T-140Vのシート修正
こ
れまでのこと
純正のままで使用して20年ほど、いつもの着座位置のサイドが割れて来始めたため、数年前にコヴェントリーの清水さんを通じて、シートの修正を行った。
それ以来快調さを保っていた。
このときの修正は、当初のウレタンチップ素材が結構腰のあるものであったために、少しばかりそぎ落としを行い、シート状のウレタン素材でカバーした後、
650のシート表皮を無理やり被せていたものであった。
ところが、快調さはキープされていたものの、少しの雨でも整形のウレタン素材がすぐに水を吸うため、どことなくジワ~っと内股が濡れる状態になってし
まった。数日間陽に干すと、股は濡れなくなる。
これでOKだな、と最初の頃は安心していたのだが、シートをオープンにしたままのワイヤーが切れて以来、開きすぎの状況でリアショックのピボットボルト
の頭で表皮の一部が破れたときにコトが発覚した。いくらシートを押さえても水が抜け切らないのである。
まさか?と思い、シートをはずして燃料タンクとの境目を下にして立てかけておくと…。
何と、地面に水が流れ出してくるではないか。その量、およそコップ1杯分程度だ。これには参った。雨の毎に、この行為を数回やったが同じ状態だ。
おそらくシート皮の縫い目を主として、そこから水が浸入する。それが、今流の透明シートを被せているため、そのズレから整形用のウレタンが水を吸い込
み、抜けきらない一部が本体のチップにも吸収されている状態であろう事は間違いが無い。
もう一点は、昨年だったが、不届き者がカバーシートにタバコの吸殻を投げて、タックロール部分に穴が開いた。が、これは何とか食い止められているよう
で、タックロール部分からの水の浸入は無いようである。
とりかかり
このことに、業を煮やして、シートの修正をどこのシート屋へ発注しようか迷っていたところだったが、(少し古い)別冊モーターサイクリスト誌に出ていた
(創始者酒井氏の愛車で
ある)旧タイプのBMWの整備記事で、そのシートをなかなか巧い修正を行っていた東京の「サゴウ工芸」のことを思い出した。
最初に電話をしたのが2006年の6月であった。目論見は簡単なこと、ボーナスが目当てである。ところが、SR500の車検費用にお金が必要なため、こ
れが挫折。
それに、その頃はSUDCO
MIKUNIのキャブがもう少しのところまでにセット出来ていたし、SR500のスパトラのテストが終盤を迎えようとしていたため、シート修理を後回しに
していたところだった。
花園(村)での英車の集いで松山氏のヴィンセント・コメットのMIKUNI
VMキャブのセッティングに光明を見出し、同じように行ったところ7年間のもやもやが消えつつあった。それが2006年の11月。ところが、この辺特有の
冬の天気が一気にやってきたため、その後の走行テストが全く行えないままになった。
11月29日、再びサゴウ工芸へ電話。年内に間に合いますか?の問いに「十分です。」費用は?、に対しては「25,000円程度」という返答。これは夏
に電話したときと全く同じであった。
よし、それなら、と改善点をまとめたものを文書化しておくこととした。
①厚さなどは現行の状態で、アンコを腰のあるものにしてほしい。
②タックロールは無くても可。
③シート素材は黒、パイピングは黒か赤。
④防水加工
これで良しとしたのだが、妙に胸騒ぎがする。再び古いモーターサイクリスト誌のバックナンバーのBMWの旧タイプの記事を見る。
そのスポンジに新しいスポンジを加える微妙な状態からすると、実際に僕がサゴウさんへ出向いてアレコレいうのが本筋だが、それが出来ない状況。上記④ま
でのこと以上に何か... 。
そうそう、僕の体重、股下、膝下などの寸法を記しておく必要がある。一応、身長174cm、体重83kg、股下76cm、膝下40cm、と記しておい
た。(この重要性は後ほど)
この程度をまとめて文書にして同封することとした。
発送は大変
12月3日(日)、南予写真協会作品展の最終日、生憎の曇天。一気に冬が来た。大変だよね。作品展のバックグランドミュージックにCD
を流していた手前、著作権の兼ね合いで、コピーしたものを流してはダメということから1時間以上のものを選んで11時過ぎから輸送作業に取り掛かった。
まずは、会場が我が家に近いため、歩いて帰って車体からシートをはずす。土間(の通路が我が家にある)に立てかけておくことにする。取って返して、12
時前にCDを入れ替えして再び帰宅。
十分にシートの上から押し込んで水を出した後、取り付けヒンジ部分を保護してコージーシートの箱に入れて、自転車の荷台にくくりつけ、まずは南予文化会
館へ。
ここで再びCDを入れ替えし、泉町のクロネコへ持込み。送料が1,580円。サゴウ工芸へは明日到着という。すごい早さだ。郵政との競合など、この分野
も厳しいな、と感じるところだ。
日曜の配送などを含め、ほんの些細な事などを考慮すると、僕は宅配業者へ依頼したほうが好ましいと考えるのだが…。
昼飯も食べてなかったので、クロネコからの帰路、サンクスで弁当を買って南予文化会館へ。CDは間に合った。ほっと一息ついて、コンビニの弁当をぱくつ
く。やはり労働の後は安い弁当でも美味い。
これからしばらくの間、T-140Vは車体カバーをかぶったままで過ごすことになるが、シートの出来に対して、この時は実のところワクワクの期待感で一
杯で
あったのだ。
最長12月17日の週まで待つこととする。期待以上だったら僕のクリスマスプレゼントだな。
到着と修正
12月12日(火)
サゴウ工芸から「受け取りました」などの連絡もないままで1週間が過ぎようとしていたので電話した。
「あ〜、あれね、昨日送ったと思ったんだけど、ン、間違いない。明日辺り届くんじゃないかな」との返事。お代の方は?。「25,000円」。銀行振込で
すか?。「着払いにしといたんでよろしくね」という。何とも淡々としたやりとりなため、本当に大丈夫かいな?、と感じつつ、到着を待つこととした。
12月13日(水)
忙しかった仕事も終わり、別の会議の終了後、遅くに帰宅。
シートが届いていた。支払いしてくれた妻にその代金を払って、早速箱から取り出す。「オ〜、スゴイ!」。
何とも言えないものが支配する。裏側のシート皮の貼付も完璧だ。外見だけだが、どうやら元の内部ウレタンチップを2cm程度残して、新しいチップ、ベー
スウレタン、成型用ウレタンの積層で作られているのだろう、と想像した。
着座位置を上から押したり、叩いたりしたが、少しばかりコージーシートの状況に似ているな、と感じたところだ。再装着して以降の状況にワクワクしてきだ
した。
が、ここで問題発生。シート皮のシートベースへの接着を完全にするため、塗料を剥がせてある。その一部分の広がりが少しばかり見受けられる。30年経過
の鉄板のシートベースだが、僕のT-140Vでは一番綺麗な部分だ。「プラスアースに注意」のコーションステッカーまで健在だ。
というところで、水性エナメルのブラックで処理することにした。比較的柔軟性があり、その上、固着すると剥がれることはまず無いスグレものだ。
走行テスト
12月16日(土)
冬の空模様が支配する。が、気温はそれほど低くはない。朝の内にシートを装着する。当初はサイドモールがあったが、今回の張り替えでタックロールが省略
されたのを機にこれもはずしたため精悍な感じになった。
昼食後、午後2時過ぎから走行開始。もはやエンジンストール、点火プラグの死などの不安は僕の脳裏から消えている。セオリーどおりにエンジン始動。今ま
での姿とは違い、凛々しい気分になってくる。
スタンドをはずし跨る。何だ〜?。位置が決まらない。ム〜、思い通りではない。そう、当初のシートの時をすっかり忘れてしまっていたのだった。同時に、
サゴウ工芸の使用するウレタン材が強い腰のあるものだから、尻が勝手にいつもの着座位置へ持って行かれるようなところがないのである。
どうしようか、まずはガソリン補給へ走る。今、このT-140VとSR500には通称ツチノコという、ゲルマ、トルマリン、バクハン石などが混ざった改
善剤が燃料タンクに放り込んである。この確認もかねてコスモのハイオクを給油した。ツチノコの効能はいずれ。
12月30日(土)
天候と法事、そして忘年会と休日が取れず、随分とテスト期間が空いた。シートカバーはかけていたが、久々のテスト走行、しかも今日はメインジェットを
#175に変更すること。これは別項で出すこととして、シート状況に注目すると... 。
どれだけ押しても水が出ることはなかった。防水性は完全だ。サゴウさんの縫い目を防水する以上に、もう少しノウハウがあろうけど、接着剤の関係と共に、
僕が修正するわけでもないから、これはプロの領域だ。
エンジンの始動も#180の時と同じ。全てが良好な方向へ向かっている。クラッチの貼り付き現象も随分と変わった。レバーを引いていると貼り付きが離れ
だした。が、シフトの確認は必要だ。
跨って走ると、おもしろいもので、低速度域では、どうもポジションがしっくり来ない。そのまま国道を南へ走って行く。50km/hを越える辺りから、
しっくりしたポジションになってくる。「どうだ、かっこいいだろう」と言わざるをえない。そんなような感じになってくる。培倶人の2月号に風魔氏が跨った
ているW1-Sを後ろから写した写真が出ているけど、あんな不細工な姿ではない。あれよりタンクを挟み込むような独特のトライアンフ乗りのスタイルになっ
てくるのが確認できる。映画「マンハッタン無宿」でイーストウッドが追いかける犯人役の乗り方が近い。
もう少しハンドルバーを上向きにしたいところだが、それをヤルと、少々掌が痛くなってしまうから止めている。古い英車独特のハンドルバーを一般のセミ
アップのものに替えても良いが、チトフィットするのが無い。
途中70km/h程度に上げると、全てがマッチして来始める。目的のことを終えて、帰りは海岸回り。40〜30km/hで走るわけだが、シートはしっか
り尻をホールドしているが、リアが跳ねる。はっきり言って馬だ。前後の挙動が大きい。やはりリアショックの(スプリング)交換が必要のようだ。それ以外は
問題がない。
これまで、シートの沈み込みから来ていた内腿の痛みも無い。非情に素晴らしいできばえを確認して帰宅した。
結 果
こんなことなら、もっと早く修正に出していた方が良かったのに、というのが偽らざる感想だ。それほどの出来映えであり、性能である。もし、サスペンショ
ン関係が完全なら、このシートの評価は上がると思う。
今回のことで僕の感じたシートの修正を依頼するときは、現在の状況から「こういったものにしてほしい」ということを明確に文章化すること。加えて、ライ
ダーご自身の身長、体重、股下寸法、膝下寸法などを明記するべきであろうと思う。ことに、僕のような地方に在住の者で、シートの修正に直に対応できない場
合は絶対に必要だ。
このことを申し上げて、今回のT-140Vのシート修正の項を閉じることとする。