
50mm長
東洋ゴム製耐油(耐熱) 内径38mm
エアクリーナー K&Nラウンド
エキパイ
ノーマル

マフラー
メガホンタイプ
リプレース品

 このセッティングでしばらくは走ってみたいとして、作業を終えた。
 5日は空模様がおかしい予報のため作業できない。その週末もどうやら無理なようだ。青空工房ゆえの天候不順による作業継続ができないことは、大きなハン ディキャップだろう。
 土地を購入してガレージを造る余裕は今の僕にはないから、青空工房は続けなくてはならない。

 ところが、9月9日の重陽の節句 の朝、この「何か間違った... ?」の項の最初の現象が再び発生したのである。(続く)


[その3へ]


inserted by FC2 system